候補者乱立の北塩原村議選

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 任期満了に伴う北塩原村議選が4月18日告示、23日投票の日程で行われる。それに先立ち、3月14日に村コミュニティーセンターで立候補予定者説明会が開かれた。定数10に対し、現職7人、元職2人、新人8人の17陣営が出席した。

「対立派包囲網」を敷く遠藤村長

 同村議会については、前回(2019年4月)の改選直後から村民の間でこんなことが囁かれていた。

 「2019年4月の村議選は、村として初めての無投票だった。それによって議員の質が落ちている。次回は絶対に無投票は避けなければならない」

 実際、議会でのやり取りや議員の普段の振る舞いなどを見て、「やっぱり、村民の審判を受けていない議員はダメだ」との声を聞くことが多々あった。そのため、「次回は無投票にならないようにしてもらいたい」との意見が根強かったのである。

 迎える今改選。3月14日に開かれた立候補予定者説明会には、定数10に対し、現職7人、元職2人、新人8人の計17陣営の関係者が出席した。立候補予定者(説明会出席者)は次の通り(敬称略)。

 現職▽佐藤善博、伊関明子、五十嵐正典、小椋真、伊藤敏英、遠藤祐一、池田睦宏

 元職▽遠藤春雄、五十嵐善清

 新人▽黒原範雄、柏谷孝雄、渡部哲夫、北原安奈、角田弥生、佐藤弘喜、遠藤康幸、新井学

 前回の無投票から一転、新人8人を含む17人が立候補を予定し、候補者乱立の様相を呈している。

 ある村民はこう話す。

 「前回が無投票でそれを良しとしない人が多かったこと、今回から選挙公営制度が採用されることの2つから、多くの候補者が出たのです」

 選挙公営制度は、金のかからない選挙の推進や、候補者間の選挙運動機会の均等化を図るために採用されるもの。大まかなルールは公選法で規定され、詳細は各自治体の条例によって定める。同村では、選挙運動用自動車(いわゆる選挙カー)やポスター代などが公費で賄われる。

 この2つの理由から、今回は多くの候補者が出てきたわけだが、前出の村民によると、「それは表向きの理由で、実際は遠藤和夫村長が声掛けをしたようだ」という。

 「現状、遠藤村長を支える立場の議員は、伊藤敏英議員くらい。そのため、遠藤村長は自派議員を増やそうと、いろいろと声を掛けたようです。全ての新人がそうではないが、大部分は遠藤村長とその一派が立候補を促した。ただ、新人候補の中には、人となりや何をしたいのかなどがよく分からない人もいます。もちろん、無投票は良くないが、だからと言ってこういう訳の分からない人が大勢出るのもどうかと思ってしまいます」

議会対策に苦労する村長

 遠藤村長は元村議で2020年8月の村長選で初当選し現在1期目。なお、菅家一郎衆院議員(4期、自民、比例東北)は義理の弟(菅家氏の姉が遠藤村長の妻)に当たる。遠藤氏の村長就任後、初めての村議選になる。

 遠藤村長は昨年6月議会で、辞職勧告決議案を出され、賛成5、反対2、退席2の賛成多数で可決された。その背景には、介護保険の高額介護サービス費の支給先に誤りがあったこと、支給事務手続きが遅延したことがある。

 ある関係者によると、「その問題について追及された遠藤村長が『自分の責任ではない』との発言をした」という。そんな経過もあり、議会で村長の責任を追及する動議が出され、最終的に辞職勧告決議に至った。

 そのほか、同議会では一般会計補正予算案が賛成3、反対6の賛成少数で否決されたほか、今年2月の臨時議会でも一般会計補正予算案が否決された。

 これは、ふるさと納税の返礼に関する補正予算で、議員から「県外の人からのふるさと納税の比率はどのくらいか」といった質問が出た。ところが、執行部から明確な回答がなかったため、「そんないい加減では議決できない」として否決されたのだという。

 要するに、遠藤村長は議会対策に苦労しているのだ。

小椋議長の存在

 ある関係者は「中でも、遠藤村長が気にしているのが小椋真議長の存在だろう」という。

 小椋議長は現在6期目で、県町村議長会長を務める〝大物〟。議長会長を務める中で、国・県、他町村の関係者などとのつながりもでき、役場職員の中には何か困ったことがあると、小椋議長に相談に行く人もいるという。

 そのほかでは、佐藤善博議員と池田睦宏議員が議会のたびに執行部に厳しい質問をぶつけており、遠藤村長から疎ましく思われている様子。特に、佐藤議員は元役場職員で知識もあるため、余計にそう思われているのだろう。

 もっとも、議員が議会で追及するのは普通のことだが、一部村民(村長支持者)は「村長に嫌がらせをしている」と捉えているフシがあり、実際にそう吹聴することもある。

 この2人は小椋議長の差し金(子分)と見ている村民は少なくない。佐藤議員と池田議員はともに1期目で、確かに、古参の小椋議長に教えを請うこともあるようだ。

 「そういったこともあり、遠藤村長が小椋議長を良く思っていないのは明らか」(前出の関係者)

 つまりは、小椋議長、佐藤議員、池田議員の3人の得票を削るために、3人と同地区、あるいは同業関係者などを候補者に立てようとしている、ということだ。

 「新人候補の中には、最初から当選する気はなく、小椋議長とその子分の票を削れればいいと考えている人もいる。小椋議長を落選させるのは無理でも、佐藤議員、池田議員を落選させ、小椋議長を孤立させればいい、という目論見もあるのかもしれない。何にせよ、そんな気持ちで立候補するのは有権者に失礼だし、その候補者のために(選挙公営制度で)公費が支出されるのはどうなのか」(前出の関係者)

 もっとも、「立候補予定者説明会に出席した17人がすべて出馬するとは限らず、直前で立候補を取りやめる人もいるかもしれない」との情報もあり、実際には少し変動があるかもしれない。

 いずれにしても、村民からすると「よく分からない勢力争いをしている。そんなことより、村長も議会も村のためにしっかりと働いてもらいたい」との思いのようだ。

 最後に。元職の五十嵐善清氏は4年前の村議選に立候補せず引退した。かつては「村長候補」と言われていた。喜多方市で不動産業を営んでおり、息子に会社の実務を任せようとしていたが、2016年の村長選直前に交通事故で亡くした。そのため、村長選を諦め、議員も辞めて、本業に注力することになった。それが今回の村議選で復帰を目指す意向で、「とりあえず、議員に復帰して議長などの役職を得た後、来年夏の村長選に出るつもりでは」との見方もある。

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