8月30日、市民グループ「放射能拡散に反対する会」と環境省による意見交換会が行われ、それから間もなく、その動画が公開された。福島みずほ参議院議員の協力を得て、参議院議員会館で行われ、東京電力福島第一原発事故後、県内の除染作業により発生した汚染土壌の再利用に関することが議題だった。
除染作業により発生した汚染土壌、いわゆる「除染土」は双葉・大熊両町に設置された中間貯蔵施設に搬入され、その量は1400万立方㍍に上る。これを30年間(2045年3月まで)、適正に管理した後、県外で最終処分することが決まっている。
そんな中、環境省は除染土を道路用資材などとして再利用する方針を示している。それにより、管理する土壌の容量を減らし、県外での最終処分をしやすくする狙いがある。
環境省「中間貯蔵施設情報サイト」によると、「再生利用実証事業」として、南相馬市小高区、飯舘村長泥地区のほか、県外での実証事業関連の情報も掲載されている。
県外での実証事業は、2022年12月に首都圏で実施する旨が発表され、東京都新宿区、埼玉県所沢市、茨城県つくば市の3カ所が候補地とされた。その後、新宿区と所沢市で説明会が開催され、環境省(中間貯蔵施設情報サイト)のホームページでは、説明会資料・説明会要旨がアップされているが、それ以降の情報は更新されていない。つまりは実証事業に入れていないということだ。
そんな中で行われた「放射能拡散に反対する会」と環境省による意見交換会で、市民グループ側が指摘したのは以下のようなこと。
○8月21日の集中豪雨により新宿御苑の実証事業予定地周辺がひざ丈まで水没したにも関わらず、環境省は、その事実を把握していなかった。環境省は常々「責任をもって対応する」と言っているが、これに反する。
○実証事業の候補地になっている所沢市議会では全員一致で実証事業に反対する決議をした。にもかかわらず、環境省は撤回する態度を示していない。
このほか、放射性物質汚染対処特措法の解釈に関する指摘もあった。要するに、同法をいいように解釈して除染土壌の再生利用を進めようとしている、ということだ。
こうした指摘に対する環境省の回答は要領を得ないものだった。
除染土再生利用については、本誌でも実証事業計画が頓挫した事例を取材したことがある。二本松市原セ地区の市道整備で路床材として用いる実証事業(詳細は本誌2018年7月号でリポート)、南相馬市小高区の羽倉地区周辺で、常磐道拡幅工事の盛り土に使う実証事業(同2019年2月号)などがそれに当たり、いずれも周辺住民から反対意見が相次ぎ、計画を断念した経緯がある。

当時、本誌が同実証事業について取材した中では、「道路の盛り土に使うということは、半永久的にそこに留め置かれ、事実上、そこが最終処分場になってしまう」、「計画地の近くに農地を持っているが、取引先から『同実証事業が実行されたら、取引は控えたい』と言われた。そういう影響がある以上は容認できない」といった話が聞かれた。近隣住民からそういった不安の声が出るのは当然と言える。
そもそも、除染土再生利用は管理しなければならない除染土の容量を減らし、それによって県外最終処分をより現実的にするのが狙いとされるが、容量を減らしたところで、最終処分場を受け入れてもいい、というところが出てくるとは思えない。そう考えると、除染土再生利用にはさほど意味があるように思えない。