白河市の北野唯道議員(84)=5期=が起こしたストーカー・パワハラ行為が議会を混乱させている。
既婚の女性職員に個人的な手紙やプレゼントを渡したり、自宅を訪問したり(※これらは女性職員から相談を受けた白河署が、ストーカー規制法に基づき北野氏に指導していたことが判明)、議会事務局長の指示で仕事をしていた職員を大声で怒鳴り付けたり、脅しとも受け取れる発言を繰り返した北野氏。政治倫理審査会(委員長・石名国光議員)の調査で明らかになったこれらの言動について、議会は4月に開いた臨時会で北野氏に対する辞職勧告決議を全会一致で可決した。
一方、北野氏は政治倫理審査会が二度設けた弁明の場を体調不良を理由に欠席。辞職勧告については応じない構えを見せた。
このころ、北野氏は議会を欠席する状態が続いていたが、辞職勧告を受けて開かれる6月定例会には初日(6月13日)から出席する意向を示した。今定例会はハラスメント防止条例の制定に向け、特別委員会が設置されることになっていた。そんな重要な場に北野氏が久しぶりに姿を現すとなったから、初日の議場には大勢のメディアが駆け付けた。
しかし、6月定例会は冒頭から思わぬ混乱を見せる。突然、筒井孝充議長(67)=7期=が「ハラスメント問題への対応について責任を取りたい」と議長を辞任したのだ。
メディアの取材に筒井氏は「私が議長を務めることで、同じ混乱の繰り返しになる。新たな議長の下で今後の運営をお願いしたい」(福島民友6月14日付)と述べたが、辞職勧告決議には法的拘束力がないため、もし北野氏が議員辞職しなかったとしても、それは本人が判断することなので、筒井氏の責任ではない。にもかかわらず、なぜ筒井氏は議長を辞任したのか。
「筒井氏はハラスメント問題をずっと放置していたのです」と語るのは熱心な議会ウオッチャーだ。
「昨年12月に北野氏のハラスメント行為が表面化しても、筒井氏は『個人の問題』としか捉えなかった。今年に入り被害を受けた女性職員の夫に強く抗議されるなどして、ようやく事の重大さに気付いたのです」
ところが、それでも筒井氏の対応は鈍かった。背景には「オレはいつでも北野をコントロールできる」という自惚れがあった。
「昨年7月に行われた市議選後、筒井氏は所属する市議会会派『先進しらかわ』に北野氏を迎え入れた。理由は直後に控えていた議長選で自分が当選するため、1票でも多く上積みを狙ったからです。結果、筒井氏は念願叶い議長に就いたが、その後、北野氏によるハラスメント行為が発覚。周囲から『北野を何とかしろ』と言われても『ま、そのうち言い聞かせるよ』くらいにしか受け止めなかった」
その後、鈴木和夫市長からも「何とかしろ」と迫られ、慌てだした筒井氏。しかし、4月に辞職勧告決議が可決されたころには、複数の議員から「議長不信任案を出す」と告げられていた。
「要するに6月定例会初日に議長を辞任したのは、不信任が議決されるのを恐れたからです」(同)
混乱の元となった北野氏は、本誌の取材に「ハラスメントは記憶にない。当時、風邪薬の濫用による副作用で記銘力が低下していたことは議会に提出した診断書にも明記されている。病気で政治倫理審査会を欠席すると伝えたのに辞職勧告を議決され、納得がいかない。同審査会の石名委員長ほか委員5名と筒井氏に対しては、6月上旬に白河署に告訴状を出した」とコメント。騒動は長期化の様相を呈している。
※後日、筒井氏に議長を辞任した「本当の理由」を尋ねると「北野氏が辞めない以上、私が議長を続ければ議会が余計に混乱すると思った。ハラスメント防止条例の制定に向けた特別委が設置される見通しが立ったことも議長辞任の判断材料になった。私に対する不信任についてはよく分からない」とコメントした。