福島県の保健・医療・福祉行政を司る保健福祉部。新型コロナは落ち着きつつあるが、引き続き様々な感染症に備える必要がある。医療費の適正化や県民の健康づくり、医療・介護人材の確保など取り組むべき課題も多い。こうした諸々に保健福祉部はどう向き合い、対応していくのか。今年4月に就任した三浦爾部長にインタビューした。
――新型コロナをはじめとした感染症の県内の状況について。
「新型コロナウイルスについては、今年の夏は昨年よりも流行規模が小さいもののお盆の時期をピークに流行が見られました。例年12月頃から流行が見られるため今年の冬も注意が必要です。新型コロナウイルス感染症以外では、昨年はインフルエンザが約5年ぶりに県内で警報レベルとなりました。その他、RSウイルス感染症をはじめとする呼吸器感染症や手足口病などの報告数の増加も見られ、県民の皆様に対し、あらためて感染症対策に関する情報発信に取り組んできたところです。
これから冬にかけて呼吸器感染症が流行する時期となりますので、普段と体調が異なる場合には登校や出勤を控えるなど体調管理に留意するとともに、場面に応じたマスクの着用や換気、手洗い、咳エチケットなどの基本的な感染症対策をお願いします。また、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、新たな感染症危機に備えた対策が求められています。県といたしましては、医療提供体制の確保や、感染症に対応できる人材を育成する訓練・研修の実施など、関係機関と連携しながら平時からの備えを進めてまいります」
――今年度から2029年度までを計画期間とする「第4期福島県医療費適正化計画」が始まりました。
「第4期福島県医療費適正化計画は『福島県総合計画』の部門別計画である『福島県保健医療福祉復興ビジョン』のもとに策定される個別計画で、本県の医療費適正化の基本となるものです。計画期間を令和6~11年度の6年間とし、『県民の健康の保持の推進』と『医療の効率的な提供の推進』に関する目標や、その目標を達成するための具体的な方策を示す計画となっています。
『県民の健康の保持の推進』については、若いうちからの生活習慣病対策が医療費適正化の観点からも重要になります。また、高齢者の心身機能の低下に起因した疾病予防も重要と考えています。『医療の効率的な提供の推進』については、限られた医療資源の有効活用が課題であり、医薬品の適正使用の推進や医療・介護の連携を進めていく必要があります。このような課題に対し『第3次健康ふくしま21計画』や『第8次医療計画』などと調和を図りながら医療費適正化を進めてまいります。医療費適正化計画の実行を通じて、県民生活の質の維持・向上と合わせて、今後の医療費の過度の増大を抑えながら、持続可能な医療提供体制を確保してまいります」
――健康寿命の延伸に向けた取り組みについて。
「『第三次健康ふくしま21計画』は『誰もがすこやかにいきいきと活躍できる笑顔あふれる健康長寿ふくしまの実現』に向け、『健康寿命の延伸と健康格差の縮小』を目指す羅針盤です。本計画では『みんなでチャレンジ! 減塩・禁煙・脱肥満』の重点スローガンを掲げ、県民一人ひとりの生活習慣の改善や生活習慣病の発症予防等の取り組みを展開することとしています。
一つ目の減塩は『ふくしまおいしく減塩緊急対策事業』を進めており、市町村や食品関連企業等と減塩に関するネットワーク会議による推進体制の強化やスーパーと連携したモデル事業等により、自然に健康になれる食環境整備を進めています。二つ目の禁煙は『たばこの健康影響対策事業』を進めており、市町村や関係団体と連携しながら、幅広い世代への普及啓発をはじめとした禁煙及び受動喫煙防止対策を推進しています。三つ目の脱肥満は『ふくしま脱メタボプロジェクト事業』として、スローガンロゴを作成し、市町村や企業等で活用いただくとともに、生活習慣病発症リスクの高まる働き盛り世代に民間企業プログラムを活用したメタボ改善の取り組みや、ふくしま健民アプリを活用したキャンペーン等を実施しています」
――介護施設の人材不足について。
「介護人材の確保に当たっては、若い世代の介護への関心と理解を促す取り組みが重要であることから、親子を対象とした参加型イベントを夏休み期間中に開催するとともに、若手介護職員と高校生との交流会等を開催するなど、イメージアップに関する取り組みに力を入れています。
また、県内各地での就職説明会や施設見学会などによりマッチングを支援し、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』や、優れた介護職員及び労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』などの人材定着支援にも取り組んでいます。さらに、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座を実施したり、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与、介護職員初任者研修を県内各地で実施するなど、今後も様々な取り組みを行ってまいります」
――県保健福祉部として国に求めたいことは。
「2040年頃に高齢者人口がピークを迎える一方、2025年以降、生産年齢人口はさらに減少が加速すると見込まれる中、これから生まれる将来世代も含めた全世代の安心を保障する持続可能な医療・介護提供体制の構築に向け、着実に取り組みを進めていく必要があります。
このため国に対しては、新たな地域医療構想について、実務を担う都道府県の意見を反映しながら、中長期的課題や制度的対応を十分に検討し、ガイドライン等を早期に発出するとともに、構想の推進に当たっては、技術的・財政的支援を行っていただきたいと考えております。
また、医師偏在対策について、地方において安定的・継続的な医師確保が行われるよう、医師偏在対策の検討に当たっては国が地方との協議をしっかり行い、地方の実情を十分に認識した上で、真に実効性のある医師偏在・確保対策を行っていただきたいと考えております。
さらに、介護人材の処遇改善について、人材確保に資する確実な収入の引き上げにつながるよう、介護報酬における処遇改善加算の効果を検証し、適切に制度設計するなど、介護事業所で働く全ての従事者のさらなる処遇改善を図っていただきたいと考えております」
――今後の抱負を。
「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、県民の皆さんをはじめ関係機関の方々とも連携を図りながら、全力で取り組んでまいります」