ノーリーズンという競走馬をご存知だろうか。2002年、中央競馬クラシック三冠の一角・皐月賞(GⅠ)を15番人気で勝利し話題を集めた。同年の菊花賞(GⅠ)では1番人気に押し出されたが、スタート直後につまずき、鞍上の武豊騎手が落馬して競走中止。馬券を買っていたファンの悲鳴が競馬場内に響いた――という逸話でも知られる。
現役引退後は種牡馬入りするも、成績が振るわなかったため、功労馬として余生を過ごすことに。2010年には南相馬市の厩舎に移り、震災・原発事故を経て、現在は同市鹿島区の鹿頭ステーブルで繁養されている。2015年以降、相馬野馬追にも出場しており、競馬ファンから注目を集めていた。

馬齢は25歳で、馬としてはかなりの高齢になっているが、先日、思いがけず脚光を浴びる機会があった。
『ウマ娘 プリティーダービー』というゲームに、ノーリーズンが新キャラクターとして登場することになったのだ。
同ゲームは、競走馬をモチーフとしたキャラクターがレースで実力を競うという内容。プレイヤーは各キャラクターのトレーナーとなり、メニュー指示を出して〝二人三脚〟で勝利を目指す。㈱Cygames(サイゲームス)が2021年にスマホ・パソコン向けに配信したところ、迫力あるレースシーンや奥深い育成システム、魅力的なキャラクターで爆発的人気となった。アニメも放送され、同作品をきっかけに競馬ファンになったり、モチーフとなった馬に魅せられて牧場めぐりを始めた人も多い。
発表された資料によると、「ウマ娘」におけるノーリーズンは普段は制服姿だが、レースには甲冑姿で参加するようで、性格は「天下人になるという壮大な野心」を抱いているとのこと。相馬野馬追出場の逸話を基にキャラクターを造形したのだろう。担当声優は河野ひよりさん。

引退繋養馬の見学は「競走馬のふるさと案内所・連絡センター」という施設を通して行う仕組みとなっている。鹿頭ステーブルに足を運んだところ、「ウマ娘」ファンの20代女性が見学に訪れており、生で見るノーリーズンに感動している様子だった。同施設を運営し、自身も相馬野馬追に出場している鹿頭芳光さんによると、「ウマ娘」の新キャラクターとなることが発表されて以来、毎週のように見学者が訪れているという。
「競走馬は引退後、さまざまな道を辿りますが、ノーリーズンは縁があってここで過ごしています。GⅠ馬ならではの違いなどはないが、気は強いですね」(鹿頭さん)
X(旧ツイッター)では、ノーリーズンの「ウマ娘」参戦に盛り上がる相馬野馬追執行委員会公式アカウントの投稿も話題となった。「一気にフォロワーが増え、その影響力の大きさを実感しています」(担当者)。
相馬野馬追は今年から5月の最終土―月曜日に催される。今年の開催日は5月25、26、27日。ノーリーズンの出場は「現時点で未定」(鹿頭さん)とのことだが、思いがけず注目を集めたことで、日程変更後も多くの人出が期待できそうだ。
※競走馬のふるさと案内所・連絡センター☎0146(43)2121
ホームページには牧場見学の際のマナーなども掲載されている