【会津美里町】町民向け無線通信事業でトラブル

【会津美里町】町民向け無線通信事業でトラブル

 会津美里町が展開している町民向け無線通信事業「あいづみさとWi―Fi(ワイファイ)」が突然サービス停止状態となり、利用者が困惑している。背景には事業を委託されていた会社とプロバイダー(インターネットに接続する事業者)間のトラブルがあった。

委託業者の未払い問題で接続停止

 「あいづみさとWi―Fi」事業は2023年5月に開始されたものだ。町内の防災無線塔など125カ所にアクセスポイント(基地局)を設置し、個人で受信機・ルーターをレンタルして設置すれば自宅内でインターネットが接続できる仕組み。

 月額料金は1980円だが、小中学生がいる世帯、65歳以上の世帯は550円で利用できる。民間業者が展開しているサービスと比べ割安ということもあって、約300人(世帯)が契約していた(会津美里町は人口1万7138人、6360世帯=4月1日現在)。

 町は産業や暮らしのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する狙いから、約1億2000万円を投じて同事業をスタート。デジタル田園都市国家構想交付金や新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金などを活用し、町の負担は実質1割程度だった。

 ところが、3月24日、突然インターネットがつながらなくなった。町から同事業を受託していたダブルシステムジャパン(東京都、奥江邦弘社長)は当初、数日程度で復旧すると説明していたものの、予定が後ろにずれ込み、プロバイダーとの協議が長期化して1カ月経っても復旧の見通しが立たないことが分かった。そのため町は同社と新たに契約を結ばず、同事業を終了した。

 ダブルシステムジャパンは2010年設立、資本金1000万円。民間信用調査機関によると、2023年12月期売上高500万円(当期純利益マイナス400万円)で、2021年から3期連続赤字。2024年12月期売上高5000万円で当期純利益の記載はなし。かなり厳しい経営状況であることがうかがえる。

 町や複数の関係者によると、事業開始時の委託者はウェルソック(東京都、沼本浩社長)という会社。同社は2010年設立、資本金6億9454万8750円。2022年12月には、高速通信網を活用したDX化推進を目的とした地域包括連携協定を町と締結。同様の事業を岩手県矢巾町など全国の自治体で展開しており、注目を集める存在だった。

 ところが、ウェルソックは経営悪化により事業継続が困難になってしまったため、同業者のダブルシステムジャパンが矢巾町の事業を引き継ぐことになり、会津美里町も同社に委託した。

 何とか危機を乗り越えたかのように見えたが、ここでプロバイダーとダブルシステムジャパンとの交渉が難航してしまった。町の担当部署である政策財政課デジログ推進室の担当者はプロバイダーの社名や詳細を明かさなかったが、複数の関係者によると、ウェルソックによる未払金が発覚し、その対応をめぐり難航しているという。金額はかなりの額とみられる。ダブルシステムジャパンとしては「事業を引き継いだが、未払金まで支払う義務はない」というスタンスで、ダブルシステムジャパン、ウェルソックともに弁護士を通して交渉しているが、平行線をたどっているようだ。

不満を募らせる利用者

会津美里町ホームページにトラブルの経緯を説明する文章が掲載された
会津美里町ホームページにトラブルの経緯を説明する文章が掲載された

 町としても未払金を立て替えて対応する考えはないようで、デジログ推進室担当者は「ダブルシステムジャパンには運営費用として月40万円支払っていた。同じ条件で受託する企業があれば事業を継続できるが、果たしてそうした企業が現れるのかどうか。こうしたトラブルが起こった以上、同社と引き続き契約するのはかなり慎重に判断せざるを得ない」と話した。ワイファイ事業はこのまま終了する可能性が高そうだ。

 ウェルソック、ダブルシステムジャパン両社に問い合わせたが期日までに連絡はなかった。ちなみに矢巾町でもダブルシステムジャパンは事業継続が困難になり、今後の対応が議論されているという。

 突然のサービス終了に利用者は不満を募らせている。

 ある年配町民は「他社のサービスと比べて圧倒的に料金が安いので利用し始め、ようやく慣れてきて動画などを楽しめるようになったタイミングで接続できなくなった。町の事業として始めたのだから、町が責任を持って対応してほしい」と訴えた。5月15日には町役場で相談会が開かれ、数十人が足を運んだそうだが、町の担当者が説明・謝罪する場だと思いきや、新たなワイファイサービスに切り替えるための業者をあっせんする場に過ぎなかったため、参加者は呆然としていたという。

 前出デジログ推進室担当者によると、ネットに接続できなくなったことで、テレワーク、株取引、オンライン授業などに影響が及んだといった具体的な被害報告はなかったが、役場や町議には多数のクレームが寄せられ、議会では5月下旬、今後の対応について協議を行うようだ。

 デジタル田園都市構想やコロナ関連の交付金を狙って参入した企業に町が巻き込まれた感もある今回のトラブル。どう対応していくのか、今後の行方が注目される。

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