高校野球通お笑い芸人から見た聖光学院

高校野球通お笑い芸人から見た聖光学院

 福島県に住む高校野球ファンにとって、聖光学院は「絶対王者」という存在。一方で、全国のファンから見るとどうなのか。高校野球通として知られ、毎年、甲子園大会のほぼ全試合を現地観戦するお笑い芸人のかみじょうたけしさん、いけだてつやさんに聖光学院の印象を聞いた。

かみじょうたけしさん

かみじょうたけしさん

 ○聖光学院の印象と全国での人気

 全国の高校野球ファンからすると、聖光学院は福島県の超強豪私学という位置付けだと思います。そういう学校は各都道府県にたくさんあって、例えば大阪府なら大阪桐蔭、京都府なら龍谷大平安といった具合です。でも、全国のそういう学校は大抵、選手をスカウティングしているんです。ただ、聖光学院はスカウティングをしていない。「聖光学院に行きたい」という野球少年の気持ちを最優先にして、そこから甲子園を目指すのは、高校野球の理想だと思います。それでいて毎年のように甲子園に出てくる。それがすごいと思います。自分の子どもに聖光学院に行かせたいと思うような指導をしていると思います。

 人気はかなりあると思います。150㌔を投げるピッチャーがいるわけでもなく、ホームランをボコボコ打つ選手がいるわけでもない。必ずしも野球の技術だけが優れた子がメンバーに入るわけではなく、野球を超えた、まず人間としてちゃんとしていないとダメだという教えがあるのだと思います。それでいて甲子園に出て、2022年夏にはベスト4までいきました。そういうところがすごいと思います。

 ○聖光学院エピソード

 これは本当に偶然なんですけど、知り合いの息子さんが聖光学院に行ったのがきっかけで、より応援するようになりました。その知り合いというのが、2022年にキャプテンとして出場した赤堀颯選手(現・國學院大)のお父さんで、20年以上の付き合いなんです。

 赤堀君は2年春にメンバー入りしたんですが、Bチーム(下級生が中心のチーム)を見られている横山博英部長先生が、赤堀君に「赤堀がAチーム(上級生・主力選手のチーム)に行ったら、Bチームがガタガタになってしまう。だからBチームに残ってくれないか」と言ったそうです。そのことを聞いたお父さんは、赤堀君に「きっと、お前のために言ってくれている」と言い、赤堀君はメンバーを返上してBチームに戻ったそうです。結果的にはそれが良かったんでしょうね。最後は日本代表に選ばれるような選手になり、チームを夏ベスト4に導きました。目先のことだけでなく、次の代のチーム作りまでしっかり考えているんだなと思いました。

 ○今年のチーム

 自分のユーチューブ動画でも言いましたが、聖光学院と山梨学院の試合は大会屈指の好カードだと思いました。力も均衡していて、いい試合になると思っていたら、やはりいい試合でした。6回ぐらいまでは聖光学院・大嶋投手と、山梨学院・菰田投手の投げ合いで、この2人は対照的です。菰田投手は身長194㌢、体重100㌔の大谷2世とも言われる選手、大嶋投手は身長169㌢のエース。菰田君は将来プロで活躍すると思いますが、高校野球というカテゴリーで見たら全然戦えるし、最後まで大嶋君に託したところも素敵だと思いました。

いけだてつやさん

いけだてつやさん

 ○聖光学院の印象と全国での人気

 10年ぐらい前から、すごく強いチームが出てきたなという印象を持っています。ファンの中では東北地方で最初に優勝するのは仙台育英か聖光学院と言われていました。先に仙台育英が優勝(2022年夏)しましたけど、次に甲子園の優勝旗を狙える学校じゃないかというのがファンの中での印象ですね。

 ただ、僕自身、最初は誤解もありました。不眠不休で練習をしているとか、クマよけの鈴だけを持たされて山奥に連れていかれ、走って帰ってくるとか、そういう噂を聞いていたからです。実際、そういったトレーニングはしているようですが、詳しく聞くと、指導者の皆さんはしっかり選手に向き合い、安全面も考慮しながら指導していることが分かりました。

 聖光学院の選手たちは宿舎でのマナーも素晴らしく、甲子園球児たちのクリーニングを担当しているスタッフの方が「どこよりも聖光学院のユニフォームが綺麗」と言っているという話も聞きました。斎藤監督の教育方針が表れていると思います。野球がうまいだけでなく、社会的な礼儀も身につけさせる教育をされているところに惹かれます。

 また、地方の私立校なので全国から選手を集めているのかと思っていましたが、実際は斎藤監督の人柄に憧れて集まってくる選手が多いと聞きました。僕の理想とする学校教育像を実践しているのだと認識を改めました。

 人気は根強いと思います。連続出場(※聖光学院は2007年から2019年まで13年連続出場を果たした)は途切れましたが、やはり連続して甲子園に出ていることは刷り込まれてきます。僕の周りでは聖光学院のユニフォームを着ている子どもも結構います。毎年、春夏の大会をテレビで見て、いつも出てくるチームとして印象付けられていくんだと思います。

 ○聖光学院の強さをどう見るか

 圧倒的にメンタルが強いと思います。今年のチームも、昨年秋から今年夏にかけて半分以上が逆転勝ちです。甲子園では強い相手ばかりなので、逆転勝ちできる力は大きな強みです。

 聖光学院のメンタルの強さの秘訣を調べていくと、大嶋啓介さんという「てっぺん」という居酒屋グループを経営されていた方が、現在はメンタルトレーナーとして聖光学院を指導されていることが分かりました。「本気のじゃんけん」など、試合前にモチベーションを上げる方法を教えているそうです。高校野球は技術も大事ですが、メンタル面が非常に重要なスポーツだと思います。

 ○今年のチーム

 山梨学院も強いチームでしたが、聖光学院が勝つのでないかと予想していました。聖光学院は初戦の入りが強いイメージがありましたから。でも、山梨学院の菰田投手がものすごい成長を見せていました。聖光学院の良いところも見られましたが、山梨学院の打線のレベルが高かったですね。

 かみじょうさん、いけださんに共通していたのは、野球以外の教育の素晴らしさに着目していたこと。そこは本誌も常々感じていた。テレビだとボールの行方を中心に中継されるが、球場だとボールの行方以外のところも見える。現地観戦を続ける2人だからこその視点で、そういった部分がより目に付くのだろう。

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