【小野町議選】「定数割れ」の背景

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【小野町議選】「定数割れ」の背景

 任期満了に伴う小野町議選は1月16日に告示され、定数12に現職8、新人3の計11人が立候補し、定数に満たない状況で無投票当選(欠員1)が決まった。「定数割れ」は同町では初めて、県内でも2017年の楢葉町議選、2019年の国見町議選、昨年の川内村議選に続き4例目(補欠選挙は除く)。なぜ、定数割れが起きたのか。

無関心を招いた議会の責任

 同町議会は、2008年の選挙時は定数14だったが、2012年から12に削減した。以降、2016年、2020年と、計3回の選挙が行われ、いずれも定数12に、13人が立候補し無投票はなかった。

 前回改選後の2022年7月、渡邊直忠議員が在職中に亡くなったことを受け、欠員1となっていた。その前年3月に町長選が行われ、補選を実施するタイミングがなかったことから、任期満了までの1年半ほどは11人体制だった。

 任期中の2022年12月に、議会改革特別委員会が設置され、その中で議員定数、報酬についての議論が交わされた。昨年6月議会(※同町議会は通年議会を採用しているため、正式には「定例会6月会議」)でその結果が報告された。

 内容は、「地方議員の成り手不足解消の観点から、議員定数削減、議員報酬増額等について協議してきたが、町施策等について十分な協議をするためには、現在の定数を維持することが望ましいとの意見や、報酬の増額は町民の十分な理解を得ること、町財政を考慮する必要があることなどから、現状維持とする意見が出された」というもので、現状維持が決まった。

 迎えた今回の町議選。事前情報では、現職3人の引退と欠員1に対して、新人4人が立候補する予定で、定数と立候補者が同数になると見込まれていた。しかし、直前で新人1人が立候補を見送ったのだという。これによって、立候補者は現職8人、新人3人の計11人となり、定数割れとなった。

選挙結果 (1月16日告示、届け出順)

竹川 里志(68)無現 自営業
橋本 善雄(43)無新 会社役員
田村 弘文(72)無現 農業
先崎 勝馬(70)無現 町議
中野 孝一(65)無現 農業
国分 順一(61)無新 無職
羽生 洋市(68)無新 農業
宗像 芳男(71)無現 自営業
会田百合子(61)諸現 町議
緑川 久子(68)無現 会社役員
水野 正広(72)無現 会社役員

 公職選挙法の規定では、欠員が定数の6分の1を超えた場合は再選挙が行われることになっている。同町の場合は欠員3以上でそれに当てはまり、今回の選挙は「成立」ということになる。ただ、この先2人以上の欠員が出たら前述の規定により、50日以内に補選が行われる。

「定数割れ」の理由

「定数割れ」に終わった小野町議選
「定数割れ」に終わった小野町議選

 なぜ、定数割れが起きたのか。

 関係者の中には、議員報酬では生活できないという事情を挙げる人もいる。同町の議員報酬は月額22万5000円、副議長は同24万5000円、議長は同30万7000円。そのほか、年2回の期末手当(※2023年度は年間で月額報酬の3・35カ月分)がある。

 一方で、定例会、臨時議会、常任委員会、議会運営委員会、全員協議会などの合計は50〜70日。議員からすると、「町・郡などの行事への出席や一般質問の準備など、それ以外の活動も多い」というだろうが、少なくとも公式な議会活動は前述の日数にとどまる。

 地元紙に掲載された当選者の職業を見ると、農業3人、会社役員3人、自営業2人、町議2人、無職1人。町議・無職は別として、比較的時間に融通がきく人に限定されている。議会の開催日時を見直すなどして、会社勤めをしている人でも議員になれるような工夫が必要ではないか。

 そうなれば「議員報酬だけでは食っていけない」という話にはならない。そもそも、地方議員が議員報酬で生活しようという発想が正しいとは思えない。

 ある町民は「議員定数を現状維持としたのは妥当だったのか」と疑問を投げかける。

 「2012年から定数を12にしたが、当時の人口は約1万1000人、現在は約9000人と、この間、約2割人口が減っていることを考えると、定数はそのままで良かったのか。そもそも、その議論も議会内(議会改革特別委員会)ではなく、町民も交えて検討すべきだったように思います」

 本誌は、定数削減は必ずしも好ましいとは思わない。当然、議員の数が多ければ、それだけ町民の意向を反映させることができるからだ。むしろ、議会費(議員報酬の総額)はそのままで定数をできるだけ多くした方がいいと考える。当然、そのためには、前述したように会社勤めの人でも議員活動ができるような工夫が必要になる。

 一方で、別の町民はこう話す。

 「いまの状況(定数割れ)をつくったのは誰かと言ったら、この2、3回の議員選挙の間に辞めた人を含めた議員本人にほかならない。そこには、後に続く人をつくれなかったこと、関心を持たれないような状況にしてしまったこと等々、いろいろな要素があると思いますが、聞こえてくるのは議会・議員として何をすべきかということよりも、議会内の役職に誰が就くかとか、そんなことばっかりですから。これでは町民も冷めていきますよ。こういうのは積み重ねですからね。そのことをもっと真剣に考えてもらいたい」

 議会には無関心を引き起こした責任があるということだ。厳しい指摘だが、これが本質なのだろう。

 もっとも、今改選前の議会は少し難しい部分もあった。というのは、選挙が行われたのが2020年1月で、任期は同年2月1日から。任期スタート直後に新型コロナウイルスの感染が拡大し、さまざまな活動が制限された。本来であれば、町内の行事・会合などに顔を出し、そこで町民の声を聞くことができるが、行事・会合そのものが開かれなかったため、それができなかったのだ。議会の傍聴にも制限があった。そういう意味で、町民と議会に距離ができたのは間違いない。

 それが今回の定数割れを引き起こした一因でもあろう。コロナ禍という難しい状況の中だったが、もっとできることはなかったのか、今後どうすべきかを考えていかなければならない。

 最後に。前段で定数割れは4例目と書いたが、2017年の楢葉町議選、昨年の川内村議選は、ともに原発被災地で、全域避難を経て人口減少や高齢化率の大幅上昇といった特殊事情がある。一方、2019年の国見町議選は、そういった特殊事情はなく、小野町のケースに近いのではないか。なお、同町議選は2019年5月28日に告示され、定数12に10人が立候補し、無投票、欠員2という結果だった。

 当時、ある町民はこう話していた。

 「今回の町議選(定数割れとなった2019年)では、ギリギリでも選管に立候補を届ければ、〝タダ〟で議員になれたわけだが、そういう人すらいなかった。これが何を意味するか。結局のところは、いまの議会は町民から評価されておらず『一緒にされたくない』として、誰もその中に入りたがらなかった、ということにほかならない」

 その後、2020年11月に行われた町長選に現職議員2人が立候補したため、欠員4となり、町長選と同時日程で補選が行われた。その際は5人が立候補して選挙戦になった。昨年5月の改選では、定数12に12人が立候補して無投票だった。その点では「なり手不足」が解消されたとは言えない。

 小野町では、新しい議会が今回の結果をどう捉え、どのように活動していくかが問われる。その結果が見えるのは4年後の改選期ということになる。

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