議員辞職勧告を決議された佐藤栄治市議の言い分

議員辞職勧告を決議された佐藤栄治市議の言い分

 伊達市6月定例会議の最終本会議が同月28日に開かれ、過去の一般質問で事実と異なる不適切な発言をしたとして、佐藤栄治市議(60)に対する議員辞職勧告決議を賛成多数で可決した。同市議会で議員辞職勧告決議案が提出されたのは初めて。ただ、決議には法的拘束力はないので、佐藤市議は辞職しなければならないわけではない。

 佐藤氏は1962(昭和37)年生まれ。保原高、福島大経済学部卒。実家は建設関連業の三共商事。本人の話によると、第一勧業銀行に入行後、元衆院議員・元岡山市長の萩原誠司氏の秘書を務めた。髙橋一由市議が伊達市長選に立候補した際には事務局長を務めている。昨年4月の市議選(定数22)で629票を獲得、22位で再選を果たした。

 この問題については本誌3月号でリポートした。当時公開されていない情報も多かったので、あらためて報道などを基に経緯を紹介する。

 佐藤市議は昨年12月定例会議の一般質問で、同市梁川町のやながわ工業団地に建設中のバイオマス発電所について言及した。重さ20㌧超の大型特殊車両が何台も通ることが予想される中、国見町担当者が「補修中の徳江大橋の通行を20㌧以下に制限する予定だ」と話していたことを明かしたうえで、「市は通行規制しなくていいのか」と対応を問うた。国土交通省福島河川国道事務所の担当者に聞いた話も併せて紹介した。

 閉会後、市からの申し入れを受け、市議会が政治倫理審査会を設置。計11回の審査会が開かれ、国見町役場総務課長や福島河川国道事務所担当者に聞き取り調査が行われたが、佐藤市議の発言について、「そのような事実はない」との回答だったという。

 同審査会では過去の市議会一般質問での不適切な言動も検証し、市民にも聞き取り調査したが、厳しい意見が出たようだ。本誌3月号では、過去の不適切言動を紹介したほか、▽企業などに神出鬼没で現れることに戸惑いの声が上がっていること、▽業者を引き連れて市役所に行くなど、危うい言動が見られること――を紹介したが、同審査会でもそのあたりが問題視されたようだ。

 審査の結果、「虚偽の事実・誹謗中傷の発言、情報発信で他人の名誉を毀損しない」ことを定めた伊達市議会議員政治倫理条例に抵触するとされ、議員辞職勧告決議案が議員から提出された。その結果、市議22人のうち、菅野喜明議長、当日欠席した佐藤市議と高橋市議を除く18人が賛成し、佐藤市議と同じ会派の半澤隆市議のみが反対。賛成多数で可決された。

 同審査会では佐藤市議に弁明書の提出を求めたが、指定された期日までに提出されなかった。本人は今回の審査結果をどう受け止めているのか。同市保原町の自宅を訪ねたところ、佐藤市議はこうコメントした。

 「議員辞職勧告には法的拘束力がない。親密な新聞記者には『議員辞職勧告は名誉棄損に当たるという判例が残っている。議員や地元紙、政経東北に対し、裁判を提起したらどうか。社を挙げて支援します』と言われた。今後も議員活動は継続するし、バイオマス発電所の問題点を引き続き追及していきたい。現在は伊達市が温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づき、温室効果ガス削減を目指している中、ログ社がバイオマス発電所を建設しCO2を排出しようとする矛盾について、調査しているところです」

 議員辞職勧告などどこ吹く風で、逆に同僚議員やマスコミに対し〝宣戦布告〟して見せた。相変わらず地元から良い評判は聞こえてこないが、今後も我が道を歩んでいくのだろう。

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