本誌昨年11月号に「破綻している除染土壌の再生利用計画」という記事を掲載した。除染作業により発生した汚染土壌、いわゆる「除染土」は、双葉・大熊両町に設置された中間貯蔵施設に運び込み、30年間(2045年3月まで)、適正管理した後、県外で最終処分することになっている。その量は1400万立方㍍に上るが、環境省は管理する土壌の容量を減らし、県外での最終処分をしやすくするため、除染土を建設資材などに再利用する方針を示している。
そんな中、除染土再利用に反対の意向を示している市民グループ「放射能拡散に反対する会」と環境省による意見交換会が昨年8月30日に行われ、それから間もなく、その模様を撮影した動画が関係団体によって公開されたため、それを基に意見交換会の様子をまとめたのが昨年11月号記事である。
詳細は同記事を読んでいただくとして、その後、放射能拡散に反対する会は昨年10月30日、環境省とIAEA(国際原子力機関)に対する抗議声明文を発表し、昨年11月18日に同抗議声明文を両者に提出した。
内容は、あらためて再利用を白紙にするよう求めるもので、同日はその場で市民グループ関係者と環境省による意見交換の場が設けられた。
そこでは、東京都新宿区、埼玉県所沢市、茨城県つくば市の3カ所が除染土再利用実証事業の候補地とされているが、昨年8月に発生した豪雨により、新宿御苑実証事業予定地の水没に対する環境省の「覆土するから問題ない」との回答についての追及があった。そのうえで、実際にこのような災害が発生しているので新宿御苑での実証事業は中止すべきと指摘したが、環境省は予定変更の考えはないとのことだったという。
そのほか、所沢市での住民説明会では「汚染土の下に遮水シートを敷く」と再三説明していたが、その後のワーキングチーム会議では、「遮水シートは不要」とされていたことが分かった。そのため、なぜそのように変更されたのかを問い詰め、環境省が後日あらためて回答することになったという。
こうして見ると、市民グループと環境省の〝攻防〟は今後も続いていくものと考えられる。
除染土再生利用については、本誌でも実証事業計画を取材したことがある。二本松市原セ地区の市道整備で路床材として用いる実証事業(詳細は本誌2018年7月号でリポート)、南相馬市小高区の羽倉地区周辺で常磐道拡幅工事の盛り土に使う実証事業(同2019年2月号)などで、いずれも周辺住民から反対意見が相次ぎ、計画を断念した経緯がある。周辺住民の心情からしたら当然と言える。
11月号記事でも指摘したが、そもそも除染土再生利用計画は管理しなければならない除染土の容量を減らし、それによって県外最終処分をより現実的にするのが狙いとされる。しかし、容量を減らしたところで、最終処分場を受け入れてもいい、というところが出てくるとは思えない。そう考えると、除染土再生利用計画は「汚染土壌を各地にばら撒くだけ」といった指摘は理解でき、除染土再生利用にはさほど意味があるように思えない。それよりも県外最終処分の道筋を付けることに全力を注ぐべきではないか。