こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在2期目。
――福島駅東口再開発事業は、議会、検討会、市民などの意見を反映した見直し方針が示され、現在は、業務委託した設計アドバイザーから提案・助言を受けながら見直し方針の周知と内容のブラッシュアップを図っています。今後の見通しは。
「本市は中核市で、新幹線の駅もありますが、大規模な集会施設がないので、各種大会などのコンベンション需要が他の街に流れています。市としては、最低でも1000人規模の学会や2000人規模の集会が1カ所でできる施設が必要だと考えています。当初の計画では機能が不足していたため、面積を広げました。金額も若干上がりましたが、必要な投資だと考えています。
コスト縮減には当然努めますし、施設が最大限の効果を生むように努力します。今回の検討過程でも、医療関係者等から『3000人に対応できる規模が良い』という意見がありましたが、議会から事業費を抑えるよう言われているなか、とても大きな施設になってしまうため、アドバイザーからの助言も踏まえ創意工夫をし、1000~2000人規模の施設としました。
県都としての役割を継続的に持続していくため、活力を生み出す必要な要素だと思います。民間からは早く事業を進めてほしいという声も多く出ており、贅沢なものではなく身の丈に合った、象徴的な特徴がある、福島らしいものにしたいと考えています」
――福島駅西口のイトーヨーカドー跡地の利活用や、駅構内に入るパワーシティーピボットの一部店舗閉店など課題が山積しています。
「ヨーカドー跡地は西口の重要な拠点と捉えていますが、広くて民間一社で活用しきれないのが現状です。マンションが建ち並ぶだけでは拠点としての魅力に欠けるので、地域住民の日常生活に役立ち、かつシンボリックなものにしたいと考えています。検討会では、民間が自由に開発すべきという意見もありましたが、バラバラの開発では土地のポテンシャルを生かせないので、行政が関わるべきだと考えています。
行政が再開発のような形で関わることで、国の資金を導入したり、都市計画上の優遇措置を受けたりすることができます。民間事業者の要望に合わせて、例えば図書館やホールなどの公共施設を併設することで、より良い開発事業になる可能性があります。しかし、現状では何も動き出していないため、さまざまな民間事業者と接触しながら働きかけを行っています。
今後は、まちづくり検討会からの答申などを踏まえて、民間事業者の開発に、行政がどのように関われるか検討を進めていきたいと考えています。
閉店した西口ピボットについては、より日常生活で使える店舗構成に見直すようJRに働きかけています。JRもリニューアルを検討しているようですが、詳細はまだ発表されていません。
2月25日から西口を走る循環バスを運行し、西口ピボット閉店の影響を小さくしたいと考えています。東西自由通路については当初中長期的な課題としていましたが、この機会に一緒に考えても良い話です。東西の状況を見ながら検討していきます」
――老朽化している消防本部・福島消防署や公設地方卸売市場の建て替えが控えていますが、一方で、中期財政収支見通しでは市財政の厳しさが明らかになっています。
「必要な事業を実施しながら、財政が成り立つように工夫していきます。私自身、これまでさまざまな場所で財政責任者として、積極財政を行いながら財政の健全性を保ってきたので、その経験を生かしていきたいと考えています。
まずは消防本部をはじめとする老朽化した施設の耐震化や再編整備など、喫緊の課題に取り組んでいます。市では『公共施設の戦略的再編整備』に基づき、市民に身近な機能を市役所西側の市民センターにまとめ、外から人を呼ぶ大きな集会機能は駅前に持っていくなど、工夫を凝らしています。
これまで本市の公債費は全国平均より低く、さまざまな投資が少なかったことを表しています。これらの取り戻しと、温暖化やデジタル化など新しい課題にも対応する必要があり、今後は、必要な事業を進めながら財政の健全性を保てるよう、コントロールする必要があります」
再エネ推進を抑制
――先達山のメガソーラーをはじめ、市内ではメガソーラーや大規模な風力発電など再エネ施設の建設や計画が進んでいます。原発事故被害を踏まえれば再エネの普及は必然ですが、自然を破壊して再エネ施設の建設を進めるのは矛盾があります。
「おっしゃる通りです。本市では自然破壊が生じないよう、ガイドラインを設けるなど、抑制的に進めてきましたが、福島県全体として再エネを推進しており、事業者がどんどん参入している状況です。審査は個々の事業で判断されていますが、全体として増えすぎると、災害リスクや景観、動物の住処、保水など、さまざまな問題が出てきます。先達山のメガソーラーは、景観的にも大きな問題です。総量的に、これ以上再エネ施設を増やすべきではないと考えています。メガソーラー等は市内7割を禁止区域とし、他の地域は許可制とする条例を制定します。既存の施設についても、適切な管理を義務化し、4月から運用を開始します。
再エネの普及については、太陽光発電パネルを屋根置きにするなど、市民との共創で進めていきたいと考えています。省エネ性能の高い住宅を推進することで、エネルギー消費量を減らすことも重要です」
――福島市は全国の同規模自治体の中で職員の高ストレス者の割合が東北1位です。
「職員がストレスなく働けることは重要であり、私も普段から気遣いを持って接しています。本市は震災などが連続し、除染などの負担も大きかったことが、職員のストレスの高さに大きく影響しているものと考えています。
事業面では、過去の課題と新しい課題の両方に対応する必要があり、職員の負荷が高い状態です。そのような状況でも、職員はしっかり職務を遂行してくれています。デジタル化を進め、事務の効率化を図って職員をサポートしていきます。無駄なものを省き、職員がより働きやすい環境をつくっていきたいです」
――最後に、2025年度の重点施策についてお伺いします。
「福島駅東口の再開発をはじめ、まちのにぎわいを取り戻すこと、子育て世代への支援を充実させることを重視しています。特に、子育て・教育には重点的に予算を投入し、福島で暮らしたいと思えるようなまちづくりを目指しています」