郡山駅東側に新潟資本の書店出店

郡山駅東側に新潟資本の書店出店

 JR郡山駅から東に600㍍、東部幹線沿いの広い空き地で開発の動きが起きている。調べると、県内初出店となる新潟資本の書店がオープンすることが分かった。

運営は隣接パチンコ店の関連会社

知遊堂出店予定地

 郡山駅の東側、横塚二丁目地内に1万平方㍍超の空き地がある。東部幹線に面し、北側をパチンコN―1(エヌワン)、南側を郡山観光自動車本社に挟まれた場所だ。

 同所では以前、広い駐車場を取り囲むように居酒屋「とりはち家」、しゃぶしゃぶ「温野菜」、回転ずし「魚べい」、乳幼児用品「西松屋」が営業していたが、2023年3月末に閉店。建物は全て取り壊された。

 当時、とりはち家には

 「賃貸契約期間満了のため、令和5年3月31日をもって閉店せざるを得なくなりました。契約期間延長の交渉も行いましたが、願いは叶わず、残念ながらこの場所から撤退することになりました」

 と無念さを滲ませた「閉店のお知らせ」が張られた。他店は閉店理由を「都合により」と濁していたが、とりはち家同様、契約期間満了で撤退したものとみられる。

 不動産登記簿によると、土地の所有者は橋梁や鋼構造物などの調査・設計・施工を行う矢田工業㈱(郡山市西田町鬼生田字阿広木1、成田正樹社長)。1949年創業。資本金8072万円。従業員135人。

 同所はもともと矢田工業が本社と工場を構えていたが、1998年に現在地に移転後は商業地として貸していた。ただ前記4店舗が閉店し、更地になったあとは一面が雑草だらけになっていた(土地に設定されていた金融機関の担保は1999年に全て抹消されている)。

 そんな同所に開発の動きが見られたのは今年6月ごろ。重機やトラックが運び込まれ、プレハブ小屋が設置された。道路沿いには工事が始まることを告げる看板も立てられた。

 看板を見ると「(仮称)横塚PJ知遊堂郡山店 開発造成工事」と書かれ、施工者は大和ハウス工業、注文者は合同会社中越クルツールとなっていた。

 法人登記簿によると、中越クルツール(東京都千代田区、朴泰鉉代表社員)は2007年に株式会社として設立されたが、22年に合同会社に組織変更された。資本金5000万円。事業目的は①書籍、雑誌、文房具等の小売業、②書籍、文房具等の中古品の売買、③レストラン、喫茶店の経営など。民間信用調査機関によると、直近4カ年の決算は別掲の通り。安定した売り上げを確保し、1億円超の黒字で推移している。

 中越クルツールは新潟県を拠点にパチンコエヌワン(計21店舗)を展開する㈱シリウスの関連会社だ。㈱シリウスホールディングスを頂点にシリウスや中越クルツールのほか、貸事務所業の㈱アイビー企画や不動産業の㈱IS地所など8社でグループを形成している。

 同所の看板に書かれている「知遊堂」は、中越クルツールが新潟県新潟市、三条市、上越市で経営している書店の名前。つまり同所には、県内初出店となる新潟資本の書店がオープンするのだ。

 土地を所有する矢田工業に開発の進捗を尋ねると、成田祐樹常務取締役が取材に応じてくれた。

 「あの場所は大和リースに貸して飲食店などが営業していたが、昨年3月末の賃貸契約満了でいったん更地にしました。その後、様々な開発の話をいただきましたが、弊社としてはあの場所が創業の地であることと、隣にパチンコ店がある中で更に遊技場を増やすのは好ましくないという観点から、市民に喜んでもらえる開発を待っていたのです」

 その計画が書店(知遊堂)だったというわけ。

カフェも併設

「知遊堂郡山店」出店予定地

 「パチンコエヌワンの系列(中越クルツール)が書店を経営し、福島県内にも出店したいという思惑から今回の計画を提案していただきました。広い駐車場を備え、幅広いジャンルの書籍を扱う書店が駅東側にあるのは良いことだと思い、提案を受け入れた次第です」(同)

 成田常務によると、開設されるのは書店だけでないという。

 「ドライブスルーを備えた飲食店や文房具店も併設されます」(同)

 中越クルツールは知遊堂のほか、喫茶店「バリスタカフェ」を経営しており、前述・新潟県内の3店舗は知遊堂とバリスタカフェの併設型なので、郡山の店舗もドライブスルーを備えた併設型になるとみられる。文房具は知遊堂の一角で扱われるのではないか。

 「土地は大和ハウスに貸し、同社が開発しています。オープンは来年6、7月ごろと聞いています」(同)

 大きな書店がオープンすれば郡山駅西口に比べて寂しい東口に変化がもたらされることが考えられるが、市内の老舗書店店主は今回の計画にこんな感想を述べる。

 「正直、書店は儲からない。知遊堂の話を聞いた時は『書店だけでは厳しい』と思ったが、喫茶店や文房具も扱うなら集客力は高いとみられる。同じ駅東側で営業するイオンタウンの書店にとっては脅威だろう」

 筆者は中越クルツールにメールを送り①横塚二丁目の土地には知遊堂とバリスタカフェが出店することで間違いないか、②福島県内への出店を考えた理由と郡山商圏の可能性について、③他に県内で出店する計画はあるか、④電子書籍やネット通販で書店経営が厳しくなる中、書店を開設する意義――の4点を質問したが、返答はなかった。

 今は空き地の同所が、人の流れに影響を与えるほどの魅力的な店舗に生まれ変わるのか注目される。

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