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幻に終わった会津若松市長選「新人一本化」

幻に終わった会津若松市長選「新人一本化」【小熊氏の辞退要請を拒んだ水野氏】

任期満了に伴う会津若松市長選は7月23日告示、同30日投開票で行われる。注目されたのは、他の立候補予定者より正式表明が遅れていた元女性県議の動向だった。

小熊氏の辞退要請を拒んだ水野氏

2月20日現在、市長選に立候補を表明しているのは現職で4選を目指す室井照平氏(67)と新人で市議の目黒章三郎氏(70)。ここに元県議の水野さち子氏(60)が加わり選挙戦は三つ巴になるとみられているが、室井氏と目黒氏が記者会見を開いて正式表明したのに対し、水野氏は立候補の意欲を示し続けるだけの状況が続いた。

 そのため、選挙通の間では

 「(市長選に)出る、出ると散々名前を売って結局出ず、その後に控える秋の県議選で返り咲きを狙っているのではないか」

 と「本命は県議選」説が囁かれていたが、ある経済人は

 「いや、本命は市長選で間違いないと思いますよ」

 と言う。

 「市内の有力者たちを回り、支援を要請している。『今の市政では市民が気の毒』『参院選でいただいた票を無駄にできない』『(選挙に必要な)お金は準備した』と話しているそうだから、有力者たちは『水野氏は本気だ』と受け止めている」(同)

 水野氏は司会業やラジオパーソナリティーなどを経て2011年の県議選に立候補し初当選。2期途中で辞職し、2019年の参院選に野党統一候補として立候補したが、自民党の森雅子氏に敗れた。

 落選したとはいえこの時、水野氏は34万5001票(当選した森氏は44万5547票)を獲得。それを受けて水野氏は「参院選の票を無駄にできない」と述べているわけだが、

 「あれは野党が揃って支援し(当時参院議員の)増子輝彦氏が後押ししたから獲れた票数。それを自分が獲ったと勘違いしていたら(市長選に立候補しても)厳しい」(同)

 水野氏の基礎票は2回の県議選で獲得した「7000票前後」と見るべきだが、それだって小熊慎司衆院議員の全面的なバックアップがあったことを忘れてはならない。

 実は水野氏をめぐっては、その小熊氏が立候補を見送るよう水面下で打診していた。

 事情通が解説する。

 「室井氏は、自身の実績と強調する『スマートシティAiCT(アイクト)』がとにかく不評で、観光業と建設業の人たちからはソッポを向かれている。そもそも歴代の会津若松市長は最長3期までで、4期やった人は皆無。そのため室井氏の4選出馬を歓迎しない人は多いのです」

 だから、室井氏の4選を阻止するには新人との一騎打ちに持ち込む必要があるのに、前出・目黒氏と水野氏が立候補したら現職の批判票が割れ、室井氏に有利に働いてしまう。

 というわけで小熊氏は水野氏の説得を試みたが、2月18日付の福島民報によると、水野氏は立候補の意思を固め、同26日に正式表明するというから、小熊氏の辞退要請を聞き入れなかった模様。ただ、小熊氏は室井氏と個人的に親しいので、行動の目的が室井氏の4選阻止だったとは断言できない。

 「市民の間には、高齢の目黒氏より女性の水野氏の方が新鮮という声が意外に多い。目黒氏が政策通で、市議会議長として議会改革を推し進めたことは間違いないが、前回も市長選に出ると言いながら結局出なかったため、ここに来て『今更出られても』という見方につながっているようです」(同)

 新人の一本化は、水野氏が取りやめるのではなく、目黒氏が辞退することで実現する可能性もゼロではないようだ。

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