【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

 さいとう・のりこ 1952年生まれ。(株)cluster取締役会長。福島県中小企業家同友会会津地区会長、同副理事長、同代表理事を経て、2023年4月から現職。

組織強化と会員との信頼構築に挑む

 ――新会長に就任して1年が経過しました。

 「北海道・東北ブロックでは女性初の会長職ということもあり、重責に押しつぶされそうなときもありました。ただ、藤田光夫前会長に推薦していただいたからには、『何らかの役に立ちたい』という思いでやってきました。時間が経つにつれて、私自身の役目も見えてきて、『決断』、『責任』、『調和』が大事だと思うようになりました。物事についての判断はそれぞれの支部長や代表理事にお任せしています。私はそういった情報を受けて、同友会としてどのような形で進むか、あるいは取りやめるかの『決断』をすることが役目だと思っています。また、同友会では、『深める、進む、新しい』の3つのシンカというスローガンを掲げていますが、理事会などの会合で1人の強い意見で物事が決まっていくのではなく、それぞれが忌憚のない意見を言える雰囲気づくりに努めて『調和』を重んじるのも私の役目です」

 ――県内経済の状況について。

 「飲食業界をはじめとする中小企業の経営環境の厳しさについて、いろんな方面から話を聞いています。都会には大企業があって、人が多く集まってくるので、景気がよくなれば従業員に還元という形で、給料を上げることができるでしょう。ただ、地方の中小企業ではそう簡単にはいきません。多くの経営者が、日々の仕事に対し給料アップという分かりやすい形でモチベーションを上げたいと思っています。しかし、そのための原資がなければやろうと思ってもできません。どんな商売も単価を上げれば客が減るかもしれず、人口減少でそもそものパイが少なくなっている。そういったところが地方の中小企業の悩みだと思います」

 ――同友会や会員の企業で新しい取り組み、頑張っている企業などあれば教えてください。

 「会員が経営している喜多方市の橋谷田商店と荒川産業が、県内で発生した古紙を再利用したトイレットペーパー『フクメグリ』を開発し、コープあいづのスーパー全8店舗で売り出しました。こういった先駆的な取り組みを会員同士がコラボレーションしてできていることは喜ばしいです。会津支部では『食と農と工芸委員会』を設けており、さまざまな業種によるコラボレーションが実現可能となっていますが、そうした点は同友会の魅力でもあります」

会員2500名を目指す

 ――物価高や燃料高騰など、常に変化が求められる時代ですが、企業や経営者に求められる資質とは何だと思いますか。

 「同友会は全国的に『決して悪徳商人にはならない』との声明を出しております。個人的に重んじているのは『職業倫理』です。皆で同じ仕事をするときに、どういう気持ちで向き合うのか。具体的には『値段が高いのに製品の質が悪い』、『サービス単価が高いのに対応が良くない』とならないようにすることを心がけています。

 私が経営しているのは福祉事業と介護事業なので、守秘義務を守ることや誠実さが求められます。スタッフは利用者さんに目を向け、管理者がスタッフに目を向けていれば、虐待などさまざまな問題も起きにくいと思っています。もっと言えば、刑事の勘ではないですが、最初の動作や言動でその人の性質は分かるものです。『この人に任せてはまずいな』と思えばすぐに担当から外れていただくなどの対応をしています」

 ――今年の抱負を。

 「引き続き同友会の組織強化を図っていきます。『支部の下部組織の地区会の規模を100人以内にする』ことによって、会員一人ひとりの顔が見える組織になり、退会者が出にくくなるというデータに基づき、組織改編を行っていきたいと考えています。区切り方としては、距離なのか、地区ごとなのか、というのは各地域の地域性に合わせて進めていきます。どういった改革を行っていくのか、また事業費をどのように運用していくかを具現化していけるよう引き続き取り組んでいきます。

 また全体としては、会員が現在1861名ですが、将来的に2500名を目指していきます。そのために私が重要だと考えているのは、同友会事務局の立ち位置です。単なる事務ではなく一緒に創り上げていく『パートナー』だということを浸透させていきたいです。会員を増やすことや、新入会員へのフォローなどは、事務局の協力が欠かせません。また、業務や運営にどういった課題があるかを吸い上げるために、事務局員に対して面談を進めています。いろんな角度からの意見を聞いて、事務局とのパートナーシップを強化し、同友会の運営を行っていきます。

 自分の身の丈を知っているので、背伸びせず、周りの方々に協力してもらいながら取り組んでいければと思っています」

関連記事

  1. 【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

    【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

  2. 【会津美里町】杉山純一町長インタビュー【2024.6月】

    【会津美里町】杉山純一町長インタビュー【2024.6月】

  3. 【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

    【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

  4. 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

  5. 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

  6. 【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

  7. 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭

    【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー

  8. 【矢祭町】佐川正一郎町長インタビュー【2024.6月】

    【矢祭町】佐川正一郎町長インタビュー【2024.6月】

人気記事

  1. 本宮市「コストコ進出説」を追う 地図
  2. 【マルト建設】贈収賄事件の真相
  3. 【福島市】メガソーラー事業者の素顔
  4. 事件屋に乗っ取られた「鹿島ガーデンヴィラ」
  5. 郡山市フェスタ建て替えで膨らむシネコン待望論
  6. 【和久田麻由子】NHK女子アナの結婚相手は会津出身・箱根ランナー【猪俣英希】
  7. 【福島市】ヨーカドー跡にイオン進出のウワサ

最近の記事

  1. 政経東北【2025年3月号】
  2. 【安達太良山】くろがね小屋27億円再建の是非 【安達太良山】くろがね小屋27億円再建の是非
  3. 【特別対談】フリーアナウンサー【柗井綾乃】× 世界一周チャリダー【伊藤篤史】
  4. 福島市職員が病休中にゴルフ大会出場 福島市職員が病休中にゴルフ大会出場
  5. 【福島市】3月からごみ出し新ルールを適用 【福島市】3月からごみ出し新ルールを適用
PAGE TOP