新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んでいたインバウンド(訪日客)が回復している。観光庁が2月29日に公表した2023年の宿泊旅行統計調査によると、福島県内の「従業員10人以上の宿泊施設」を利用した外国人は延べ18万6160人に上り、過去最多となった。

観光庁は国内に宿泊する外国人の数を毎年集計しており、昨年1年間の調査の速報値で判明した。それまでの最多は、コロナ禍前の2019年で17万8810人だった。
観光庁が公表している「都道府県別外国人延べ宿泊者数(従業員10人以上の宿泊施設)推移表」から、震災・原発事故前の2010年から2023年前までの福島県の数値を以下に示す。
2010年 8万7170人
2011年 2万3990人
2012年 2万8840人
2013年 3万1300人
2014年 3万7150人
2015年 4万8090人
2016年 7万1270人
2017年 9万6290人
2018年 14万1350人
2019年 17万8810人
2020年 5万1180人
2021年 2万0390人
2022年 3万0950人
2023年 18万6160人
震災・原発事故が起きた2011年に大きく落ち込んだが、そこから年々回復し、18年には10万人の大台を超えた。しかし新型コロナの発生により、21、22年は震災直後の数値にまで落ち込んだ。風向きが変わったのは22年10月、外国人の個人旅行解禁や短期滞在のビザ取得が免除されるなど水際対策が緩和され、23年4月に入国制限が解除されたことだった。そこに円安が拍車をかけ、訪日客がどっと押し寄せる状態が続いている。
福島県内に宿泊する外国人の国籍はどうなっているのか。観光庁は調査に当たり21の国・地域に分けて集計しているが、2023年、最も多かったのは台湾9万1530人。次いでタイ1万9220人、中国1万4760人、米国6640人、香港6410人という順番だった。1位の台湾が2位のタイより4・7倍も多く、圧倒的多数を占める。
台湾は福島県にとって重点市場の一つになっている。2016年から現地窓口を設け、団体旅行誘致に向けたモデルルートの提案やSNSを通じた個人客への観光情報発信に注力してきた。今年に入ってからは、1月に福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便が4年ぶりに就航。就航後1カ月で20便が運航され、搭乗率は9割を超えた。定期チャーター便は10月末まで運航され、県はその間に定期便化を目指すという。
福島市内のホテルの従業員を取材すると「多い日は1日3台の大型バスで外国人客が宿泊する。福島空港だけでなく、隣県の空港からも県内を訪れている」。そう話す横では、台湾人の家族(※中国人だったかもしれないが、見分けがつかず……)がチェックアウトの手続きをする姿があった。別の日には猪苗代町のドラッグストアで、大型バスで乗り付けた台湾人が医薬品や化粧品を大量に購入している場面を目撃。駐車場には宇都宮ナンバーの大型バスが停まっていた。
県内にも確実に押し寄せているインバウンドの波。今後の課題は台湾からのリピーターを伸ばしつつ、他の国・地域からの訪日客をいかに増やすか、ということになる。