令和元年東日本台風に伴う水害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、その一環として、鏡石町、玉川村、矢吹町で阿武隈川遊水地整備事業が進められている。
総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収し、対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地となっている。それらの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村が60〜70戸、矢吹町が約20戸。
住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安が渦巻いている。
そのため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行ってきた。
本誌では今年4月号「遊水地で発生する〝ポツンと1軒家〟 取り残される世帯が議会に『陳情』」という記事をはじめ、何度か同特別委の調査・研究過程を紹介してきた。
同特別委は、6月14日に開かれた6月定例会本会議に「阿武隈川流域の治水対策を国と県に求める意見書」を提出し、採択された。これをもって、同特別委は解散となった、
意見書の主な内容(国・県への要望内容)は次の通り。
①遊水地事業区域の住民の高台移転のための支援。
②移転に伴い生じる各種法令・規制の見直しや手続きの簡素化。
③阿武隈川本川及び県管理支川の鈴川も含めた治水対策(特に、阿武隈川本川の河道掘削及び堤防強化)
④二度と水害(洪水被害・浸水被害)のないまちづくり・地域づくりを行うための支援。
⑤遊水地事業関連施設の整備。
⑥遊水地整備後の土地の有効利用のための支援。
これを内閣総理大臣、国土交通大臣、衆議院議長、参議院議長、県知事、県議会議長に提出する。
同特別委の委員長を務めた吉田孝司議員は、遊水地の対象地区である成田地区出身で、自宅が令和元年東日本台風で浸水被害を受けたほか、遊水地の対象エリアにもなっている。そのため、誰よりも熱心にこの問題に取り組んできた自負があるようだ。
同特別委での調査・研究を終えた吉田議員に話を聞いた。
「遊水地の問題は、完成するまでは土地買収や高台移転などの課題があり、完成後は平常時にそれをいかに有効活用するかなど、まだまだ課題が山積している。これで終わりではなく、まだ序の口にすぎない。また、最初から遊水地ありきではなく、まずは阿武隈川全川の河道掘削と堤防強化が大事で、それを踏まえての遊水地整備となるべきである。河道掘削と堤防強化を必ず先行させるべく、改選後も特別委員会を再度立ち上げ、引き続き、木賊正男町長を支えて、国としっかり対峙していきたい」
同町議の任期は9月3日までで、8月22日告示、27日投開票の日程で議員選挙が行われる。そのため、任期満了前の最後となる6月定例会で一区切りとし、改選後も特別委を再度立ち上げ、引き続き、調査・研究していきたいとの見解だ。
意見書にまとめた要望内容を実現させるまで、町・議会として、できることをしていく必要があろう。