郡山市の古山唯議員(41)=1期目=が、市議選で支援を受けた市民団体や所属するれいわ新選組のボランティア組織から議員辞職を迫られている。支援した人たちは「古山氏にウソをつかれた」「当選時の約束を破られた」とこぞって憤る。自身の境遇から子育てに悩む家庭の味方として当選した古山氏だったが、取材を進めると、数々の虚言と一貫性のない行動が浮かび上がってきた。 (佐藤仁)
当選直後に浮上した不倫、ネグレクト疑惑

古山氏は2023年8月6日に投開票された郡山市議選(定数38)にれいわ新選組公認、緑の党推薦で立候補。初挑戦ながら3325票を獲得し、47人中2番目の得票数で初当選を果たした。
それまで主婦だった無名の新人が躍進を遂げたのは、自身の境遇を広く訴えたことにあった。
選挙期間中に配られた古山氏のチラシにはこう書かれている。
《郡山に住んで17年。自閉スペクトラム症、ADHDを抱える子どもを含む、6人の子育て中》《子育てを「孤育て」にさせません。今度は私があなたをほっとかない!》
古山氏は長崎県内の高校を卒業。福島県出身の男性と結婚し、2006年頃に郡山市に移住したという。
主婦として6人の子育てをしていたが、チラシにもあるように障がいのある子を抱えていた。姉、男の子4人、妹といるうち、男の子全員に障がいがあるという。
そんな古山氏が、重度の障がいのある候補者を国会に送ったれいわ新選組の公認を受け「あなたをほっとかない!」と選挙に打って出れば、アナウンス効果は抜群。いわゆる同情票ではなく、純粋に「こういう人に市政で働いてもらいたい」と票を投じた人は多かったはずだ。
古山氏が躍進を果たしたもう一つの理由が市民団体「虹とみどりの会」(以下「虹みどり」と略)の後押しを受けたことだ
った。
「虹みどり」は緑の党の流れを汲み、長年、郡山市議会に議員を輩出してきたが、当時現職だった蛇石郁子氏が5期18年で引退することを表明し、後任を探していた。その選考過程で「虹みどり」会員でれいわ新選組のボランティアをしている人から古山氏を推す声があり、支援することを決定した。
古山氏は「虹みどり」の会員となり、蛇石氏は古山氏を連れて支持者を回り、自身の後継者と紹介した。蛇石氏は1800票から、多い時には3900票近く獲得し当選を重ねてきた。その後継者となれば、無名の新人でも当選の可能性が高まるのは当然だろう。
支援者たちは2位当選が決まった時、「こんなに上位で当選するとは想像もしなかった」と一様に驚いた。自身の境遇、れいわ新選組、「虹みどり」の相乗効果の大きさを物語る。
当選後、古山氏は市議会の一人会派「れいわ虹の会」で議員活動をスタートさせ、「虹みどり」は古山氏が①議会報告会や市民勉強会を開く②「虹みどり」に議員会費を支払う③「虹みどり」の活動に参画することを条件に議員活動をサポートすることを約束した。
ところが、任期が始まって2年も経たない今、古山氏は「虹みどり」から議員辞職を迫られている。「虹みどり」は4月7日に会見を開き、議員辞職を求める声明まで発表。さらに、れいわ新選組のボランティア組織も党本部に古山氏の除名を求めるなど、双方の関係性は市議選の熱量から一転、完全に冷え切っている。
一体、何があったのか。
「当選後、古山氏は離婚していたのです」
と話すのは、古山氏と議員をバトンタッチした蛇石氏だ。現在は「虹みどり」の事務局長を務める。
単なる離婚なら夫婦の問題と第三者が口を挟むことはなかったのかもしれない。だが、古山氏は離婚に付随して子ども4人を前夫に渡し、自分は2人だけ引き取った。しかも、その4人が全員、障がいのある男の子だったため、市議選で掲げた「障がいのある子を含む6人の母親」ではなくなったのである。
議員会費は迂回献金!?
「古山氏は市議選から5カ月後の2024年1月に離婚。私たちがそのことを知らされたのは同年2月末でした」(蛇石氏)
挙げ句、同年3月には古山氏が引き取った長女も前夫の元に戻ったため、現在、古山氏は末っ子の娘しか育てていないのだ。
「なぜこのタイミングで離婚したのか聞くと、古山氏は『夫と年金分割することを念頭に、年金受給額が増える婚姻年数15年になるのを待っていた』と説明しました」(同)
離婚は2024年1月だが「その2、3カ月前から別居していたようです」(同)というから、市議選の時には既に夫婦仲は悪かった可能性がある。そのことを黙って「障がいのある子を含む6人の母親」として当選し、直後に障がいのある子全員を前夫に引き取らせたとなれば「話が違う」となるのは当然だ。子どもたちを「選挙のダシ」に使った疑いも浮上してくる。
蛇石氏によると、議員になったあとの古山氏には、この他にも首を傾げる言動が度々見られたという。具体的には以下の通り。
▽「虹みどり」の事務所には古山氏の専用机が用意されていたが、そこで仕事や勉強をする姿を一度も見たことがない。各種研修案内を提示しても関心を示さず、勉強会にも一切参加しないなど総じて学ぶ姿勢が見えなかった。
▽当初は「虹みどり」運営委員会での討議や支援者の意見を参考に一般質問や討論を行っていたが、2024年に入ると岸田政権の「異次元の子育て支援策」を長々と引用し、それに沿った政策を市に求めたり、三原じゅん子・こども政策担当大臣の発言報道をもとに保育職員の処遇改善に関する質問をするなど「虹みどり」やれいわ新選組の考えとは異なる発言を繰り返した。
▽昨年9月に郡山市で開かれたれいわ新選組の山本太郎代表とのおしゃべり会で「私には議会での発言権がほぼない」「議会でいじめられまくっている」などと発言。山本代表は「れいわの議員だから攻められるんだ」と激励したが、蛇石氏らが発言の真意を尋ねると、古山氏は誇張した発言だったことを認めた。

▽市議になる前から、自分を支援してくれるママ友が複数いると話していたが、誰もその人たちに会ったことはなく、「ママ友が参加しやすい議会報告会を開いてはどうか」と提案しても一度も応じなかった。
▽議員として公表する住所を「攻撃される」との理由で2024年春に「虹みどり」の事務所に変更し、同年10月には「虹みどり」に連絡せずに市内のアパートに移した。
▽内容不明の「党務」と称する遠出を繰り返す一方、「土日は子育てに専念する」とうそぶき、昨年9月以降は議会報告会を開かず、勉強会にも参加せず、衆院選でも何ら役割を果たさなかった。
こうしたことが積み重なり、蛇石氏は次第に「議員に相応しくない」と思うようになった。
「古山氏は昨年10月以降、『虹みどり』に議員会費も納めなくなりました」(蛇石氏)
「虹みどり」の規約では、議員会費を月10万円、夏冬一時金を各15万円と定めている。郡山市議の月額報酬は60万円、夏冬のボーナスは計200万円。このほか1人当たり月10万円の政務活動費が支給される。「虹みどり」はこの議員会費を使って議会報告会や勉強会を開いたり、事務所費などに充てている。
「古山氏は議員会費を納めない理由を『れいわ新選組の事務局と代表に確認したところ、限りなくグレーに近い黒、迂回献金になると言われた』と説明したのです。もちろん法的に問題はなく、私をはじめ歴代の議員はみんな納めてきました」(同)
昨年10月には「虹みどり」の郵便ポストに突然、事務所のカギと送金用の郵貯カードが入った封筒が投げ込まれた。同会を「退会する」と綴った古山氏の手紙も同封されていた。
一切の連絡も話し合いもなく、非礼なやり方で一方的に退会するのは議員以前に一社会人としてあり得ない――蛇石氏ら「虹みどり」関係者の怒りは頂点に達した。
その後、「虹みどり」が退会をめぐり古山氏と文書でやりとりすると、古山氏は議員会費を迂回献金とした件など同会の質問にことごとく「撤回させていただきます」「お詫び申し上げます」と回答した。

「4月7日には会見を開き、古山氏を議員に相応しくないとする声明を発表し、議員辞職を求めました。中には『そこまでする必要はないんじゃないか』と言う人もいました。しかし、このようなデタラメな言動をする人物がこのまま議員を続け、高額な議員報酬や政務活動費を受け取ることを私たちは許容できない。何より古山氏を郡山市議会に送り出した自らの不明を恥じ、市民の皆様に深くお詫びしたい」(同)
詐欺に等しい謳い文句
読者の中には、蛇石氏の話を聞いて「しょせんコップの中の争い」と受け取る人もいるかもしれない。しかし、古山氏の裏の顔を知れば、そのような考えは吹き飛ぶはずだ。
「離婚現場に立ち会わされ、散々な目に遭いました」
こう話すのは、本宮市在住の土木建築会社社長・有川綾一氏。有川氏は2023年7月に行われた本宮市議選(定数20)にれいわ新選組公認で立候補し(結果は落選)、古山氏の選挙を手伝うなど、数年前から古山氏と交流を持っている。
「昨年1月4日、古山氏の自宅に招かれ、妻と出掛けました。古山氏の夫も交えて4人で話していたのですが、いきなり古山氏が私たち夫婦の目の前で夫に離婚届を突き付けたのです」(有川氏)
思わぬ形で離婚の立会人をさせられた有川氏だったが、実はこの時、古山氏には彼氏がいたという。
「いわきの男で、車関係の仕事をしています。私は『立場を考え、夫との関係を清算するまで会うべきではない』と何度も忠告したが、古山氏は聞き入れませんでした」(同)
現職議員の不倫という衝撃発言。有川氏は続ける。
「離婚話に立ち会わされてから数日後、古山氏から『身の危険を感じるので泊まらせてほしい』と連絡がありました。古山氏は娘2人を連れて3週間ほど、私の家に身を寄せました」(同)
驚くのはその際、彼氏も有川氏の家を度々訪問していたことだ。
「非常識なのは分かっていたが、私は古山氏から『夫からDVを受けている』『子育てを全然してくれない』と聞かされていたので、仕方ないかなと思って」(同)
この時点では古山氏を擁護する気持ちがまだあった有川氏だが、2024年9月に行われたいわき市議選を境に古山氏との関係が悪化する。
「れいわ新選組から公認される予定だった平木恒男氏(結局無所属で立候補)の選挙を手伝うため、私と古山氏は連日いわきに入った。選対本部長を務めたのは古山氏の彼氏。ところが選挙期間中、彼氏はいつも事務所におらず、呼び出すと日中なのに酒臭い。古山氏も頼んだチラシの証紙張りやポスター張りを全くやらない。おそらく二人は一緒にいたんだと思います。おかげでチラシは1000枚、ポスターは60枚も余った。挙げ句、古山氏は『平木氏は当選できない』と陰口を叩いていた。こういう非常識な人とはもう付き合えないと思いました」(同)
有川氏によると、古山氏の一般質問は平木氏が原案をつくることもあったというから、古山氏は恩を仇で返した格好だ。
「『虹みどり』にお金(議員会費)を払いたくないと言っていたし、一般質問も自由にやらせてもらえないとこぼしていました。それを聞いて、私は『虹みどり』は酷い組織だとずっと思っていました」(同)
だが、あとから「虹みどり」で起きた数々のトラブルを知り、蛇石氏から直接話を聞いて古山氏がウソをついていたことが分かる。議員会費を迂回献金の恐れがあると言って納めなかったのもおそらくウソで「全額生活費にしたかったんだと思います」(同)。さらに古山氏の「夫からのDV」「子育てをしない」発言も、有川氏はウソと確信した。
「DVをする夫が障がいのある4人の子を全員引き取るとは思えないし、長女はいったん古山氏について行ったのに、すぐに前夫の元に戻ったことが古山氏のウソを物語っています」(同)
DVをめぐっては「虹みどり」の声明に気になる記述もある。
《古山氏が子どもを虐待していたとの告発が各方面から当会に届き》
蛇石氏に聞くと、極めてセンシティブな問題として「詳細は言えないが、情報が届いているのは事実」と語るのみ。代わりに「虹みどり」の中路良一副代表が実際に目撃した出来事を話してくれた。
「引き取った長女の転校の手続きを済ませたのに、すぐに前夫の元に戻ったことに腹を立て、私の目の前で『クソッ、行っちまったよ!』と大声を上げたのです。酷い言葉遣いに思わずドン引きしました」
選挙事務所や「虹みどり」の事務所で古山氏の子どもたちにお菓子を与えた際には一心不乱に食べる姿を目撃し「ちゃんと食事を与えているのかな」と心配になったとも言う。
前出・有川氏も証言する。
「私の家に3週間泊まった時、下の娘に向かって『テメー、この野郎!』と怒鳴っているのを何度か聞いた。学童で下の娘の体にアザが見つかり、どうしたの?と聞いたら『お母さんのスマホが当たった』と答えたこともあったそうです」
蛇石氏はセンシティブと言葉を濁したが、ネグレクトの疑いも浮上してくる。不倫だけでもイメージダウンなのにネグレクトとなれば「障がいのある子を含む6人の母親」の謳い文句は、もはや詐欺に等しい。
党本部に除名処分を要求
こうした状況を看過できないと、県内のれいわ新選組のボランティア組織「チームふくしま」や「県れいわオーナーズ有志」は今年1月、山本太郎代表宛てに古山氏の除名処分と議員辞職勧告を求める文書を立て続けに送ったが「事務局のガバナンスが機能しておらず、山本代表まで文書が届いていないらしい」(有川氏)。ただ、ボランティア組織は今後も除名と議員辞職を求め、古山氏を支援する考えは一切ないとしている。
四面楚歌の古山氏に取材を申し込むと、面会を拒まれ、電話で次のように述べた。
「私は支援してくれた方のためにも職務を全うするだけと考えています。いろいろと伝聞で話す方もいるようですが、それが真実とは限りません。ただ、人の口に戸は立てられないので、私から何か対応するつもりもありません。私が反論して家族に迷惑がかかっても困るので」
疑い出すとキリがないが、念のため古山氏の政務活動費の使途を確認すると、会報の印刷費などに充てられ、不審なものを購入したり、ガソリン代などに支出した形跡はなかった。ただ公開された使途は2023年9月から2024年3月分なので、同年4月以降が公表されたらあらためてチェックする必要がある。
「虹みどり」は古山氏のいい加減な議員活動で、長年維持してきた議席が無いものとなった。議員会費も納入されないため、議会報告会や勉強会を開けずにいる。このままでは会の存続も難しくなる懸念がある。一方、れいわ新選組のボランティア組織も、せっかく誕生した地方議員が不適切な言動を繰り返していることに憤りと落胆を滲ませている。
古山氏は「支援してくれた方のために職務を全うする」「家族に迷惑がかかる」と言ったが、一番の支援者たちを裏切り、家族に迷惑をかけている現状をどう思うのか。