【楢葉町】松本幸英町長インタビュー(2024.7月)

【楢葉町】松本幸英町長インタビュー(2024.7月)

経歴

まつもと・ゆきえい 1960年12月生まれ。県立四倉高卒。1997年から楢葉町議4期、その間議長を2期務める。2012年4月の町長選で初当選し、今年4月に行われた町長選で4選を果たした。

 ――4月に行われた町長選で無投票で4選を果たしました。

 「今回の当選にあたり、町民の皆様の深いご理解・ご協力を賜りましたことを心より御礼を申し上げます。無投票とはいえ、私に対して『もう一度町政を任せてもいいだろう』という皆様の想いを賜ったものだと感じており、改めて気を引き締め4期目に臨ませていただきます。13年前の混沌とした状況から皆で立ち上がり、町民や有識者の方々と共に創り上げた復興計画に想い描いてきた町の絵姿が現実のものとなりつつあり、非常に感慨深い気持ちです。国が定めた復興創成期も残すところ2年となり、本格的な地域振興策へ移行していくためにも、しっかりと『復興』をまとめ上げていかなくてはならない大切な時期に入ったと感じており、今一度初心に返ったつもりで、この重責を果たしていきます」

 ――移住・定住施策を積極的に進めています。

 「移住窓口『コドウ』や地域活動拠点施設『まぜらっせ』が活用され、今年度から『コドウ』を拠点とする企業人の増加により、移住促進チームの拠点を『まぜらっせ』内に移転するなど、喜ばしい事案にもなりました。引き続き移住者と地元の皆様が互いに手を携え、新たなコミュニティーが構築されるような仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えています」

 ――昨年9月から「楢葉町住みますレスラー」として「DDTプロレスリング」の小嶋斗偉選手が町民と交流を図りながら町の情報発信を行っています。

 「DDTプロレスリングと連携した広報活動では、イベントの開催を通して町内外に向けて楢葉町の周知を図ることができました。今年度もプロレス団体と連携した広報活動など、様々な情報発信を行い、移住先として楢葉町が選ばれるまちとなるよう、引き続き移住施策と絡めながら推進していきます」

 ――全国高等学校総合体育大会のサッカー男子競技がJヴィレッジでの固定開催となりました。

 「7月26日にJヴィレッジにて開会式を行い27・28日に試合が行われます。大会に向け改修した楢葉町多目的運動場(旧楢葉町陸上競技場)でも試合が予定されています。全国の高校サッカー選手とそのご家族や関係者にご来町いただくことになります。町としても当地域ならではのおもてなしや催しを検討しており、スポーツ振興事業を観光業と上手く連携させ、幅広いPRを実施することで町内産業全体へのより良い影響を期待しています」

 ――農業面ではサツマイモ(甘藷)などの6次化商品開発に取り組んでいますが、企業誘致を含めた産業振興面の状況はいかがでしょうか。

 「甘藷栽培は順調に取り組みを進めており生産指導、機械化による省力化、日本最大級の貯蔵施設整備、地元生産部会の設立等、甘藷の一大産地化を目指し年々生産者や栽培面積が拡大しています。また、震災前から町の特産としてきたユズの再生に向けた取り組みも進めています。これら地元農産物を活用し、付加価値の高い特産品開発、商品化を進め、生産から処理・加工、さらには販売へと一体的な流れを構築する6次産業化への取り組みを進めるために、昨年4月に『楢葉町特産品開発センター』が稼働しました。『楢葉町の干し芋』『感謝のゆずポン酢』などの特産品が着々と開発・販売され、協力企業や学生らのご尽力も賜りスイーツ開発にも継続的に取り組みながら広域的な販売活動を進めています。6次産業化への取り組みで町の魅力を発信することはもとより、そこで得た収益の一部を生産農家に還元する仕組みを構築し、生産農家を安定的にサポートする体制を実施しながら持続的な農業モデルの構築を進めていきたいと考えています。

 企業誘致の面では、大震災以降全国トップクラスの補助・支援メニューが創設され、被災地再興の後押しとなったものの、コロナの影響で思うように誘致活動ができない状況が続き、昨今の補助率の見直しや支援制度の縮小等により、進出を見送る企業が増加しています。また、雇用面では働き手不足が深刻化してきており、地元の経済団体と連携し真に企業が求める雇用対策に着手しました。一方、町内2つの産業・工業団地の入居率は約8割となっており新規参入の計画においても数社からの引き合いをいただいています」

主要施策3本柱

 ――町民の健康増進等のため「サライエ企画」と包括的連携協定を結びました。

 「町では『100歳まで自分の足で歩ききる身体づくり』を健康増進事業の重点テーマに、町民自ら取り組む健康づくりを支援しています。中でも『体操』は気軽に始められ、体力づくりやフレイル予防に効果が期待できるものとして、イベントでの普及やウオーキング教室での指導を行ってきました。今回デューク更家先生考案の『ぴんしゃん元気体操』を町公認体操とし、既存の町内イベント等での健康増進コンテンツとして織り交ぜていく予定です。現在は役場での朝礼時に先行的に職員主導で実施しています。先生と町民との直接的な交流の場はまだ実現できていませんが、皆さんが笑顔になり健康寿命も延伸できるような機会を創出していきたいと思っています」

 ――今年度の重点施策について。

 「主要施策3本柱の『農業の再生』、『魅力ある教育』、『健康増進とスポーツ振興』を幅広く展開し、それぞれをバランス良く推し進めることで総体的に効力を高め、町全体としての魅力が向上するような政策を進めていきます。一見ゴールが違って見えるこの3本柱ですが、それぞれ相互扶助の関係にあります。例えば今年度からJヴィレッジを中心に固定開催が決定しているインターハイのサッカー男子競技は『健康増進とスポーツ振興』事業の一部ですが、全国から来町くださる皆様に町スポーツ施設のみならず干し芋やゆずポン酢をPRすることで販路拡大へのきっかけを創出し、生産農家への還元率を高めることができれば『農業の再生』にもつながります。この3本柱は様々な目的へとつながる可能性を持ち合わせており、その全てが町の魅力の底上げや町民、住民の幸せな暮らしに繋がればとの想いが込められています」

 ――今後の抱負。

 「震災・原発事故からこれまでに幾度となく困難に直面し難しい決断を強いられてきましたが、今の楢葉町が存立しているのはそうした局面での町民一人ひとりの決断によるものと感じています。町に戻られた方も避難先で生活を再建された方も、それぞれの皆様に対し心からの労いとご功労に対する御礼を申し上げたいと思います。皆様の期待や想いをしっかりと胸に刻み気持ちを新たに町政運営に努めていきます」

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