【須賀川市】大寺正晃市長インタビュー(2024年)

おおでら・まさあき 1961年9月生まれ。須賀川高校卒。2011年9月から須賀川市議連続4期。23年9月から議長を務める。今年7月の市長選で初当選。

 ――7月に行われた市長選で初当選されました。

 「立候補表明から投票まで短期間での選挙となりましたが、無我夢中でした。今は当選の嬉しさよりも大きな責任を担ったという緊張感の方が勝っています」

 ――市議、議長としての経験を市政運営にどう生かしていきますか。

 「議員・議長時代から『市民の皆さんの声に耳を傾ける』『こちらから市民の皆さんに一歩歩み寄る』ということを心掛けてきましたが、その姿勢は変えずに続けていきたいです。議員・議長を経験した身としては、予算も施策も議決をいただかなければ前に進みませんので、議会を重視した市政運営を心掛けていきたいと思っています」

 ――市長選では財政や事業の見直し・縮小を訴えました。

 「財政調整基金が、正しく支出した結果ではありますが心許なくなっている状況なので、予算をなるべく減らさずに積み上げていきたいと思っています。その手段として、市有財産の精査・売却を考えています。売却すれば純粋に収入になるだけでなく、それまでかかっていた維持費も不要になります。民間企業では当たり前の無駄を省き、スリム化を図る取り組みを進めていきたいです。

 もう一つは、市民の皆さんや市内の企業が生み出してくれたお金を、市外に流出させるのではなく市内で循環させることを意識したいです。市民・企業が納めてくださった税金で須賀川市政が成り立っていることを考えれば当然のことです」

 ――見直しの一方で給食費・教材費の無償化を打ち出しています。

 「一番の理由は子育て世代の応援です。国も子育て政策を積極的に打ち出していますが、昔と比べて子育てには何かとお金がかかりますし、収入格差も現実問題として存在します。子育て政策は一義的には国がやるべきことですが、地方自治体でもできることは積極的に取り組むべきだと考えます」

 ――気になるのは、無償化に向けた財政面の裏付けです。

 「これから予算編成に取り掛かりますが、何とか捻出したいです。ただ給食費は本来、国が負担すべきものだと思います。実際、市町村によって給食費は有償・無償と格差がありますから、財源の確保と同時に、国には無償化に向けた財政措置の要望もしていきたいです。

 教材費についても本来は無償化すべきですが、市の財政にはそこまでの余裕がありません。そこで一つのアイデアとして、企業等の寄付で賄えないかと考えています。近年は社会貢献に熱心な企業が少なくありません。例えば、無償化された教材の片隅に寄付していただいた企業名を入れれば、子育て支援に積極的な企業という認知度も高まると思います。市長として企業に直接呼び掛けるなどしながら、任期中のなるべく早い時点で結果を出していきたいと思っています」

 ――令和7年にJR須賀川駅の東西自由通路が完成予定です。

 「完成による効果は大きいと思います。今は線路が街を二分している状況ですが、その分断が無くなることで地域連携やまちづくりがスムーズに進んでいくと思います。交通渋滞の緩和にもつながり、駅の利便性が高まることも期待されます。

 車いすや障がいをお持ちの方にも利用しやすい駅になると思います。今まではバリアフリーの面から利用しづらく、私のもとにも乗降に苦労されている方から相談が寄せられていました。そういった方々にも利用しやすい駅になるということは、生の声を聞いてきた私としてもすごく嬉しいことです。

 現在、駅前の新たなまちづくりについて協議しています。インバウンドや交流人口の増加を意識しつつ、何よりも市民の皆さんが使いやすくなった、安全になったと感じられるようにハード・ソフト両面から丁寧に計画を策定していきたいです」

 ――市長としてトップセールスも重要な役目だと思います。

 「トップセールスは何もモノを売るだけではありません。もちろんモノを売ることにも努めますが、人口減少社会を迎える中、これからは自治体同士の連携・分担が必要な時代になります。まずは近隣市町村、そして県や遠方市町村、さらには国との信頼関係をつくれるかどうかは、首長として非常に大切な役目だと考えます。そういう意味でのトップセールスを積極的に行っていきたいですね」

 ――長沼まつり(9月14日)が担い手不足を理由に今年で最後の開催となりました。旧長沼町、旧岩瀬村だけでなく市中心部の人口も減っていく中、持続可能な自治体運営をどのように行っていきますか。

 「長沼まつりに関しては非常に残念ですが、長沼地区の若い方には来年以降、新たなイベントを生み出すなどして地域を盛り上げていただきたいです。

 須賀川市はこれまで移住策を積極的に進めてきましたが、私は、まずは子育て世代や高齢者の応援など定住者に優しい施策を行っていきたいと考えています。そうすれば、結果として『須賀川市はいいところじゃないか』と移住にもつながるのではないでしょうか。定住者に手厚い施策を進めて人口減をなるべく緩やかにし、それを移住者の増加にもつなげて(人口減を)さらに緩やかにしたいです。

 正直、減り続ける人口を自治体同士で取り合うのは限界があります。一方、今後は在留外国人の割合が増加するという予測もありますから、10年、20年先を見据え、子どもたちの国際理解を深める教育に力を入れたいと思っています。多様性の時代と言いますが、国によって様々な考え方や宗教・文化の違いがあります。そうした事情を子どものうちから理解し、社会全体で外国人を受け入れる素養をつくっていきたいです。今後は、極端に言えば優秀な外国人に選ばれる自治体が勝ち組になると思
っています。その外国人を受け入れる社会の土台づくりを、子どもの教育から始めていきたいです」

 ――今後の抱負を。

 「元気のあるリーダーとして市長職に臨みます。市長選は『須賀川市に元気を』というキャッチフレーズで立候補したので、私だけでなく職員の元気も引き出したいと思っています。市民の皆さんには協働・共感の気持ちを持っていただきたいので、そのためにも市長・職員が元気とやる気を持ち、一丸となって須賀川市のために働いている姿を市民の皆さんに見ていただくことが大切だと考えています。

 結果として市民の皆さんも巻き込み、市をあげて取り組めば私たちの目指す素晴らしいまちづくりは必ず実現できると思っています。そのためにも4年間、元気であり続けるリーダーとして努めて参ります」

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