双葉地方広域市町村圏組合消防本部について、「パワハラが横行している」と告発する匿名投書が2度にわたり寄せられ、本誌2023年11月号、2024年2月号で取り上げた。2回目の投書には、すでに処分を受けた職員以外にも係長クラスの管理職がパワハラに加わっていたことが明かされていたほか、職員が通勤手当を不正に受け取っていることも指摘されていた。
投書によると、E係長は浪江町にいるのに本宮市から、H氏は郡山市にいるのに会津若松市から、I氏は富岡町にいるのに田村市船引町から通っていると申告して、本来より割高な通勤手当を不正に受け取っていたという(投書には実名が記されていたが、ここでは伏せる)。
原発被災地域を管轄エリアとしている同消防本部では、避難などの関係で自宅以外に暮らす職員もいるため、通勤手当の対象を広域に設定していた。それを悪用している職員がいる、というのだ。
当時、同消防本部に取材を申し込んだところ「投書の内容を確認できていないのでコメントできない」とのことで、事実かどうか判然としなかった。
だが、その後、同組合の一部職員が通勤手当を返納していたことが分かった。
同組合が全職員を対象に通勤手当の実態調査を実施したところ、勤務実態に基づき、3人が通勤手当の返納対象になったという。
組合議員らの情報によると、返納金額はA氏が8万1600円、B氏が77万6500円、C氏が112万3600円。合計198万1700円に上る。返納金は同組合の一般会計予算11月補正予算で「雑入」として計上された。
同組合事務局によると、返納者3人は投書に書かれていたE係長、H氏、I氏と一致するという。要するに、投書の内容は事実だったわけ。ただ、関係者によると、返納した職員にペナルティーが科されるわけではないようなので、同組合では「故意ではなく、申告漏れで結果的に〝不正受給〟となったもの」、「返納したので問題ない」と判断しているようだ。
同組合事務局は、匿名投書での指摘を受けて動いたわけではなく、あくまで内部調査を経て返納にすることになった、と主張し、「今回実施した実態調査をその都度実施し、届け出の内容に誤りがないかチェック体制を講ずるとともに、職員に対し制度の正しい理解を努めてまいります」とコメントした。
一見しっかりした回答だが、そもそも実態調査が行われたり、返納されていた事実は広報されていなかった。同組合はパワハラが発覚した際も、加害者となった職員を懲戒処分していたことを明かさず、その理由を「公表する際の基準を下回っていたため」と説明していた。とにかく情報公開に後ろ向きな姿勢が目立つので、今回も不正受給疑惑が浮上していた職員にしれっと返納させて、そのまま幕引きを図る考えだったのではないか、と疑ってしまう。
昨年7月号では双葉地方市町村圏組合消防本部のパワハラについて、同組合議会で議論になったことを報じた。その中で前出の投書について、執行部が「投書に記載されていたパワハラ(係長クラスの管理職がパワハラに加わっていたことなど)は確認できなかった」と説明していたことに触れた。だが、通勤手当の一件が事実だったと考えると、パワハラに関する情報も全くのデタラメとは言い切れないのではないか。
なお、同消防や同組合に関しては、その後も内部情報を綴った投書が寄せられているので、職場内の〝風通し〟は相当悪いと推測される。