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  • ホテルプリシード郡山閉館のワケ

    ホテルプリシード郡山閉館のワケ

     郡山市中町の「ホテルプリシード郡山」が3月31日で営業を終える。同ホテルはうすい百貨店の隣に立地しているが、中心市街地に〝巨大な空き家〟が出現することに近隣の商店主らはショックを受けている。  昨年12月1日、同ホテルがホームページで発表した「お知らせ」にはこう書かれている。 《ホテルプリシード郡山は、1993年8月の開業以来、皆様にご愛顧頂いて参りましたが、来る2023年3月末日をもちまして営業終了する運びとなりました。 長年に渡るご厚情に心から感謝申し上げると共に、皆様の今後のご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます》 同ホテルが入る建物は地上12階、地下2階建て。1階と地下1階では商業施設(10店)、3・4階ではスポーツクラブが営業している。2階はレストランとホテルフロントで、5階から上が客室(159室)になっている。 近隣の商店主は 「この間、中心市街地の賑わい復活を目指して取り組んできたが、一帯の人通りは相変わらず少ない。そうした中、中心市街地を牽引するうすいの隣のホテルが閉館するのは非常に寂しい」 と、同ホテルの営業終了を残念がっている。 同業者の間では、昨年秋から「プリシードが閉館するらしい」とウワサになっていたが、営業終了の理由はともかく「このタイミングで閉館するのはもったいない」という声が聞かれていた。 ホテルと言うと新型コロナの影響で苦戦している印象を受けるが、実は思いのほか好調なのだという。 あるホテル業関係者の話。 「他市の状況は分かりませんが、郡山市内のホテルは今、コロナ前より稼働率は高いと思いますよ」 理由は同市の〝地の利〟にある。 「市内には民間の大きな病院が複数あるので、全国から来た医療機器や医薬品の営業マンが頻繁にホテルを利用しています。彼らは市内のホテルに連泊しながら今日は会津、明日は白河、明後日はいわきと動いているので、常連の宿泊で一定の稼働率が保たれているのです」(同) タクシードライバーからはこんな話も聞かれた。 「一昨年2月、昨年3月の福島県沖地震で、県内には保険会社の調査員が全国から来ていました。調査員は市内のホテルに長期滞在し、そこからタクシーを使ってあちこちの物件の被害状況を確認していました。私も県南や浜通りなどに調査員を何度もお連れしましたよ」 つまり、新型コロナでイベントやコンベンションが中止され、ホテルは苦戦しているかと思いきや、それに代わる需要で売り上げを確保していたというのだ。 「最近はインバウンドも徐々に回復しており、団体の外国人旅行客の姿も見るようになっています。今、市内のホテルはどこも忙しいと思いますよ」(前出・ホテル業関係者) こうした状況下でホテルプリシード郡山はなぜ営業を終えるのか。二つの事情がある。 一つは、建物を所有する会社との賃貸借契約が満了を迎えることだ。 同ホテルを営業しているのは㈱ホテルプリシード郡山(郡山市中町12―2)。1992年6月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・宮尾武志、取締役・桜井滋之、西岡巌、監査役・細川和洋の各氏。 一方、建物と土地を所有するのは不動産業の㈱橋本本店(郡山市麓山一丁目9―1)。2013年11月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・橋本善郎、取締役・橋本ひろみ、橋本眞明、橋本眞由美の各氏。 建物は1993年6月竣工で、当時は同じ社名で別会社の㈱橋本本店(橋本善郎社長、78年10月設立、資本金8800万円)が所有していたが、98年に商号を㈱橋本地所に変更。2013年11月に分社化し、新たに設立した前述の橋本本店に所有権を移した経緯がある。 つまり同ホテルは、ホテルプリシード郡山が橋本本店から建物を借りて1993年8月から営業してきたが、両社が交わした賃貸借契約の期間が「30年」だったため、契約満了を迎える今年(2023年)で営業を終えることとなったのだ。 もう一つの事情は、同ホテルの親会社の意向だ。 ホテルプリシード郡山は大手ゼネコン・大成建設(東京都新宿区)のグループ会社。大成建設はこれまでホテルプリシード名古屋(愛知県)など全国数カ所でホテルを建設・営業してきたが、売却するなどして少しずつ手放し、現在はホテルプリシード郡山だけとなっていた。今後は本業に注力するためホテル事業から撤退する模様で、最後の1カ所となっていた同ホテルも賃貸借契約が満了を迎えるのを機に営業終了を決めたのだ。 もっとも、前出・ホテル業関係者は「市内のホテルはコロナ前より好調」と話していたが、民間信用調査会社によると、ホテルプリシード郡山は売り上げが年々落ち込み、万年赤字に陥っていた(別表)。新型コロナ前より客足が好調なのは事実かもしれないが、累積赤字を踏まえると、大成建設にとってはホテル事業から完全撤退する〝潮時〟だったということだろう。  同ホテルの営業終了を報じた福島民報(昨年12月2日付)には《営業終了後に会社を清算し、従業員28人の再就職を支援する》とある。 同ホテルの官野友博副総支配人は次のように話す。 「ホテルは3月末で営業を終えますが、建物内の商業施設とスポーツクラブは5月末まで営業します。そこでテナント契約は満了となり、退去してもらうことになっています。別の場所で営業を継続するかどうかは分かりません。今は当社従業員の再就職先を探しているところです。当ホテルが終了後、建物がどうなるかはオーナー(橋本本店)に聞いてほしい」 「今後の利活用は検討中」  今後の建物の利活用だが、159の客室やフロントがあることからも分かる通り「ホテルの造り」になっているため、ホテルプリシード郡山が撤退後、別のホテルが入居しなければ建物は有効に機能しない。しかし前出・ホテル業関係者によると 「橋本本店は別のホテルを入れようとしていたが、契約を結ぶまでには至らなかったようだ」 と〝後釜探し〟が難航していることを示唆する。 不動産登記簿を確認すると、建物と土地には借主である大成建設が賃貸借契約に基づく保証金返還請求権として9億円と6億円の抵当権を設定している。債務者は貸主の橋本地所。それ以外の担保は、建物建設時に計47億円の抵当権や複数の根抵当権が設定された形跡があるが(債務者、根抵当権者は橋本本店、橋本地所、橋本善郎氏)、すべて解除(弁済)されている。 橋本本店に今後の建物の利活用について尋ねると、こう答えた。 「何を入居させるか、建物を解体するかどうかも含めて全くの未定。現在検討中です。それ以上はお答えできない」 建物の規模を考えると、ホテルプリシード郡山からの家賃収入はそれなりの金額だったろうから〝空きビル〟の状態が続くほど経営に響くのではないか。 建物は築30年だが、東日本大震災や二度の福島県沖地震でも大きな被害は出ておらず、今後も従前通り利用可能とみられる。そうなると、解体という選択は現実的ではない。 「解体費用は億単位になるので、行政の補助なしに企業単独で捻出するのは難しい」(ある不動産業者) 建物を有効活用するには、やはりホテルプリシード郡山に代わるホテルを入居させるしかないようだ。ベストな方法は同ホテルが引き続き営業することだったが、本業に注力したい大成建設としては、30年の長期契約を終えた後に再び賃貸借契約を結ぶのは難しかったのだろう。 今後のポイントは、橋本本店が新しいホテルを呼び寄せることができるかどうかにかかっている。 格安国内ホテル予約サイト【エアトリ】で郡山のホテルを探す あわせて読みたい 【郡山】「うすい」からルイ・ヴィトン撤退の噂

  • 保土谷化学と険悪ムード!?の品川萬里郡山市長

    保土谷化学と険悪ムード!?の品川萬里郡山市長

     保土谷化学工業㈱郡山工場(郡山市谷島町4―5)が敷地内で水素ステーションの開設を目指している。現在、2024年秋の開所に向けて準備中だが、地元経済人はこの取り組みを歓迎する一方、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈している。 水素ステーションの開設を目指す保土谷化学  水素ステーションの開設は、1月13日付の地元紙に掲載された「ふくしまトップインタビュー」という記事で、同社の武居厚志郡山工場長の紹介とともに明かされた。 《今年は新事業をスタートさせる予定だ。工場敷地内に商業用定置式の水素ステーション開設を目指す。過酸化水素の原料用に製造した水素の一部を燃料電池車(FCV)向けに販売する。販売する水素の全てを自社製で賄うのは全国初の試みで、年内の着工、2024(令和6)年の開所を想定している》 これに先立って水素ステーション開設を報じた昨年12月29日付の福島民報では▽利便性を高めるため、敷地東側の東部幹線沿いでの開所を検討、▽周辺にコンビニや飲食店などを誘致し、JR郡山駅東口の活性化につなげる、という方針も紹介されていた。 同記事によると、水素は郡山工場の主力製品である過酸化水素の原料の一つとして同工場内で製造している。これまでは余剰分を他社に販売していた。水素ステーションが開設されれば、製造と供給を同一敷地内で行う全国初のケースになる。 郡山工場の担当者はこう話す。 「計画の詳細はまだ発表していません。今は『2024年秋の開所を目指す』という段階で、今後、水素ステーション建設に関する国、県、市の補助金を申請予定です」 担当者によると、県内で水素を製造しているところは限られ、市内では同社のみだという。 「これまでの水素ステーションは別の場所で製造した水素を(ステーションまで)輸送していました。そこで当社は、自社で製造した水素を有効活用したい考えから、敷地内に水素ステーションを開設しようと考えました」(同) 市内では佐藤燃料㈱が県内2番目の商業用定置式水素ステーションを2022年2月に開設している。 佐藤燃料と共同で水素ステーションを開設した日本水素ステーションネットワーク合同会社(東京都千代田区)の資料「水素ステーションの現状と課題」(2022年7月28日付)によると、東北6県のFCV台数(東北運輸局の次世代自動車普及状況より、同年5月末時点)は469台だが、このうち福島は351台と7割超を占める。2位が宮城112台、あとは山形4台、青森2台、岩手・秋田0台だから、福島県での普及が際立っていることが分かる。  福島県は2016年に策定した福島新エネ社会構想に基づき、水素社会の実現に取り組んでいる。FCDの台数が抜きん出て多いのはその表れで、それだけ水素ステーションの需要も見込めるということだ。ましてや郡山工場の場合、水素を製造しているとなれば、同じ敷地内にステーションを開設することでより円滑な供給が期待できる。加えてコンビニや飲食店が誘致されれば、東京ドーム6個分という広大な工場敷地により殺風景に映る駅東口の光景が見違えることも考えられる。 「コンビニや飲食店があれば水素を充填中の待ち時間を有効に使っていただけると思います。水素ステーションの付加価値を高められるよう併設を目指したい」(前出・担当者) 改まらない〝上から目線〟  実は、本誌は昨年秋、ある経済人からこれらの話を耳にしていた。この経済人は「水素製造が主力となり広い工場敷地が余っているため、民営公園を整備することも考えているようだ」とも話し「停滞する駅東口開発の弾みになる」と水素ステーション開設に期待を滲ませていたが、同時に興味深かったのは、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈したことだった。 「菅野利和副市長と村上一郎副市長が郡山工場を訪ね『工場敷地内に道路を通したい』と協力を要請したそうです。二人はドローンで撮影したと思われる航空写真を示し『この辺りにこういう道路を通したい』『用地は無償で協力してほしい』と言ったそうです」(経済人) この要請に、同社の松本祐人社長は後日、親しい知人に「そういう話は失礼だ」「株主もいるのに用地を無償で協力できるはずがない」と不快感を露わにしたという。 「駅東口開発を進めたい品川萬里市長は、これまでも郡山工場にいろいろな話を持ちかけてきたが、どれも一方的な要請で、同社と協議しながら共同歩調で進める様子は皆無だという。同社としては長年お世話になっている同市の発展に協力したいが、一緒に取り組むという姿勢ではなく『こうやるから協力してくれ』と〝上から目線〟のやり方が改まらないので、心底協力したいという気持ちになれないようです」(同) 郡山駅東口の開発は同市の懸案事項だが、カギを握るのが一帯で操業する郡山工場の行方にある。すなわち、代替地を用意して移転してもらうか、あるいは、現在地で操業を続けるにしても広大な工場敷地をどうにか活用できないかといった話は、公式に議論されることなく与太話の類いに長年終始している。 同社の松本社長は滝田康雄会頭をはじめ郡山商工会議所と良好な関係を築いており、滝田会頭が音頭を取るまちづくり構想「郡山グランドデザインプロジェクト」に協力する意向も持っているが、いかんせん同会議所と同市の関係が良好とは言い難いため、地元経済界からは 「品川市長が本気で駅東口開発を進めたいなら、郡山工場や同会議所に丁寧にアプローチすべきだ」 という苦言が以前から漏れているのだ。今回の道路整備をめぐる要請も、事実であれば丁寧さを欠いているのは明らかだ。 「同市が本気で道路を通したければ『駅東口をこういう形で発展させたい。そのためには、ここに道路が必要なので協力してほしい』とアプローチすべきだ。その青写真もないまま、単に『道路を通したい』では同社も協力する気持ちになれないと思います」(前出・経済人) 前出・郡山工場の担当者に、副市長二人から協力要請があったか尋ねると、 「市職員の方と非公式にお会いする機会は結構あるが、公式にそういう打診が来たことはありません」 と言うから「非公式の相談」はあったのかもしれない。 菅野副市長と村上副市長にも文書で質問したが「回答は差し控える」(広聴広報課)。 水素ステーションが開設され、コンビニや飲食店が併設されても、工場敷地にはまだまだ余裕がある。前出・経済人が言う「民営公園」は郡山工場の担当者が「そこまでは考えていない」と否定しており不透明だが、品川市長が本気で駅東口開発に取り組むなら、郡山工場を同列のパートナーと見なし、共同歩調を取る姿勢を見せないと停滞打破にはつながらないのではないか。 あわせて読みたい ゼビオ「本社移転」の波紋

  • 【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪(男性に性交強いた富岡町男性職員)

    【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪

     公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】  1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】  石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】  浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。  県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。  通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。  初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地  昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。 あわせて読みたい セクハラの舞台となった陸上自衛隊郡山駐屯地【五ノ井里奈さん】 【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態 会津若松市職員「公金詐取事件」を追う

  • 他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故【郡山市大平町の事故現場】

    【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故

    専門家が指摘する危険地点の特徴  1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀)  報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。  軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。  もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性  今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。  県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

  • 〝コロナ閉店〟した郡山バー店主に聞く

    「コロナ閉店」した郡山バー店主に聞く

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「自粛」が求められる場面が増えている。とりわけ、酒類を扱う「夜の飲食店」に行く機会が減った人は多いと思われる。当然、客が来なければ飲食店もやっていけない。いわゆる〝コロナ閉店〟する飲食店は少なくないという。実際に〝コロナ閉店〟した郡山市のバー店主に話を聞いた。 「営業しただけ赤字増加」で見切り  「店を開ければ開けただけ赤字が増えるんですから、やってられませんよ。幸い、『やめられるメド』が立ったので閉店しました」  こう話すのは、郡山市のJR郡山駅近く、陣屋でバーを経営していた男性。この男性は昨年秋前に自身が経営していたバーを閉店した。いわゆる〝コロナ閉店〟である。  「2020年2、3月にコロナの問題が本格化して以降は、多少の変化はありつつも、ずっと厳しい状況が続いていました。歓送迎会や忘新年会など、本来なら最もにぎわうシーズンですら、お客さんがかなり少なく、ゼロという日も少なくなかったですからね。特に『どこかでクラスターが発生した』といった報道等が出ると、発生源の店舗が入居するビルはもちろん、その周辺には人が寄り付かなくなります。一度そうなってしまうと、なかなか客足は戻りません」(元バー店主の男性)  本誌2020年10月号に「クラスター発生に揺れた郡山と会津若松」という特集記事を掲載し、郡山市のホストクラブでクラスターが発生したことを受け、行政の対応、関係者の足取り、店舗の対応などについてリポートした。その中で、周辺店舗関係者の「緊急事態宣言解除後、少しずつ売り上げが戻っていたが、今回のクラスター発生で再び下降している。こんなことが二度、三度と続けば持たない」、「クラスター発生を機に駅前全体の客足が鈍っている。他店からも『いつまで持つか』という嘆きが聞かれる。回復にはまだまだ時間がかかるだろう」といった声を紹介した。そういった事例が出ると、周辺店舗やその後の客足など影響が大きいというのだ。 人通りが少ない郡山市飲食店街(陣屋)  それでなくても、この間、接待を伴う飲食店、酒類の提供を行う飲食店に対しては、まん延防止等重点措置や、県独自の緊急・集中対策によって、営業自粛・時短営業を求められることが多かった。  「少し落ち着いてきたと思ったら、まん延防止や県独自の措置によって営業自粛・時短営業要請が発令される、ということの繰り返しでしたからね。もっとも、営業自粛・時短営業要請の期間は協力金が受け取れたため、店を開けて客が全く来ないときよりはマシでした。といっても、協力金は各種支払いに全部消えましたけど」(同) 協力金の仕組み  例えば、2021年1月13日から2月14日までに出された営業自粛・時短営業要請では、1日当たり4万円の協力金が支給された。33日間で計132万円だったが、「家賃の支払いを待ってもらっていた分、カラオケのリース料、酒卸業者への支払いなどで全部なくなった。むしろ、それだけではまかなえなかった」(同)という。  その後は、郡山市の場合、2021年7月26日から8月16日までは、県の「集中対策」として、営業自粛・時短営業要請が出され、この時は売り上げに応じて、「1日2万5000円〜」というルールで協力金が支払われた。昨年1月27日から2月21日までは、まん延防止等重点措置として営業自粛・時短営業要請が出され、この時は「前年度、前々年度の売上高に応じて1日当たり2万5000円〜7万5000円」の売上高方式か、「前年度、前々年度比の1日当たりの売上高減少額の4割」の売上高減少方式を選択できる仕組みだった。  ただ、いずれにしても、「協力金は各種支払いにすべて消える」といった状況だったという。  ちなみに、本誌はこの間、感染リスクが高いとされる業種(旅客業、宿泊・飲食サービス業など)は国内総生産(GDP)の5%程度で、これまで政府がコロナ対策として投じてきた予算が数十兆円に上ることを考えると、東京電力福島第一原発事故に伴う賠償金の事例に当てはめて補償するというような対応が可能で、そうすべきだった――と書いた。 一番厳しかった一昨年夏  男性によると、最も厳しかったのは2021年夏ごろだったという。感染拡大「第5波」が到来し、感染力が強く、重症化のリスクも高いとされる変異種「デルタ株」が流行していたころだ。  「あの時期は本当に厳しかった。平日(月〜木)はほぼお客さんがゼロという日が続き、週末(金・土)だって、それほど入るわけではありませんでしたから。それでも、私は1人でやっていたから、まだマシだったと思う。従業員がいたら、どうしようもなかった」(同)  コロナ前、平日(月〜木)は売り上げが5万円から8万円、週末(金・土)はその約3倍で、週50万円〜80万円の売り上げがあった。それがひどい時は平日はほぼゼロ、週末はコロナ前の平日並みになった。それでも、家賃や光熱費などの固定経費は変わらない。結果、「店を開ければ開けただけ赤字が増える」状況だったというのである。  「最近は少し規制などが緩くなり、以前よりはマシになりました。週末の居酒屋などはそこそこ入っていると思います。ただ、バーや女性が接待する店はまだまだ戻っていない。私の知り合いの店でも、女性キャストは週の半分は休みという感じです。週末は黒字だが、平日の赤字分をカバーしきれない、といった店が多いのではないか」(同)  冒頭、男性は「『やめられるメド』が立った」と語ったが、一番大きいのは、「テナント退去時の修繕費が最初に納めた敷金でまかなえたこと」という。そのほか、残っていた各種支払いがあったが、何とかそのメドが立ったから閉店を決めた。  「テナント退去時の修繕費がどうなるのかが怖かったが、敷金でまかなえたので良かった。逆に、やめたいと思っても、その(修繕費の)見通しが立たなくてやめられないところもあると思います」(同)  男性の知人の店舗でも、やめたところが何軒かあり、「いつやめたのか分からないが、気付いたら閉店していたところもあった」という。  コロナが出始めたころは、ワクチンが普及し、ある程度、通常の生活ができるようになり、客足が戻ってくることを期待していたようだ。ただ、思いのほか長引き、見切りを付けた。最後に男性は「こんなことなら、もっと早くやめれば良かった」と語った。 あわせて読みたい コロナで3割減った郡山のスナック 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査

  • コロナで3割減った郡山のスナック

    コロナで3割減った郡山のスナック

     新型コロナ感染が日本で拡大してから3年近くが経った。2022年初めまでは緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令され、営業を自粛した飲食店には売り上げ実績の一部が補償された。昨年末は制限のない初めての忘年会シーズンを迎えたが、夜の街の客足はどうなったか。酒類を提供し、接待を伴うことから特に影響が大きいスナックやバー、クラブの店舗数を電話帳で比較した。初回は郡山市。 「2次会なし」で客の奪い合い勃発  民間信用調査会社の東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月、忘・新年会を実施するかについて県内に本社を置く企業にアンケートを行ったところ、回答企業の約8割が「実施しない」と答えた。同月1~8日までインターネットで実施し、80社が回答した。以下は福島民報12月14日付より。  ・緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に関係なく、「無条件で開催しない」と答えた企業は77・50%で10月の前回調査57・14%から20・36㌽上昇。  ・同社郡山支店の担当者は「感染者が増減を繰り返し、ピークが見えない状況で会合開催のハードルが上がっている」と分析する。  NHK(同16日配信)は、「10月後半から新型コロナの感染者が急拡大したことが飲み会自粛につながった。職場単位の大勢でなく、少人数での飲み会が主流になるとみられる」と担当者の見解を紹介している。  開催すると答えた企業でも、そのうち60%以上が2次会を自粛するか、人数を制限するとしている。アンケートからは、新型コロナで大規模な宴会が激減したうえ、「飲み会離れ」が進んでいる実態が見えてきた。  本誌は2005年7月号「2年間で270軒も閉店した福島の飲食店事情」で福島市のバー、スナックの衰退を書いた。飲み慣れた世代が高齢となり、退職や病気で店に行かなくなった。若年世代は会社で飲みに行く習慣に抵抗があり、客数増加は見込めないと分析した。 平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街  「飲み会離れ」は全国的な傾向だが、福島県は事情が少し違う。記事掲載後も東日本大震災・原発事故で経済が落ち込み、確かに客足は減った。「復興バブル」で建設業・除染作業員が県内に進出し、浜通りと中通りの夜の街は一時活気を取り戻したが、復興バブルの終焉が徐々に訪れていたところに新型コロナの影響が直撃した。  新型コロナ拡大から約3年が経ち、夜の街を探る必要がある。2005年の記事では、NTT「タウンページ」の01年と03年の飲食業の掲載数を比較し、閉店数を推計した、今回もその手法を使う。固定電話を置かず、携帯電話やSNSでやり取りする店舗も増えているので正確ではないが、目安にはなるだろう。電話帳記載の店舗が減るということは、老舗が減ったということでもある。  初回は「商都」郡山市を調べる。県が2022年8月に公表した「2019年度市町村民経済計算」によると、市町村内総生産=市町村ごとの経済規模は同市が一番大きい。トップ3は、①郡山市1兆3600億円(県全体の17・1%)、②いわき市1兆3500億円(同17・0%)、③福島市1兆1400億円(同14・4%)だ。  「タウンページ」(2021年10月現在)によると、飲食店関係の掲載数は多い順に次の通り。業種は電話帳の記載に基づく。10店未満の専門店は省略した。 飲食店(居酒屋、食堂の一部重複)195店スナック 159店居酒屋 136店ラーメン店 72店食堂 69店レストラン(ファミレス除く) 48店焼肉・ホルモン料理店 46店うどん・そば店 42店バー・クラブ 42店すし店(回転ずし除く) 40店中華・中国料理店 39店焼き鳥店 32店日本料理店 29店イタリア料理店 15店割烹・料亭 12店うなぎ料理店 10店とんかつ店 10店  重複もあるので、概算で約計900店舗。スナック、居酒屋が圧倒的に多い。接待を伴う飲食店として、特に新型コロナで影響を受けたスナック、バー・クラブの数を調べた。新陳代謝の盛んな業界だから、減少が多くても、新規参入が同じくらいあれば問題はない。新型コロナが襲う2年前の「タウンページ」(2019年11月時点)と比べてみた。  スナック 47店減少、新掲載は5店。 バー・クラブ 5店減少、新掲載は1店。 バー・クラブは約1割減、スナックは約3割減少している。業種や店名を変えた可能性もある。念のため、郡山駅西口の繁華街、駅前と大町に住所があるスナック21店舗に電話をかけた。うち1店舗は営業中。残りの20店は「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが流れた。電話番号を変えたか固定電話の契約を終えたということ。閉店の可能性が高い。下記は2年の間に電話帳から消えたスナック一覧表。 ■コロナ前(2019年)から現在(2021年)までの間に電話帳から消えたスナック 【陣屋】アイギー、明日香、アンク、アンナ、夜上海、我愛你、笑顔、オリーブ、カラオケスナック風の歌がきこえる、絹、Club Vanilla、スナック桜子、Chil、瓶、プティ、桃色うさぎ 【駅前2】絹の家、Nori、花華ふぁふぁ 【大町】こいこい、TELLME、ぶす 【その他】アグライア(朝日)、壱番館(大槻)、イマージュ(朝日)、うさぎ屋薇庵(中町)、小山田壱番館(大槻)、カトリーヌ(菜根)、カミニート(堤下)、ギャップ(中町)、ケイズ・フォー(Ks4fth・中町)、コパン(中町)、サラン韓国スナック(朝日)、スナック華(久留米)、すなっく英の妹(島)、スナックピュア(安積)、スナック福(大槻)、スナックモナリザ(菜根)、スナックやすらぎ(富久山)、スナック夢(朝日)、セカンドハウス(桑野)、SoL(朝日)、たつみ(堂前)、だんらん(麓山)、紬の里(堂前)、ポセイドン(堤下)、美郷(七ッ池)  現在営業している店はどのような状況か。郡山一の繁華街「陣屋」に絞って調査した。陣屋通りの付近で、住所で言えば駅前1丁目に当たる。 感染防止で常連客のみ  前出の東京商工リサーチのアンケートから分かるように、飲み会自体が減り、客層は団体や企業関係から個人グループが主体になっている。週末の金、土曜日はそれなりに人が入っていると想定して、忘年会シーズンの12月17日(土)、開店準備の時間を見計らって午後6~8時の間に電話した。ランダムに22店舗にかけると、いずれも回線は生きていた。6軒が電話に出たので、客の入り具合や経営状況を聞いた。  あるスナックのママAは語る。  「コロナがはやってからもう3年になりますでしょ。まあ何とかやってるって感じね。一番頭を悩ませているのが家賃と人件費です。売り上げが減ったからといって安くはなりません」  あるキャバクラの店長の話。  「まん延防止などが出されることはなくなったが、体感としては昨年よりもお客様は減っています。平日は人が出歩かず、ひっそりとしていますよ。金、土は人が入るといっても平日と比べてマシという程度です。会社の忘年会の2次会、3次会で利用する方が多かったのですが団体客は少ないですね。一グループ多くて3、4人程度です。なじみのお客様に支えられている状態です。営業時間を短くしたり、女の子の出勤を調整している店はあると聞きますが、幸いウチは例年並みの出勤調整に抑えられています」  別のスナックのママBはこう打ち明ける。  「11月から忘年会の予約が入っているのが当たり前だったんですよ。1次会は食事をして、2、3次会でなじみの店でカラオケ、というのがコロナ前の流れでした。2次会は今まずないでしょう。感染を恐れて歌う人も減っているので、カラオケは飲み会の必須ではなくなりましたね。団体は常連さんがゴルフのコンペ後に利用するくらいです」  ママBは、行き場のないいらだちを筆者に向けた。  「雑誌の取材ですか。本当だったら土曜の夜8時に応じるなんてできないんですよ。つまり……そう、ヒマってことです。雑誌だったら宣伝でもしてもらいたいもんだわ。いつまで店を続けられそうかって? そんなの分かりません!」  客には来てほしいが感染を広めてはならないというジレンマがある。 ママCは、  「うちは新規のお客様は断っています。常連さんとその紹介のあった方だけです。『感染者が出た店』となるのが一番怖い。自分も感染したくはない。濃厚接触者になっただけでお店に出られなくなるし、店を数日閉めているとウワサになる。今来てくれるお客様を手放さないように、細々とでも営業するしかないんでしょうね」  電話調査とは別に、県内で飲食店を経営し、業界事情に詳しい男性に話を聞いた。  「繁華街に構える店は家賃が重い負担となってのしかかっています。逆に言えば『家賃さえ下がれば何とかやっていける』という人もいる。潰れない飲食店というのは、住宅街にある町中華のように、住居と一体になった手持ちの物件で営業している店でしょうね」  2次会以降がなくなったことは、スナックの概念にも変化を起こしているという。  「スナックと居酒屋が合体した『イナック』が登場しています。ご飯ものを充実させて、客単価を上げています。2軒目、3軒目に行く客が見込めないので、誰もが1軒目の店になろうと少ないパイの取り合いになっている」(同) 「業種転換したい」  郡山社交飲食業組合・組合長の太田和彦さん(67)=味の串天=は、「組合は約50年前にできましたが、郡山の飲食業も長い時間をかけて廃業、新規開店が繰り返されました。新しい店は組合に入らないところも多い。現在の加盟事業者は14店舗です」と明かす。  うち12店舗がバーやスナック。新型コロナ後は深夜12時前に店を閉める店が増えたという。  「バーやスナックに限りませんが、組合員は私を筆頭に高齢化しています。コロナ禍がきっかけで閉店を考える店もある。スナックの経営者からは『業種転換をしたいがどうしたらいいか』との相談もあります。ここに来てガス代と電気代は値上げ、ビールの仕入れ値も昨年10月に値上がりしました。提供する値段はそうそう上げられません。夜の飲食業はお酒の注文が入って利益が出る仕組みなので、どの店も痛いです」(同)  酒の席で同じ職場の者同士が打ち解ける「飲みにケーション」という言葉も死語になりつつある。新型コロナ拡大が拍車をかけた。  婚活事業などを手がけるタメニー(東京)が昨年11月に会社員の20~39歳の未婚男女2400人に行ったアンケートでは、社内でどのような方法でコミュニケーションを取っているか聞いている。飲み会は8・2%で8位。Eメールのやり取りよりも下だ。 ①直接対面での会話53・4%②通話での会話25・1%③ウェブミーティング17・0%④定例ミーティング16・6%⑤チャットツール15・9%⑥Eメール13・3%⑦1対1のミーティング8・5%⑧飲み会8・2%  以下、ランチ会や社内イベントなどが続く。  「どんな方法でコミュニケーションを取るといいと思いますか」との理想的な方法を調べた質問でも、飲み会は6・9%(8位)で現実の順位と大きな変わりはない。中堅社員がこのような意識ということは、将来的に会社の飲み会は消滅するだろう。中小民間では賃金が上がらないにもかかわらず、物価高が続いている。消費者の財布の紐は固い。 非正規雇用女性の働き口  キャバクラやスナックなどの店が減ることは貧困問題の深刻化にもつながる。水商売は、家族を養わなければならない女性に比較的高い収入を保障し、セーフティネットの役割も果たしてきた。詳しい統計はないが、ネットでキャバクラやスナックの求人欄を見ると、「シングルマザー歓迎」「寮・託児所完備」を押し出している店が多いことから、業界もシングルマザーを積極的に受け入れていることが分かる。  背景には、女性の正社員が男性と比べて少なく、男女の賃金格差が生まれてしまうという事情がある。シングルマザーが昼のパートなど非正規雇用で稼いだだけでは家族を食べさせていけない。  新型コロナが蔓延し始めた2020年には「女性店員が子どもへの感染を恐れ出勤を控える動きもあった」と県内のキャバクラ経営者は語る。キャバクラやスナックが減り、働き口が減った後、彼女たちは別の仕事に行ってしまったのか。その収入で暮らしていけるのか。飲食業が潰れるということは、別のところにしわ寄せが行くということでもある。 あわせて読みたい 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査 「コロナ閉店」した郡山バー店主に聞く

  • 高級レストラン「San filo(サンフィーロ)開成」解体で出直し図る三万石

    高級レストラン解体で出直し図る三万石

     菓子製造小売業の㈱三万石(郡山市、池田仁社長)が同市開成一丁目で営業していた地中海料理のレストラン「San filo(サンフィーロ)開成」が解体された。レストランには三万石開成店も併設されていた。  12月中旬に現地を訪れると、既に建物の3分の2が壊されていた。看板に書かれていた工期は10月17日から12月28日となっていた。  建物は2006年に約3億5000万円をかけて建設され、同年11月にイタリアン料理の「アンジェロ開成」としてオープンした。ランチタイムになると駐車場に入りきれない車が列をつくり、警備員が誘導するほどの人気店だったが、18年11月に閉店し、翌年7月にサンフィーロ開成としてリニューアルオープン後は客足が途絶えていた。  「アンジェロは1000円超のお手頃価格だったけど、サンフィーロは高くて、気軽に行けるお店じゃなかった」(ある主婦)  ホームページ(HP)によるとサンフィーロはランチ専門の営業で予約制コース、価格は3500円、5500円、1万円となっている。高級路線転換が客離れにつながったことは否めない。実際、駐車場は常にガラガラだった。  サンフィーロ開成はなぜ閉店したのか。三万石のHPを見ると「3月の地震の影響」とある。昨年3月16日に発生した福島県沖地震では相馬市などで最大震度6強を記録し、郡山市内の建物も数多く被災したが、同店もその一つだったという。  三万石の担当者に聞いた。  「建物は2021年2月に起きた地震でも大きな被害を受け、この時は大規模改修を行ったが、3月の地震で再び被害に遭った。特に電気設備の被害が深刻で、もう一度大規模改修をしても同じくらいの地震が来たら動力を確保できないという結論に至った。建物は2011年の東日本大震災でも被災しているので、耐震性の面でもリニューアルは厳しかったと思います」  気になるのは跡地の利活用だ。不動産登記簿謄本によると、同所は三万石の名義で、東邦銀行が2007年に同社を債務者とする極度額2億4000万円の根抵当権を設定している。賃借ではなく自社物件ということは、売却しない限り自社利用を目指す公算が高そう。  前出・担当者もこう話す。  「基本的には自社利用する方針だが、何を建てるかとか、どんな使い方をするかなど、具体的な内容は検討中です。いつごろオープンするといった時期も決まっていない」  サンフィーロ開成と同じ業態のレストランは福島市内にもあるが、同店も混雑している様子は見たことがない。跡地に再びレストランをつくるかどうかは分からないが、少なくとも「高級路線が客足を遠ざけた」反省は生かす必要があろう。  ところで三万石は、昨年3月に新会社㈱三万石商事(郡山市、池田仁社長)を設立している。目的は、三万石の外商部門とECサイト部門を新会社に分離・移管して人的資源を投入し、自らは製造と卸売に専念するため。これにより三万石商事は、コロナ以降好調なスーパーへの販路拡大、ネット販売などに注力。一方の三万石は、人件費圧縮と、製造品を三万石商事に卸売りすることで安定した売り上げを確保する狙いがあるとみられる。  三万石は2021年3月期決算が売上高30億円、7100万円の赤字だったが、22年3月期は同36億円、1億3500万円の黒字と持ち直した。今期決算で新会社設立の効果がどう表れるのか注目される。 あわせて読みたい 青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題【郡山市】 青木フルーツ「合併」で株式上場に暗雲!?【郡山市】

  • 南東北病院「移転」にゼビオが横やり

    南東北病院「移転」にゼビオが横やり

     県は2022年11月8日、郡山市富田町の旧農業試験場跡地を売却するため条件付き一般競争入札を行い、総合南東北病院を運営する脳神経疾患研究所(郡山市、渡辺一夫理事長)など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院をはじめ複数の医療施設を同跡地に移転させ、2027年度をめどに開設する計画。  同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、同市が医療機器関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に移転すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた。  ところが2022年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を密かに練ったことがある。  ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」。しかし、入札価格が51億5000万円だったため、同社は落札には至らなかった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。  同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、ゼビオの入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。 あわせて読みたい 【郡山】南東北病院「県有地移転案」の全容

  • 【FSGカレッジリーグ】仮想空間で授業を実施【実証事業の様子】

    郡山市の専門学校【FSGカレッジリーグ】仮想空間で授業を実施

     専門学校グループ「学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ」(郡山市)は1984(昭和59)年の開校以来、38年間積み上げてきた指導ノウハウと、2万0900人以上の卒業生ネットワークによる学生支援体制を備え、若者の学び場の充実を図り続けてきた。同グループは5校57学科で構成されており、東北最大級の規模を誇る。  グループ校の一つ、国際アート&デザイン大学校では9月、米国発メタバース「Virbela(バーベラ)」の日本向けプラットフォーム「GIGA TOWN(ギガタウン)」を活用した実証授業を実施した。専門学校としては初の試み。  メタバースとはインターネットの中に構築された仮想空間のこと。自分自身の分身(アバター)を操作して他者と交流できる。ゲームなどで使われてきたが、近年はビジネスシーンでの利用も進んでおり、今後の成長が見込まれている。  同校は「ギガタウン」の日本公式販売代理店・㈱ガイアリンク(長野県)と連携。学生らはアバターを使って「ギガタウン」での授業に参加し、事例研究、ゲーム、ディスカッション、グループ発表などを行った。  参加した学生からは「実際にその場で授業を受けているような臨場感があり、楽しかった。テーブルごとに個別通話できたり、画面を複数に分けて資料を提示できるなど、さまざまな機能があり、使いやすかったです」との声が聞かれた。  実証授業は学生の夢や目標達成のためのスキル、コミュニケーション力を育む目的で行われたもの。同校では5月にも、ICT関連やデジタルコンテンツ分野の教育機関を運営するデジタルハリウッド㈱(東京都)と連携し、アバター生成・操作のアプリケーションを使用した実証授業を行っている。  同グループでは教育のICT化を進める「Ed―Tech推進室」が中心となって、ICT技術・デジタル化を活用した効果的な授業の在り方を検討しており、同校の授業に積極的に取り入れている。  例えば、同校コミックマスター科では県内で初めて、アニメーション制作ソフト「Live2D」を授業に導入した。同ソフトは低コストで原画の画風を保ったアニメーションが制作できることから、家庭用ゲームやスマートフォンアプリに多く使用されている。同校は「Live2D」モデル作成ソフトライセンス無償貸与の教育支援プログラム認定校に県内で唯一指定されているため、授業での使用が可能となった。  一方でアナログテクニックを身に付ける実習も充実させており、どんな現場にも対応できる即戦力のスペシャリストの養成に努める。  ICT関連の資格取得も全力で支援しており、「PhotoShop(フォトショップ)クリエイター能力認定試験」の合格率は100%を誇る。さらにCGクリエイター検定の文部科学大臣賞を全国で唯一3年連続受賞している。  同グループが目標として掲げているのは「ONLY1、No・1」の教育実績。今後もコロナ禍以降本格的に導入したICT教育を発展させる形で、メタバースを活用した授業を推進し、学生一人ひとりのニーズに沿った教育を行うことで、夢の実現をサポートしていく考えだ。 FSGカレッジリーグのホームページ FSGカレッジリーグのオープンキャンパス・保護者説明会に参加する

  • 除染バブルの後遺症に悩む郡山建設業界除染バブルの後遺症

    除染バブルの後遺症に悩む郡山建設業界

    災害時に地域のインフラを支えるのが建設業だ。災害が発生すると、建設関連団体は行政と交わした防災協定に基づき緊急点検や応急復旧などに当たるが、実務を担うのは各団体の会員業者だ。しかし、近年は団体に加入しない業者が増え、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は減り続けている。会員業者が増えないのは「団体加入のメリットがないから」という指摘が一般的だが、意外にも行政の姿勢を問う声も聞かれる。郡山市の建設業界事情を追った。 災害対応に無関心な業者に老舗から恨み節 地域のインフラを支える建設業  「今、郡山の建設業界は真面目にやっている業者ほど損している。正直、私も馬鹿らしくなる時がある」  こう嘆くのは、郡山市内の老舗建設会社の役員だ。  2011年3月に発生した東日本大震災。かつて経験したことのない揺れに見舞われた被災地では道路、トンネル、橋、上下水道などのインフラが損壊し、住民は大きな不便を来した。ただ、不便は想像していたほど長期化しなかった。発災後、各地の建設業者がすぐに被災現場に駆け付け、応急措置を施したからだ。  震災から11年8カ月経ち、復興のスピードが遅いという声もあるが、当時の適切な対応がなかったら復興はさらに遅れていたかもしれない。業者の果たした役割は、それだけ大きかったことになる。  震災後も台風、大雨、大雪などの自然災害が頻発している。その規模は地球温暖化の影響もあって以前より大きくなっており、被害も拡大・複雑化する傾向にある。  必然的に業者の出動頻度も年々高まっている。以前から「地域のインフラを支えるのが建設業の役割」と言われてきたが、大規模災害の増加を受け、その役割はますます重要になっている。  前出・役員も何か起きれば平日休日、昼夜を問わず、すぐに現場に駆け付ける。  「理屈ではなく、もはや習性なんでしょうね」(同)  と笑うが、安心・安全な暮らしが守られている背景にはこうした業者の活躍があることを、私たちはあらためて認識しなければならない。  そんな役員が「真面目にやるのが馬鹿らしくなる」こととは何を指すのか。  「災害対応に当たるのは主に建設関連団体に加入する業者です。各団体は市と防災協定を結び、災害が発生したら会員業者が被災現場に出て緊急点検や応急復旧などを行います。しかし近年は、どの団体も会員数が減っており、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は少なくなっているのです」(同)  2022年9月現在、郡山市は136団体と災害関連の連携協定を交わしているが、「災害時における応援対策業務の支援に関する協定書」を締結しているのはこおりやま建設協会、県建設業協会郡山支部、県造園建設業協会郡山支部、ダンプカー協会、郡山建設業者同友会、市交通安全施設整備協会、郡山電設業者協議会、県中通信情報設備協同組合、市管工事協同組合、郡山鳶土工建設業組合、県南電気工事協同組合など十数団体に上る。  いくつかの団体に昔と今の会員数を問い合わせたが、増えているところはなく、団体によってはピーク時の6割程度にまで減っていた。  「業者の皆さんに広く加入を呼びかけているが、増える気配はないですね」(ある組合の女性事務員)  会費は月額1万円程度なので、負担にはならない。しかし、  「経営者が2代目、3代目に代わるタイミングで会員を辞める会社が結構あります。時代の流れもあるでしょうし、若い経営者の価値観が昔と変わっていることも影響していると思います」(同)  それでも、会員になるメリットがあれば、経営者が代わっても引き続き団体に加入するのだろうが、  「加入を呼びかける立場の私が言うのも何ですが、明確なメリットと聞かれたら答えられない」(同)  昔は今より同業者同士のつながりが大切にされ、先輩―後輩のつながりで業界のしきたりを習ったり、仕事の紹介を受けたり、技術を学び合うなど団体加入には一定のメリットがあった。  今はどうか。別の団体の幹部に加入の具体的なメリットを尋ねると  「対外的な信用が得られます。組合は『社内にこういう技術者がいなければならない』など、入るのに一定の条件が必要。つまり組合に入っていれば、それだけで技術力が伴っている証拠になる」  正直、そこに魅力を感じて団体に加入する業者はいないだろう。  「ウチみたいに昔から入っているところはともかく、新規会員を増やしたいなら加入のメリットがないと厳しいでしょうね」(前出・老舗建設会社の役員)  会員数の減少は、そのまま〝地域の守り手〟の減少に直結する。それはいざ災害が発生した時、緊急点検や応急復旧などに当たってくれる業者が限られることを意味する。  それでなくても郡山は、新規会員が増えにくい状況にある。理由は、震災後に増えた「新参者」の存在だ。別の建設会社の社長が解説してくれた。  「新参者とは震災後、除染を目的に県外からやって来た人たちです。建設業界はそれまで深刻な不況で、公共工事の予算は年々減っていた。そこに原発事故が起こり、除染という新しい仕事が出現。『福島に行けば仕事がある』と、全国から業者が押し寄せたのです」  除染事業に従事するには「土木一式工事」や「とび・土工・コンクリート工事」の建設業許可が必要になる。許可を得て、資機材を揃えて大手ゼネコンの4次、5次下請けに入る小規模の会社はあっと言う間に増えていった。  「新参者が増えるのは行政にとってもありがたかった。住民が『早く除染してほしい』と求める中、業者の数がいないと予定通り除染は進まないわけですからね」(同) 尻拭いを押し付ける郡山市 郡山市役所 しかし、同じ仕事が永遠に存在するはずもなく、市内の除染が一通り終わると新参者の出番も減った。  この社長によると、新参者はその後、①経営に行き詰まって倒産、②浜通りなど除染事業が続いている地域に移動、③一般の土木工事に衣替え――の三つに分かれたという。  「一般の土木工事に衣替えした業者は、正確な数は分からないが結構います。私のように昔から郡山で仕事をやっていれば、社名を聞くだけでそこが新参者かどうか分かる。傾向としては、カタカナやアルファベットなど横文字の社名は該当することが多い」(同)  郡山市の「令和3・4年度指名競争入札参加有資格業者名簿」(2022年4月1日現在)を見ると、土木一式工事の許可業者は103、とび・土工・コンクリート工事の許可業者は225ある(いずれも市内に本社がある業者のみをカウント)。二つを見比べると、土木一式工事の許可業者はとび・土工・コンクリート工事の許可も併せて得ている。そこで後者の業者名を確認していくと、新参者に該当するのではないかと思われる業者は40社前後、全体の2割近くを占めていた。  除染事業がなくなっても、新たな仕事を求め、生き残りを図ろうとする姿はたくましい。建設業許可を得て一般の土木工事に従事するのだから法令違反でもない。社長も「そこを否定するつもりはない」と話す。ただ「新参者は暗黙のルールを守らないため業界全体が歪みつつある」というのだ。  「新参者は地域性を考えない。例えば、A社が本社を置く〇〇地域で道路工事が発注されたら、一帯の道路事情を知るのはA社なので、入札では自然とA社に任せようという雰囲気になる。これは談合で決めているわけではなく、不可侵というか暗黙のルールでそうなるのです。だから、A社は隣の××地域や遠く離れた△△地域の道路工事は取りにいかない。しかし、新参者は『競争入札なんだから地域性は関係ない』と落札してしまうわけです」(同)  新参者から言わせれば「暗黙のルールに基づく調整こそ談合みたいなもの」となるのだろう。ただ、〇〇地域の住民からすれば、見たことも聞いたこともない業者より、馴染みのあるA社に工事をやってもらった方が安心なのは間違いない。  「A社がある道路工事を仕上げ、そこから先の道路工事が新たに発注された時、継続性で言ったらA社が受注した方が工事はスムーズに進む可能性が高い。しかし、新参者はそういう配慮もなく、お構いなしに落札してしまう」(同)  しかしこれも、新参者から言わせると「落札して何が悪い」となるのだろうが、社長が解せないのは、その後の尻拭いを市から依頼されることにある。  「もともと除染からスタートした業者なので、土木工事の許可を持っていると言っても技術力が備わっていない。そのせいで、工事終了後に施工不良個所が見つかるケースが少なくないのです。解せないのは、市がその修繕を当該業者にやらせるのではなく、再発注も面倒なので、現場に近い地元業者にこっそり頼むことです。市には世話になっているので頼まれれば手伝うが、地域性や継続性を無視して落札した新参者の尻拭いを、私たちに押し付けるのは納得がいかない」  実は、そんな新参者の多くは建設関連団体に加入していないのだ。再び前出・老舗建設会社の役員の話。  「新参者は建設関連団体に入っていないから、災害が起きても被災現場に駆け付けない。でも、入札では災害対応に当たる私たちと同列で競争し、仕事を取っている。不正をしているわけでなく、正当な競争の結果と言われればそれまでだが、地域に貢献している自負がある私たちからすると釈然としない」 「災害対応に正当な評価を」  会員業者は日曜夜に被災現場に出動しても、防災協定に基づくボランティアのため、月曜朝からは通常業務を行わなければならない。一方、建設関連団体に加入していない業者は被災現場に出動することなく休日を過ごし、月曜から淡々と通常業務に当たる。だからと言って、未加入の業者にペナルティーが科されることはなく、被災現場に出動した業者に特別なインセンティブがあるわけでもない。  これでは、会員業者が「真面目にやるのが馬鹿らしい」と愚痴を漏らすのは当然で、わざわざ建設関連団体に加入する新規業者も現れない。  「市がズルいのは、入札は公平・公正を理由にどの業者も分け隔てなく競争させ、災害や施工不良など困ったことが起きた時は建設関連団体を頼ることだ。真面目にやっている私たちからすると、市に都合よく使われている感は否めない」(同)  これでは、新規会員はますます増えない。そこでこの役員が提案するのが、市が建設関連団体加入のメリットを創出することだ。  「会員業者は指名競争入札で指名されやすいといったインセンティブがあれば、災害対応に当たる私たちも少しはやりがいが出るし、今まで災害対応に無関心だった新参者も建設関連団体に入ろうという気持ちになるのではないか」(同)  郡山市では1000万円以上の工事は制限付一般競争入札、1000万円未満の工事は指名競争入札を導入しているが、2021年度の入札結果を見ると、落札額の合計は制限付一般競争入札が約99億8000万円、指名競争入札が約25億7200万円に対し、発注件数は前者が約150件、後者が約640件と指名競争入札の方が4倍以上多い。役員によると、会社の規模が小さい新参者は指名競争入札に参加する割合が高いという。  同市の指名競争入札に参加するには2年ごとに市の審査を受け、入札参加有資格業者になる必要がある。その手引きを見ると、市内に本社を置く業者が提出する書類に「災害協定の締結」「除雪委託契約の締結」の有無に関する記載欄があるが、市がそれをどれくらい重視しているかは分からない。  前述した建設関連団体のいくつかに問い合わせた際、  「災害協定を結んでいるかどうかは、市が審査をする上で少しは加点要素になっていると思う」(前出・女性事務員)  「実際に被災現場に駆け付けている点は(指名の際に)加味してほしいと市に申し入れている。そこを市がもっと評価してくれれば新規会員も増えると思うんですが」(前出・別の組合幹部)  と語っていたが、市が日頃の災害対応を正当に評価しているかというと、建設関連団体にはそう感じられないのだろう。  「会員業者が増えないと災害対応が機能しない。それによって困るのは市民です。そこで、安心・安全な暮らしを維持するため、災害協定と除雪委託契約の締結を指名競争入札に参加するための重要要件にしてはどうか。そうすれば、建設関連団体に無関心の新参者も加入を検討するし、新規会員が増えれば災害が起きた時、市民も助かります」(同) 指名競争を増やす福島県の狙い 福島県庁  県では佐藤栄佐久元知事時代に起きた談合事件を受け、2006年12月に入札等制度改革に係る基本方針を決定。指名競争入札を廃止し、予定価格250万円を超える工事は条件付一般競争入札に切り替えた。しかし、過度な競争や少子高齢化で経営が悪化し、災害対応や除雪に携わる業者がいなくなれば地域の安心・安全確保に支障を来すとして〝地域の守り手〟である中小・零細業者を育成する観点から「地域の守り手育成型方式」という指名競争入札を2020年度から試行している。  農林水産部と土木部が発注する3000万円未満の工事を指名競争入札にしているが、入札参加資格の要件には「災害時の出動実績又は災害応援協定締結」と「除雪業務実績又は維持補修業務実績」が挙げられている。指名競争入札を増やすことで〝地域の守り手〟を支えていこうという県の狙いがうかがえる。  会津地方は郡山と比べて仕事量が少ないため、新しい会社が次々と誕生することもなく、昔から営業している会社が建設関連団体を形成し、地域のインフラを支える構図が成立している。業者数は少ないが、地域を守るという意識が業界全体で統一されている。  これに対し郡山は、業者数は多いが建設関連団体の会員業者は少ないため、業界全体で地域を守るという意識が希薄だ。もし入札制度を変えることで会員業者が増え、市民の安心・安全を確保できるなら、市は真剣に検討すべきではないか。  「入札の大前提にあるのは公平・公正だが、時代の変化と共に変えるべきものは変えなければならないことも承知しています。災害が年々増えている中、業者の協力がなければ市民の生命と財産は守れません。その災害対応については、市でも審査時に評価してきましたが、出動頻度が増えている今、それをどのように評価すべきかは今後の検討課題になると思います。県が試行している指名競争入札なども参考にしながら考えたい」(市契約検査課)  官が民に、建設関連団体への加入を〝強要〟するのは筋違いかもしれない。しかし現実に、災害の増加に反比例して〝地域の守り手〟は減少している。だったら、普段から災害対応に当たっている業者には、その労に報いるためインセンティブを与えるべきだし、それが魅力になって団体に加入する業者が増えれば、建設業界全体で地域を守るという意識が醸成され、災害に強いまちづくりが実現できるのではないか。 郡山市ホームページ あわせて読みたい 建設業者「越県・広域合併」の狙い【小野中村】【南会西部建設】 「地域の守り手」企業を衰退させる県の入札制度 福島市「デコボコ除雪」今シーズンは大丈夫?

  • ホテルプリシード郡山閉館のワケ

     郡山市中町の「ホテルプリシード郡山」が3月31日で営業を終える。同ホテルはうすい百貨店の隣に立地しているが、中心市街地に〝巨大な空き家〟が出現することに近隣の商店主らはショックを受けている。  昨年12月1日、同ホテルがホームページで発表した「お知らせ」にはこう書かれている。 《ホテルプリシード郡山は、1993年8月の開業以来、皆様にご愛顧頂いて参りましたが、来る2023年3月末日をもちまして営業終了する運びとなりました。 長年に渡るご厚情に心から感謝申し上げると共に、皆様の今後のご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます》 同ホテルが入る建物は地上12階、地下2階建て。1階と地下1階では商業施設(10店)、3・4階ではスポーツクラブが営業している。2階はレストランとホテルフロントで、5階から上が客室(159室)になっている。 近隣の商店主は 「この間、中心市街地の賑わい復活を目指して取り組んできたが、一帯の人通りは相変わらず少ない。そうした中、中心市街地を牽引するうすいの隣のホテルが閉館するのは非常に寂しい」 と、同ホテルの営業終了を残念がっている。 同業者の間では、昨年秋から「プリシードが閉館するらしい」とウワサになっていたが、営業終了の理由はともかく「このタイミングで閉館するのはもったいない」という声が聞かれていた。 ホテルと言うと新型コロナの影響で苦戦している印象を受けるが、実は思いのほか好調なのだという。 あるホテル業関係者の話。 「他市の状況は分かりませんが、郡山市内のホテルは今、コロナ前より稼働率は高いと思いますよ」 理由は同市の〝地の利〟にある。 「市内には民間の大きな病院が複数あるので、全国から来た医療機器や医薬品の営業マンが頻繁にホテルを利用しています。彼らは市内のホテルに連泊しながら今日は会津、明日は白河、明後日はいわきと動いているので、常連の宿泊で一定の稼働率が保たれているのです」(同) タクシードライバーからはこんな話も聞かれた。 「一昨年2月、昨年3月の福島県沖地震で、県内には保険会社の調査員が全国から来ていました。調査員は市内のホテルに長期滞在し、そこからタクシーを使ってあちこちの物件の被害状況を確認していました。私も県南や浜通りなどに調査員を何度もお連れしましたよ」 つまり、新型コロナでイベントやコンベンションが中止され、ホテルは苦戦しているかと思いきや、それに代わる需要で売り上げを確保していたというのだ。 「最近はインバウンドも徐々に回復しており、団体の外国人旅行客の姿も見るようになっています。今、市内のホテルはどこも忙しいと思いますよ」(前出・ホテル業関係者) こうした状況下でホテルプリシード郡山はなぜ営業を終えるのか。二つの事情がある。 一つは、建物を所有する会社との賃貸借契約が満了を迎えることだ。 同ホテルを営業しているのは㈱ホテルプリシード郡山(郡山市中町12―2)。1992年6月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・宮尾武志、取締役・桜井滋之、西岡巌、監査役・細川和洋の各氏。 一方、建物と土地を所有するのは不動産業の㈱橋本本店(郡山市麓山一丁目9―1)。2013年11月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・橋本善郎、取締役・橋本ひろみ、橋本眞明、橋本眞由美の各氏。 建物は1993年6月竣工で、当時は同じ社名で別会社の㈱橋本本店(橋本善郎社長、78年10月設立、資本金8800万円)が所有していたが、98年に商号を㈱橋本地所に変更。2013年11月に分社化し、新たに設立した前述の橋本本店に所有権を移した経緯がある。 つまり同ホテルは、ホテルプリシード郡山が橋本本店から建物を借りて1993年8月から営業してきたが、両社が交わした賃貸借契約の期間が「30年」だったため、契約満了を迎える今年(2023年)で営業を終えることとなったのだ。 もう一つの事情は、同ホテルの親会社の意向だ。 ホテルプリシード郡山は大手ゼネコン・大成建設(東京都新宿区)のグループ会社。大成建設はこれまでホテルプリシード名古屋(愛知県)など全国数カ所でホテルを建設・営業してきたが、売却するなどして少しずつ手放し、現在はホテルプリシード郡山だけとなっていた。今後は本業に注力するためホテル事業から撤退する模様で、最後の1カ所となっていた同ホテルも賃貸借契約が満了を迎えるのを機に営業終了を決めたのだ。 もっとも、前出・ホテル業関係者は「市内のホテルはコロナ前より好調」と話していたが、民間信用調査会社によると、ホテルプリシード郡山は売り上げが年々落ち込み、万年赤字に陥っていた(別表)。新型コロナ前より客足が好調なのは事実かもしれないが、累積赤字を踏まえると、大成建設にとってはホテル事業から完全撤退する〝潮時〟だったということだろう。  同ホテルの営業終了を報じた福島民報(昨年12月2日付)には《営業終了後に会社を清算し、従業員28人の再就職を支援する》とある。 同ホテルの官野友博副総支配人は次のように話す。 「ホテルは3月末で営業を終えますが、建物内の商業施設とスポーツクラブは5月末まで営業します。そこでテナント契約は満了となり、退去してもらうことになっています。別の場所で営業を継続するかどうかは分かりません。今は当社従業員の再就職先を探しているところです。当ホテルが終了後、建物がどうなるかはオーナー(橋本本店)に聞いてほしい」 「今後の利活用は検討中」  今後の建物の利活用だが、159の客室やフロントがあることからも分かる通り「ホテルの造り」になっているため、ホテルプリシード郡山が撤退後、別のホテルが入居しなければ建物は有効に機能しない。しかし前出・ホテル業関係者によると 「橋本本店は別のホテルを入れようとしていたが、契約を結ぶまでには至らなかったようだ」 と〝後釜探し〟が難航していることを示唆する。 不動産登記簿を確認すると、建物と土地には借主である大成建設が賃貸借契約に基づく保証金返還請求権として9億円と6億円の抵当権を設定している。債務者は貸主の橋本地所。それ以外の担保は、建物建設時に計47億円の抵当権や複数の根抵当権が設定された形跡があるが(債務者、根抵当権者は橋本本店、橋本地所、橋本善郎氏)、すべて解除(弁済)されている。 橋本本店に今後の建物の利活用について尋ねると、こう答えた。 「何を入居させるか、建物を解体するかどうかも含めて全くの未定。現在検討中です。それ以上はお答えできない」 建物の規模を考えると、ホテルプリシード郡山からの家賃収入はそれなりの金額だったろうから〝空きビル〟の状態が続くほど経営に響くのではないか。 建物は築30年だが、東日本大震災や二度の福島県沖地震でも大きな被害は出ておらず、今後も従前通り利用可能とみられる。そうなると、解体という選択は現実的ではない。 「解体費用は億単位になるので、行政の補助なしに企業単独で捻出するのは難しい」(ある不動産業者) 建物を有効活用するには、やはりホテルプリシード郡山に代わるホテルを入居させるしかないようだ。ベストな方法は同ホテルが引き続き営業することだったが、本業に注力したい大成建設としては、30年の長期契約を終えた後に再び賃貸借契約を結ぶのは難しかったのだろう。 今後のポイントは、橋本本店が新しいホテルを呼び寄せることができるかどうかにかかっている。 格安国内ホテル予約サイト【エアトリ】で郡山のホテルを探す あわせて読みたい 【郡山】「うすい」からルイ・ヴィトン撤退の噂

  • 保土谷化学と険悪ムード!?の品川萬里郡山市長

     保土谷化学工業㈱郡山工場(郡山市谷島町4―5)が敷地内で水素ステーションの開設を目指している。現在、2024年秋の開所に向けて準備中だが、地元経済人はこの取り組みを歓迎する一方、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈している。 水素ステーションの開設を目指す保土谷化学  水素ステーションの開設は、1月13日付の地元紙に掲載された「ふくしまトップインタビュー」という記事で、同社の武居厚志郡山工場長の紹介とともに明かされた。 《今年は新事業をスタートさせる予定だ。工場敷地内に商業用定置式の水素ステーション開設を目指す。過酸化水素の原料用に製造した水素の一部を燃料電池車(FCV)向けに販売する。販売する水素の全てを自社製で賄うのは全国初の試みで、年内の着工、2024(令和6)年の開所を想定している》 これに先立って水素ステーション開設を報じた昨年12月29日付の福島民報では▽利便性を高めるため、敷地東側の東部幹線沿いでの開所を検討、▽周辺にコンビニや飲食店などを誘致し、JR郡山駅東口の活性化につなげる、という方針も紹介されていた。 同記事によると、水素は郡山工場の主力製品である過酸化水素の原料の一つとして同工場内で製造している。これまでは余剰分を他社に販売していた。水素ステーションが開設されれば、製造と供給を同一敷地内で行う全国初のケースになる。 郡山工場の担当者はこう話す。 「計画の詳細はまだ発表していません。今は『2024年秋の開所を目指す』という段階で、今後、水素ステーション建設に関する国、県、市の補助金を申請予定です」 担当者によると、県内で水素を製造しているところは限られ、市内では同社のみだという。 「これまでの水素ステーションは別の場所で製造した水素を(ステーションまで)輸送していました。そこで当社は、自社で製造した水素を有効活用したい考えから、敷地内に水素ステーションを開設しようと考えました」(同) 市内では佐藤燃料㈱が県内2番目の商業用定置式水素ステーションを2022年2月に開設している。 佐藤燃料と共同で水素ステーションを開設した日本水素ステーションネットワーク合同会社(東京都千代田区)の資料「水素ステーションの現状と課題」(2022年7月28日付)によると、東北6県のFCV台数(東北運輸局の次世代自動車普及状況より、同年5月末時点)は469台だが、このうち福島は351台と7割超を占める。2位が宮城112台、あとは山形4台、青森2台、岩手・秋田0台だから、福島県での普及が際立っていることが分かる。  福島県は2016年に策定した福島新エネ社会構想に基づき、水素社会の実現に取り組んでいる。FCDの台数が抜きん出て多いのはその表れで、それだけ水素ステーションの需要も見込めるということだ。ましてや郡山工場の場合、水素を製造しているとなれば、同じ敷地内にステーションを開設することでより円滑な供給が期待できる。加えてコンビニや飲食店が誘致されれば、東京ドーム6個分という広大な工場敷地により殺風景に映る駅東口の光景が見違えることも考えられる。 「コンビニや飲食店があれば水素を充填中の待ち時間を有効に使っていただけると思います。水素ステーションの付加価値を高められるよう併設を目指したい」(前出・担当者) 改まらない〝上から目線〟  実は、本誌は昨年秋、ある経済人からこれらの話を耳にしていた。この経済人は「水素製造が主力となり広い工場敷地が余っているため、民営公園を整備することも考えているようだ」とも話し「停滞する駅東口開発の弾みになる」と水素ステーション開設に期待を滲ませていたが、同時に興味深かったのは、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈したことだった。 「菅野利和副市長と村上一郎副市長が郡山工場を訪ね『工場敷地内に道路を通したい』と協力を要請したそうです。二人はドローンで撮影したと思われる航空写真を示し『この辺りにこういう道路を通したい』『用地は無償で協力してほしい』と言ったそうです」(経済人) この要請に、同社の松本祐人社長は後日、親しい知人に「そういう話は失礼だ」「株主もいるのに用地を無償で協力できるはずがない」と不快感を露わにしたという。 「駅東口開発を進めたい品川萬里市長は、これまでも郡山工場にいろいろな話を持ちかけてきたが、どれも一方的な要請で、同社と協議しながら共同歩調で進める様子は皆無だという。同社としては長年お世話になっている同市の発展に協力したいが、一緒に取り組むという姿勢ではなく『こうやるから協力してくれ』と〝上から目線〟のやり方が改まらないので、心底協力したいという気持ちになれないようです」(同) 郡山駅東口の開発は同市の懸案事項だが、カギを握るのが一帯で操業する郡山工場の行方にある。すなわち、代替地を用意して移転してもらうか、あるいは、現在地で操業を続けるにしても広大な工場敷地をどうにか活用できないかといった話は、公式に議論されることなく与太話の類いに長年終始している。 同社の松本社長は滝田康雄会頭をはじめ郡山商工会議所と良好な関係を築いており、滝田会頭が音頭を取るまちづくり構想「郡山グランドデザインプロジェクト」に協力する意向も持っているが、いかんせん同会議所と同市の関係が良好とは言い難いため、地元経済界からは 「品川市長が本気で駅東口開発を進めたいなら、郡山工場や同会議所に丁寧にアプローチすべきだ」 という苦言が以前から漏れているのだ。今回の道路整備をめぐる要請も、事実であれば丁寧さを欠いているのは明らかだ。 「同市が本気で道路を通したければ『駅東口をこういう形で発展させたい。そのためには、ここに道路が必要なので協力してほしい』とアプローチすべきだ。その青写真もないまま、単に『道路を通したい』では同社も協力する気持ちになれないと思います」(前出・経済人) 前出・郡山工場の担当者に、副市長二人から協力要請があったか尋ねると、 「市職員の方と非公式にお会いする機会は結構あるが、公式にそういう打診が来たことはありません」 と言うから「非公式の相談」はあったのかもしれない。 菅野副市長と村上副市長にも文書で質問したが「回答は差し控える」(広聴広報課)。 水素ステーションが開設され、コンビニや飲食店が併設されても、工場敷地にはまだまだ余裕がある。前出・経済人が言う「民営公園」は郡山工場の担当者が「そこまでは考えていない」と否定しており不透明だが、品川市長が本気で駅東口開発に取り組むなら、郡山工場を同列のパートナーと見なし、共同歩調を取る姿勢を見せないと停滞打破にはつながらないのではないか。 あわせて読みたい ゼビオ「本社移転」の波紋

  • 【福島県】相次ぐ公務員の性犯罪

     公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】  1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】  石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】  浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。  県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。  通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。  初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地  昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。 あわせて読みたい セクハラの舞台となった陸上自衛隊郡山駐屯地【五ノ井里奈さん】 【開店前の飲食店に並ぶ福島市職員】本誌取材で分かったサボりの実態 会津若松市職員「公金詐取事件」を追う

  • 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故

    専門家が指摘する危険地点の特徴  1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀)  報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。  軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。  もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性  今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。  県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

  • 「コロナ閉店」した郡山バー店主に聞く

    新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「自粛」が求められる場面が増えている。とりわけ、酒類を扱う「夜の飲食店」に行く機会が減った人は多いと思われる。当然、客が来なければ飲食店もやっていけない。いわゆる〝コロナ閉店〟する飲食店は少なくないという。実際に〝コロナ閉店〟した郡山市のバー店主に話を聞いた。 「営業しただけ赤字増加」で見切り  「店を開ければ開けただけ赤字が増えるんですから、やってられませんよ。幸い、『やめられるメド』が立ったので閉店しました」  こう話すのは、郡山市のJR郡山駅近く、陣屋でバーを経営していた男性。この男性は昨年秋前に自身が経営していたバーを閉店した。いわゆる〝コロナ閉店〟である。  「2020年2、3月にコロナの問題が本格化して以降は、多少の変化はありつつも、ずっと厳しい状況が続いていました。歓送迎会や忘新年会など、本来なら最もにぎわうシーズンですら、お客さんがかなり少なく、ゼロという日も少なくなかったですからね。特に『どこかでクラスターが発生した』といった報道等が出ると、発生源の店舗が入居するビルはもちろん、その周辺には人が寄り付かなくなります。一度そうなってしまうと、なかなか客足は戻りません」(元バー店主の男性)  本誌2020年10月号に「クラスター発生に揺れた郡山と会津若松」という特集記事を掲載し、郡山市のホストクラブでクラスターが発生したことを受け、行政の対応、関係者の足取り、店舗の対応などについてリポートした。その中で、周辺店舗関係者の「緊急事態宣言解除後、少しずつ売り上げが戻っていたが、今回のクラスター発生で再び下降している。こんなことが二度、三度と続けば持たない」、「クラスター発生を機に駅前全体の客足が鈍っている。他店からも『いつまで持つか』という嘆きが聞かれる。回復にはまだまだ時間がかかるだろう」といった声を紹介した。そういった事例が出ると、周辺店舗やその後の客足など影響が大きいというのだ。 人通りが少ない郡山市飲食店街(陣屋)  それでなくても、この間、接待を伴う飲食店、酒類の提供を行う飲食店に対しては、まん延防止等重点措置や、県独自の緊急・集中対策によって、営業自粛・時短営業を求められることが多かった。  「少し落ち着いてきたと思ったら、まん延防止や県独自の措置によって営業自粛・時短営業要請が発令される、ということの繰り返しでしたからね。もっとも、営業自粛・時短営業要請の期間は協力金が受け取れたため、店を開けて客が全く来ないときよりはマシでした。といっても、協力金は各種支払いに全部消えましたけど」(同) 協力金の仕組み  例えば、2021年1月13日から2月14日までに出された営業自粛・時短営業要請では、1日当たり4万円の協力金が支給された。33日間で計132万円だったが、「家賃の支払いを待ってもらっていた分、カラオケのリース料、酒卸業者への支払いなどで全部なくなった。むしろ、それだけではまかなえなかった」(同)という。  その後は、郡山市の場合、2021年7月26日から8月16日までは、県の「集中対策」として、営業自粛・時短営業要請が出され、この時は売り上げに応じて、「1日2万5000円〜」というルールで協力金が支払われた。昨年1月27日から2月21日までは、まん延防止等重点措置として営業自粛・時短営業要請が出され、この時は「前年度、前々年度の売上高に応じて1日当たり2万5000円〜7万5000円」の売上高方式か、「前年度、前々年度比の1日当たりの売上高減少額の4割」の売上高減少方式を選択できる仕組みだった。  ただ、いずれにしても、「協力金は各種支払いにすべて消える」といった状況だったという。  ちなみに、本誌はこの間、感染リスクが高いとされる業種(旅客業、宿泊・飲食サービス業など)は国内総生産(GDP)の5%程度で、これまで政府がコロナ対策として投じてきた予算が数十兆円に上ることを考えると、東京電力福島第一原発事故に伴う賠償金の事例に当てはめて補償するというような対応が可能で、そうすべきだった――と書いた。 一番厳しかった一昨年夏  男性によると、最も厳しかったのは2021年夏ごろだったという。感染拡大「第5波」が到来し、感染力が強く、重症化のリスクも高いとされる変異種「デルタ株」が流行していたころだ。  「あの時期は本当に厳しかった。平日(月〜木)はほぼお客さんがゼロという日が続き、週末(金・土)だって、それほど入るわけではありませんでしたから。それでも、私は1人でやっていたから、まだマシだったと思う。従業員がいたら、どうしようもなかった」(同)  コロナ前、平日(月〜木)は売り上げが5万円から8万円、週末(金・土)はその約3倍で、週50万円〜80万円の売り上げがあった。それがひどい時は平日はほぼゼロ、週末はコロナ前の平日並みになった。それでも、家賃や光熱費などの固定経費は変わらない。結果、「店を開ければ開けただけ赤字が増える」状況だったというのである。  「最近は少し規制などが緩くなり、以前よりはマシになりました。週末の居酒屋などはそこそこ入っていると思います。ただ、バーや女性が接待する店はまだまだ戻っていない。私の知り合いの店でも、女性キャストは週の半分は休みという感じです。週末は黒字だが、平日の赤字分をカバーしきれない、といった店が多いのではないか」(同)  冒頭、男性は「『やめられるメド』が立った」と語ったが、一番大きいのは、「テナント退去時の修繕費が最初に納めた敷金でまかなえたこと」という。そのほか、残っていた各種支払いがあったが、何とかそのメドが立ったから閉店を決めた。  「テナント退去時の修繕費がどうなるのかが怖かったが、敷金でまかなえたので良かった。逆に、やめたいと思っても、その(修繕費の)見通しが立たなくてやめられないところもあると思います」(同)  男性の知人の店舗でも、やめたところが何軒かあり、「いつやめたのか分からないが、気付いたら閉店していたところもあった」という。  コロナが出始めたころは、ワクチンが普及し、ある程度、通常の生活ができるようになり、客足が戻ってくることを期待していたようだ。ただ、思いのほか長引き、見切りを付けた。最後に男性は「こんなことなら、もっと早くやめれば良かった」と語った。 あわせて読みたい コロナで3割減った郡山のスナック 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査

  • コロナで3割減った郡山のスナック

     新型コロナ感染が日本で拡大してから3年近くが経った。2022年初めまでは緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令され、営業を自粛した飲食店には売り上げ実績の一部が補償された。昨年末は制限のない初めての忘年会シーズンを迎えたが、夜の街の客足はどうなったか。酒類を提供し、接待を伴うことから特に影響が大きいスナックやバー、クラブの店舗数を電話帳で比較した。初回は郡山市。 「2次会なし」で客の奪い合い勃発  民間信用調査会社の東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月、忘・新年会を実施するかについて県内に本社を置く企業にアンケートを行ったところ、回答企業の約8割が「実施しない」と答えた。同月1~8日までインターネットで実施し、80社が回答した。以下は福島民報12月14日付より。  ・緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に関係なく、「無条件で開催しない」と答えた企業は77・50%で10月の前回調査57・14%から20・36㌽上昇。  ・同社郡山支店の担当者は「感染者が増減を繰り返し、ピークが見えない状況で会合開催のハードルが上がっている」と分析する。  NHK(同16日配信)は、「10月後半から新型コロナの感染者が急拡大したことが飲み会自粛につながった。職場単位の大勢でなく、少人数での飲み会が主流になるとみられる」と担当者の見解を紹介している。  開催すると答えた企業でも、そのうち60%以上が2次会を自粛するか、人数を制限するとしている。アンケートからは、新型コロナで大規模な宴会が激減したうえ、「飲み会離れ」が進んでいる実態が見えてきた。  本誌は2005年7月号「2年間で270軒も閉店した福島の飲食店事情」で福島市のバー、スナックの衰退を書いた。飲み慣れた世代が高齢となり、退職や病気で店に行かなくなった。若年世代は会社で飲みに行く習慣に抵抗があり、客数増加は見込めないと分析した。 平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街  「飲み会離れ」は全国的な傾向だが、福島県は事情が少し違う。記事掲載後も東日本大震災・原発事故で経済が落ち込み、確かに客足は減った。「復興バブル」で建設業・除染作業員が県内に進出し、浜通りと中通りの夜の街は一時活気を取り戻したが、復興バブルの終焉が徐々に訪れていたところに新型コロナの影響が直撃した。  新型コロナ拡大から約3年が経ち、夜の街を探る必要がある。2005年の記事では、NTT「タウンページ」の01年と03年の飲食業の掲載数を比較し、閉店数を推計した、今回もその手法を使う。固定電話を置かず、携帯電話やSNSでやり取りする店舗も増えているので正確ではないが、目安にはなるだろう。電話帳記載の店舗が減るということは、老舗が減ったということでもある。  初回は「商都」郡山市を調べる。県が2022年8月に公表した「2019年度市町村民経済計算」によると、市町村内総生産=市町村ごとの経済規模は同市が一番大きい。トップ3は、①郡山市1兆3600億円(県全体の17・1%)、②いわき市1兆3500億円(同17・0%)、③福島市1兆1400億円(同14・4%)だ。  「タウンページ」(2021年10月現在)によると、飲食店関係の掲載数は多い順に次の通り。業種は電話帳の記載に基づく。10店未満の専門店は省略した。 飲食店(居酒屋、食堂の一部重複)195店スナック 159店居酒屋 136店ラーメン店 72店食堂 69店レストラン(ファミレス除く) 48店焼肉・ホルモン料理店 46店うどん・そば店 42店バー・クラブ 42店すし店(回転ずし除く) 40店中華・中国料理店 39店焼き鳥店 32店日本料理店 29店イタリア料理店 15店割烹・料亭 12店うなぎ料理店 10店とんかつ店 10店  重複もあるので、概算で約計900店舗。スナック、居酒屋が圧倒的に多い。接待を伴う飲食店として、特に新型コロナで影響を受けたスナック、バー・クラブの数を調べた。新陳代謝の盛んな業界だから、減少が多くても、新規参入が同じくらいあれば問題はない。新型コロナが襲う2年前の「タウンページ」(2019年11月時点)と比べてみた。  スナック 47店減少、新掲載は5店。 バー・クラブ 5店減少、新掲載は1店。 バー・クラブは約1割減、スナックは約3割減少している。業種や店名を変えた可能性もある。念のため、郡山駅西口の繁華街、駅前と大町に住所があるスナック21店舗に電話をかけた。うち1店舗は営業中。残りの20店は「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが流れた。電話番号を変えたか固定電話の契約を終えたということ。閉店の可能性が高い。下記は2年の間に電話帳から消えたスナック一覧表。 ■コロナ前(2019年)から現在(2021年)までの間に電話帳から消えたスナック 【陣屋】アイギー、明日香、アンク、アンナ、夜上海、我愛你、笑顔、オリーブ、カラオケスナック風の歌がきこえる、絹、Club Vanilla、スナック桜子、Chil、瓶、プティ、桃色うさぎ 【駅前2】絹の家、Nori、花華ふぁふぁ 【大町】こいこい、TELLME、ぶす 【その他】アグライア(朝日)、壱番館(大槻)、イマージュ(朝日)、うさぎ屋薇庵(中町)、小山田壱番館(大槻)、カトリーヌ(菜根)、カミニート(堤下)、ギャップ(中町)、ケイズ・フォー(Ks4fth・中町)、コパン(中町)、サラン韓国スナック(朝日)、スナック華(久留米)、すなっく英の妹(島)、スナックピュア(安積)、スナック福(大槻)、スナックモナリザ(菜根)、スナックやすらぎ(富久山)、スナック夢(朝日)、セカンドハウス(桑野)、SoL(朝日)、たつみ(堂前)、だんらん(麓山)、紬の里(堂前)、ポセイドン(堤下)、美郷(七ッ池)  現在営業している店はどのような状況か。郡山一の繁華街「陣屋」に絞って調査した。陣屋通りの付近で、住所で言えば駅前1丁目に当たる。 感染防止で常連客のみ  前出の東京商工リサーチのアンケートから分かるように、飲み会自体が減り、客層は団体や企業関係から個人グループが主体になっている。週末の金、土曜日はそれなりに人が入っていると想定して、忘年会シーズンの12月17日(土)、開店準備の時間を見計らって午後6~8時の間に電話した。ランダムに22店舗にかけると、いずれも回線は生きていた。6軒が電話に出たので、客の入り具合や経営状況を聞いた。  あるスナックのママAは語る。  「コロナがはやってからもう3年になりますでしょ。まあ何とかやってるって感じね。一番頭を悩ませているのが家賃と人件費です。売り上げが減ったからといって安くはなりません」  あるキャバクラの店長の話。  「まん延防止などが出されることはなくなったが、体感としては昨年よりもお客様は減っています。平日は人が出歩かず、ひっそりとしていますよ。金、土は人が入るといっても平日と比べてマシという程度です。会社の忘年会の2次会、3次会で利用する方が多かったのですが団体客は少ないですね。一グループ多くて3、4人程度です。なじみのお客様に支えられている状態です。営業時間を短くしたり、女の子の出勤を調整している店はあると聞きますが、幸いウチは例年並みの出勤調整に抑えられています」  別のスナックのママBはこう打ち明ける。  「11月から忘年会の予約が入っているのが当たり前だったんですよ。1次会は食事をして、2、3次会でなじみの店でカラオケ、というのがコロナ前の流れでした。2次会は今まずないでしょう。感染を恐れて歌う人も減っているので、カラオケは飲み会の必須ではなくなりましたね。団体は常連さんがゴルフのコンペ後に利用するくらいです」  ママBは、行き場のないいらだちを筆者に向けた。  「雑誌の取材ですか。本当だったら土曜の夜8時に応じるなんてできないんですよ。つまり……そう、ヒマってことです。雑誌だったら宣伝でもしてもらいたいもんだわ。いつまで店を続けられそうかって? そんなの分かりません!」  客には来てほしいが感染を広めてはならないというジレンマがある。 ママCは、  「うちは新規のお客様は断っています。常連さんとその紹介のあった方だけです。『感染者が出た店』となるのが一番怖い。自分も感染したくはない。濃厚接触者になっただけでお店に出られなくなるし、店を数日閉めているとウワサになる。今来てくれるお客様を手放さないように、細々とでも営業するしかないんでしょうね」  電話調査とは別に、県内で飲食店を経営し、業界事情に詳しい男性に話を聞いた。  「繁華街に構える店は家賃が重い負担となってのしかかっています。逆に言えば『家賃さえ下がれば何とかやっていける』という人もいる。潰れない飲食店というのは、住宅街にある町中華のように、住居と一体になった手持ちの物件で営業している店でしょうね」  2次会以降がなくなったことは、スナックの概念にも変化を起こしているという。  「スナックと居酒屋が合体した『イナック』が登場しています。ご飯ものを充実させて、客単価を上げています。2軒目、3軒目に行く客が見込めないので、誰もが1軒目の店になろうと少ないパイの取り合いになっている」(同) 「業種転換したい」  郡山社交飲食業組合・組合長の太田和彦さん(67)=味の串天=は、「組合は約50年前にできましたが、郡山の飲食業も長い時間をかけて廃業、新規開店が繰り返されました。新しい店は組合に入らないところも多い。現在の加盟事業者は14店舗です」と明かす。  うち12店舗がバーやスナック。新型コロナ後は深夜12時前に店を閉める店が増えたという。  「バーやスナックに限りませんが、組合員は私を筆頭に高齢化しています。コロナ禍がきっかけで閉店を考える店もある。スナックの経営者からは『業種転換をしたいがどうしたらいいか』との相談もあります。ここに来てガス代と電気代は値上げ、ビールの仕入れ値も昨年10月に値上がりしました。提供する値段はそうそう上げられません。夜の飲食業はお酒の注文が入って利益が出る仕組みなので、どの店も痛いです」(同)  酒の席で同じ職場の者同士が打ち解ける「飲みにケーション」という言葉も死語になりつつある。新型コロナ拡大が拍車をかけた。  婚活事業などを手がけるタメニー(東京)が昨年11月に会社員の20~39歳の未婚男女2400人に行ったアンケートでは、社内でどのような方法でコミュニケーションを取っているか聞いている。飲み会は8・2%で8位。Eメールのやり取りよりも下だ。 ①直接対面での会話53・4%②通話での会話25・1%③ウェブミーティング17・0%④定例ミーティング16・6%⑤チャットツール15・9%⑥Eメール13・3%⑦1対1のミーティング8・5%⑧飲み会8・2%  以下、ランチ会や社内イベントなどが続く。  「どんな方法でコミュニケーションを取るといいと思いますか」との理想的な方法を調べた質問でも、飲み会は6・9%(8位)で現実の順位と大きな変わりはない。中堅社員がこのような意識ということは、将来的に会社の飲み会は消滅するだろう。中小民間では賃金が上がらないにもかかわらず、物価高が続いている。消費者の財布の紐は固い。 非正規雇用女性の働き口  キャバクラやスナックなどの店が減ることは貧困問題の深刻化にもつながる。水商売は、家族を養わなければならない女性に比較的高い収入を保障し、セーフティネットの役割も果たしてきた。詳しい統計はないが、ネットでキャバクラやスナックの求人欄を見ると、「シングルマザー歓迎」「寮・託児所完備」を押し出している店が多いことから、業界もシングルマザーを積極的に受け入れていることが分かる。  背景には、女性の正社員が男性と比べて少なく、男女の賃金格差が生まれてしまうという事情がある。シングルマザーが昼のパートなど非正規雇用で稼いだだけでは家族を食べさせていけない。  新型コロナが蔓延し始めた2020年には「女性店員が子どもへの感染を恐れ出勤を控える動きもあった」と県内のキャバクラ経営者は語る。キャバクラやスナックが減り、働き口が減った後、彼女たちは別の仕事に行ってしまったのか。その収入で暮らしていけるのか。飲食業が潰れるということは、別のところにしわ寄せが行くということでもある。 あわせて読みたい 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査 「コロナ閉店」した郡山バー店主に聞く

  • 高級レストラン解体で出直し図る三万石

     菓子製造小売業の㈱三万石(郡山市、池田仁社長)が同市開成一丁目で営業していた地中海料理のレストラン「San filo(サンフィーロ)開成」が解体された。レストランには三万石開成店も併設されていた。  12月中旬に現地を訪れると、既に建物の3分の2が壊されていた。看板に書かれていた工期は10月17日から12月28日となっていた。  建物は2006年に約3億5000万円をかけて建設され、同年11月にイタリアン料理の「アンジェロ開成」としてオープンした。ランチタイムになると駐車場に入りきれない車が列をつくり、警備員が誘導するほどの人気店だったが、18年11月に閉店し、翌年7月にサンフィーロ開成としてリニューアルオープン後は客足が途絶えていた。  「アンジェロは1000円超のお手頃価格だったけど、サンフィーロは高くて、気軽に行けるお店じゃなかった」(ある主婦)  ホームページ(HP)によるとサンフィーロはランチ専門の営業で予約制コース、価格は3500円、5500円、1万円となっている。高級路線転換が客離れにつながったことは否めない。実際、駐車場は常にガラガラだった。  サンフィーロ開成はなぜ閉店したのか。三万石のHPを見ると「3月の地震の影響」とある。昨年3月16日に発生した福島県沖地震では相馬市などで最大震度6強を記録し、郡山市内の建物も数多く被災したが、同店もその一つだったという。  三万石の担当者に聞いた。  「建物は2021年2月に起きた地震でも大きな被害を受け、この時は大規模改修を行ったが、3月の地震で再び被害に遭った。特に電気設備の被害が深刻で、もう一度大規模改修をしても同じくらいの地震が来たら動力を確保できないという結論に至った。建物は2011年の東日本大震災でも被災しているので、耐震性の面でもリニューアルは厳しかったと思います」  気になるのは跡地の利活用だ。不動産登記簿謄本によると、同所は三万石の名義で、東邦銀行が2007年に同社を債務者とする極度額2億4000万円の根抵当権を設定している。賃借ではなく自社物件ということは、売却しない限り自社利用を目指す公算が高そう。  前出・担当者もこう話す。  「基本的には自社利用する方針だが、何を建てるかとか、どんな使い方をするかなど、具体的な内容は検討中です。いつごろオープンするといった時期も決まっていない」  サンフィーロ開成と同じ業態のレストランは福島市内にもあるが、同店も混雑している様子は見たことがない。跡地に再びレストランをつくるかどうかは分からないが、少なくとも「高級路線が客足を遠ざけた」反省は生かす必要があろう。  ところで三万石は、昨年3月に新会社㈱三万石商事(郡山市、池田仁社長)を設立している。目的は、三万石の外商部門とECサイト部門を新会社に分離・移管して人的資源を投入し、自らは製造と卸売に専念するため。これにより三万石商事は、コロナ以降好調なスーパーへの販路拡大、ネット販売などに注力。一方の三万石は、人件費圧縮と、製造品を三万石商事に卸売りすることで安定した売り上げを確保する狙いがあるとみられる。  三万石は2021年3月期決算が売上高30億円、7100万円の赤字だったが、22年3月期は同36億円、1億3500万円の黒字と持ち直した。今期決算で新会社設立の効果がどう表れるのか注目される。 あわせて読みたい 青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題【郡山市】 青木フルーツ「合併」で株式上場に暗雲!?【郡山市】

  • 南東北病院「移転」にゼビオが横やり

     県は2022年11月8日、郡山市富田町の旧農業試験場跡地を売却するため条件付き一般競争入札を行い、総合南東北病院を運営する脳神経疾患研究所(郡山市、渡辺一夫理事長)など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院をはじめ複数の医療施設を同跡地に移転させ、2027年度をめどに開設する計画。  同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、同市が医療機器関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に移転すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた。  ところが2022年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を密かに練ったことがある。  ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」。しかし、入札価格が51億5000万円だったため、同社は落札には至らなかった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。  同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、ゼビオの入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。 あわせて読みたい 【郡山】南東北病院「県有地移転案」の全容

  • 郡山市の専門学校【FSGカレッジリーグ】仮想空間で授業を実施

     専門学校グループ「学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ」(郡山市)は1984(昭和59)年の開校以来、38年間積み上げてきた指導ノウハウと、2万0900人以上の卒業生ネットワークによる学生支援体制を備え、若者の学び場の充実を図り続けてきた。同グループは5校57学科で構成されており、東北最大級の規模を誇る。  グループ校の一つ、国際アート&デザイン大学校では9月、米国発メタバース「Virbela(バーベラ)」の日本向けプラットフォーム「GIGA TOWN(ギガタウン)」を活用した実証授業を実施した。専門学校としては初の試み。  メタバースとはインターネットの中に構築された仮想空間のこと。自分自身の分身(アバター)を操作して他者と交流できる。ゲームなどで使われてきたが、近年はビジネスシーンでの利用も進んでおり、今後の成長が見込まれている。  同校は「ギガタウン」の日本公式販売代理店・㈱ガイアリンク(長野県)と連携。学生らはアバターを使って「ギガタウン」での授業に参加し、事例研究、ゲーム、ディスカッション、グループ発表などを行った。  参加した学生からは「実際にその場で授業を受けているような臨場感があり、楽しかった。テーブルごとに個別通話できたり、画面を複数に分けて資料を提示できるなど、さまざまな機能があり、使いやすかったです」との声が聞かれた。  実証授業は学生の夢や目標達成のためのスキル、コミュニケーション力を育む目的で行われたもの。同校では5月にも、ICT関連やデジタルコンテンツ分野の教育機関を運営するデジタルハリウッド㈱(東京都)と連携し、アバター生成・操作のアプリケーションを使用した実証授業を行っている。  同グループでは教育のICT化を進める「Ed―Tech推進室」が中心となって、ICT技術・デジタル化を活用した効果的な授業の在り方を検討しており、同校の授業に積極的に取り入れている。  例えば、同校コミックマスター科では県内で初めて、アニメーション制作ソフト「Live2D」を授業に導入した。同ソフトは低コストで原画の画風を保ったアニメーションが制作できることから、家庭用ゲームやスマートフォンアプリに多く使用されている。同校は「Live2D」モデル作成ソフトライセンス無償貸与の教育支援プログラム認定校に県内で唯一指定されているため、授業での使用が可能となった。  一方でアナログテクニックを身に付ける実習も充実させており、どんな現場にも対応できる即戦力のスペシャリストの養成に努める。  ICT関連の資格取得も全力で支援しており、「PhotoShop(フォトショップ)クリエイター能力認定試験」の合格率は100%を誇る。さらにCGクリエイター検定の文部科学大臣賞を全国で唯一3年連続受賞している。  同グループが目標として掲げているのは「ONLY1、No・1」の教育実績。今後もコロナ禍以降本格的に導入したICT教育を発展させる形で、メタバースを活用した授業を推進し、学生一人ひとりのニーズに沿った教育を行うことで、夢の実現をサポートしていく考えだ。 FSGカレッジリーグのホームページ FSGカレッジリーグのオープンキャンパス・保護者説明会に参加する

  • 除染バブルの後遺症に悩む郡山建設業界

    災害時に地域のインフラを支えるのが建設業だ。災害が発生すると、建設関連団体は行政と交わした防災協定に基づき緊急点検や応急復旧などに当たるが、実務を担うのは各団体の会員業者だ。しかし、近年は団体に加入しない業者が増え、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は減り続けている。会員業者が増えないのは「団体加入のメリットがないから」という指摘が一般的だが、意外にも行政の姿勢を問う声も聞かれる。郡山市の建設業界事情を追った。 災害対応に無関心な業者に老舗から恨み節 地域のインフラを支える建設業  「今、郡山の建設業界は真面目にやっている業者ほど損している。正直、私も馬鹿らしくなる時がある」  こう嘆くのは、郡山市内の老舗建設会社の役員だ。  2011年3月に発生した東日本大震災。かつて経験したことのない揺れに見舞われた被災地では道路、トンネル、橋、上下水道などのインフラが損壊し、住民は大きな不便を来した。ただ、不便は想像していたほど長期化しなかった。発災後、各地の建設業者がすぐに被災現場に駆け付け、応急措置を施したからだ。  震災から11年8カ月経ち、復興のスピードが遅いという声もあるが、当時の適切な対応がなかったら復興はさらに遅れていたかもしれない。業者の果たした役割は、それだけ大きかったことになる。  震災後も台風、大雨、大雪などの自然災害が頻発している。その規模は地球温暖化の影響もあって以前より大きくなっており、被害も拡大・複雑化する傾向にある。  必然的に業者の出動頻度も年々高まっている。以前から「地域のインフラを支えるのが建設業の役割」と言われてきたが、大規模災害の増加を受け、その役割はますます重要になっている。  前出・役員も何か起きれば平日休日、昼夜を問わず、すぐに現場に駆け付ける。  「理屈ではなく、もはや習性なんでしょうね」(同)  と笑うが、安心・安全な暮らしが守られている背景にはこうした業者の活躍があることを、私たちはあらためて認識しなければならない。  そんな役員が「真面目にやるのが馬鹿らしくなる」こととは何を指すのか。  「災害対応に当たるのは主に建設関連団体に加入する業者です。各団体は市と防災協定を結び、災害が発生したら会員業者が被災現場に出て緊急点検や応急復旧などを行います。しかし近年は、どの団体も会員数が減っており、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は少なくなっているのです」(同)  2022年9月現在、郡山市は136団体と災害関連の連携協定を交わしているが、「災害時における応援対策業務の支援に関する協定書」を締結しているのはこおりやま建設協会、県建設業協会郡山支部、県造園建設業協会郡山支部、ダンプカー協会、郡山建設業者同友会、市交通安全施設整備協会、郡山電設業者協議会、県中通信情報設備協同組合、市管工事協同組合、郡山鳶土工建設業組合、県南電気工事協同組合など十数団体に上る。  いくつかの団体に昔と今の会員数を問い合わせたが、増えているところはなく、団体によってはピーク時の6割程度にまで減っていた。  「業者の皆さんに広く加入を呼びかけているが、増える気配はないですね」(ある組合の女性事務員)  会費は月額1万円程度なので、負担にはならない。しかし、  「経営者が2代目、3代目に代わるタイミングで会員を辞める会社が結構あります。時代の流れもあるでしょうし、若い経営者の価値観が昔と変わっていることも影響していると思います」(同)  それでも、会員になるメリットがあれば、経営者が代わっても引き続き団体に加入するのだろうが、  「加入を呼びかける立場の私が言うのも何ですが、明確なメリットと聞かれたら答えられない」(同)  昔は今より同業者同士のつながりが大切にされ、先輩―後輩のつながりで業界のしきたりを習ったり、仕事の紹介を受けたり、技術を学び合うなど団体加入には一定のメリットがあった。  今はどうか。別の団体の幹部に加入の具体的なメリットを尋ねると  「対外的な信用が得られます。組合は『社内にこういう技術者がいなければならない』など、入るのに一定の条件が必要。つまり組合に入っていれば、それだけで技術力が伴っている証拠になる」  正直、そこに魅力を感じて団体に加入する業者はいないだろう。  「ウチみたいに昔から入っているところはともかく、新規会員を増やしたいなら加入のメリットがないと厳しいでしょうね」(前出・老舗建設会社の役員)  会員数の減少は、そのまま〝地域の守り手〟の減少に直結する。それはいざ災害が発生した時、緊急点検や応急復旧などに当たってくれる業者が限られることを意味する。  それでなくても郡山は、新規会員が増えにくい状況にある。理由は、震災後に増えた「新参者」の存在だ。別の建設会社の社長が解説してくれた。  「新参者とは震災後、除染を目的に県外からやって来た人たちです。建設業界はそれまで深刻な不況で、公共工事の予算は年々減っていた。そこに原発事故が起こり、除染という新しい仕事が出現。『福島に行けば仕事がある』と、全国から業者が押し寄せたのです」  除染事業に従事するには「土木一式工事」や「とび・土工・コンクリート工事」の建設業許可が必要になる。許可を得て、資機材を揃えて大手ゼネコンの4次、5次下請けに入る小規模の会社はあっと言う間に増えていった。  「新参者が増えるのは行政にとってもありがたかった。住民が『早く除染してほしい』と求める中、業者の数がいないと予定通り除染は進まないわけですからね」(同) 尻拭いを押し付ける郡山市 郡山市役所 しかし、同じ仕事が永遠に存在するはずもなく、市内の除染が一通り終わると新参者の出番も減った。  この社長によると、新参者はその後、①経営に行き詰まって倒産、②浜通りなど除染事業が続いている地域に移動、③一般の土木工事に衣替え――の三つに分かれたという。  「一般の土木工事に衣替えした業者は、正確な数は分からないが結構います。私のように昔から郡山で仕事をやっていれば、社名を聞くだけでそこが新参者かどうか分かる。傾向としては、カタカナやアルファベットなど横文字の社名は該当することが多い」(同)  郡山市の「令和3・4年度指名競争入札参加有資格業者名簿」(2022年4月1日現在)を見ると、土木一式工事の許可業者は103、とび・土工・コンクリート工事の許可業者は225ある(いずれも市内に本社がある業者のみをカウント)。二つを見比べると、土木一式工事の許可業者はとび・土工・コンクリート工事の許可も併せて得ている。そこで後者の業者名を確認していくと、新参者に該当するのではないかと思われる業者は40社前後、全体の2割近くを占めていた。  除染事業がなくなっても、新たな仕事を求め、生き残りを図ろうとする姿はたくましい。建設業許可を得て一般の土木工事に従事するのだから法令違反でもない。社長も「そこを否定するつもりはない」と話す。ただ「新参者は暗黙のルールを守らないため業界全体が歪みつつある」というのだ。  「新参者は地域性を考えない。例えば、A社が本社を置く〇〇地域で道路工事が発注されたら、一帯の道路事情を知るのはA社なので、入札では自然とA社に任せようという雰囲気になる。これは談合で決めているわけではなく、不可侵というか暗黙のルールでそうなるのです。だから、A社は隣の××地域や遠く離れた△△地域の道路工事は取りにいかない。しかし、新参者は『競争入札なんだから地域性は関係ない』と落札してしまうわけです」(同)  新参者から言わせれば「暗黙のルールに基づく調整こそ談合みたいなもの」となるのだろう。ただ、〇〇地域の住民からすれば、見たことも聞いたこともない業者より、馴染みのあるA社に工事をやってもらった方が安心なのは間違いない。  「A社がある道路工事を仕上げ、そこから先の道路工事が新たに発注された時、継続性で言ったらA社が受注した方が工事はスムーズに進む可能性が高い。しかし、新参者はそういう配慮もなく、お構いなしに落札してしまう」(同)  しかしこれも、新参者から言わせると「落札して何が悪い」となるのだろうが、社長が解せないのは、その後の尻拭いを市から依頼されることにある。  「もともと除染からスタートした業者なので、土木工事の許可を持っていると言っても技術力が備わっていない。そのせいで、工事終了後に施工不良個所が見つかるケースが少なくないのです。解せないのは、市がその修繕を当該業者にやらせるのではなく、再発注も面倒なので、現場に近い地元業者にこっそり頼むことです。市には世話になっているので頼まれれば手伝うが、地域性や継続性を無視して落札した新参者の尻拭いを、私たちに押し付けるのは納得がいかない」  実は、そんな新参者の多くは建設関連団体に加入していないのだ。再び前出・老舗建設会社の役員の話。  「新参者は建設関連団体に入っていないから、災害が起きても被災現場に駆け付けない。でも、入札では災害対応に当たる私たちと同列で競争し、仕事を取っている。不正をしているわけでなく、正当な競争の結果と言われればそれまでだが、地域に貢献している自負がある私たちからすると釈然としない」 「災害対応に正当な評価を」  会員業者は日曜夜に被災現場に出動しても、防災協定に基づくボランティアのため、月曜朝からは通常業務を行わなければならない。一方、建設関連団体に加入していない業者は被災現場に出動することなく休日を過ごし、月曜から淡々と通常業務に当たる。だからと言って、未加入の業者にペナルティーが科されることはなく、被災現場に出動した業者に特別なインセンティブがあるわけでもない。  これでは、会員業者が「真面目にやるのが馬鹿らしい」と愚痴を漏らすのは当然で、わざわざ建設関連団体に加入する新規業者も現れない。  「市がズルいのは、入札は公平・公正を理由にどの業者も分け隔てなく競争させ、災害や施工不良など困ったことが起きた時は建設関連団体を頼ることだ。真面目にやっている私たちからすると、市に都合よく使われている感は否めない」(同)  これでは、新規会員はますます増えない。そこでこの役員が提案するのが、市が建設関連団体加入のメリットを創出することだ。  「会員業者は指名競争入札で指名されやすいといったインセンティブがあれば、災害対応に当たる私たちも少しはやりがいが出るし、今まで災害対応に無関心だった新参者も建設関連団体に入ろうという気持ちになるのではないか」(同)  郡山市では1000万円以上の工事は制限付一般競争入札、1000万円未満の工事は指名競争入札を導入しているが、2021年度の入札結果を見ると、落札額の合計は制限付一般競争入札が約99億8000万円、指名競争入札が約25億7200万円に対し、発注件数は前者が約150件、後者が約640件と指名競争入札の方が4倍以上多い。役員によると、会社の規模が小さい新参者は指名競争入札に参加する割合が高いという。  同市の指名競争入札に参加するには2年ごとに市の審査を受け、入札参加有資格業者になる必要がある。その手引きを見ると、市内に本社を置く業者が提出する書類に「災害協定の締結」「除雪委託契約の締結」の有無に関する記載欄があるが、市がそれをどれくらい重視しているかは分からない。  前述した建設関連団体のいくつかに問い合わせた際、  「災害協定を結んでいるかどうかは、市が審査をする上で少しは加点要素になっていると思う」(前出・女性事務員)  「実際に被災現場に駆け付けている点は(指名の際に)加味してほしいと市に申し入れている。そこを市がもっと評価してくれれば新規会員も増えると思うんですが」(前出・別の組合幹部)  と語っていたが、市が日頃の災害対応を正当に評価しているかというと、建設関連団体にはそう感じられないのだろう。  「会員業者が増えないと災害対応が機能しない。それによって困るのは市民です。そこで、安心・安全な暮らしを維持するため、災害協定と除雪委託契約の締結を指名競争入札に参加するための重要要件にしてはどうか。そうすれば、建設関連団体に無関心の新参者も加入を検討するし、新規会員が増えれば災害が起きた時、市民も助かります」(同) 指名競争を増やす福島県の狙い 福島県庁  県では佐藤栄佐久元知事時代に起きた談合事件を受け、2006年12月に入札等制度改革に係る基本方針を決定。指名競争入札を廃止し、予定価格250万円を超える工事は条件付一般競争入札に切り替えた。しかし、過度な競争や少子高齢化で経営が悪化し、災害対応や除雪に携わる業者がいなくなれば地域の安心・安全確保に支障を来すとして〝地域の守り手〟である中小・零細業者を育成する観点から「地域の守り手育成型方式」という指名競争入札を2020年度から試行している。  農林水産部と土木部が発注する3000万円未満の工事を指名競争入札にしているが、入札参加資格の要件には「災害時の出動実績又は災害応援協定締結」と「除雪業務実績又は維持補修業務実績」が挙げられている。指名競争入札を増やすことで〝地域の守り手〟を支えていこうという県の狙いがうかがえる。  会津地方は郡山と比べて仕事量が少ないため、新しい会社が次々と誕生することもなく、昔から営業している会社が建設関連団体を形成し、地域のインフラを支える構図が成立している。業者数は少ないが、地域を守るという意識が業界全体で統一されている。  これに対し郡山は、業者数は多いが建設関連団体の会員業者は少ないため、業界全体で地域を守るという意識が希薄だ。もし入札制度を変えることで会員業者が増え、市民の安心・安全を確保できるなら、市は真剣に検討すべきではないか。  「入札の大前提にあるのは公平・公正だが、時代の変化と共に変えるべきものは変えなければならないことも承知しています。災害が年々増えている中、業者の協力がなければ市民の生命と財産は守れません。その災害対応については、市でも審査時に評価してきましたが、出動頻度が増えている今、それをどのように評価すべきかは今後の検討課題になると思います。県が試行している指名競争入札なども参考にしながら考えたい」(市契約検査課)  官が民に、建設関連団体への加入を〝強要〟するのは筋違いかもしれない。しかし現実に、災害の増加に反比例して〝地域の守り手〟は減少している。だったら、普段から災害対応に当たっている業者には、その労に報いるためインセンティブを与えるべきだし、それが魅力になって団体に加入する業者が増えれば、建設業界全体で地域を守るという意識が醸成され、災害に強いまちづくりが実現できるのではないか。 郡山市ホームページ あわせて読みたい 建設業者「越県・広域合併」の狙い【小野中村】【南会西部建設】 「地域の守り手」企業を衰退させる県の入札制度 福島市「デコボコ除雪」今シーズンは大丈夫?