【郡山国道事務所】松原陽一所長インタビュー(2024年)

【郡山国道事務所】松原陽一所長インタビュー

まつばら・よういち 1967年6月生まれ。北海道出身。函館工業高等専門学校卒。東北地方整備局道路部道路計画第二課長などを歴任し、今年4月から現職。

 福島県を南北に走る国道4号、浜通りと会津地方をつなぐ国道49号など、県内主要幹線道路の維持・管理を担っているのが郡山国道事務所だ。車社会の本県において、走行しやすい道路の整備、渋滞の解消、災害リスクの軽減などは重要な課題だが、同事務所ではどのように対応していくのか。同事務所の松原陽一所長に話を聞いた。

 ──まずは郡山国道事務所の管轄エリアと、主な事業について教えてください。

 「郡山国道事務所は、国道4号の郡山市から栃木県境まで、国道49号の平田村から新潟県境まで、全体で約190㌔の維持・管理が主な業務です。郡山市は管内のなかでも交通の要衝であり、県内の国道4号では交通量が一番多いです。主要幹線交通のサービスレベルを保つことは我々に課せられた大きな使命であり、線形が悪かったり道幅が狭かったり勾配がきつい難所での安全・安心なサービスの確保に向けて、事業に取り組んでいます。

 ほかにも、国道121号会津縦貫南道路の整備も直轄権限代行事業として、湯野上バイパス整備事業を進めています」

 ──「ふくしま復興再生道路」の一環として整備されていた吉間田滝根線の広瀬工区が開通しました。開通によりどのような整備効果が見込めるのでしょうか。

 「いわき市川前町を起点、あぶくま高原道路小野ICと接続する小野町大字小戸神を終点とする延長9・2㌔の区間です。国と県が共同で事業に取り組み、トンネルや橋梁工事のある区間は直轄権限代行事業として当事務所が工事を進めてきました。

 原発事故以降、川内村の方々が平田村や小野町への生活必需品の買い出しや通院を余儀なくされ、需要が高まった区間ですが、元々線形が悪く通行規制区間もあるうえ、法面の崩落や積雪による通行止めなど、多くの難所を抱えていました。整備の大きな目的は川内村にお住まいの方々のアクセス向上で、浜通りと中通りを連絡する道路としても大きな役割を果たしていると考えています。

 また、あぶくま高原道路と接続しているので、新白河駅へのアクセス向上や東北自動車道への接続など、相双地域の広域交通の拡大にも貢献していると考えています。

 今回広瀬工区が開通したことで、公立小野町地方綜合病院までの搬送時間が以前より約8分短縮され、患者さんの救命率の向上につながり、安静搬送による負担軽減も期待されています。

 震災後は川内村から小野町地方綜合病院への外来・入院患者数が大きく増加しているので、搬送時間の短縮を実現できたことは非常に有意義なものと考えています」

 ──国道121号湯野上バイパス整備事業について、2025年度の開通予定が延期となりました。この間の経緯と今後の見通しはいかがでしょうか。

 「区間内にある2~4号までのトンネルのうち、現在は2号トンネルの工事が進められています。3号トンネルは貫通済みであり、4号トンネルは昨年工事着手を検討していたところ、内部に重金属を含む土が確認され、受け入れ先の目途も立っていなかったため、ひとまず開通予定を取り下げさせていただきました。

 現在は受け入れ先の目途が立ち4号トンネル工事着手に向け発注手続きに入っています。工事中の2号トンネル内は岩盤が軟らかく、そのまま掘り進むと『変状』が発生する可能性があります。

 その対策を検討しつつ、4号トンネルでも変状が発生する可能性を見極めながらあらためて開通予定の見通しを立てていく考えです」

 ──国道49号会津防災事業の整備効果についてうかがいます。

 「管内の新潟県境までのエリアには急勾配が多く、落石や崩落、積雪時のスタックなど、災害などで影響を受けやすい区間です。そうした区間にトンネルを設け、安心・安全に走行できるようにしようというのが会津防災事業の取り組みです。

 2010年12月25日には磐越自動車道が通行止めとなり、国道49号に多くの車が流入、さらに大雪の影響で大型車がスタックし、滞留した事例がありました。こうした経験も踏まえて会津防災事業が開始されました。

 トンネル整備によって冬期間の安全・安心を確保し、安定した走行を可能にするのに加え、土砂災害などの災害時にも影響を受けないほか、緊急時の輸送道路としての役割を果たすものと期待されています」

国道4号全線4車線化へ

 ──国道4号では県南地域を中心に渋滞個所が目立っていますが、解消に向けた対策や事業をどのように進めているのでしょうか。

 「管内の国道4号は大部分で4車線化が進んでいますが、県南地域では2車線の個所があり、交通の需給バランスが取れていないので、解消に向けて全線4車線化を進めていく必要があります。

 現時点では郡山市、須賀川市、鏡石町と白河市内の一部区間で4車線化が完了していますが、白河市から矢吹町の間は2車線のままです。現在『矢吹鏡石道路』として鏡石町から矢吹町までの区間の4車線化を進めています。

 地元の皆さんの意見を踏まえた道路設計とするため、都市計画変更の手続きを進めています。その後は用地買収を進めていく流れとなっており、現時点では地権者との協議を進める前段階まで来ています。いずれにせよ、管内の国道4号の全線4車線化を待望する声は多いので、早期実現に向けて着実に取り組んでいきます」

 ──今後の重点事業について。

 「これまでお話ししてきた事業に加え、橋梁やトンネルなどの構造物の老朽化対策・メンテナンスも重点事業に掲げています。法律では5年に一度点検し、異常や悪い部分が見つかったら5年以内に直すと定められており、今後も適切な維持・管理に努めていきます。また、防災点検で崩落の可能性が高い法面や落石の懸念がある個所についてもしっかり対策を講じていきます。

 ソフト面の話では、県内に道の駅が増えてきており、これまでも国道と駐車場を一体的に整備するという取り組みを進めてきましたが、今後はより道の駅を高度化していけるように関係各所と協議していきます。

 たとえば、猪苗代町の道の駅猪苗代は県内で唯一の『防災道の駅』に指定されており、防災能力を高めるため関係機関が連携し『地域創生推進協議会』を設立しています。同協議会のもとで採用されたのがトイレやシャワーなどの機能を備えた高機能コンテナで、寝泊まりできることから能登半島地震でも活用され、国土交通省の社会実験の一環として支援しています」

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