さとう・とみじろう 1955年5月生まれ。明治学院大卒。㈱河京代表取締役会長。2008年から会津喜多方商工会議所副会頭を務め、2019年11月から現職。
――昨年12月に「喜多方」が日本酒の産地として「GI(地理的表示)」の指定を受けました。
「昨年12月に喜多方が日本酒の産地として指定を受けたことは、大変喜ばしい出来事でした。GI指定は、その地域ならではの特性を持つ産品を保護する制度で、品質の高さと地域ブランドの確立に大きく貢献します。『GI喜多方』の指定を機に、喜多方の日本酒をさらに広くPRしていきたいと考えています。具体的には、国内外への販路拡大、観光との連携強化、そして何よりも、この素晴らしいお酒を次世代につなげていくための取り組みを進めていきます。
ただ、ご存知のように、アメリカのトランプ大統領による関税の問題があり、輸出面では少し懸念材料もあります。しかし、これを乗り越え、GI指定という追い風を最大限に生かしていきたいと考えています」
――4月から大型観光企画「ふくしまプレデスティネーションキャンペーン(DC)」が実施されていますが、商工会議所としてどのように関わっていくお考えですか。
「ふくしまプレDCと来年のふくしまDCは、福島県の魅力を全国に発信する絶好の機会です。当商工会議所としてもこれらのDCを成功させるために、観光まちづくり委員会を中心に様々な事業を企画し、積極的に関わっています。例えば、喜多方駅を盛り上げるためのアイデアとして、蛇口をひねるとラーメンスープが出てくる装置を駅に設置するというユニークなものも飛び出しました。また、喜多方ラーメンブランドプロジェクトでは、『喜多方ラーメンの日』制定の提案や、市役所への喜多方ラーメン課・そば課設置の要望が実現するなど、大きな成果を上げています。4月は喜多方のしだれ桜が見頃を迎え、この桜とプレDCを連携させ、観光客の皆様に喜多方の魅力を存分に堪能していただきました。今後も季節を問わず訪れていただけるよう力を入れて取り組んでまいります」
――物価や原油価格の高騰が続いていますが、会員事業所への支援について、商工会議所としてどのような対策を考えていますか。
「物価や原油価格の高騰は、会員事業所の皆様にとって大きな負担となっています。特に、人件費や原材料費の高騰は深刻で、価格転嫁をしなければ経営が立ちいかないという声も多く聞かれます。商工会議所としては、デジタル化の推進による生産性向上、価格転嫁に関する情報提供、そして何よりも、喜多方市との連携を密にし、様々な支援策を講じていきたいと考えています。
しかし、喜多方市の財政状況も厳しく、十分な支援が難しいのが現状です。国や県の交付金にも期待しつつ、知恵を絞ってこの難局を乗り越えていかなければなりません」
――昨年4月に市役所に喜多方ラーメン課が設立され、官民一体となって喜多方ラーメンの振興に注力していますが、この間の取り組みはいかがでしょうか。
「喜多方ラーメンは喜多方を代表する食文化であり、観光の大きな魅力の一つです。しかし、近年は高齢化や後継者不足などの課題に直面しており、ラーメン店が減少傾向にあります。そこで、市と商工会議所が連携し、喜多方ラーメンのブランド力を高め、次世代に繋げていくための様々な取り組みを行っています。具体的には、喜多方ラーメンの新たな魅力を発掘するための商品開発、市内産小麦『夏黄金(なつこがね)』の普及、そして何よりも、ラーメン店主の皆様が安心して経営を続けられるような支援策を検討しています」
――今年度の重点事業についてお聞かせください。
「今年は、これまでの事業を継続しつつ、喜多方の未来を見据えた新たな取り組みにも力を入れていきたいと考えています。重点事業としては、『GI喜多方』指定を受けた日本酒のPRと販路拡大、ふくしまDCを契機とした観光振興、会員事業所の皆様への経営支援、喜多方ラーメンのブランド力向上 、地域資源を生かした新たな産業の創出などがあります。
これらの事業を通して、喜多方をさらに元気で魅力的なまちにしていきたいと考えています」