「第77回春季東北地区高等学校野球福島県大会」が5月16日から25日まで、あいづ球場、白河グリーンスタジアム、ならは球場で行われ、聖光学院が5年連続の優勝を果たした。準優勝の学法石川とともに、6月10日から山形県で行われる東北大会に出場する。
春季大会は、秋季大会や夏の大会と違い、全国大会(甲子園)に直結する大会ではない。そのため、最後の夏の大会に向けて、いろいろな選手や戦術を試したり、「調整の場」といった意味合いが強いため、評価が難しい。そんな中でも、自力で勝る聖光学院が隙なく勝ち上がったと言えるだろう。
聖光学院は昨年の秋季県大会で優勝し、秋季東北大会でも頂点に立った。東北チャンピオンとして出場したセンバツではベスト8まで勝ち進んだ。「日本一」を目標に掲げ、県内では頭1つ抜けた存在と言える。
一方で、センバツでは課題も見えた。エースの大嶋哲平投手は球速こそ驚くようなものではないが、左投げの変則的なフォームから繰り出される角度のあるボールは全国大会でも十分通用することを証明した。
大嶋投手はセンバツ1回戦の常葉大菊川(静岡県)戦で9回まで無失点に抑え、延長10回123球を投げ、2番手ピッチャーにスイッチした。試合は延長タイブレークの末、4―3で勝利した。
そこから2日空いた2回戦の早稲田実業(東京都)戦では9回を1人で投げ抜き144球を投じた。試合は7―4で勝利した。
準々決勝は2回戦の翌日で、対戦相手は浦和実業(埼玉県)。高校野球では「1週間500球」という球数制限があり、大嶋投手は1回戦と2回戦の4日間(空き日を含む)で267球を投げていた。準々決勝も投げるとなると、5日で400球ほどになることが予想された。何より前日からの連投になる。そんなこともあってか、準々決勝では大嶋投手は先発しなかった。
試合は中盤5回までに4失点し、1―4でリードを許す展開。6回にホームランで同点に追いつき、7回途中から大嶋投手が登板した。そのまま延長タイブークに入り、延長10回に8点を奪われ、4―12で敗れた。
この試合を見て感じたのは、勝ち上がっていけば、エースの大嶋投手が投げられない(休ませたい)試合はどうしても出てくるから、2番手以下の投手をいかに育てるかということだった。夏の大会になれば、センバツよりも、さらにそれが重要になる。たとえ同じ球数でも、センバツ(春)で投げるのと、夏の大会では疲労感が全然違うからだ。
その点で言うと、春季県大会では大嶋投手の先発は一度もなく、リリーフで投げただけだった。2番手以下の投手の力を見定める、あるいは成長を促すという意味では、実りのある大会だったと言えよう。
6月10日から行われる東北大会では、東北他県の上位チームと試合ができ、さらにレベルの高いチームを相手にすることになる。そこで、2番手以下の投手のさらなる成長が見込めれば、今後に向けて楽しみが広がる。