ticker
注文のご案内
注文のご案内
フルーツジュース店や洋菓子店などを全国展開する㈱青木商店(郡山市、1950年設立、資本金1000万円※)。同社は株式上場を長年の悲願としており、2017年には持ち株会社の青木フルーツホールディングス㈱(住所同、資本金2300万円)を設立した。 ※法人登記簿によると青木商店の資本金は1000万円だが、HPにはなぜか「資本金等4500万円」と表記されている。こうした〝微妙な不正確さ〟が、青木氏が地元経済界からイマイチ信用されない要因なのかもしれない。 そんな両社の経営動向と、代表取締役を務める青木信博氏(75)の人物像は本誌昨年4月号「青木フルーツ『上場』を妨げる経営課題」という記事で詳報しているので参照されたい。この稿で取り上げるのは、3月1日付の地元紙で報じられた「両社の合併」についてである。 福島民友はこう伝えている。 《持ち株会社青木フルーツホールディングス(HD)は1日付で青木商店と合併する。青木商店が存続会社となり、同HD会長・社長の青木信博氏(75)が代表権のある会長に就く》《2月24日に開かれた同HDの臨時株主総会で合併の承認を受けた。同HDは合併について「組織再編を通じて経営の効率化を図るため」としている》 併せて、青木氏は同紙の取材に、タイの関連会社を新型コロナの影響で閉鎖したことも明かしている。 一般的に、持ち株会社は事業ごとに分かれた子会社を持ち、事業拡大やリスク分散を図るが、青木フルーツHDの場合は子会社が青木商店1社しかなく、持ち株会社としての存在意義は薄かったようだ。そもそも持ち株会社をつくる狙いは経営効率化なのに「両社を合併して経営効率化を図る」と言ってしまったら、青木フルーツHDの存在を自分から否定したことにならないか。 それはともかく、今後気になるのは持ち株会社をなくしたことで悲願の株式上場はどうなるのか、ということだ。これに関して青木氏は、福島民友の取材に「合併を機にスピードを上げて実現したい」と述べている。上場はあきらめないということだが、現実はどうなのか。 青木商店と青木フルーツHDはこれまで、三井住友信託銀行の証券代行部に株主名簿管理人を依頼していた。株主名簿管理人とは、株式に関する各種手続きや株主総会の支援などを代行する信託銀行や専門会社のこと。上場企業は会社法により株式事務の委託が義務付けられているため、青木商店は2014年から、青木フルーツHDは設立と同時に同行を株主名簿代理人に据えていた。 ところが青木商店の法人登記簿を見ると、今年1月12日付で株主名簿管理人を廃止している。これは何を意味するのか。 同行証券代行部に確認すると「青木商店に関する業務は取り扱っていない。ただ、青木フルーツHDに関する業務は現時点でも取り扱っている」と言う。記者が「青木フルーツHDは青木商店と合併し、既に解散している」と指摘すると「解散については把握していない。営業サイドと状況を確認し、必要があれば更新したい」と答えた。 青木商店にも問い合わせてみた。 「三井住友信託銀行とは青木フルーツHDが契約していたが、登記上は青木商店の株主名簿管理人にもなっていた。そこで、今回の合併を受けHDとしての契約は破棄し、青木商店の登記もいったん抹消して、同行には新たに青木商店として株主名簿管理人をお願いする予定です。株式上場は引き続き存続会社の青木商店で目指していきます」(総務部) 株式上場はあきらめない、とのこと。今後のポイントは上場に耐え得る決算(経営状態)を実現できるかどうかだが、せっかくつくった持ち株会社を解散する迷走ぶりを見せられると、悲願達成はまだまだ先のような気がしてならない。 あわせて読みたい 青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題【郡山市】
郡山市大平町の市道交差点で発生した一家4人死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた福島市泉の会社員高橋俊被告(25)に対し、地裁郡山支部は4月10日、禁錮3年(求刑禁錮3年6カ月)の判決を言い渡した。 裁判では、初めて通る道路にもかかわらず、助手席に置いたスマホに知人女性から連絡があるかどうか、気にしながら運転していたことが分かった。交差点に一時停止の標識などが設置されておらず、停止線も消えかかっていたのを踏まえ、小野寺健太裁判官は「過失の程度は重大であったとまでは言えないが、結果の重大性も考慮すれば、執行猶予を付けることは相当ではない」とした。 記者は夜、実際に現場を走ったが、坂道で加速するのに見通しが悪く、減速しながら慎重に降りた。判決によると高橋被告は約60㌔で交差点に入ったというから、漫然と運転した結果が悲劇を生み出したと言える。 あわせて読みたい 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 郡山市・警察が放置してきた危険【交差点一覧】
(2022年9月号) 郡山市内の放課後児童クラブ支援員が保護者会費を横領した――。編集部宛てにこんな告発メールが届いたことを8月号で紹介したところ、記事脱稿後に市が記者会見を開き、概ね事実だったことが分かった。子どもたちの〝おやつ代〟として使われるべき金を生活費として使い込んでおり、同業者や保護者からは怒りの声が聞かれる。 公式発表前に届いた内部告発メール 一連の経緯は本誌8月号「郡山市民が呆れるアノ話題 学童保育支援員に横領疑惑が浮上」という記事で紹介した。 7月上旬、編集部宛てに以下のような内容のメールが寄せられた。 《芳賀小児童クラブで2年前ぐらいから、会計を務める主任支援員が保護者会費(保護者が支払うおやつ代などの運営費)を着服している。その額は100万円以上。市の子ども政策課は事実を把握しているが、公表しておらず、なかったことにしようとしている》 芳賀小児童クラブは放課後の間、児童を預かる放課後児童クラブ(学童保育とも呼ばれる)の一つ。同小学校の校庭に建てられた施設に開設されており、児童は勉強(宿題)や運動、遊びをして過ごしている。 子どもたちの〝先生役〟となるのは「放課後児童支援員(以下、支援員と表記)」という資格を持つ職員。同市の放課後児童クラブは公設公営なので、いずれも市職員(会計年度任用職員)だ。 保護者会費とは、市に支払う利用料金とは別に支払う料金で、おやつなどの購入に使われる。同クラブは100人弱の児童が利用。毎月1人2300円の保護者会費を支払っており、会計担当の支援員が現金で預かる形になっていた。メールの内容が事実だとすれば、市職員がその金を横領していたことになる。 7月下旬、放課後児童クラブを管轄する市こども政策課にメールの内容について問い合わせると、担当者は「その放課後児童クラブに関しては現在調査中であり、事実関係や当該支援員の扱いも含めて、いまはお話しできません、ただ、調査が終わった段階で、然るべき形で発表しようとは考えています」と話した。内部で何らかのトラブルが起きていたことを認めたわけ。 同クラブに直接足を運んだが、「私どもも詳しい事情は分からない。コメントは控えさせていただきます」(当日勤務していた支援員)と話すのみだった。 いずれにしても、これだけ内情を知っているということは、差出人は同クラブを利用する保護者か、同市の職員・支援員だろう。ただ、確証が得られなかったため、8月号記事では学校名を伏せ、「疑惑」として紹介する形に留めた。 そうしたところ、記事脱稿後の8月2日、市が「放課後児童クラブ保護者会費(運営費)を横領した会計年度任用職員の懲戒処分について」という内容の記者会見を開いた。総合的に判断して同クラブで起きた案件と思われ、公益性もあると判断したので、本稿では実名で表記する。 市によると、横領したのは2009年から支援員として働いていた50代女性。20年度から22年度にかけて、保護者会費の一部239万4069円を横領。その事実を隠蔽するため、20、21年度の収支決算書を偽造していた。 横領期間は2020年8月から22年5月までの22カ月間。横領額の内訳は20年度68万1160円、21年度138万4000円、22年度32万8909円。 市こども政策課によると、保護者会の規約では「会計(=保護者)は担当支援員(=市職員)と相互協力のもと、円滑な運営を遂行する」と規定されており、市も「職員は2人以上が担当する」と指導していた。 ところが、芳賀小児童クラブに関しては、同支援員が一人で会計を担当。保護者から預かった会費は口座に入金せず金庫で管理し、収支決算書で帳尻合わせをしていた。保護者会で会計監査も行われていたそうだが、会計監査担当者に帳簿と領収書を一部分だけ突き合わせさせ、金額が合っていると信じ込ませる形で切り抜けていた。 239万円横領の理由 8月2日に行われた記者会見 周囲が異変に気付いたのは2022年5月。同クラブの別の支援員から「おやつ代を立て替えた際の清算が遅くて困っている」と相談を受けた同課の職員が事務指導を行っている中で、保護者会費が通帳に記帳されていないことが発覚。関係書類を提出させたところ、毎月ほぼ一定であるはずの保護者会費の収入額がなぜか月によって開きがあった。 同課の職員が6月14日、会計担当だった同支援員に事情聴取したところ、横領と書類偽造を認めた。 同課の聞き取り調査に対し、同支援員は「父が所有する事業用倉庫内の機械等を撤去する必要があり、その費用(約70万円)を工面するため、『一時的に借りよう』と思い一部を横領してしまった。その後も自分の生活が苦しかったこともあり、生活費に充てるため、横領を繰り返してしまった」と語ったという。 前述の通り、保護者会費はすべて現金で支払われ、金庫で管理されていた。すなわち1000円札や100円玉などを金庫からそのまま持ち出し、使っていたことになる。「生活費に充てるため」と語っていたというが、「ちょっと拝借する」程度で年間140万円にはなるまい。完全に感覚が麻痺してしまっていたのだろう。会見では記者から宗教団体などの関与を疑う質問もあった。 冒頭のメールには「全額回収のめどが立たないので市こども政策課としても公表できないようだ。このまま隠蔽するのではないか」とも書かれていたが、結局、同支援員は全額を返済した。同課は6月14日に事件が発覚してから1カ月以上公表しなかった理由について、「同支援員に返還の意思があり、そちらを優先したため」と明かした。 その一方で、同支援員は8月2日付で懲戒免職になった。本来、業務上横領罪に問われる案件だが、市では横領分が全額返済されたことから刑事告訴は行わない方針。そうした条件で示談にしたということだろう。 8月1日には保護者向けの説明会が開かれ、横領期間に利用していた児童の在籍期間に応じて返金する方針が伝えられた。対象となる保護者は延べ124人。 おやつ代として支払われていた保護者会費を横領していたということは、その分子どもたちへのおやつをケチっていたと考えられる。県内で活動する支援員はこう語る。 「保護者会費2300円ということは、1カ月に23日利用するとして、1日100円使う計算なのでしょう。うちのクラブでは大袋の菓子をみんなで分けて1日60円程度で済ませ、浮いた分で誕生日やイベント時に振る舞うケーキを買うなど、メリハリを付けている。問題の支援員はそうしたやりくりをせず、ひたすら安く済ませて横領分を捻出していたのかもしれません」 保護者会費は単純計算で年間1人当たり2万7600円、100人分で276万円。その中から最大138万円横領(2021年度)していたということは、おやつ代1日50円の計算で運営していたことになる。一緒に勤務していた支援員は気付かなかったのか。それとも会計を務める支援員だから何も言えなかったのか。同課は実名を伏せ、詳細も明かしていないので真相は分からないが、〝どんぶり勘定〟であったことがうかがえるし、市のチェック体制にも問題があったと言わざるを得ない。 8月上旬、同クラブ周辺で、児童を迎えに来た父親に声をかけたところ、「最悪ですよね。自分たちが預けていた金を勝手に使われていたわけですから」と述べた。 ほかにも複数の保護者に声をかけたが、「詳しく分からない」、「時間がない」と明言を避け足早に帰っていく人が多かった。「仕事と子育てを両立するのに忙しい中で、放課後児童クラブの内情まで把握できないし、余計なトラブルに巻き込まないでくれ」というのが本音かもしれない。市のチェック体制の甘さと保護者の〝無関心〟の間で、約2年にわたる横領が見過ごされてきたのだろう。 放課後児童クラブへの不満 取材の中では、同市の放課後児童クラブへの不満の声も聞かれた。 「子どもが利用し始めた当初、放課後をただ遊んで過ごしていることが分かり、『せめて宿題を終えてから遊べよ』と叱ったことがある。放課後の間、預かってもらうのはとてもありがたいが、それ以上のことは期待できないのだな、と実感しました」(2021年まで市内の放課後児童クラブを利用していた保護者) 放課後児童クラブにおいては、支援員の資格を持たない職員も「補助員」として働いている。ただ、支援員事情に詳しい関係者によると「現在人手不足なので、基本的には誰でもなれる状況。地域の高齢者などが務めることも多いが、親族や顔見知りの児童に甘い対応を見せて、不満が生まれることもある」。 2021年3月号では「郡山市の児童クラブで支援員が体罰!?」という記事を掲載した。「放課後児童クラブに通う長男が支援員から体罰を受けた」という投書の内容を検証したもので、支援員にそのつもりはなかったものの、誤解を招きかねない言動が確認されたという。 同市の放課後児童クラブの利用料金は1カ月4800円(生活保護受給世帯など条件によって軽減措置あり)。保護者会費2300円と合わせると約7100円に上る。「その金額で放課後の間預かってくれるなら十分だ」という保護者もいるが、その一方で「物足りない」、「割に合わない」と不満を抱く保護者もいるということだ。 同市の放課後児童クラブは市内50校に81クラブ設置されており、各クラブでは5~10人の支援員が勤務している。その大半は誠実に働いているが、今回のような不祥事が発覚すれば、保護者からの信頼をさらに失うことになる。 前出・県内で活動する支援員は次のように憤る。 「私たちは子どもたちから〝先生〟と呼ばれる立場にある。その立場の人間が『子どもたちの健全な育成のために』と保護者からもらったおやつ代(保護者会費)を横領する……これは、目の前の子どもより自分の生活費を優先したということであり、到底許されることではありません」 テレビや新聞での扱いは小さく、詳細が分かっていないことも多いが、市は今回の事件を重く受け止め、再発防止策を徹底しなければならない。前出のメールの差出人は、それが期待できないと懸念したから、本誌に〝内部告発〟したのだろう。 市では保護者会役員と支援員の役割を明確化して監査を行うとともに、コンプライアンス研修などを実施し再発防止に努める考えだ。しかし、そうした対応だけでは不十分だ。会計のダブルチェックの徹底、提供されるおやつのSNSでの公開など、保護者会費の使途をできる限り透明化し、「これなら横領できそうだ」という悪意が入り込めないような体制構築が求められる。 あわせて読みたい 郡山市【ヒューマニティー保育園】人気保育所が660万円不正受給
(2022年10月号) 郡山市の認可保育所「ヒューマニティー保育園」が委託費を不正受給していたとして、新規園児受け入れ半年間停止の行政処分を受けた。不正受領していた金額は約660万円に上り、市は返還を求めている。 〝投書攻撃〟を受けていた運営法人 ヒューマニティー保育園を運営しているのは一般社団法人ヒューマニティー幼保学園(瓜生麻美代表理事)。子どもの能力を開花させる教育法として話題になった「ヨコミネ式」を導入して人気を集めており、認可外保育所や学習塾なども運営する。 私立の認可保育所には市から委託費(運営費用)が支払われているが、同保育所では、非常勤の所長を常勤勤務として市に報告。加算分の受給要件を満たしていないにもかかわらず、2019年9月から21年3月にかけて、委託費659万8280円を不正に受給していた。 さらに昨年12月22日に行われた定期施設監査において、在籍していない保育士1人を「勤務していた」と偽って市に報告。虚偽の出勤簿や履歴書などを作成して提出していた。併せて同法人が運営する認可外保育施設などで使用する中古車2台(計65万円)を、同保育所の委託費で購入していたことも判明。市は同保育所への9月・10月分委託費から不正分を差し引く考え。 市は「昨年12月の定期施設監査の書類が偽造されていた」と外部から通報を受け、1月に特別監査を実施。この間、書類精査や関係者の聴取を行ってきた。市の聴き取りに対し、同保育所の関係者は「当初から不正の認識はあった。運営会社の指示を受けて行った」(NHKニュース)と語っていたというから、組織ぐるみだった可能性が高い。 同法人に関しては、匿名投書が連続で送られてきたとして、本誌2013年11月号で取り上げたことがある。内容はいずれも「保護者に説明がないまま新保育園建設が進められている」という不満を綴ったもので、「保育士の人数など、法律を無視した運営がなされている」など運営の怪しさを指摘する記述もあった。 当時の本誌取材に対し、園長代理を務めていた瓜生氏は「保護者にはきちんと説明しており、法律違反の点もない」、「(同法人の運営が)まるで不安要素だらけのように書かれているのは悪意を感じますね」と話し、「投書は外部から見たイメージだけで意図的に悪く書かれている。これ以上続くようであれば、差出人に対し法的手段を取ることも考えています」と息巻いていた。 同市保育課の担当者も「(当時、同法人が運営していたのは認可外保育所のみだったので)投書で苦情を言われても市としては対応しようがない」というスタンスだった。 だが結果的に、保育士の数を偽っていると指摘していた〝投書攻撃〟は事実だったことになる。 不正受給の件について、あらためて同法人に問い合わせたが、担当者はどの質問にも「市に報告し、この間報道されたことがすべてです」と答えるのみだった。記者が「2013年の取材当時も実は内部で不正が行われていたのではないか」と尋ねると「あの時点では間違いなく不正行為はしていなかった」と述べた。市は同法人が返金の意思を示していることから刑事告訴しない方針。不正受給の動機は分からずじまいだ。 9月下旬、同保育所を訪ねると静まり返っていた。新規園児受け入れ停止期間は来年3月末まで。保護者の反応は聞けなかったが、悪質な不正受給の実態を知って、退園する動きが出てきても不思議ではない。 あわせて読みたい 郡山市【芳賀小】学童支援員横領は事実だった
1月に郡山市大平町で発生した交通死亡事故を受けて、市が危険な市道交差点をピックアップしたところ、222カ所が危険個所とされた。対象となる交差点で対策が講じられたが、これまで改善を要望し続けてきた住民は「死亡事故が起きて初めて動くのか」と冷ややかな反応を見せる。(志賀) 「改善要望を無視された」と嘆く住民 郡山市大平町の事故現場 郡山市大平町の交通死亡事故は、市道交差点で乗用車が軽乗用車に衝突し、近くに住む一家4人が死亡したというもので、全国的に報道された。現場となった交差点は一時停止標識がなく、道路標示が消えかかっていたため、市は市道交差点の総点検に着手した。 危険交差点は各地区の住民の意見を踏まえて抽出された。対象基準は「一時停止の規制が無く優先道路が分かりづらい」、「出会い頭の事故が発生しやすい」、「スピードが出やすく大事故につながりやすい」、「ヒヤリハットの事例が多い」など。合計222カ所が挙げられ、郡山国道事務所、福島県県中建設事務所、警察(郡山署、郡山北署)と連携しながら現場を確認。その結果、180カ所で新たな対策が必要とされた。 道路の区画線(白線)やカーブミラー、街灯は道路管理者(国、県、市町村)の管轄。「横断歩道」などの道路標示、道路標識、信号機などは都道府県公安委員会(警察)の管轄となっている。180カ所のうち市対応分は152カ所(区画線、道路標示78カ所、交差点内のカラー舗装44カ所、カーブミラー設置30カ所)、公安委員会対応分は28カ所(停止線の補修等28カ所)だった。 それ以外の42カ所は道路管理者、公安委員会でできる対策がすでに講じられているとして「対策不要」とされた。とは言え、各地区の住民らが危険と感じているのに放置するのは違和感が残る。そうした姿勢が事故につながるのではないか。 ピックアップされた危険交差点は別表の通り。グーグルストリートビューを活用して現地の状況を確認すると、見通しが悪かったり、道路標示が消えて見えにくくなっているところが多い。 郡山市の危険交差点222カ所 中田町高倉字三渡(221番)。坂・カーブ・三叉路で見通しが悪い ※市発表の資料を基に作成。要望理由の「ヒヤリ」は事故発生の恐れがある(ヒヤリハット)、「見通し」は見通しが悪い、「優先」は優先道路が分かりにくい個所。対策の「市」、「公安」は点検の結果、市、公安委員会のいずれかが対応した個所。「なし」は市・公安委員会による新たな対策が不要とされた個所。 住所 要望理由対策1並木五丁目1-8ヒヤリなし2桑野五丁目1-5ヒヤリなし3桑野四丁目4-71ヒヤリ公安4咲田一丁目174-4ヒヤリなし5咲田二丁目54-5ヒヤリ公安6若葉町11-5見通しなし7神明町136-2ヒヤリ公安8長者二丁目5-29見通しなし9緑町13-13見通しなし10亀田二丁目21-7見通し市11島一丁目9-20ヒヤリ市12島一丁目137ヒヤリ市13島一丁目147ヒヤリ市14島二丁目32、34、36、37の角見通しなし15台新二丁目7-13見通し市16台新二丁目15-11見通し市17静町35-23見通し市18静町106-1見通し市19鶴見担二丁目130ヒヤリ市20菜根一丁目176ヒヤリなし21菜根一丁目296-1ヒヤリ市22菜根二丁目6-12見通し市23開成二丁目457-2ヒヤリ市24香久池一丁目129-1ヒヤリ市25図景二丁目105-2ヒヤリ公安26五百渕山21-4見通し市27名倉67-1見通し市28名倉78-2ヒヤリ市29久留米二丁目101ヒヤリ市30久留米三丁目26-5ヒヤリなし31久留米三丁目28-1ヒヤリ市32久留米三丁目96-4ヒヤリ市33久留米三丁目116-5見通し市34久留米五丁目3-1ヒヤリ公安35久留米五丁目111-35見通し市36横塚一丁目63-1ヒヤリ市37横塚一丁目126-4ヒヤリ公安38横塚六丁目26ヒヤリなし39方八町二丁目94-2優先なし40方八町二丁目245-4ヒヤリ公安41芳賀一丁目67ヒヤリ市42緑ケ丘西二丁目6-9優先公安43緑ケ丘西三丁目11-7見通し市44緑ケ丘西四丁目8-5見通し公安45緑ヶ丘西四丁目10-8見通し市46緑ヶ丘西四丁目14-2見通し市47緑ケ丘東一丁目2-20ヒヤリなし48緑ケ丘東二丁目11-1見通しなし49緑ケ丘東二丁目19-13優先市50緑ケ丘東五丁目1-1見通し市51緑ケ丘東六丁目10-1見通し市52緑ヶ丘東八丁目 (前田公園前十字路)見通し市53大平町字前田116-2見通し市54大平町字御前田53見通しなし55大平町字御前田59-45見通し市56大平町字向川原80-4見通しなし57荒井町字東195見通し市58阿久津町字風早87-2見通し市59舞木町字岩ノ作44-6見通し市60町東一丁目245見通しなし61町東二丁目67見通しなし62町東三丁目142-2見通し市63新屋敷1-91見通し市64富田町字墨染18見通し公安65富田町字十文字2見通し市66富田町字大十内85-246ヒヤリ市67富田町字音路90-20見通し市68富田東二丁目1優先市69富田町字細田85-1優先公安70富田町日吉ヶ丘53優先市71大槻町字西宮前26ヒヤリ公安72大槻町字南反田18−3ヒヤリなし73大槻町字室ノ木33-8見通し市74大槻町字原田東13-93ヒヤリ市75大槻町字葉槻22-1優先市76笹川一丁目184-32見通し市77安積一丁目155見通し市78安積一丁目38見通しなし79安積町二丁目350番1見通し公安80安積町日出山字一本松100番18見通しなし81三穂田町川田二丁目62-2見通し市82三穂田町川田三丁目156見通し市83三穂田町川田字駒隠1-4見通し公安84三穂田町川田字小樋41見通し公安85三穂田町川田字北宿3-2見通し公安86三穂田町野田字中沢目9見通し公安87三穂田町鍋山字松川53見通しなし88三穂田町駒屋二丁目62ヒヤリ市89三穂田町駒屋字上佐武担2-2見通し公安90三穂田町八幡字北山10-13見通し公安91三穂田町八幡字北山7-12見通しなし92三穂田町富岡字下茂内56見通し市93三穂田町富岡字下間川67ヒヤリ公安94三穂田町富岡字藤沼18-9見通しなし95三穂田町山口字横山5-4見通しなし96三穂田町山口字川底原22優先公安97逢瀬町多田野字清水池125見通し市98逢瀬町多田野字上中丸56-1見通し市99逢瀬町多田野字家向61見通し市100逢瀬町多田野字柳河原77-2優先市101逢瀬町多田野字南原26見通し市102逢瀬町河内字西荒井123優先市103逢瀬町河内字藤田185見通し公安104片平町字庚坦原14-507優先市105片平町字元大谷地27-3優先市106片平町字森48-2優先市107片平町字新蟻塚99-5見通し市108片平町字樋下68優先市109東原一丁目44見通しなし110東原一丁目120見通し市111東原一丁目229見通し市112東原一丁目250見通し市113東原二丁目127見通し市114東原二丁目141見通し市115東原二丁目235見通し市116東原三丁目246ヒヤリ市117喜久田町字双又30-19見通し市118喜久田町堀之内字北原6-9優先市119喜久田町早稲原字伝左エ門原優先市120日和田町高倉字牛ケ鼻130-1優先市121日和田町高倉字鶴番367-1優先市122日和田町高倉字南台23-1見通し公安123日和田町梅沢字衛門次郎原123優先市124日和田町梅沢字衛門次郎原150-2見通し市125日和田町梅沢字新屋敷115-1見通し市126日和田町字鶴見坦139優先市127日和田町字鶴見坦88優先市128日和田町字鶴見坦156優先市129日和田町字沼田29-1見通しなし130日和田町字原町25-1見通し市131日和田町字水神前145優先市132日和田町字水神前169優先市133日和田町字水神前184優先市134日和田町字境田17優先市135日和田町字鶴見坦40-54見通し公安136八山田二丁目204優先市137八山田三丁目204優先市138八山田四丁目160優先市139八山田五丁目452優先市140八山田西二丁目242優先なし141八山田西三丁目149優先なし142八山田西三丁目164優先なし143八山田西四丁目9優先市144八山田西四丁目30優先市145八山田西四丁目83優先なし146八山田西四丁目179優先市147八山田西五丁目284優先市148富久山町八山田字細田原3-18見通し市149富久山町八山田字坂下1-1優先市150富久山町八山田字舘前103-2見通しなし151富久山町八山田字菱池17-4見通し市152富久山町久保田字本木93見通し市153富久山町久保田字我妻117優先市154富久山町久保田字我妻136優先なし155富久山町久保田字石堂35-4優先市156富久山町久保田字石堂22優先市157富久山町久保田字本木54-2見通しなし158富久山町久保田字我妻79-1見通し市159富久山町久保田字麓山115-3見通しなし160富久山町久保田字麓山54-3見通しなし161富久山町久保田字三御堂12-2優先市162富久山町久保田字三御堂15-1優先なし163富久山町久保田字下河原123-1優先市164富久山町久保田字下河原38-2優先市165富久山町久保田字古坦131-4優先なし166富久山町久保田字三御堂122-2優先市167富久山町久保田字三御堂129-10優先なし168富久山町福原字猪田29-1見通し市169富久山町福原字左内90-63見通し市170湖南町三代字原木1148優先市171湖南町三代字御代1155-2優先市172湖南町福良字畑田181-1優先市173湖南町舟津字ヲボケ沼1見通し市174湖南町舘字上高野52優先市175熱海町安子島字北原24-54見通し市176上伊豆島一丁目25見通し市177田村町小川字岡市6見通し市178田村町小川字戸ノ内80-4見通し市179田村町山中字上野90-2見通し市180田村町山中字鬼越91-1見通し市181田村町山中字鬼越518-3優先市182田村町山中字枇杷沢264-6見通し市183田村町金沢字大谷地234-10見通し市184田村町谷田川字北田9見通し市185田村町谷田川字町畑11-1見通しなし186田村町守山字湯ノ川85-1見通し市187田村町正直字南17-1見通し市188田村町正直字北22-3見通し市189田村町金屋字水上35-1見通し市190田村町金屋字水上4見通し市191田村町金屋字マセ口14-2見通し市192田村町金屋字西川原80-3見通しなし193田村町上行合字北古川97優先市194田村町下行合字古道内122-2優先市195田村町下行合字宮田130-25優先市196田村町手代木字三斗蒔34優先市197田村町手代木字永作236-1優先市198田村町桜ケ丘一丁目59優先公安199田村町桜ケ丘一丁目170見通し公安200田村町桜ケ丘一丁目226見通しなし201田村町桜ケ丘二丁目1見通し市202田村町桜ケ丘二丁目2見通し市203田村町桜ケ丘二丁目27見通し市204田村町桜ケ丘二丁目90見通し市205田村町桜ケ丘二丁目115、297-17見通し市206田村町桜ケ丘二丁目144見通し公安207田村町桜ケ丘二丁目203見通し市208田村町桜ケ丘二丁目295-54見通し市209田村町桜ケ丘二丁目365見通し市210田村町守山字権現壇165-1見通し市211西田町鬼生田字前田407優先公安212西田町鬼生田字石堂1194優先市213西田町土棚字内出694-2見通しなし214中田町下枝字五百目55見通し市215中田町柳橋字石畑520-9見通し市216中田町柳橋字久根込564優先市217中田町柳橋字小中里217優先市218中田町牛字縊本字袋内1-1優先市219中田町高倉字弥五郎253優先市220中田町高倉字弥五郎202見通し市221中田町高倉字三渡13-2見通し市222中田町高倉字宮ノ脇198-1見通し市 また、緑ヶ丘団地などのニュータウン、住宅地も目立つ。住宅が立ち並び見通しが悪いのに、交通量が多いことが要因と思われる。 住民は地区内の危険交差点について、どう感じているのか。 7カ所の危険交差点がピックアップされた久留米地区の國分晴朗・久留米町会連合会長は「子どもたちが通るところもあるので心配」と語る。 「久留米は人口が多い住宅地(住民基本台帳人口6350人=1月1日現在)。地区内の子どもたちは柴宮小学校やさくら小学校に通っているが、交通量の多い通りを歩くので、事故につながらないか心配です」 例えば、久留米公民館近くの交差点(30番、写真参照)。四方向に一時停止標識が設置されているが、西側(内環状線側)から来た車は建物や駐車車両が視界に入り、交差車両が確認しづらい。 久留米三丁目の交差点(30番)。住宅地だが交通量が多い 東側から来る車からは、150㍍先に内環状線の信号が見える。青信号のタイミングには、一時停止をおざなりにして、急いで発信する車があるという。そうした中、危うく事故になる状況がたびたび発生しているようだ。もっとも、一時停止標識は設置されているので、今回の点検では「対策不要」となった。 同連合会では子どもたちの交通安全を守るため、関係機関と連携し、毎年1回、危険個所チェックを実施。地元住民は「柴宮小・地域子ども見守り隊」を組織して登下校時の見守り活動を行っており、市の2022年度セーフコミュニティ賞を受賞した。さらに年2回、市道路維持課の担当者を招き、各町会長が危険個所の改善を直接要望する場も設けている。ただ、「『近すぎる間隔で信号は設置できない』などの理由で要望は受け入れられておらず、危険交差点の解消には至っていない」(同)。 「本気度が感じられない」 片平町字新蟻塚(107番)。ブロック塀で右側からの車が全く見えない 郊外部の片平町でも、危険交差点が5カ所挙げられていた。片平町区長会の鹿又進会長は「いずれも見通しが悪かったり、優先順位が分かりづらい個所。改善されることに期待したい」と話す。 一方、同地区内で団体責任者を務める男性は「これまで信号機設置などを要望し続けてきたが、実現しなかった。市内で死亡事故が起きてから動き出すのでは遅すぎる」と憤る。 「朝夕は市中心部に向かう通勤車両が多い。通学する児童・生徒が危険なので、市や公安委員会に信号機設置を要望してきたが、実現しなかった。今回の点検も『対策不要』とされた個所が40カ所以上あるし、そもそも『いつまでにどう対策する』というスケジュールも明確ではない。交通死亡事故を受けてとりあえず動いた感がアリアリで本気度が感じられません。結局、見守り隊など地元住民の〝共助〟で何とか対応するしかないのでしょう」 公安委員会の窓口である郡山署に問い合わせたところ、「住民から要望を受けて県単位で優先順位を付け、限られた予算で対策を講じている。すべての要望に応えられないことはご理解いただきたい」と説明した。ちなみに、県警本部交通規制課が公表している報告書には「人口減少による税収減少などで財源不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少する」との見通しが記されている。今後、安全対策の要望はますます通りにくくなるのかもしれない。 市道路維持課によると、定期的に道路パトロールは行っているが、総延長約3400㌔の市道を細かくチェックするのは困難なうえ、これまでは路面の穴、ガードレールや側溝蓋の損傷など異常個所を重点的にチェックしていたという。その結果、222カ所もの危険交差点を見過ごしてきたことになる。 事故を受けて郡山国道事務所、県中建設事務所も過去に事故が発生した交差点などを洗い出し、国道3カ所、県道41カ所が抽出された。 国道は国道49号沿いの田村町金谷、開成五丁目、桑野二丁目の各交差点。いずれも信号機がない交差点で、2017~20年の4年間で出合い頭の事故が2件以上発生している。担当者によると、現在、対応策を検討中とのこと。 県道に関しては場所を公表していないそうだが、現地を確認したうえで、必要に応じて消えかかった区画線を引き直すなど、緊急的に対応しているという。 悲惨な事故が二度と発生しないようにするためには、まず地区住民の声を聞き、危険個所を関係機関同士で共有する仕組みをつくる必要があろう。そのうえで、既存の対策を講じてもなお危険性が高い場所に関しては、市が中心となり違うアプローチの対策を模索していくべきだ。マップアプリ・SNSを活用した注意呼びかけ、交通安全啓蒙の看板設置、見守り隊活動補助金の拡充などさまざまな方法が考えられる。あらゆる対策により改善していく姿勢が求められる。 死亡事故公判の行方 大平町の交通死亡事故現場(事故直後に撮影) さて、危険交差点総点検の発端となった大平町での死亡事故に関しては、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた高橋俊被告の初公判が3月16日、地裁郡山支部で開かれた。 報道によると、検察側は冒頭陳述などで▽事故当時は時速60㌔で走行、▽本来約80㍍手前で交差点を認識できるはずなのに、前方不注意で、気付いたのは約30㍍手前だった、▽22・3㍍手前で軽乗用車に気付きブレーキをかけたが間に合わなかったと主張。禁錮3年6月を求刑した。これに対し、弁護側は▽脇見運転や危険運転はしていない、▽道路の一時停止線が消えかかっているなど「事故を誘発するような危険な状況だった」として、執行猶予付き判決を求めた。 本誌記者2人は、傍聴券を求めて抽選に並んだが2人とも外れた。券を手にし、傍聴することができた裁判マニアが話す。 「傍聴席には被害者の遺族十数人の席が割り当てられていました。被告は背広にネクタイを締めた姿で出廷し、検察官が読み上げる起訴状の内容について『間違いありません』と認めました。テレビや新聞では『高橋被告は知人女性からの連絡を待ちながら目的地を決めずに車を運転していた』と報じていますが、それは事実の一部。裁判では、高橋被告は既婚者で子どもがいることが明かされました。知人女性と連絡を取り合い、待ち合わせ場所を決める中での事故だったのではないでしょうか。事故後は保釈金を払い、身体拘束を解かれました。香典を遺族に渡そうとしましたが会うのを拒否され、親族が代わりに渡しています」 弁護側の証人として、母親と職場の上司が出廷。上司は営業の仕事態度は真面目であったこと、罪が確定するまでは休職中であることを述べた。死亡した一家の親族も意見陳述し、「法律で与えられる最大の刑罰を科してほしい」、「4人の未来を返してほしい」と訴えた。高橋被告は声を震わせながら「本当に申し訳ないことをした」、「二度と運転しない」と何度も繰り返したという。 裁判は即日結審。判決は4月10日午前10時からの予定。危険交差点への対策と併せて、公判の行方にも注目したい。 あわせて読みたい 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 郡山4人死亡事故で加害者に禁錮3年 【福島市歩道暴走事故の真相】死亡事故を誘発した97歳独居男の外食事情 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証
総合南東北病院などを運営する一般財団法人脳神経疾患研究所(郡山市八山田七丁目115、渡辺一夫理事長)が移転・新築を目指す新病院の輪郭が、県から入手した公文書により薄っすらと見えてきた。 県は昨年11月、郡山市富田町字若宮前の旧農業試験場跡地(15万4760平方㍍)を売却するため条件付き一般競争入札を行い、脳神経疾患研究所など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院など複数の医療施設を同跡地に移転・新築する計画を立てている。 同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、郡山市が医療関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に新病院を建設すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた(※本誌の取材に、佐藤県議は関与を否定している=昨年6月号参照)。 ところが昨年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に、同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を水面下で練ったことがある。新しい本社の移転候補地に挙がったこともあった。 ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」とのこと。しかし、入札価格は51億5000万円で、同研究所を23億円余り下回る次点だった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、同社の入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。 「ゼビオは同跡地にどうしても進出したいと、郡山市を〝仲介人〟に立て、同研究所に共同で事業をやらないかと打診したという話もある。しかし同研究所が断ったため、両者は入札で勝負することになったようです」(前出・事情通) この話が事実なら、ゼビオは同跡地に相当強い思い入れがあったことになる。 それはともかく、本誌は同研究所の移転・新築計画を把握するため、県に情報開示請求を行い、同研究所が入札時に示した企画案を入手した。半分近くが黒塗り(非開示)になっていたため詳細は分からなかったが、新病院の輪郭は薄っすらと知ることができた。 それによると、同研究所は医療法人社団新生会(郡山市)、㈱江東微生物研究所(東京都江戸川区)、クオール㈱(東京都港区)、㈱エヌジェイアイ(郡山市)と共同で、総合病院と医療関連産業の各種施設を一体的に整備し、県民の命と健康を守る医療体制を強化・拡充すると共に、隣接するふくしま医療機器開発支援センターと協力し、医療関連産業の振興を図るとしている。 5者の具体的な計画内容は別掲の通りだが、県から開示された企画案は核心部分が黒塗りだった。ただ、企画案を見ていくと「新興感染症や災害への対応」という文言がしばしば出てくる。 5者の計画内容 脳神経疾患研究所総合南東北病院、南東北医療クリニック、南東 北眼科クリニック、南東北がん陽子線治療センター等を一体的に整備。新生会 南東北第二病院を整備。脳神経疾患研究所と新生会は救急医療、一般医療、最先端医療を継ぎ目なく提供。また、ふくしま医療機器開発支援センターの研究設備を活用し、新たな基礎・臨床研究につなげる。同センターの手術支援設備や講義室等を活用し、医療者の教育と能力向上も目指す。江東微生物研究所 生化学検査、血液検査、遺伝子検査、細菌・ウ イルス検査などに対応できる高度な検査機関を 整備。検査時間の迅速化や利便性を向上させ、県全体の検査体制充実に貢献する。クオール がん疾患などの専門的な薬学管理から在宅診療まで、地域のニーズに対応できる高機能な調剤薬局を設置・運営。併せて血液センターや医薬品卸配送センターなども整備する。エヌジェイアイ 医療機器・システム開発等の拠点となる医療データセンターを整備。※5者が県に示した企画案をもとに本誌が作成。 新型コロナウイルスや震災・原発事故を経験したことで、新病院は未曽有の事態にも迅速に対応できる造り・体制にすることを強く意識しているのは間違いない。また、同研究所に足りない面を江東微生物研究所やクオールに補ってもらうことで、より高度な医療を提供する一方、ふくしま医療機器開発支援センターを上手に活用し、県が注力する医療関連産業の集積と医療人材の育成に寄与していく狙いがあるのではないか。 事実、企画案には《高次な救急患者を感染症のパンデミック時でも受け入れ可能とする構造・設備・空間を実現》《がん陽子線治療をはじめとした、放射線治療やロボット手術を駆使し、低侵襲の最先端医療を福島県外や海外からの患者にも提供》と書かれている。 一方、土地利用計画を見ると、医療関連施設以外の整備も検討していることが分かる。 例えば、隣接するJR磐越西線・郡山富田駅を念頭に駅前広場、同広場から郡山インター線につなぐ構内道路、各種テナントを入れた商業施設、既存斜面林を生かした公園などを整備するとしている。また新病院と各種施設も、建て替え・増築時に医療機能がストップしないような配置にしていくという。 開発スケジュールは黒塗りになっていて分からないが、同跡地の所有権が同研究所に移った後、2023~28年度までの期間で着工―開設を目指すとしている。 脳神経疾患研究所が落札した旧農業試験場跡地 ここまでが県から開示された企画案で分かったことだが、新病院の輪郭をさらにハッキリさせるため同研究所の法人本部に問い合わせると、 「現時点でお答えできる材料はありません。現在、設計を行っているところで、それが完成すると詳細な計画も明らかになり、会見も開けると思います」(広報担当者) とのことだった。 気になる事業費、資金計画、収支見通しは5者ごとに示しているが、こちらも黒塗りになっていて不明。ただ「事業費は総額600億円と聞いており、同研究所内からも『そんな巨費を捻出できるのか』と不安が漏れている」(前出・事情通)。今後は自己資金、借り入れ、補助金などの割合が注目される。 あわせて読みたい 南東北病院「移転」にゼビオが横やり
福島県の〝商都〟を象徴する「うすい百貨店」(郡山市中町13―1、横江良司社長、以下うすいと表記)に気になるウワサが浮上している。 本誌2023年2月号【ホテルプリシード郡山閉館のワケ】で既報の通り、うすいの隣で営業するホテルプリシード郡山が3月末で閉館し、同じ建物に入る商業施設やスポーツクラブも5月末で撤退することが決まるなど、賑わいを取り戻せずにいる中心市街地はますます寂れていくことが懸念されている。 そのうすいをめぐっても、地元経済人の間で最近こんなウワサが囁かれている。 「ルイ・ヴィトンが今年秋に撤退することが決まったらしい」 言わずと知れた高級ファッションブランドのルイ・ヴィトンは、うすいが現在の店舗でリニューアルオープンした1999年からキーテナントとして1階で営業。地方の百貨店にルイ・ヴィトンが出店したことは当時大きな話題となった。 以来、ルイ・ヴィトンは「百貨店としての質」を高める顔役を担ってきたが、それが撤退することになれば集客面はもちろん、イメージ面でも影響は計り知れない。 「うすいに限らず百貨店自体が新型コロナの影響もあり厳しいと言われているが、(うすいに入る)ヴィトンの売り上げ自体は悪くないそうです」(ある商店主) うすいは今年に入ってから、同じく高級ファッションブランドであるグッチの特設売り場を開設したが、売り上げ好調を受けて開設期間を延長した。延長期間は長期になるという話もあるから、客入りは予想以上に良いのだろう。新型コロナが経済に与える影響は続いているが、高級ブランドへの需要は戻りつつあることがうかがえる。 にもかかわらず、なぜルイ・ヴィトンは撤退するのか。 「東北地方には仙台に店を置けば十分と本部(ルイ・ヴィトンジャパン)が判断したようです。今はネット購入が当たり前で、地方にいても容易にブランド品が手に入る時代なので、テナント料や人件費を払ってまで各地に店を構える必要はないということなんでしょうね」(同) なるほど一理あるが、半面、郡山に「都市としての魅力」が備わっていれば、ルイ・ヴィトンも「ここに店を置く意義はある」と思い留まったのではないか。そういう意味で、撤退の要因はうすいにあるのではなく、郡山に都市としての魅力が無かったと捉えるべきだろう。 もっとも、撤退はウワサの可能性もある。うすいに事実関係を確認すると、広報担当者はこう答えた。 「オフィシャルには11月にリモデルすることを発表していますが、中身については経営側と店舗開発部で協議しているところです。当然、ショップの入れ替わりも出てくると思いますが、現時点で発表できる材料はありません」 前出・商店主によると 「ヴィトンの後継テナントが見当たらないため、内部では『市民の憩いの広場にしてはどうか』という案が浮上しているそうです」 とのことだが、今まで高級ブランド店が構えていた場所にベンチを置くだけの使い方をすれば「百貨店としての質」は確実に落ちる。地方の百貨店にハイブランドテナントを誘致するのが難しいことは十分承知しているが、安易な代替案は避け、百貨店に相応しいテナントを引っ張ってくる努力を怠るべきではない。 ちなみに民間信用調査機関によると、うすいの近年の業績は別表の通り。地方の百貨店は厳しいと言われる中、少ないかもしれないが黒字を維持している。2021年はさすがに新型コロナの影響が出て大幅赤字を計上したが、翌年はその反動からか逆に大幅黒字を計上している。 うすい百貨店の業績 売上高当期純利益2018年154.9億円4100万円2019年149.9億円3600万円2020年141.8億円1700万円2021年122.1億円▲1億3300万円2022年132.9億円1億5500万円※決算期は1月。▲は赤字。 うすいはこれまでも、大塚家具や八重洲ブックセンターといった有力テナントの撤退に見舞われたが、県内初進出のブランドを期間限定ながら出店させるなどして「県内唯一の百貨店」としての地位を維持してきた。しかし、撤退のウワサはルイ・ヴィトンに留まらず、 「私はティファニー(宝飾品・銀製品ブランド)が出ていくって聞いていますよ」(ある経済人) という話も漏れ伝わるなど、地方の百貨店の先行きはますます不透明感を増している状況だ。 新型コロナの影響は収まっていないが、11月のリモデルでルイ・ヴィトンやティファニーが撤退するのかどうかも含め、どのような新しい方向性が打ち出されるのか。うすいの奮闘は続く。 あわせて読みたい ホテルプリシード郡山閉館のワケ
郡山市中町の「ホテルプリシード郡山」が3月31日で営業を終える。同ホテルはうすい百貨店の隣に立地しているが、中心市街地に〝巨大な空き家〟が出現することに近隣の商店主らはショックを受けている。 昨年12月1日、同ホテルがホームページで発表した「お知らせ」にはこう書かれている。 《ホテルプリシード郡山は、1993年8月の開業以来、皆様にご愛顧頂いて参りましたが、来る2023年3月末日をもちまして営業終了する運びとなりました。 長年に渡るご厚情に心から感謝申し上げると共に、皆様の今後のご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます》 同ホテルが入る建物は地上12階、地下2階建て。1階と地下1階では商業施設(10店)、3・4階ではスポーツクラブが営業している。2階はレストランとホテルフロントで、5階から上が客室(159室)になっている。 近隣の商店主は 「この間、中心市街地の賑わい復活を目指して取り組んできたが、一帯の人通りは相変わらず少ない。そうした中、中心市街地を牽引するうすいの隣のホテルが閉館するのは非常に寂しい」 と、同ホテルの営業終了を残念がっている。 同業者の間では、昨年秋から「プリシードが閉館するらしい」とウワサになっていたが、営業終了の理由はともかく「このタイミングで閉館するのはもったいない」という声が聞かれていた。 ホテルと言うと新型コロナの影響で苦戦している印象を受けるが、実は思いのほか好調なのだという。 あるホテル業関係者の話。 「他市の状況は分かりませんが、郡山市内のホテルは今、コロナ前より稼働率は高いと思いますよ」 理由は同市の〝地の利〟にある。 「市内には民間の大きな病院が複数あるので、全国から来た医療機器や医薬品の営業マンが頻繁にホテルを利用しています。彼らは市内のホテルに連泊しながら今日は会津、明日は白河、明後日はいわきと動いているので、常連の宿泊で一定の稼働率が保たれているのです」(同) タクシードライバーからはこんな話も聞かれた。 「一昨年2月、昨年3月の福島県沖地震で、県内には保険会社の調査員が全国から来ていました。調査員は市内のホテルに長期滞在し、そこからタクシーを使ってあちこちの物件の被害状況を確認していました。私も県南や浜通りなどに調査員を何度もお連れしましたよ」 つまり、新型コロナでイベントやコンベンションが中止され、ホテルは苦戦しているかと思いきや、それに代わる需要で売り上げを確保していたというのだ。 「最近はインバウンドも徐々に回復しており、団体の外国人旅行客の姿も見るようになっています。今、市内のホテルはどこも忙しいと思いますよ」(前出・ホテル業関係者) こうした状況下でホテルプリシード郡山はなぜ営業を終えるのか。二つの事情がある。 一つは、建物を所有する会社との賃貸借契約が満了を迎えることだ。 同ホテルを営業しているのは㈱ホテルプリシード郡山(郡山市中町12―2)。1992年6月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・宮尾武志、取締役・桜井滋之、西岡巌、監査役・細川和洋の各氏。 一方、建物と土地を所有するのは不動産業の㈱橋本本店(郡山市麓山一丁目9―1)。2013年11月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・橋本善郎、取締役・橋本ひろみ、橋本眞明、橋本眞由美の各氏。 建物は1993年6月竣工で、当時は同じ社名で別会社の㈱橋本本店(橋本善郎社長、78年10月設立、資本金8800万円)が所有していたが、98年に商号を㈱橋本地所に変更。2013年11月に分社化し、新たに設立した前述の橋本本店に所有権を移した経緯がある。 つまり同ホテルは、ホテルプリシード郡山が橋本本店から建物を借りて1993年8月から営業してきたが、両社が交わした賃貸借契約の期間が「30年」だったため、契約満了を迎える今年(2023年)で営業を終えることとなったのだ。 もう一つの事情は、同ホテルの親会社の意向だ。 ホテルプリシード郡山は大手ゼネコン・大成建設(東京都新宿区)のグループ会社。大成建設はこれまでホテルプリシード名古屋(愛知県)など全国数カ所でホテルを建設・営業してきたが、売却するなどして少しずつ手放し、現在はホテルプリシード郡山だけとなっていた。今後は本業に注力するためホテル事業から撤退する模様で、最後の1カ所となっていた同ホテルも賃貸借契約が満了を迎えるのを機に営業終了を決めたのだ。 もっとも、前出・ホテル業関係者は「市内のホテルはコロナ前より好調」と話していたが、民間信用調査会社によると、ホテルプリシード郡山は売り上げが年々落ち込み、万年赤字に陥っていた(別表)。新型コロナ前より客足が好調なのは事実かもしれないが、累積赤字を踏まえると、大成建設にとってはホテル事業から完全撤退する〝潮時〟だったということだろう。 同ホテルの営業終了を報じた福島民報(昨年12月2日付)には《営業終了後に会社を清算し、従業員28人の再就職を支援する》とある。 同ホテルの官野友博副総支配人は次のように話す。 「ホテルは3月末で営業を終えますが、建物内の商業施設とスポーツクラブは5月末まで営業します。そこでテナント契約は満了となり、退去してもらうことになっています。別の場所で営業を継続するかどうかは分かりません。今は当社従業員の再就職先を探しているところです。当ホテルが終了後、建物がどうなるかはオーナー(橋本本店)に聞いてほしい」 「今後の利活用は検討中」 今後の建物の利活用だが、159の客室やフロントがあることからも分かる通り「ホテルの造り」になっているため、ホテルプリシード郡山が撤退後、別のホテルが入居しなければ建物は有効に機能しない。しかし前出・ホテル業関係者によると 「橋本本店は別のホテルを入れようとしていたが、契約を結ぶまでには至らなかったようだ」 と〝後釜探し〟が難航していることを示唆する。 不動産登記簿を確認すると、建物と土地には借主である大成建設が賃貸借契約に基づく保証金返還請求権として9億円と6億円の抵当権を設定している。債務者は貸主の橋本地所。それ以外の担保は、建物建設時に計47億円の抵当権や複数の根抵当権が設定された形跡があるが(債務者、根抵当権者は橋本本店、橋本地所、橋本善郎氏)、すべて解除(弁済)されている。 橋本本店に今後の建物の利活用について尋ねると、こう答えた。 「何を入居させるか、建物を解体するかどうかも含めて全くの未定。現在検討中です。それ以上はお答えできない」 建物の規模を考えると、ホテルプリシード郡山からの家賃収入はそれなりの金額だったろうから〝空きビル〟の状態が続くほど経営に響くのではないか。 建物は築30年だが、東日本大震災や二度の福島県沖地震でも大きな被害は出ておらず、今後も従前通り利用可能とみられる。そうなると、解体という選択は現実的ではない。 「解体費用は億単位になるので、行政の補助なしに企業単独で捻出するのは難しい」(ある不動産業者) 建物を有効活用するには、やはりホテルプリシード郡山に代わるホテルを入居させるしかないようだ。ベストな方法は同ホテルが引き続き営業することだったが、本業に注力したい大成建設としては、30年の長期契約を終えた後に再び賃貸借契約を結ぶのは難しかったのだろう。 今後のポイントは、橋本本店が新しいホテルを呼び寄せることができるかどうかにかかっている。
保土谷化学工業㈱郡山工場(郡山市谷島町4―5)が敷地内で水素ステーションの開設を目指している。現在、2024年秋の開所に向けて準備中だが、地元経済人はこの取り組みを歓迎する一方、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈している。 水素ステーションの開設は、1月13日付の地元紙に掲載された「ふくしまトップインタビュー」という記事で、同社の武居厚志郡山工場長の紹介とともに明かされた。 《今年は新事業をスタートさせる予定だ。工場敷地内に商業用定置式の水素ステーション開設を目指す。過酸化水素の原料用に製造した水素の一部を燃料電池車(FCV)向けに販売する。販売する水素の全てを自社製で賄うのは全国初の試みで、年内の着工、2024(令和6)年の開所を想定している》 これに先立って水素ステーション開設を報じた昨年12月29日付の福島民報では▽利便性を高めるため、敷地東側の東部幹線沿いでの開所を検討、▽周辺にコンビニや飲食店などを誘致し、JR郡山駅東口の活性化につなげる、という方針も紹介されていた。 同記事によると、水素は郡山工場の主力製品である過酸化水素の原料の一つとして同工場内で製造している。これまでは余剰分を他社に販売していた。水素ステーションが開設されれば、製造と供給を同一敷地内で行う全国初のケースになる。 郡山工場の担当者はこう話す。 「計画の詳細はまだ発表していません。今は『2024年秋の開所を目指す』という段階で、今後、水素ステーション建設に関する国、県、市の補助金を申請予定です」 担当者によると、県内で水素を製造しているところは限られ、市内では同社のみだという。 「これまでの水素ステーションは別の場所で製造した水素を(ステーションまで)輸送していました。そこで当社は、自社で製造した水素を有効活用したい考えから、敷地内に水素ステーションを開設しようと考えました」(同) 市内では佐藤燃料㈱が県内2番目の商業用定置式水素ステーションを2022年2月に開設している。 佐藤燃料と共同で水素ステーションを開設した日本水素ステーションネットワーク合同会社(東京都千代田区)の資料「水素ステーションの現状と課題」(2022年7月28日付)によると、東北6県のFCV台数(東北運輸局の次世代自動車普及状況より、同年5月末時点)は469台だが、このうち福島は351台と7割超を占める。2位が宮城112台、あとは山形4台、青森2台、岩手・秋田0台だから、福島県での普及が際立っていることが分かる。 福島県は2016年に策定した福島新エネ社会構想に基づき、水素社会の実現に取り組んでいる。FCDの台数が抜きん出て多いのはその表れで、それだけ水素ステーションの需要も見込めるということだ。ましてや郡山工場の場合、水素を製造しているとなれば、同じ敷地内にステーションを開設することでより円滑な供給が期待できる。加えてコンビニや飲食店が誘致されれば、東京ドーム6個分という広大な工場敷地により殺風景に映る駅東口の光景が見違えることも考えられる。 「コンビニや飲食店があれば水素を充填中の待ち時間を有効に使っていただけると思います。水素ステーションの付加価値を高められるよう併設を目指したい」(前出・担当者) 改まらない〝上から目線〟 実は、本誌は昨年秋、ある経済人からこれらの話を耳にしていた。この経済人は「水素製造が主力となり広い工場敷地が余っているため、民営公園を整備することも考えているようだ」とも話し「停滞する駅東口開発の弾みになる」と水素ステーション開設に期待を滲ませていたが、同時に興味深かったのは、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈したことだった。 「菅野利和副市長と村上一郎副市長が郡山工場を訪ね『工場敷地内に道路を通したい』と協力を要請したそうです。二人はドローンで撮影したと思われる航空写真を示し『この辺りにこういう道路を通したい』『用地は無償で協力してほしい』と言ったそうです」(経済人) この要請に、同社の松本祐人社長は後日、親しい知人に「そういう話は失礼だ」「株主もいるのに用地を無償で協力できるはずがない」と不快感を露わにしたという。 「駅東口開発を進めたい品川萬里市長は、これまでも郡山工場にいろいろな話を持ちかけてきたが、どれも一方的な要請で、同社と協議しながら共同歩調で進める様子は皆無だという。同社としては長年お世話になっている同市の発展に協力したいが、一緒に取り組むという姿勢ではなく『こうやるから協力してくれ』と〝上から目線〟のやり方が改まらないので、心底協力したいという気持ちになれないようです」(同) 郡山駅東口の開発は同市の懸案事項だが、カギを握るのが一帯で操業する郡山工場の行方にある。すなわち、代替地を用意して移転してもらうか、あるいは、現在地で操業を続けるにしても広大な工場敷地をどうにか活用できないかといった話は、公式に議論されることなく与太話の類いに長年終始している。 同社の松本社長は滝田康雄会頭をはじめ郡山商工会議所と良好な関係を築いており、滝田会頭が音頭を取るまちづくり構想「郡山グランドデザインプロジェクト」に協力する意向も持っているが、いかんせん同会議所と同市の関係が良好とは言い難いため、地元経済界からは 「品川市長が本気で駅東口開発を進めたいなら、郡山工場や同会議所に丁寧にアプローチすべきだ」 という苦言が以前から漏れているのだ。今回の道路整備をめぐる要請も、事実であれば丁寧さを欠いているのは明らかだ。 「同市が本気で道路を通したければ『駅東口をこういう形で発展させたい。そのためには、ここに道路が必要なので協力してほしい』とアプローチすべきだ。その青写真もないまま、単に『道路を通したい』では同社も協力する気持ちになれないと思います」(前出・経済人) 前出・郡山工場の担当者に、副市長二人から協力要請があったか尋ねると、 「市職員の方と非公式にお会いする機会は結構あるが、公式にそういう打診が来たことはありません」 と言うから「非公式の相談」はあったのかもしれない。 菅野副市長と村上副市長にも文書で質問したが「回答は差し控える」(広聴広報課)。 水素ステーションが開設され、コンビニや飲食店が併設されても、工場敷地にはまだまだ余裕がある。前出・経済人が言う「民営公園」は郡山工場の担当者が「そこまでは考えていない」と否定しており不透明だが、品川市長が本気で駅東口開発に取り組むなら、郡山工場を同列のパートナーと見なし、共同歩調を取る姿勢を見せないと停滞打破にはつながらないのではないか。
公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】 1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】 石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】 浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。 県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。 通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。 初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地 昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。
専門家が指摘する危険地点の特徴 1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀) 報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。 軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。 もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性 今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。 県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証
「営業しただけ赤字増加」で見切り 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「自粛」が求められる場面が増えている。とりわけ、酒類を扱う「夜の飲食店」に行く機会が減った人は多いと思われる。当然、客が来なければ飲食店もやっていけない。いわゆる〝コロナ閉店〟する飲食店は少なくないという。実際に〝コロナ閉店〟した郡山市のバー店主に話を聞いた。 「店を開ければ開けただけ赤字が増えるんですから、やってられませんよ。幸い、『やめられるメド』が立ったので閉店しました」 こう話すのは、郡山市のJR郡山駅近く、陣屋でバーを経営していた男性。この男性は昨年秋前に自身が経営していたバーを閉店した。いわゆる〝コロナ閉店〟である。 「2020年2、3月にコロナの問題が本格化して以降は、多少の変化はありつつも、ずっと厳しい状況が続いていました。歓送迎会や忘新年会など、本来なら最もにぎわうシーズンですら、お客さんがかなり少なく、ゼロという日も少なくなかったですからね。特に『どこかでクラスターが発生した』といった報道等が出ると、発生源の店舗が入居するビルはもちろん、その周辺には人が寄り付かなくなります。一度そうなってしまうと、なかなか客足は戻りません」(元バー店主の男性) 本誌2020年10月号に「クラスター発生に揺れた郡山と会津若松」という特集記事を掲載し、郡山市のホストクラブでクラスターが発生したことを受け、行政の対応、関係者の足取り、店舗の対応などについてリポートした。その中で、周辺店舗関係者の「緊急事態宣言解除後、少しずつ売り上げが戻っていたが、今回のクラスター発生で再び下降している。こんなことが二度、三度と続けば持たない」、「クラスター発生を機に駅前全体の客足が鈍っている。他店からも『いつまで持つか』という嘆きが聞かれる。回復にはまだまだ時間がかかるだろう」といった声を紹介した。そういった事例が出ると、周辺店舗やその後の客足など影響が大きいというのだ。 人通りが少ない郡山市飲食店街(陣屋) それでなくても、この間、接待を伴う飲食店、酒類の提供を行う飲食店に対しては、まん延防止等重点措置や、県独自の緊急・集中対策によって、営業自粛・時短営業を求められることが多かった。 「少し落ち着いてきたと思ったら、まん延防止や県独自の措置によって営業自粛・時短営業要請が発令される、ということの繰り返しでしたからね。もっとも、営業自粛・時短営業要請の期間は協力金が受け取れたため、店を開けて客が全く来ないときよりはマシでした。といっても、協力金は各種支払いに全部消えましたけど」(同) 協力金の仕組み 例えば、2021年1月13日から2月14日までに出された営業自粛・時短営業要請では、1日当たり4万円の協力金が支給された。33日間で計132万円だったが、「家賃の支払いを待ってもらっていた分、カラオケのリース料、酒卸業者への支払いなどで全部なくなった。むしろ、それだけではまかなえなかった」(同)という。 その後は、郡山市の場合、2021年7月26日から8月16日までは、県の「集中対策」として、営業自粛・時短営業要請が出され、この時は売り上げに応じて、「1日2万5000円〜」というルールで協力金が支払われた。昨年1月27日から2月21日までは、まん延防止等重点措置として営業自粛・時短営業要請が出され、この時は「前年度、前々年度の売上高に応じて1日当たり2万5000円〜7万5000円」の売上高方式か、「前年度、前々年度比の1日当たりの売上高減少額の4割」の売上高減少方式を選択できる仕組みだった。 ただ、いずれにしても、「協力金は各種支払いにすべて消える」といった状況だったという。 ちなみに、本誌はこの間、感染リスクが高いとされる業種(旅客業、宿泊・飲食サービス業など)は国内総生産(GDP)の5%程度で、これまで政府がコロナ対策として投じてきた予算が数十兆円に上ることを考えると、東京電力福島第一原発事故に伴う賠償金の事例に当てはめて補償するというような対応が可能で、そうすべきだった――と書いた。 一番厳しかった一昨年夏 男性によると、最も厳しかったのは2021年夏ごろだったという。感染拡大「第5波」が到来し、感染力が強く、重症化のリスクも高いとされる変異種「デルタ株」が流行していたころだ。 「あの時期は本当に厳しかった。平日(月〜木)はほぼお客さんがゼロという日が続き、週末(金・土)だって、それほど入るわけではありませんでしたから。それでも、私は1人でやっていたから、まだマシだったと思う。従業員がいたら、どうしようもなかった」(同) コロナ前、平日(月〜木)は売り上げが5万円から8万円、週末(金・土)はその約3倍で、週50万円〜80万円の売り上げがあった。それがひどい時は平日はほぼゼロ、週末はコロナ前の平日並みになった。それでも、家賃や光熱費などの固定経費は変わらない。結果、「店を開ければ開けただけ赤字が増える」状況だったというのである。 「最近は少し規制などが緩くなり、以前よりはマシになりました。週末の居酒屋などはそこそこ入っていると思います。ただ、バーや女性が接待する店はまだまだ戻っていない。私の知り合いの店でも、女性キャストは週の半分は休みという感じです。週末は黒字だが、平日の赤字分をカバーしきれない、といった店が多いのではないか」(同) 冒頭、男性は「『やめられるメド』が立った」と語ったが、一番大きいのは、「テナント退去時の修繕費が最初に納めた敷金でまかなえたこと」という。そのほか、残っていた各種支払いがあったが、何とかそのメドが立ったから閉店を決めた。 「テナント退去時の修繕費がどうなるのかが怖かったが、敷金でまかなえたので良かった。逆に、やめたいと思っても、その(修繕費の)見通しが立たなくてやめられないところもあると思います」(同) 男性の知人の店舗でも、やめたところが何軒かあり、「いつやめたのか分からないが、気付いたら閉店していたところもあった」という。 コロナが出始めたころは、ワクチンが普及し、ある程度、通常の生活ができるようになり、客足が戻ってくることを期待していたようだ。ただ、思いのほか長引き、見切りを付けた。最後に男性は「こんなことなら、もっと早くやめれば良かった」と語った。 関連記事は下記のリンクから読めます! https://www.seikeitohoku.com/koriyama-city-hostess-bar/
「2次会なし」で客の奪い合い勃発 新型コロナ感染が日本で拡大してから3年近くが経った。2022年初めまでは緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令され、営業を自粛した飲食店には売り上げ実績の一部が補償された。昨年末は制限のない初めての忘年会シーズンを迎えたが、夜の街の客足はどうなったか。酒類を提供し、接待を伴うことから特に影響が大きいスナックやバー、クラブの店舗数を電話帳で比較した。初回は郡山市。 民間信用調査会社の東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月、忘・新年会を実施するかについて県内に本社を置く企業にアンケートを行ったところ、回答企業の約8割が「実施しない」と答えた。同月1~8日までインターネットで実施し、80社が回答した。以下は福島民報12月14日付より。 ・緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に関係なく、「無条件で開催しない」と答えた企業は77・50%で10月の前回調査57・14%から20・36㌽上昇。 ・同社郡山支店の担当者は「感染者が増減を繰り返し、ピークが見えない状況で会合開催のハードルが上がっている」と分析する。 NHK(同16日配信)は、「10月後半から新型コロナの感染者が急拡大したことが飲み会自粛につながった。職場単位の大勢でなく、少人数での飲み会が主流になるとみられる」と担当者の見解を紹介している。 開催すると答えた企業でも、そのうち60%以上が2次会を自粛するか、人数を制限するとしている。アンケートからは、新型コロナで大規模な宴会が激減したうえ、「飲み会離れ」が進んでいる実態が見えてきた。 本誌は2005年7月号「2年間で270軒も閉店した福島の飲食店事情」で福島市のバー、スナックの衰退を書いた。飲み慣れた世代が高齢となり、退職や病気で店に行かなくなった。若年世代は会社で飲みに行く習慣に抵抗があり、客数増加は見込めないと分析した。 平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街 「飲み会離れ」は全国的な傾向だが、福島県は事情が少し違う。記事掲載後も東日本大震災・原発事故で経済が落ち込み、確かに客足は減った。「復興バブル」で建設業・除染作業員が県内に進出し、浜通りと中通りの夜の街は一時活気を取り戻したが、復興バブルの終焉が徐々に訪れていたところに新型コロナの影響が直撃した。 新型コロナ拡大から約3年が経ち、夜の街を探る必要がある。2005年の記事では、NTT「タウンページ」の01年と03年の飲食業の掲載数を比較し、閉店数を推計した、今回もその手法を使う。固定電話を置かず、携帯電話やSNSでやり取りする店舗も増えているので正確ではないが、目安にはなるだろう。電話帳記載の店舗が減るということは、老舗が減ったということでもある。 初回は「商都」郡山市を調べる。県が2022年8月に公表した「2019年度市町村民経済計算」によると、市町村内総生産=市町村ごとの経済規模は同市が一番大きい。トップ3は、①郡山市1兆3600億円(県全体の17・1%)、②いわき市1兆3500億円(同17・0%)、③福島市1兆1400億円(同14・4%)だ。 「タウンページ」(2021年10月現在)によると、飲食店関係の掲載数は多い順に次の通り。業種は電話帳の記載に基づく。10店未満の専門店は省略した。 飲食店(居酒屋、食堂の一部重複)195店スナック 159店居酒屋 136店ラーメン店 72店食堂 69店レストラン(ファミレス除く) 48店焼肉・ホルモン料理店 46店うどん・そば店 42店バー・クラブ 42店すし店(回転ずし除く) 40店中華・中国料理店 39店焼き鳥店 32店日本料理店 29店イタリア料理店 15店割烹・料亭 12店うなぎ料理店 10店とんかつ店 10店 重複もあるので、概算で約計900店舗。スナック、居酒屋が圧倒的に多い。接待を伴う飲食店として、特に新型コロナで影響を受けたスナック、バー・クラブの数を調べた。新陳代謝の盛んな業界だから、減少が多くても、新規参入が同じくらいあれば問題はない。新型コロナが襲う2年前の「タウンページ」(2019年11月時点)と比べてみた。 スナック 47店減少、新掲載は5店。 バー・クラブ 5店減少、新掲載は1店。 バー・クラブは約1割減、スナックは約3割減少している。業種や店名を変えた可能性もある。念のため、郡山駅西口の繁華街、駅前と大町に住所があるスナック21店舗に電話をかけた。うち1店舗は営業中。残りの20店は「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが流れた。電話番号を変えたか固定電話の契約を終えたということ。閉店の可能性が高い。下記は2年の間に電話帳から消えたスナック一覧表。 ■コロナ前(2019年)から現在(2021年)までの間に電話帳から消えたスナック 【陣屋】アイギー、明日香、アンク、アンナ、夜上海、我愛你、笑顔、オリーブ、カラオケスナック風の歌がきこえる、絹、Club Vanilla、スナック桜子、Chil、瓶、プティ、桃色うさぎ 【駅前2】絹の家、Nori、花華ふぁふぁ 【大町】こいこい、TELLME、ぶす 【その他】アグライア(朝日)、壱番館(大槻)、イマージュ(朝日)、うさぎ屋薇庵(中町)、小山田壱番館(大槻)、カトリーヌ(菜根)、カミニート(堤下)、ギャップ(中町)、ケイズ・フォー(Ks4fth・中町)、コパン(中町)、サラン韓国スナック(朝日)、スナック華(久留米)、すなっく英の妹(島)、スナックピュア(安積)、スナック福(大槻)、スナックモナリザ(菜根)、スナックやすらぎ(富久山)、スナック夢(朝日)、セカンドハウス(桑野)、SoL(朝日)、たつみ(堂前)、だんらん(麓山)、紬の里(堂前)、ポセイドン(堤下)、美郷(七ッ池) 現在営業している店はどのような状況か。郡山一の繁華街「陣屋」に絞って調査した。陣屋通りの付近で、住所で言えば駅前1丁目に当たる。 感染防止で常連客のみ 前出の東京商工リサーチのアンケートから分かるように、飲み会自体が減り、客層は団体や企業関係から個人グループが主体になっている。週末の金、土曜日はそれなりに人が入っていると想定して、忘年会シーズンの12月17日(土)、開店準備の時間を見計らって午後6~8時の間に電話した。ランダムに22店舗にかけると、いずれも回線は生きていた。6軒が電話に出たので、客の入り具合や経営状況を聞いた。 あるスナックのママAは語る。 「コロナがはやってからもう3年になりますでしょ。まあ何とかやってるって感じね。一番頭を悩ませているのが家賃と人件費です。売り上げが減ったからといって安くはなりません」 あるキャバクラの店長の話。 「まん延防止などが出されることはなくなったが、体感としては昨年よりもお客様は減っています。平日は人が出歩かず、ひっそりとしていますよ。金、土は人が入るといっても平日と比べてマシという程度です。会社の忘年会の2次会、3次会で利用する方が多かったのですが団体客は少ないですね。一グループ多くて3、4人程度です。なじみのお客様に支えられている状態です。営業時間を短くしたり、女の子の出勤を調整している店はあると聞きますが、幸いウチは例年並みの出勤調整に抑えられています」 別のスナックのママBはこう打ち明ける。 「11月から忘年会の予約が入っているのが当たり前だったんですよ。1次会は食事をして、2、3次会でなじみの店でカラオケ、というのがコロナ前の流れでした。2次会は今まずないでしょう。感染を恐れて歌う人も減っているので、カラオケは飲み会の必須ではなくなりましたね。団体は常連さんがゴルフのコンペ後に利用するくらいです」 ママBは、行き場のないいらだちを筆者に向けた。 「雑誌の取材ですか。本当だったら土曜の夜8時に応じるなんてできないんですよ。つまり……そう、ヒマってことです。雑誌だったら宣伝でもしてもらいたいもんだわ。いつまで店を続けられそうかって? そんなの分かりません!」 客には来てほしいが感染を広めてはならないというジレンマがある。 ママCは、 「うちは新規のお客様は断っています。常連さんとその紹介のあった方だけです。『感染者が出た店』となるのが一番怖い。自分も感染したくはない。濃厚接触者になっただけでお店に出られなくなるし、店を数日閉めているとウワサになる。今来てくれるお客様を手放さないように、細々とでも営業するしかないんでしょうね」 電話調査とは別に、県内で飲食店を経営し、業界事情に詳しい男性に話を聞いた。 「繁華街に構える店は家賃が重い負担となってのしかかっています。逆に言えば『家賃さえ下がれば何とかやっていける』という人もいる。潰れない飲食店というのは、住宅街にある町中華のように、住居と一体になった手持ちの物件で営業している店でしょうね」 2次会以降がなくなったことは、スナックの概念にも変化を起こしているという。 「スナックと居酒屋が合体した『イナック』が登場しています。ご飯ものを充実させて、客単価を上げています。2軒目、3軒目に行く客が見込めないので、誰もが1軒目の店になろうと少ないパイの取り合いになっている」(同) 「業種転換したい」 郡山社交飲食業組合・組合長の太田和彦さん(67)=味の串天=は、「組合は約50年前にできましたが、郡山の飲食業も長い時間をかけて廃業、新規開店が繰り返されました。新しい店は組合に入らないところも多い。現在の加盟事業者は14店舗です」と明かす。 うち12店舗がバーやスナック。新型コロナ後は深夜12時前に店を閉める店が増えたという。 「バーやスナックに限りませんが、組合員は私を筆頭に高齢化しています。コロナ禍がきっかけで閉店を考える店もある。スナックの経営者からは『業種転換をしたいがどうしたらいいか』との相談もあります。ここに来てガス代と電気代は値上げ、ビールの仕入れ値も昨年10月に値上がりしました。提供する値段はそうそう上げられません。夜の飲食業はお酒の注文が入って利益が出る仕組みなので、どの店も痛いです」(同) 酒の席で同じ職場の者同士が打ち解ける「飲みにケーション」という言葉も死語になりつつある。新型コロナ拡大が拍車をかけた。 婚活事業などを手がけるタメニー(東京)が昨年11月に会社員の20~39歳の未婚男女2400人に行ったアンケートでは、社内でどのような方法でコミュニケーションを取っているか聞いている。飲み会は8・2%で8位。Eメールのやり取りよりも下だ。 ①直接対面での会話53・4%②通話での会話25・1%③ウェブミーティング17・0%④定例ミーティング16・6%⑤チャットツール15・9%⑥Eメール13・3%⑦1対1のミーティング8・5%⑧飲み会8・2% 以下、ランチ会や社内イベントなどが続く。 「どんな方法でコミュニケーションを取るといいと思いますか」との理想的な方法を調べた質問でも、飲み会は6・9%(8位)で現実の順位と大きな変わりはない。中堅社員がこのような意識ということは、将来的に会社の飲み会は消滅するだろう。中小民間では賃金が上がらないにもかかわらず、物価高が続いている。消費者の財布の紐は固い。 非正規雇用女性の働き口 キャバクラやスナックなどの店が減ることは貧困問題の深刻化にもつながる。水商売は、家族を養わなければならない女性に比較的高い収入を保障し、セーフティネットの役割も果たしてきた。詳しい統計はないが、ネットでキャバクラやスナックの求人欄を見ると、「シングルマザー歓迎」「寮・託児所完備」を押し出している店が多いことから、業界もシングルマザーを積極的に受け入れていることが分かる。 背景には、女性の正社員が男性と比べて少なく、男女の賃金格差が生まれてしまうという事情がある。シングルマザーが昼のパートなど非正規雇用で稼いだだけでは家族を食べさせていけない。 新型コロナが蔓延し始めた2020年には「女性店員が子どもへの感染を恐れ出勤を控える動きもあった」と県内のキャバクラ経営者は語る。キャバクラやスナックが減り、働き口が減った後、彼女たちは別の仕事に行ってしまったのか。その収入で暮らしていけるのか。飲食業が潰れるということは、別のところにしわ寄せが行くということでもある。 関連記事は下記のリンクから読めます! https://www.seikeitohoku.com/koriyama-city-hostess-bar-owner/
菓子製造小売業の㈱三万石(郡山市、池田仁社長)が同市開成一丁目で営業していた地中海料理のレストラン「San filo(サンフィーロ)開成」が解体された。レストランには三万石開成店も併設されていた。 12月中旬に現地を訪れると、既に建物の3分の2が壊されていた。看板に書かれていた工期は10月17日から12月28日となっていた。 建物は2006年に約3億5000万円をかけて建設され、同年11月にイタリアン料理の「アンジェロ開成」としてオープンした。ランチタイムになると駐車場に入りきれない車が列をつくり、警備員が誘導するほどの人気店だったが、18年11月に閉店し、翌年7月にサンフィーロ開成としてリニューアルオープン後は客足が途絶えていた。 「アンジェロは1000円超のお手頃価格だったけど、サンフィーロは高くて、気軽に行けるお店じゃなかった」(ある主婦) ホームページ(HP)によるとサンフィーロはランチ専門の営業で予約制コース、価格は3500円、5500円、1万円となっている。高級路線転換が客離れにつながったことは否めない。実際、駐車場は常にガラガラだった。 サンフィーロ開成はなぜ閉店したのか。三万石のHPを見ると「3月の地震の影響」とある。昨年3月16日に発生した福島県沖地震では相馬市などで最大震度6強を記録し、郡山市内の建物も数多く被災したが、同店もその一つだったという。 三万石の担当者に聞いた。 「建物は2021年2月に起きた地震でも大きな被害を受け、この時は大規模改修を行ったが、3月の地震で再び被害に遭った。特に電気設備の被害が深刻で、もう一度大規模改修をしても同じくらいの地震が来たら動力を確保できないという結論に至った。建物は2011年の東日本大震災でも被災しているので、耐震性の面でもリニューアルは厳しかったと思います」 気になるのは跡地の利活用だ。不動産登記簿謄本によると、同所は三万石の名義で、東邦銀行が2007年に同社を債務者とする極度額2億4000万円の根抵当権を設定している。賃借ではなく自社物件ということは、売却しない限り自社利用を目指す公算が高そう。 前出・担当者もこう話す。 「基本的には自社利用する方針だが、何を建てるかとか、どんな使い方をするかなど、具体的な内容は検討中です。いつごろオープンするといった時期も決まっていない」 サンフィーロ開成と同じ業態のレストランは福島市内にもあるが、同店も混雑している様子は見たことがない。跡地に再びレストランをつくるかどうかは分からないが、少なくとも「高級路線が客足を遠ざけた」反省は生かす必要があろう。 ところで三万石は、昨年3月に新会社㈱三万石商事(郡山市、池田仁社長)を設立している。目的は、三万石の外商部門とECサイト部門を新会社に分離・移管して人的資源を投入し、自らは製造と卸売に専念するため。これにより三万石商事は、コロナ以降好調なスーパーへの販路拡大、ネット販売などに注力。一方の三万石は、人件費圧縮と、製造品を三万石商事に卸売りすることで安定した売り上げを確保する狙いがあるとみられる。 三万石は2021年3月期決算が売上高30億円、7100万円の赤字だったが、22年3月期は同36億円、1億3500万円の黒字と持ち直した。今期決算で新会社設立の効果がどう表れるのか注目される。
県は2022年11月8日、郡山市富田町の旧農業試験場跡地を売却するため条件付き一般競争入札を行い、総合南東北病院を運営する脳神経疾患研究所(郡山市、渡辺一夫理事長)など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院をはじめ複数の医療施設を同跡地に移転させ、2027年度をめどに開設する計画。 同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、同市が医療機器関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に移転すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた。 ところが2022年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を密かに練ったことがある。 ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」。しかし、入札価格が51億5000万円だったため、同社は落札には至らなかった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。 同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、ゼビオの入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。
専門学校グループ「学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ」(郡山市)は1984(昭和59)年の開校以来、38年間積み上げてきた指導ノウハウと、2万0900人以上の卒業生ネットワークによる学生支援体制を備え、若者の学び場の充実を図り続けてきた。同グループは5校57学科で構成されており、東北最大級の規模を誇る。 グループ校の一つ、国際アート&デザイン大学校では9月、米国発メタバース「Virbela(バーベラ)」の日本向けプラットフォーム「GIGA TOWN(ギガタウン)」を活用した実証授業を実施した。専門学校としては初の試み。 メタバースとはインターネットの中に構築された仮想空間のこと。自分自身の分身(アバター)を操作して他者と交流できる。ゲームなどで使われてきたが、近年はビジネスシーンでの利用も進んでおり、今後の成長が見込まれている。 同校は「ギガタウン」の日本公式販売代理店・㈱ガイアリンク(長野県)と連携。学生らはアバターを使って「ギガタウン」での授業に参加し、事例研究、ゲーム、ディスカッション、グループ発表などを行った。 参加した学生からは「実際にその場で授業を受けているような臨場感があり、楽しかった。テーブルごとに個別通話できたり、画面を複数に分けて資料を提示できるなど、さまざまな機能があり、使いやすかったです」との声が聞かれた。 実証授業は学生の夢や目標達成のためのスキル、コミュニケーション力を育む目的で行われたもの。同校では5月にも、ICT関連やデジタルコンテンツ分野の教育機関を運営するデジタルハリウッド㈱(東京都)と連携し、アバター生成・操作のアプリケーションを使用した実証授業を行っている。 同グループでは教育のICT化を進める「Ed―Tech推進室」が中心となって、ICT技術・デジタル化を活用した効果的な授業の在り方を検討しており、同校の授業に積極的に取り入れている。 例えば、同校コミックマスター科では県内で初めて、アニメーション制作ソフト「Live2D」を授業に導入した。同ソフトは低コストで原画の画風を保ったアニメーションが制作できることから、家庭用ゲームやスマートフォンアプリに多く使用されている。同校は「Live2D」モデル作成ソフトライセンス無償貸与の教育支援プログラム認定校に県内で唯一指定されているため、授業での使用が可能となった。 一方でアナログテクニックを身に付ける実習も充実させており、どんな現場にも対応できる即戦力のスペシャリストの養成に努める。 ICT関連の資格取得も全力で支援しており、「PhotoShop(フォトショップ)クリエイター能力認定試験」の合格率は100%を誇る。さらにCGクリエイター検定の文部科学大臣賞を全国で唯一3年連続受賞している。 同グループが目標として掲げているのは「ONLY1、No・1」の教育実績。今後もコロナ禍以降本格的に導入したICT教育を発展させる形で、メタバースを活用した授業を推進し、学生一人ひとりのニーズに沿った教育を行うことで、夢の実現をサポートしていく考えだ。 FSGカレッジリーグのホームページ FSGカレッジリーグのオープンキャンパス・保護者説明会に参加する
災害時に地域のインフラを支えるのが建設業だ。災害が発生すると、建設関連団体は行政と交わした防災協定に基づき緊急点検や応急復旧などに当たるが、実務を担うのは各団体の会員業者だ。しかし、近年は団体に加入しない業者が増え、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は減り続けている。会員業者が増えないのは「団体加入のメリットがないから」という指摘が一般的だが、意外にも行政の姿勢を問う声も聞かれる。郡山市の建設業界事情を追った。 災害対応に無関心な業者に老舗から恨み節 地域のインフラを支える建設業 「今、郡山の建設業界は真面目にやっている業者ほど損している。正直、私も馬鹿らしくなる時がある」 こう嘆くのは、郡山市内の老舗建設会社の役員だ。 2011年3月に発生した東日本大震災。かつて経験したことのない揺れに見舞われた被災地では道路、トンネル、橋、上下水道などのインフラが損壊し、住民は大きな不便を来した。ただ、不便は想像していたほど長期化しなかった。発災後、各地の建設業者がすぐに被災現場に駆け付け、応急措置を施したからだ。 震災から11年8カ月経ち、復興のスピードが遅いという声もあるが、当時の適切な対応がなかったら復興はさらに遅れていたかもしれない。業者の果たした役割は、それだけ大きかったことになる。 震災後も台風、大雨、大雪などの自然災害が頻発している。その規模は地球温暖化の影響もあって以前より大きくなっており、被害も拡大・複雑化する傾向にある。 必然的に業者の出動頻度も年々高まっている。以前から「地域のインフラを支えるのが建設業の役割」と言われてきたが、大規模災害の増加を受け、その役割はますます重要になっている。 前出・役員も何か起きれば平日休日、昼夜を問わず、すぐに現場に駆け付ける。 「理屈ではなく、もはや習性なんでしょうね」(同) と笑うが、安心・安全な暮らしが守られている背景にはこうした業者の活躍があることを、私たちはあらためて認識しなければならない。 そんな役員が「真面目にやるのが馬鹿らしくなる」こととは何を指すのか。 「災害対応に当たるのは主に建設関連団体に加入する業者です。各団体は市と防災協定を結び、災害が発生したら会員業者が被災現場に出て緊急点検や応急復旧などを行います。しかし近年は、どの団体も会員数が減っており、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は少なくなっているのです」(同) 2022年9月現在、郡山市は136団体と災害関連の連携協定を交わしているが、「災害時における応援対策業務の支援に関する協定書」を締結しているのはこおりやま建設協会、県建設業協会郡山支部、県造園建設業協会郡山支部、ダンプカー協会、郡山建設業者同友会、市交通安全施設整備協会、郡山電設業者協議会、県中通信情報設備協同組合、市管工事協同組合、郡山鳶土工建設業組合、県南電気工事協同組合など十数団体に上る。 いくつかの団体に昔と今の会員数を問い合わせたが、増えているところはなく、団体によってはピーク時の6割程度にまで減っていた。 「業者の皆さんに広く加入を呼びかけているが、増える気配はないですね」(ある組合の女性事務員) 会費は月額1万円程度なので、負担にはならない。しかし、 「経営者が2代目、3代目に代わるタイミングで会員を辞める会社が結構あります。時代の流れもあるでしょうし、若い経営者の価値観が昔と変わっていることも影響していると思います」(同) それでも、会員になるメリットがあれば、経営者が代わっても引き続き団体に加入するのだろうが、 「加入を呼びかける立場の私が言うのも何ですが、明確なメリットと聞かれたら答えられない」(同) 昔は今より同業者同士のつながりが大切にされ、先輩―後輩のつながりで業界のしきたりを習ったり、仕事の紹介を受けたり、技術を学び合うなど団体加入には一定のメリットがあった。 今はどうか。別の団体の幹部に加入の具体的なメリットを尋ねると 「対外的な信用が得られます。組合は『社内にこういう技術者がいなければならない』など、入るのに一定の条件が必要。つまり組合に入っていれば、それだけで技術力が伴っている証拠になる」 正直、そこに魅力を感じて団体に加入する業者はいないだろう。 「ウチみたいに昔から入っているところはともかく、新規会員を増やしたいなら加入のメリットがないと厳しいでしょうね」(前出・老舗建設会社の役員) 会員数の減少は、そのまま〝地域の守り手〟の減少に直結する。それはいざ災害が発生した時、緊急点検や応急復旧などに当たってくれる業者が限られることを意味する。 それでなくても郡山は、新規会員が増えにくい状況にある。理由は、震災後に増えた「新参者」の存在だ。別の建設会社の社長が解説してくれた。 「新参者とは震災後、除染を目的に県外からやって来た人たちです。建設業界はそれまで深刻な不況で、公共工事の予算は年々減っていた。そこに原発事故が起こり、除染という新しい仕事が出現。『福島に行けば仕事がある』と、全国から業者が押し寄せたのです」 除染事業に従事するには「土木一式工事」や「とび・土工・コンクリート工事」の建設業許可が必要になる。許可を得て、資機材を揃えて大手ゼネコンの4次、5次下請けに入る小規模の会社はあっと言う間に増えていった。 「新参者が増えるのは行政にとってもありがたかった。住民が『早く除染してほしい』と求める中、業者の数がいないと予定通り除染は進まないわけですからね」(同) 尻拭いを押し付ける郡山市 郡山市役所 しかし、同じ仕事が永遠に存在するはずもなく、市内の除染が一通り終わると新参者の出番も減った。 この社長によると、新参者はその後、①経営に行き詰まって倒産、②浜通りなど除染事業が続いている地域に移動、③一般の土木工事に衣替え――の三つに分かれたという。 「一般の土木工事に衣替えした業者は、正確な数は分からないが結構います。私のように昔から郡山で仕事をやっていれば、社名を聞くだけでそこが新参者かどうか分かる。傾向としては、カタカナやアルファベットなど横文字の社名は該当することが多い」(同) 郡山市の「令和3・4年度指名競争入札参加有資格業者名簿」(2022年4月1日現在)を見ると、土木一式工事の許可業者は103、とび・土工・コンクリート工事の許可業者は225ある(いずれも市内に本社がある業者のみをカウント)。二つを見比べると、土木一式工事の許可業者はとび・土工・コンクリート工事の許可も併せて得ている。そこで後者の業者名を確認していくと、新参者に該当するのではないかと思われる業者は40社前後、全体の2割近くを占めていた。 除染事業がなくなっても、新たな仕事を求め、生き残りを図ろうとする姿はたくましい。建設業許可を得て一般の土木工事に従事するのだから法令違反でもない。社長も「そこを否定するつもりはない」と話す。ただ「新参者は暗黙のルールを守らないため業界全体が歪みつつある」というのだ。 「新参者は地域性を考えない。例えば、A社が本社を置く〇〇地域で道路工事が発注されたら、一帯の道路事情を知るのはA社なので、入札では自然とA社に任せようという雰囲気になる。これは談合で決めているわけではなく、不可侵というか暗黙のルールでそうなるのです。だから、A社は隣の××地域や遠く離れた△△地域の道路工事は取りにいかない。しかし、新参者は『競争入札なんだから地域性は関係ない』と落札してしまうわけです」(同) 新参者から言わせれば「暗黙のルールに基づく調整こそ談合みたいなもの」となるのだろう。ただ、〇〇地域の住民からすれば、見たことも聞いたこともない業者より、馴染みのあるA社に工事をやってもらった方が安心なのは間違いない。 「A社がある道路工事を仕上げ、そこから先の道路工事が新たに発注された時、継続性で言ったらA社が受注した方が工事はスムーズに進む可能性が高い。しかし、新参者はそういう配慮もなく、お構いなしに落札してしまう」(同) しかしこれも、新参者から言わせると「落札して何が悪い」となるのだろうが、社長が解せないのは、その後の尻拭いを市から依頼されることにある。 「もともと除染からスタートした業者なので、土木工事の許可を持っていると言っても技術力が備わっていない。そのせいで、工事終了後に施工不良個所が見つかるケースが少なくないのです。解せないのは、市がその修繕を当該業者にやらせるのではなく、再発注も面倒なので、現場に近い地元業者にこっそり頼むことです。市には世話になっているので頼まれれば手伝うが、地域性や継続性を無視して落札した新参者の尻拭いを、私たちに押し付けるのは納得がいかない」 実は、そんな新参者の多くは建設関連団体に加入していないのだ。再び前出・老舗建設会社の役員の話。 「新参者は建設関連団体に入っていないから、災害が起きても被災現場に駆け付けない。でも、入札では災害対応に当たる私たちと同列で競争し、仕事を取っている。不正をしているわけでなく、正当な競争の結果と言われればそれまでだが、地域に貢献している自負がある私たちからすると釈然としない」 「災害対応に正当な評価を」 会員業者は日曜夜に被災現場に出動しても、防災協定に基づくボランティアのため、月曜朝からは通常業務を行わなければならない。一方、建設関連団体に加入していない業者は被災現場に出動することなく休日を過ごし、月曜から淡々と通常業務に当たる。だからと言って、未加入の業者にペナルティーが科されることはなく、被災現場に出動した業者に特別なインセンティブがあるわけでもない。 これでは、会員業者が「真面目にやるのが馬鹿らしい」と愚痴を漏らすのは当然で、わざわざ建設関連団体に加入する新規業者も現れない。 「市がズルいのは、入札は公平・公正を理由にどの業者も分け隔てなく競争させ、災害や施工不良など困ったことが起きた時は建設関連団体を頼ることだ。真面目にやっている私たちからすると、市に都合よく使われている感は否めない」(同) これでは、新規会員はますます増えない。そこでこの役員が提案するのが、市が建設関連団体加入のメリットを創出することだ。 「会員業者は指名競争入札で指名されやすいといったインセンティブがあれば、災害対応に当たる私たちも少しはやりがいが出るし、今まで災害対応に無関心だった新参者も建設関連団体に入ろうという気持ちになるのではないか」(同) 郡山市では1000万円以上の工事は制限付一般競争入札、1000万円未満の工事は指名競争入札を導入しているが、2021年度の入札結果を見ると、落札額の合計は制限付一般競争入札が約99億8000万円、指名競争入札が約25億7200万円に対し、発注件数は前者が約150件、後者が約640件と指名競争入札の方が4倍以上多い。役員によると、会社の規模が小さい新参者は指名競争入札に参加する割合が高いという。 同市の指名競争入札に参加するには2年ごとに市の審査を受け、入札参加有資格業者になる必要がある。その手引きを見ると、市内に本社を置く業者が提出する書類に「災害協定の締結」「除雪委託契約の締結」の有無に関する記載欄があるが、市がそれをどれくらい重視しているかは分からない。 前述した建設関連団体のいくつかに問い合わせた際、 「災害協定を結んでいるかどうかは、市が審査をする上で少しは加点要素になっていると思う」(前出・女性事務員) 「実際に被災現場に駆け付けている点は(指名の際に)加味してほしいと市に申し入れている。そこを市がもっと評価してくれれば新規会員も増えると思うんですが」(前出・別の組合幹部) と語っていたが、市が日頃の災害対応を正当に評価しているかというと、建設関連団体にはそう感じられないのだろう。 「会員業者が増えないと災害対応が機能しない。それによって困るのは市民です。そこで、安心・安全な暮らしを維持するため、災害協定と除雪委託契約の締結を指名競争入札に参加するための重要要件にしてはどうか。そうすれば、建設関連団体に無関心の新参者も加入を検討するし、新規会員が増えれば災害が起きた時、市民も助かります」(同) 指名競争を増やす福島県の狙い 福島県庁 県では佐藤栄佐久元知事時代に起きた談合事件を受け、2006年12月に入札等制度改革に係る基本方針を決定。指名競争入札を廃止し、予定価格250万円を超える工事は条件付一般競争入札に切り替えた。しかし、過度な競争や少子高齢化で経営が悪化し、災害対応や除雪に携わる業者がいなくなれば地域の安心・安全確保に支障を来すとして〝地域の守り手〟である中小・零細業者を育成する観点から「地域の守り手育成型方式」という指名競争入札を2020年度から試行している。 農林水産部と土木部が発注する3000万円未満の工事を指名競争入札にしているが、入札参加資格の要件には「災害時の出動実績又は災害応援協定締結」と「除雪業務実績又は維持補修業務実績」が挙げられている。指名競争入札を増やすことで〝地域の守り手〟を支えていこうという県の狙いがうかがえる。 会津地方は郡山と比べて仕事量が少ないため、新しい会社が次々と誕生することもなく、昔から営業している会社が建設関連団体を形成し、地域のインフラを支える構図が成立している。業者数は少ないが、地域を守るという意識が業界全体で統一されている。 これに対し郡山は、業者数は多いが建設関連団体の会員業者は少ないため、業界全体で地域を守るという意識が希薄だ。もし入札制度を変えることで会員業者が増え、市民の安心・安全を確保できるなら、市は真剣に検討すべきではないか。 「入札の大前提にあるのは公平・公正だが、時代の変化と共に変えるべきものは変えなければならないことも承知しています。災害が年々増えている中、業者の協力がなければ市民の生命と財産は守れません。その災害対応については、市でも審査時に評価してきましたが、出動頻度が増えている今、それをどのように評価すべきかは今後の検討課題になると思います。県が試行している指名競争入札なども参考にしながら考えたい」(市契約検査課) 官が民に、建設関連団体への加入を〝強要〟するのは筋違いかもしれない。しかし現実に、災害の増加に反比例して〝地域の守り手〟は減少している。だったら、普段から災害対応に当たっている業者には、その労に報いるためインセンティブを与えるべきだし、それが魅力になって団体に加入する業者が増えれば、建設業界全体で地域を守るという意識が醸成され、災害に強いまちづくりが実現できるのではないか。 郡山市ホームページ あわせて読みたい 建設業者「越県・広域合併」の狙い【小野中村】【南会西部建設】 「地域の守り手」企業を衰退させる県の入札制度 福島市「デコボコ除雪」今シーズンは大丈夫?
フルーツジュース店や洋菓子店などを全国展開する㈱青木商店(郡山市、1950年設立、資本金1000万円※)。同社は株式上場を長年の悲願としており、2017年には持ち株会社の青木フルーツホールディングス㈱(住所同、資本金2300万円)を設立した。 ※法人登記簿によると青木商店の資本金は1000万円だが、HPにはなぜか「資本金等4500万円」と表記されている。こうした〝微妙な不正確さ〟が、青木氏が地元経済界からイマイチ信用されない要因なのかもしれない。 そんな両社の経営動向と、代表取締役を務める青木信博氏(75)の人物像は本誌昨年4月号「青木フルーツ『上場』を妨げる経営課題」という記事で詳報しているので参照されたい。この稿で取り上げるのは、3月1日付の地元紙で報じられた「両社の合併」についてである。 福島民友はこう伝えている。 《持ち株会社青木フルーツホールディングス(HD)は1日付で青木商店と合併する。青木商店が存続会社となり、同HD会長・社長の青木信博氏(75)が代表権のある会長に就く》《2月24日に開かれた同HDの臨時株主総会で合併の承認を受けた。同HDは合併について「組織再編を通じて経営の効率化を図るため」としている》 併せて、青木氏は同紙の取材に、タイの関連会社を新型コロナの影響で閉鎖したことも明かしている。 一般的に、持ち株会社は事業ごとに分かれた子会社を持ち、事業拡大やリスク分散を図るが、青木フルーツHDの場合は子会社が青木商店1社しかなく、持ち株会社としての存在意義は薄かったようだ。そもそも持ち株会社をつくる狙いは経営効率化なのに「両社を合併して経営効率化を図る」と言ってしまったら、青木フルーツHDの存在を自分から否定したことにならないか。 それはともかく、今後気になるのは持ち株会社をなくしたことで悲願の株式上場はどうなるのか、ということだ。これに関して青木氏は、福島民友の取材に「合併を機にスピードを上げて実現したい」と述べている。上場はあきらめないということだが、現実はどうなのか。 青木商店と青木フルーツHDはこれまで、三井住友信託銀行の証券代行部に株主名簿管理人を依頼していた。株主名簿管理人とは、株式に関する各種手続きや株主総会の支援などを代行する信託銀行や専門会社のこと。上場企業は会社法により株式事務の委託が義務付けられているため、青木商店は2014年から、青木フルーツHDは設立と同時に同行を株主名簿代理人に据えていた。 ところが青木商店の法人登記簿を見ると、今年1月12日付で株主名簿管理人を廃止している。これは何を意味するのか。 同行証券代行部に確認すると「青木商店に関する業務は取り扱っていない。ただ、青木フルーツHDに関する業務は現時点でも取り扱っている」と言う。記者が「青木フルーツHDは青木商店と合併し、既に解散している」と指摘すると「解散については把握していない。営業サイドと状況を確認し、必要があれば更新したい」と答えた。 青木商店にも問い合わせてみた。 「三井住友信託銀行とは青木フルーツHDが契約していたが、登記上は青木商店の株主名簿管理人にもなっていた。そこで、今回の合併を受けHDとしての契約は破棄し、青木商店の登記もいったん抹消して、同行には新たに青木商店として株主名簿管理人をお願いする予定です。株式上場は引き続き存続会社の青木商店で目指していきます」(総務部) 株式上場はあきらめない、とのこと。今後のポイントは上場に耐え得る決算(経営状態)を実現できるかどうかだが、せっかくつくった持ち株会社を解散する迷走ぶりを見せられると、悲願達成はまだまだ先のような気がしてならない。 あわせて読みたい 青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題【郡山市】
郡山市大平町の市道交差点で発生した一家4人死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた福島市泉の会社員高橋俊被告(25)に対し、地裁郡山支部は4月10日、禁錮3年(求刑禁錮3年6カ月)の判決を言い渡した。 裁判では、初めて通る道路にもかかわらず、助手席に置いたスマホに知人女性から連絡があるかどうか、気にしながら運転していたことが分かった。交差点に一時停止の標識などが設置されておらず、停止線も消えかかっていたのを踏まえ、小野寺健太裁判官は「過失の程度は重大であったとまでは言えないが、結果の重大性も考慮すれば、執行猶予を付けることは相当ではない」とした。 記者は夜、実際に現場を走ったが、坂道で加速するのに見通しが悪く、減速しながら慎重に降りた。判決によると高橋被告は約60㌔で交差点に入ったというから、漫然と運転した結果が悲劇を生み出したと言える。 あわせて読みたい 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 郡山市・警察が放置してきた危険【交差点一覧】
(2022年9月号) 郡山市内の放課後児童クラブ支援員が保護者会費を横領した――。編集部宛てにこんな告発メールが届いたことを8月号で紹介したところ、記事脱稿後に市が記者会見を開き、概ね事実だったことが分かった。子どもたちの〝おやつ代〟として使われるべき金を生活費として使い込んでおり、同業者や保護者からは怒りの声が聞かれる。 公式発表前に届いた内部告発メール 一連の経緯は本誌8月号「郡山市民が呆れるアノ話題 学童保育支援員に横領疑惑が浮上」という記事で紹介した。 7月上旬、編集部宛てに以下のような内容のメールが寄せられた。 《芳賀小児童クラブで2年前ぐらいから、会計を務める主任支援員が保護者会費(保護者が支払うおやつ代などの運営費)を着服している。その額は100万円以上。市の子ども政策課は事実を把握しているが、公表しておらず、なかったことにしようとしている》 芳賀小児童クラブは放課後の間、児童を預かる放課後児童クラブ(学童保育とも呼ばれる)の一つ。同小学校の校庭に建てられた施設に開設されており、児童は勉強(宿題)や運動、遊びをして過ごしている。 子どもたちの〝先生役〟となるのは「放課後児童支援員(以下、支援員と表記)」という資格を持つ職員。同市の放課後児童クラブは公設公営なので、いずれも市職員(会計年度任用職員)だ。 保護者会費とは、市に支払う利用料金とは別に支払う料金で、おやつなどの購入に使われる。同クラブは100人弱の児童が利用。毎月1人2300円の保護者会費を支払っており、会計担当の支援員が現金で預かる形になっていた。メールの内容が事実だとすれば、市職員がその金を横領していたことになる。 7月下旬、放課後児童クラブを管轄する市こども政策課にメールの内容について問い合わせると、担当者は「その放課後児童クラブに関しては現在調査中であり、事実関係や当該支援員の扱いも含めて、いまはお話しできません、ただ、調査が終わった段階で、然るべき形で発表しようとは考えています」と話した。内部で何らかのトラブルが起きていたことを認めたわけ。 同クラブに直接足を運んだが、「私どもも詳しい事情は分からない。コメントは控えさせていただきます」(当日勤務していた支援員)と話すのみだった。 いずれにしても、これだけ内情を知っているということは、差出人は同クラブを利用する保護者か、同市の職員・支援員だろう。ただ、確証が得られなかったため、8月号記事では学校名を伏せ、「疑惑」として紹介する形に留めた。 そうしたところ、記事脱稿後の8月2日、市が「放課後児童クラブ保護者会費(運営費)を横領した会計年度任用職員の懲戒処分について」という内容の記者会見を開いた。総合的に判断して同クラブで起きた案件と思われ、公益性もあると判断したので、本稿では実名で表記する。 市によると、横領したのは2009年から支援員として働いていた50代女性。20年度から22年度にかけて、保護者会費の一部239万4069円を横領。その事実を隠蔽するため、20、21年度の収支決算書を偽造していた。 横領期間は2020年8月から22年5月までの22カ月間。横領額の内訳は20年度68万1160円、21年度138万4000円、22年度32万8909円。 市こども政策課によると、保護者会の規約では「会計(=保護者)は担当支援員(=市職員)と相互協力のもと、円滑な運営を遂行する」と規定されており、市も「職員は2人以上が担当する」と指導していた。 ところが、芳賀小児童クラブに関しては、同支援員が一人で会計を担当。保護者から預かった会費は口座に入金せず金庫で管理し、収支決算書で帳尻合わせをしていた。保護者会で会計監査も行われていたそうだが、会計監査担当者に帳簿と領収書を一部分だけ突き合わせさせ、金額が合っていると信じ込ませる形で切り抜けていた。 239万円横領の理由 8月2日に行われた記者会見 周囲が異変に気付いたのは2022年5月。同クラブの別の支援員から「おやつ代を立て替えた際の清算が遅くて困っている」と相談を受けた同課の職員が事務指導を行っている中で、保護者会費が通帳に記帳されていないことが発覚。関係書類を提出させたところ、毎月ほぼ一定であるはずの保護者会費の収入額がなぜか月によって開きがあった。 同課の職員が6月14日、会計担当だった同支援員に事情聴取したところ、横領と書類偽造を認めた。 同課の聞き取り調査に対し、同支援員は「父が所有する事業用倉庫内の機械等を撤去する必要があり、その費用(約70万円)を工面するため、『一時的に借りよう』と思い一部を横領してしまった。その後も自分の生活が苦しかったこともあり、生活費に充てるため、横領を繰り返してしまった」と語ったという。 前述の通り、保護者会費はすべて現金で支払われ、金庫で管理されていた。すなわち1000円札や100円玉などを金庫からそのまま持ち出し、使っていたことになる。「生活費に充てるため」と語っていたというが、「ちょっと拝借する」程度で年間140万円にはなるまい。完全に感覚が麻痺してしまっていたのだろう。会見では記者から宗教団体などの関与を疑う質問もあった。 冒頭のメールには「全額回収のめどが立たないので市こども政策課としても公表できないようだ。このまま隠蔽するのではないか」とも書かれていたが、結局、同支援員は全額を返済した。同課は6月14日に事件が発覚してから1カ月以上公表しなかった理由について、「同支援員に返還の意思があり、そちらを優先したため」と明かした。 その一方で、同支援員は8月2日付で懲戒免職になった。本来、業務上横領罪に問われる案件だが、市では横領分が全額返済されたことから刑事告訴は行わない方針。そうした条件で示談にしたということだろう。 8月1日には保護者向けの説明会が開かれ、横領期間に利用していた児童の在籍期間に応じて返金する方針が伝えられた。対象となる保護者は延べ124人。 おやつ代として支払われていた保護者会費を横領していたということは、その分子どもたちへのおやつをケチっていたと考えられる。県内で活動する支援員はこう語る。 「保護者会費2300円ということは、1カ月に23日利用するとして、1日100円使う計算なのでしょう。うちのクラブでは大袋の菓子をみんなで分けて1日60円程度で済ませ、浮いた分で誕生日やイベント時に振る舞うケーキを買うなど、メリハリを付けている。問題の支援員はそうしたやりくりをせず、ひたすら安く済ませて横領分を捻出していたのかもしれません」 保護者会費は単純計算で年間1人当たり2万7600円、100人分で276万円。その中から最大138万円横領(2021年度)していたということは、おやつ代1日50円の計算で運営していたことになる。一緒に勤務していた支援員は気付かなかったのか。それとも会計を務める支援員だから何も言えなかったのか。同課は実名を伏せ、詳細も明かしていないので真相は分からないが、〝どんぶり勘定〟であったことがうかがえるし、市のチェック体制にも問題があったと言わざるを得ない。 8月上旬、同クラブ周辺で、児童を迎えに来た父親に声をかけたところ、「最悪ですよね。自分たちが預けていた金を勝手に使われていたわけですから」と述べた。 ほかにも複数の保護者に声をかけたが、「詳しく分からない」、「時間がない」と明言を避け足早に帰っていく人が多かった。「仕事と子育てを両立するのに忙しい中で、放課後児童クラブの内情まで把握できないし、余計なトラブルに巻き込まないでくれ」というのが本音かもしれない。市のチェック体制の甘さと保護者の〝無関心〟の間で、約2年にわたる横領が見過ごされてきたのだろう。 放課後児童クラブへの不満 取材の中では、同市の放課後児童クラブへの不満の声も聞かれた。 「子どもが利用し始めた当初、放課後をただ遊んで過ごしていることが分かり、『せめて宿題を終えてから遊べよ』と叱ったことがある。放課後の間、預かってもらうのはとてもありがたいが、それ以上のことは期待できないのだな、と実感しました」(2021年まで市内の放課後児童クラブを利用していた保護者) 放課後児童クラブにおいては、支援員の資格を持たない職員も「補助員」として働いている。ただ、支援員事情に詳しい関係者によると「現在人手不足なので、基本的には誰でもなれる状況。地域の高齢者などが務めることも多いが、親族や顔見知りの児童に甘い対応を見せて、不満が生まれることもある」。 2021年3月号では「郡山市の児童クラブで支援員が体罰!?」という記事を掲載した。「放課後児童クラブに通う長男が支援員から体罰を受けた」という投書の内容を検証したもので、支援員にそのつもりはなかったものの、誤解を招きかねない言動が確認されたという。 同市の放課後児童クラブの利用料金は1カ月4800円(生活保護受給世帯など条件によって軽減措置あり)。保護者会費2300円と合わせると約7100円に上る。「その金額で放課後の間預かってくれるなら十分だ」という保護者もいるが、その一方で「物足りない」、「割に合わない」と不満を抱く保護者もいるということだ。 同市の放課後児童クラブは市内50校に81クラブ設置されており、各クラブでは5~10人の支援員が勤務している。その大半は誠実に働いているが、今回のような不祥事が発覚すれば、保護者からの信頼をさらに失うことになる。 前出・県内で活動する支援員は次のように憤る。 「私たちは子どもたちから〝先生〟と呼ばれる立場にある。その立場の人間が『子どもたちの健全な育成のために』と保護者からもらったおやつ代(保護者会費)を横領する……これは、目の前の子どもより自分の生活費を優先したということであり、到底許されることではありません」 テレビや新聞での扱いは小さく、詳細が分かっていないことも多いが、市は今回の事件を重く受け止め、再発防止策を徹底しなければならない。前出のメールの差出人は、それが期待できないと懸念したから、本誌に〝内部告発〟したのだろう。 市では保護者会役員と支援員の役割を明確化して監査を行うとともに、コンプライアンス研修などを実施し再発防止に努める考えだ。しかし、そうした対応だけでは不十分だ。会計のダブルチェックの徹底、提供されるおやつのSNSでの公開など、保護者会費の使途をできる限り透明化し、「これなら横領できそうだ」という悪意が入り込めないような体制構築が求められる。 あわせて読みたい 郡山市【ヒューマニティー保育園】人気保育所が660万円不正受給
(2022年10月号) 郡山市の認可保育所「ヒューマニティー保育園」が委託費を不正受給していたとして、新規園児受け入れ半年間停止の行政処分を受けた。不正受領していた金額は約660万円に上り、市は返還を求めている。 〝投書攻撃〟を受けていた運営法人 ヒューマニティー保育園を運営しているのは一般社団法人ヒューマニティー幼保学園(瓜生麻美代表理事)。子どもの能力を開花させる教育法として話題になった「ヨコミネ式」を導入して人気を集めており、認可外保育所や学習塾なども運営する。 私立の認可保育所には市から委託費(運営費用)が支払われているが、同保育所では、非常勤の所長を常勤勤務として市に報告。加算分の受給要件を満たしていないにもかかわらず、2019年9月から21年3月にかけて、委託費659万8280円を不正に受給していた。 さらに昨年12月22日に行われた定期施設監査において、在籍していない保育士1人を「勤務していた」と偽って市に報告。虚偽の出勤簿や履歴書などを作成して提出していた。併せて同法人が運営する認可外保育施設などで使用する中古車2台(計65万円)を、同保育所の委託費で購入していたことも判明。市は同保育所への9月・10月分委託費から不正分を差し引く考え。 市は「昨年12月の定期施設監査の書類が偽造されていた」と外部から通報を受け、1月に特別監査を実施。この間、書類精査や関係者の聴取を行ってきた。市の聴き取りに対し、同保育所の関係者は「当初から不正の認識はあった。運営会社の指示を受けて行った」(NHKニュース)と語っていたというから、組織ぐるみだった可能性が高い。 同法人に関しては、匿名投書が連続で送られてきたとして、本誌2013年11月号で取り上げたことがある。内容はいずれも「保護者に説明がないまま新保育園建設が進められている」という不満を綴ったもので、「保育士の人数など、法律を無視した運営がなされている」など運営の怪しさを指摘する記述もあった。 当時の本誌取材に対し、園長代理を務めていた瓜生氏は「保護者にはきちんと説明しており、法律違反の点もない」、「(同法人の運営が)まるで不安要素だらけのように書かれているのは悪意を感じますね」と話し、「投書は外部から見たイメージだけで意図的に悪く書かれている。これ以上続くようであれば、差出人に対し法的手段を取ることも考えています」と息巻いていた。 同市保育課の担当者も「(当時、同法人が運営していたのは認可外保育所のみだったので)投書で苦情を言われても市としては対応しようがない」というスタンスだった。 だが結果的に、保育士の数を偽っていると指摘していた〝投書攻撃〟は事実だったことになる。 不正受給の件について、あらためて同法人に問い合わせたが、担当者はどの質問にも「市に報告し、この間報道されたことがすべてです」と答えるのみだった。記者が「2013年の取材当時も実は内部で不正が行われていたのではないか」と尋ねると「あの時点では間違いなく不正行為はしていなかった」と述べた。市は同法人が返金の意思を示していることから刑事告訴しない方針。不正受給の動機は分からずじまいだ。 9月下旬、同保育所を訪ねると静まり返っていた。新規園児受け入れ停止期間は来年3月末まで。保護者の反応は聞けなかったが、悪質な不正受給の実態を知って、退園する動きが出てきても不思議ではない。 あわせて読みたい 郡山市【芳賀小】学童支援員横領は事実だった
1月に郡山市大平町で発生した交通死亡事故を受けて、市が危険な市道交差点をピックアップしたところ、222カ所が危険個所とされた。対象となる交差点で対策が講じられたが、これまで改善を要望し続けてきた住民は「死亡事故が起きて初めて動くのか」と冷ややかな反応を見せる。(志賀) 「改善要望を無視された」と嘆く住民 郡山市大平町の事故現場 郡山市大平町の交通死亡事故は、市道交差点で乗用車が軽乗用車に衝突し、近くに住む一家4人が死亡したというもので、全国的に報道された。現場となった交差点は一時停止標識がなく、道路標示が消えかかっていたため、市は市道交差点の総点検に着手した。 危険交差点は各地区の住民の意見を踏まえて抽出された。対象基準は「一時停止の規制が無く優先道路が分かりづらい」、「出会い頭の事故が発生しやすい」、「スピードが出やすく大事故につながりやすい」、「ヒヤリハットの事例が多い」など。合計222カ所が挙げられ、郡山国道事務所、福島県県中建設事務所、警察(郡山署、郡山北署)と連携しながら現場を確認。その結果、180カ所で新たな対策が必要とされた。 道路の区画線(白線)やカーブミラー、街灯は道路管理者(国、県、市町村)の管轄。「横断歩道」などの道路標示、道路標識、信号機などは都道府県公安委員会(警察)の管轄となっている。180カ所のうち市対応分は152カ所(区画線、道路標示78カ所、交差点内のカラー舗装44カ所、カーブミラー設置30カ所)、公安委員会対応分は28カ所(停止線の補修等28カ所)だった。 それ以外の42カ所は道路管理者、公安委員会でできる対策がすでに講じられているとして「対策不要」とされた。とは言え、各地区の住民らが危険と感じているのに放置するのは違和感が残る。そうした姿勢が事故につながるのではないか。 ピックアップされた危険交差点は別表の通り。グーグルストリートビューを活用して現地の状況を確認すると、見通しが悪かったり、道路標示が消えて見えにくくなっているところが多い。 郡山市の危険交差点222カ所 中田町高倉字三渡(221番)。坂・カーブ・三叉路で見通しが悪い ※市発表の資料を基に作成。要望理由の「ヒヤリ」は事故発生の恐れがある(ヒヤリハット)、「見通し」は見通しが悪い、「優先」は優先道路が分かりにくい個所。対策の「市」、「公安」は点検の結果、市、公安委員会のいずれかが対応した個所。「なし」は市・公安委員会による新たな対策が不要とされた個所。 住所 要望理由対策1並木五丁目1-8ヒヤリなし2桑野五丁目1-5ヒヤリなし3桑野四丁目4-71ヒヤリ公安4咲田一丁目174-4ヒヤリなし5咲田二丁目54-5ヒヤリ公安6若葉町11-5見通しなし7神明町136-2ヒヤリ公安8長者二丁目5-29見通しなし9緑町13-13見通しなし10亀田二丁目21-7見通し市11島一丁目9-20ヒヤリ市12島一丁目137ヒヤリ市13島一丁目147ヒヤリ市14島二丁目32、34、36、37の角見通しなし15台新二丁目7-13見通し市16台新二丁目15-11見通し市17静町35-23見通し市18静町106-1見通し市19鶴見担二丁目130ヒヤリ市20菜根一丁目176ヒヤリなし21菜根一丁目296-1ヒヤリ市22菜根二丁目6-12見通し市23開成二丁目457-2ヒヤリ市24香久池一丁目129-1ヒヤリ市25図景二丁目105-2ヒヤリ公安26五百渕山21-4見通し市27名倉67-1見通し市28名倉78-2ヒヤリ市29久留米二丁目101ヒヤリ市30久留米三丁目26-5ヒヤリなし31久留米三丁目28-1ヒヤリ市32久留米三丁目96-4ヒヤリ市33久留米三丁目116-5見通し市34久留米五丁目3-1ヒヤリ公安35久留米五丁目111-35見通し市36横塚一丁目63-1ヒヤリ市37横塚一丁目126-4ヒヤリ公安38横塚六丁目26ヒヤリなし39方八町二丁目94-2優先なし40方八町二丁目245-4ヒヤリ公安41芳賀一丁目67ヒヤリ市42緑ケ丘西二丁目6-9優先公安43緑ケ丘西三丁目11-7見通し市44緑ケ丘西四丁目8-5見通し公安45緑ヶ丘西四丁目10-8見通し市46緑ヶ丘西四丁目14-2見通し市47緑ケ丘東一丁目2-20ヒヤリなし48緑ケ丘東二丁目11-1見通しなし49緑ケ丘東二丁目19-13優先市50緑ケ丘東五丁目1-1見通し市51緑ケ丘東六丁目10-1見通し市52緑ヶ丘東八丁目 (前田公園前十字路)見通し市53大平町字前田116-2見通し市54大平町字御前田53見通しなし55大平町字御前田59-45見通し市56大平町字向川原80-4見通しなし57荒井町字東195見通し市58阿久津町字風早87-2見通し市59舞木町字岩ノ作44-6見通し市60町東一丁目245見通しなし61町東二丁目67見通しなし62町東三丁目142-2見通し市63新屋敷1-91見通し市64富田町字墨染18見通し公安65富田町字十文字2見通し市66富田町字大十内85-246ヒヤリ市67富田町字音路90-20見通し市68富田東二丁目1優先市69富田町字細田85-1優先公安70富田町日吉ヶ丘53優先市71大槻町字西宮前26ヒヤリ公安72大槻町字南反田18−3ヒヤリなし73大槻町字室ノ木33-8見通し市74大槻町字原田東13-93ヒヤリ市75大槻町字葉槻22-1優先市76笹川一丁目184-32見通し市77安積一丁目155見通し市78安積一丁目38見通しなし79安積町二丁目350番1見通し公安80安積町日出山字一本松100番18見通しなし81三穂田町川田二丁目62-2見通し市82三穂田町川田三丁目156見通し市83三穂田町川田字駒隠1-4見通し公安84三穂田町川田字小樋41見通し公安85三穂田町川田字北宿3-2見通し公安86三穂田町野田字中沢目9見通し公安87三穂田町鍋山字松川53見通しなし88三穂田町駒屋二丁目62ヒヤリ市89三穂田町駒屋字上佐武担2-2見通し公安90三穂田町八幡字北山10-13見通し公安91三穂田町八幡字北山7-12見通しなし92三穂田町富岡字下茂内56見通し市93三穂田町富岡字下間川67ヒヤリ公安94三穂田町富岡字藤沼18-9見通しなし95三穂田町山口字横山5-4見通しなし96三穂田町山口字川底原22優先公安97逢瀬町多田野字清水池125見通し市98逢瀬町多田野字上中丸56-1見通し市99逢瀬町多田野字家向61見通し市100逢瀬町多田野字柳河原77-2優先市101逢瀬町多田野字南原26見通し市102逢瀬町河内字西荒井123優先市103逢瀬町河内字藤田185見通し公安104片平町字庚坦原14-507優先市105片平町字元大谷地27-3優先市106片平町字森48-2優先市107片平町字新蟻塚99-5見通し市108片平町字樋下68優先市109東原一丁目44見通しなし110東原一丁目120見通し市111東原一丁目229見通し市112東原一丁目250見通し市113東原二丁目127見通し市114東原二丁目141見通し市115東原二丁目235見通し市116東原三丁目246ヒヤリ市117喜久田町字双又30-19見通し市118喜久田町堀之内字北原6-9優先市119喜久田町早稲原字伝左エ門原優先市120日和田町高倉字牛ケ鼻130-1優先市121日和田町高倉字鶴番367-1優先市122日和田町高倉字南台23-1見通し公安123日和田町梅沢字衛門次郎原123優先市124日和田町梅沢字衛門次郎原150-2見通し市125日和田町梅沢字新屋敷115-1見通し市126日和田町字鶴見坦139優先市127日和田町字鶴見坦88優先市128日和田町字鶴見坦156優先市129日和田町字沼田29-1見通しなし130日和田町字原町25-1見通し市131日和田町字水神前145優先市132日和田町字水神前169優先市133日和田町字水神前184優先市134日和田町字境田17優先市135日和田町字鶴見坦40-54見通し公安136八山田二丁目204優先市137八山田三丁目204優先市138八山田四丁目160優先市139八山田五丁目452優先市140八山田西二丁目242優先なし141八山田西三丁目149優先なし142八山田西三丁目164優先なし143八山田西四丁目9優先市144八山田西四丁目30優先市145八山田西四丁目83優先なし146八山田西四丁目179優先市147八山田西五丁目284優先市148富久山町八山田字細田原3-18見通し市149富久山町八山田字坂下1-1優先市150富久山町八山田字舘前103-2見通しなし151富久山町八山田字菱池17-4見通し市152富久山町久保田字本木93見通し市153富久山町久保田字我妻117優先市154富久山町久保田字我妻136優先なし155富久山町久保田字石堂35-4優先市156富久山町久保田字石堂22優先市157富久山町久保田字本木54-2見通しなし158富久山町久保田字我妻79-1見通し市159富久山町久保田字麓山115-3見通しなし160富久山町久保田字麓山54-3見通しなし161富久山町久保田字三御堂12-2優先市162富久山町久保田字三御堂15-1優先なし163富久山町久保田字下河原123-1優先市164富久山町久保田字下河原38-2優先市165富久山町久保田字古坦131-4優先なし166富久山町久保田字三御堂122-2優先市167富久山町久保田字三御堂129-10優先なし168富久山町福原字猪田29-1見通し市169富久山町福原字左内90-63見通し市170湖南町三代字原木1148優先市171湖南町三代字御代1155-2優先市172湖南町福良字畑田181-1優先市173湖南町舟津字ヲボケ沼1見通し市174湖南町舘字上高野52優先市175熱海町安子島字北原24-54見通し市176上伊豆島一丁目25見通し市177田村町小川字岡市6見通し市178田村町小川字戸ノ内80-4見通し市179田村町山中字上野90-2見通し市180田村町山中字鬼越91-1見通し市181田村町山中字鬼越518-3優先市182田村町山中字枇杷沢264-6見通し市183田村町金沢字大谷地234-10見通し市184田村町谷田川字北田9見通し市185田村町谷田川字町畑11-1見通しなし186田村町守山字湯ノ川85-1見通し市187田村町正直字南17-1見通し市188田村町正直字北22-3見通し市189田村町金屋字水上35-1見通し市190田村町金屋字水上4見通し市191田村町金屋字マセ口14-2見通し市192田村町金屋字西川原80-3見通しなし193田村町上行合字北古川97優先市194田村町下行合字古道内122-2優先市195田村町下行合字宮田130-25優先市196田村町手代木字三斗蒔34優先市197田村町手代木字永作236-1優先市198田村町桜ケ丘一丁目59優先公安199田村町桜ケ丘一丁目170見通し公安200田村町桜ケ丘一丁目226見通しなし201田村町桜ケ丘二丁目1見通し市202田村町桜ケ丘二丁目2見通し市203田村町桜ケ丘二丁目27見通し市204田村町桜ケ丘二丁目90見通し市205田村町桜ケ丘二丁目115、297-17見通し市206田村町桜ケ丘二丁目144見通し公安207田村町桜ケ丘二丁目203見通し市208田村町桜ケ丘二丁目295-54見通し市209田村町桜ケ丘二丁目365見通し市210田村町守山字権現壇165-1見通し市211西田町鬼生田字前田407優先公安212西田町鬼生田字石堂1194優先市213西田町土棚字内出694-2見通しなし214中田町下枝字五百目55見通し市215中田町柳橋字石畑520-9見通し市216中田町柳橋字久根込564優先市217中田町柳橋字小中里217優先市218中田町牛字縊本字袋内1-1優先市219中田町高倉字弥五郎253優先市220中田町高倉字弥五郎202見通し市221中田町高倉字三渡13-2見通し市222中田町高倉字宮ノ脇198-1見通し市 また、緑ヶ丘団地などのニュータウン、住宅地も目立つ。住宅が立ち並び見通しが悪いのに、交通量が多いことが要因と思われる。 住民は地区内の危険交差点について、どう感じているのか。 7カ所の危険交差点がピックアップされた久留米地区の國分晴朗・久留米町会連合会長は「子どもたちが通るところもあるので心配」と語る。 「久留米は人口が多い住宅地(住民基本台帳人口6350人=1月1日現在)。地区内の子どもたちは柴宮小学校やさくら小学校に通っているが、交通量の多い通りを歩くので、事故につながらないか心配です」 例えば、久留米公民館近くの交差点(30番、写真参照)。四方向に一時停止標識が設置されているが、西側(内環状線側)から来た車は建物や駐車車両が視界に入り、交差車両が確認しづらい。 久留米三丁目の交差点(30番)。住宅地だが交通量が多い 東側から来る車からは、150㍍先に内環状線の信号が見える。青信号のタイミングには、一時停止をおざなりにして、急いで発信する車があるという。そうした中、危うく事故になる状況がたびたび発生しているようだ。もっとも、一時停止標識は設置されているので、今回の点検では「対策不要」となった。 同連合会では子どもたちの交通安全を守るため、関係機関と連携し、毎年1回、危険個所チェックを実施。地元住民は「柴宮小・地域子ども見守り隊」を組織して登下校時の見守り活動を行っており、市の2022年度セーフコミュニティ賞を受賞した。さらに年2回、市道路維持課の担当者を招き、各町会長が危険個所の改善を直接要望する場も設けている。ただ、「『近すぎる間隔で信号は設置できない』などの理由で要望は受け入れられておらず、危険交差点の解消には至っていない」(同)。 「本気度が感じられない」 片平町字新蟻塚(107番)。ブロック塀で右側からの車が全く見えない 郊外部の片平町でも、危険交差点が5カ所挙げられていた。片平町区長会の鹿又進会長は「いずれも見通しが悪かったり、優先順位が分かりづらい個所。改善されることに期待したい」と話す。 一方、同地区内で団体責任者を務める男性は「これまで信号機設置などを要望し続けてきたが、実現しなかった。市内で死亡事故が起きてから動き出すのでは遅すぎる」と憤る。 「朝夕は市中心部に向かう通勤車両が多い。通学する児童・生徒が危険なので、市や公安委員会に信号機設置を要望してきたが、実現しなかった。今回の点検も『対策不要』とされた個所が40カ所以上あるし、そもそも『いつまでにどう対策する』というスケジュールも明確ではない。交通死亡事故を受けてとりあえず動いた感がアリアリで本気度が感じられません。結局、見守り隊など地元住民の〝共助〟で何とか対応するしかないのでしょう」 公安委員会の窓口である郡山署に問い合わせたところ、「住民から要望を受けて県単位で優先順位を付け、限られた予算で対策を講じている。すべての要望に応えられないことはご理解いただきたい」と説明した。ちなみに、県警本部交通規制課が公表している報告書には「人口減少による税収減少などで財源不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少する」との見通しが記されている。今後、安全対策の要望はますます通りにくくなるのかもしれない。 市道路維持課によると、定期的に道路パトロールは行っているが、総延長約3400㌔の市道を細かくチェックするのは困難なうえ、これまでは路面の穴、ガードレールや側溝蓋の損傷など異常個所を重点的にチェックしていたという。その結果、222カ所もの危険交差点を見過ごしてきたことになる。 事故を受けて郡山国道事務所、県中建設事務所も過去に事故が発生した交差点などを洗い出し、国道3カ所、県道41カ所が抽出された。 国道は国道49号沿いの田村町金谷、開成五丁目、桑野二丁目の各交差点。いずれも信号機がない交差点で、2017~20年の4年間で出合い頭の事故が2件以上発生している。担当者によると、現在、対応策を検討中とのこと。 県道に関しては場所を公表していないそうだが、現地を確認したうえで、必要に応じて消えかかった区画線を引き直すなど、緊急的に対応しているという。 悲惨な事故が二度と発生しないようにするためには、まず地区住民の声を聞き、危険個所を関係機関同士で共有する仕組みをつくる必要があろう。そのうえで、既存の対策を講じてもなお危険性が高い場所に関しては、市が中心となり違うアプローチの対策を模索していくべきだ。マップアプリ・SNSを活用した注意呼びかけ、交通安全啓蒙の看板設置、見守り隊活動補助金の拡充などさまざまな方法が考えられる。あらゆる対策により改善していく姿勢が求められる。 死亡事故公判の行方 大平町の交通死亡事故現場(事故直後に撮影) さて、危険交差点総点検の発端となった大平町での死亡事故に関しては、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた高橋俊被告の初公判が3月16日、地裁郡山支部で開かれた。 報道によると、検察側は冒頭陳述などで▽事故当時は時速60㌔で走行、▽本来約80㍍手前で交差点を認識できるはずなのに、前方不注意で、気付いたのは約30㍍手前だった、▽22・3㍍手前で軽乗用車に気付きブレーキをかけたが間に合わなかったと主張。禁錮3年6月を求刑した。これに対し、弁護側は▽脇見運転や危険運転はしていない、▽道路の一時停止線が消えかかっているなど「事故を誘発するような危険な状況だった」として、執行猶予付き判決を求めた。 本誌記者2人は、傍聴券を求めて抽選に並んだが2人とも外れた。券を手にし、傍聴することができた裁判マニアが話す。 「傍聴席には被害者の遺族十数人の席が割り当てられていました。被告は背広にネクタイを締めた姿で出廷し、検察官が読み上げる起訴状の内容について『間違いありません』と認めました。テレビや新聞では『高橋被告は知人女性からの連絡を待ちながら目的地を決めずに車を運転していた』と報じていますが、それは事実の一部。裁判では、高橋被告は既婚者で子どもがいることが明かされました。知人女性と連絡を取り合い、待ち合わせ場所を決める中での事故だったのではないでしょうか。事故後は保釈金を払い、身体拘束を解かれました。香典を遺族に渡そうとしましたが会うのを拒否され、親族が代わりに渡しています」 弁護側の証人として、母親と職場の上司が出廷。上司は営業の仕事態度は真面目であったこと、罪が確定するまでは休職中であることを述べた。死亡した一家の親族も意見陳述し、「法律で与えられる最大の刑罰を科してほしい」、「4人の未来を返してほしい」と訴えた。高橋被告は声を震わせながら「本当に申し訳ないことをした」、「二度と運転しない」と何度も繰り返したという。 裁判は即日結審。判決は4月10日午前10時からの予定。危険交差点への対策と併せて、公判の行方にも注目したい。 あわせて読みたい 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 郡山4人死亡事故で加害者に禁錮3年 【福島市歩道暴走事故の真相】死亡事故を誘発した97歳独居男の外食事情 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証
総合南東北病院などを運営する一般財団法人脳神経疾患研究所(郡山市八山田七丁目115、渡辺一夫理事長)が移転・新築を目指す新病院の輪郭が、県から入手した公文書により薄っすらと見えてきた。 県は昨年11月、郡山市富田町字若宮前の旧農業試験場跡地(15万4760平方㍍)を売却するため条件付き一般競争入札を行い、脳神経疾患研究所など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院など複数の医療施設を同跡地に移転・新築する計画を立てている。 同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、郡山市が医療関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に新病院を建設すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた(※本誌の取材に、佐藤県議は関与を否定している=昨年6月号参照)。 ところが昨年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に、同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を水面下で練ったことがある。新しい本社の移転候補地に挙がったこともあった。 ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」とのこと。しかし、入札価格は51億5000万円で、同研究所を23億円余り下回る次点だった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、同社の入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。 「ゼビオは同跡地にどうしても進出したいと、郡山市を〝仲介人〟に立て、同研究所に共同で事業をやらないかと打診したという話もある。しかし同研究所が断ったため、両者は入札で勝負することになったようです」(前出・事情通) この話が事実なら、ゼビオは同跡地に相当強い思い入れがあったことになる。 それはともかく、本誌は同研究所の移転・新築計画を把握するため、県に情報開示請求を行い、同研究所が入札時に示した企画案を入手した。半分近くが黒塗り(非開示)になっていたため詳細は分からなかったが、新病院の輪郭は薄っすらと知ることができた。 それによると、同研究所は医療法人社団新生会(郡山市)、㈱江東微生物研究所(東京都江戸川区)、クオール㈱(東京都港区)、㈱エヌジェイアイ(郡山市)と共同で、総合病院と医療関連産業の各種施設を一体的に整備し、県民の命と健康を守る医療体制を強化・拡充すると共に、隣接するふくしま医療機器開発支援センターと協力し、医療関連産業の振興を図るとしている。 5者の具体的な計画内容は別掲の通りだが、県から開示された企画案は核心部分が黒塗りだった。ただ、企画案を見ていくと「新興感染症や災害への対応」という文言がしばしば出てくる。 5者の計画内容 脳神経疾患研究所総合南東北病院、南東北医療クリニック、南東 北眼科クリニック、南東北がん陽子線治療センター等を一体的に整備。新生会 南東北第二病院を整備。脳神経疾患研究所と新生会は救急医療、一般医療、最先端医療を継ぎ目なく提供。また、ふくしま医療機器開発支援センターの研究設備を活用し、新たな基礎・臨床研究につなげる。同センターの手術支援設備や講義室等を活用し、医療者の教育と能力向上も目指す。江東微生物研究所 生化学検査、血液検査、遺伝子検査、細菌・ウ イルス検査などに対応できる高度な検査機関を 整備。検査時間の迅速化や利便性を向上させ、県全体の検査体制充実に貢献する。クオール がん疾患などの専門的な薬学管理から在宅診療まで、地域のニーズに対応できる高機能な調剤薬局を設置・運営。併せて血液センターや医薬品卸配送センターなども整備する。エヌジェイアイ 医療機器・システム開発等の拠点となる医療データセンターを整備。※5者が県に示した企画案をもとに本誌が作成。 新型コロナウイルスや震災・原発事故を経験したことで、新病院は未曽有の事態にも迅速に対応できる造り・体制にすることを強く意識しているのは間違いない。また、同研究所に足りない面を江東微生物研究所やクオールに補ってもらうことで、より高度な医療を提供する一方、ふくしま医療機器開発支援センターを上手に活用し、県が注力する医療関連産業の集積と医療人材の育成に寄与していく狙いがあるのではないか。 事実、企画案には《高次な救急患者を感染症のパンデミック時でも受け入れ可能とする構造・設備・空間を実現》《がん陽子線治療をはじめとした、放射線治療やロボット手術を駆使し、低侵襲の最先端医療を福島県外や海外からの患者にも提供》と書かれている。 一方、土地利用計画を見ると、医療関連施設以外の整備も検討していることが分かる。 例えば、隣接するJR磐越西線・郡山富田駅を念頭に駅前広場、同広場から郡山インター線につなぐ構内道路、各種テナントを入れた商業施設、既存斜面林を生かした公園などを整備するとしている。また新病院と各種施設も、建て替え・増築時に医療機能がストップしないような配置にしていくという。 開発スケジュールは黒塗りになっていて分からないが、同跡地の所有権が同研究所に移った後、2023~28年度までの期間で着工―開設を目指すとしている。 脳神経疾患研究所が落札した旧農業試験場跡地 ここまでが県から開示された企画案で分かったことだが、新病院の輪郭をさらにハッキリさせるため同研究所の法人本部に問い合わせると、 「現時点でお答えできる材料はありません。現在、設計を行っているところで、それが完成すると詳細な計画も明らかになり、会見も開けると思います」(広報担当者) とのことだった。 気になる事業費、資金計画、収支見通しは5者ごとに示しているが、こちらも黒塗りになっていて不明。ただ「事業費は総額600億円と聞いており、同研究所内からも『そんな巨費を捻出できるのか』と不安が漏れている」(前出・事情通)。今後は自己資金、借り入れ、補助金などの割合が注目される。 あわせて読みたい 南東北病院「移転」にゼビオが横やり
福島県の〝商都〟を象徴する「うすい百貨店」(郡山市中町13―1、横江良司社長、以下うすいと表記)に気になるウワサが浮上している。 本誌2023年2月号【ホテルプリシード郡山閉館のワケ】で既報の通り、うすいの隣で営業するホテルプリシード郡山が3月末で閉館し、同じ建物に入る商業施設やスポーツクラブも5月末で撤退することが決まるなど、賑わいを取り戻せずにいる中心市街地はますます寂れていくことが懸念されている。 そのうすいをめぐっても、地元経済人の間で最近こんなウワサが囁かれている。 「ルイ・ヴィトンが今年秋に撤退することが決まったらしい」 言わずと知れた高級ファッションブランドのルイ・ヴィトンは、うすいが現在の店舗でリニューアルオープンした1999年からキーテナントとして1階で営業。地方の百貨店にルイ・ヴィトンが出店したことは当時大きな話題となった。 以来、ルイ・ヴィトンは「百貨店としての質」を高める顔役を担ってきたが、それが撤退することになれば集客面はもちろん、イメージ面でも影響は計り知れない。 「うすいに限らず百貨店自体が新型コロナの影響もあり厳しいと言われているが、(うすいに入る)ヴィトンの売り上げ自体は悪くないそうです」(ある商店主) うすいは今年に入ってから、同じく高級ファッションブランドであるグッチの特設売り場を開設したが、売り上げ好調を受けて開設期間を延長した。延長期間は長期になるという話もあるから、客入りは予想以上に良いのだろう。新型コロナが経済に与える影響は続いているが、高級ブランドへの需要は戻りつつあることがうかがえる。 にもかかわらず、なぜルイ・ヴィトンは撤退するのか。 「東北地方には仙台に店を置けば十分と本部(ルイ・ヴィトンジャパン)が判断したようです。今はネット購入が当たり前で、地方にいても容易にブランド品が手に入る時代なので、テナント料や人件費を払ってまで各地に店を構える必要はないということなんでしょうね」(同) なるほど一理あるが、半面、郡山に「都市としての魅力」が備わっていれば、ルイ・ヴィトンも「ここに店を置く意義はある」と思い留まったのではないか。そういう意味で、撤退の要因はうすいにあるのではなく、郡山に都市としての魅力が無かったと捉えるべきだろう。 もっとも、撤退はウワサの可能性もある。うすいに事実関係を確認すると、広報担当者はこう答えた。 「オフィシャルには11月にリモデルすることを発表していますが、中身については経営側と店舗開発部で協議しているところです。当然、ショップの入れ替わりも出てくると思いますが、現時点で発表できる材料はありません」 前出・商店主によると 「ヴィトンの後継テナントが見当たらないため、内部では『市民の憩いの広場にしてはどうか』という案が浮上しているそうです」 とのことだが、今まで高級ブランド店が構えていた場所にベンチを置くだけの使い方をすれば「百貨店としての質」は確実に落ちる。地方の百貨店にハイブランドテナントを誘致するのが難しいことは十分承知しているが、安易な代替案は避け、百貨店に相応しいテナントを引っ張ってくる努力を怠るべきではない。 ちなみに民間信用調査機関によると、うすいの近年の業績は別表の通り。地方の百貨店は厳しいと言われる中、少ないかもしれないが黒字を維持している。2021年はさすがに新型コロナの影響が出て大幅赤字を計上したが、翌年はその反動からか逆に大幅黒字を計上している。 うすい百貨店の業績 売上高当期純利益2018年154.9億円4100万円2019年149.9億円3600万円2020年141.8億円1700万円2021年122.1億円▲1億3300万円2022年132.9億円1億5500万円※決算期は1月。▲は赤字。 うすいはこれまでも、大塚家具や八重洲ブックセンターといった有力テナントの撤退に見舞われたが、県内初進出のブランドを期間限定ながら出店させるなどして「県内唯一の百貨店」としての地位を維持してきた。しかし、撤退のウワサはルイ・ヴィトンに留まらず、 「私はティファニー(宝飾品・銀製品ブランド)が出ていくって聞いていますよ」(ある経済人) という話も漏れ伝わるなど、地方の百貨店の先行きはますます不透明感を増している状況だ。 新型コロナの影響は収まっていないが、11月のリモデルでルイ・ヴィトンやティファニーが撤退するのかどうかも含め、どのような新しい方向性が打ち出されるのか。うすいの奮闘は続く。 あわせて読みたい ホテルプリシード郡山閉館のワケ
郡山市中町の「ホテルプリシード郡山」が3月31日で営業を終える。同ホテルはうすい百貨店の隣に立地しているが、中心市街地に〝巨大な空き家〟が出現することに近隣の商店主らはショックを受けている。 昨年12月1日、同ホテルがホームページで発表した「お知らせ」にはこう書かれている。 《ホテルプリシード郡山は、1993年8月の開業以来、皆様にご愛顧頂いて参りましたが、来る2023年3月末日をもちまして営業終了する運びとなりました。 長年に渡るご厚情に心から感謝申し上げると共に、皆様の今後のご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます》 同ホテルが入る建物は地上12階、地下2階建て。1階と地下1階では商業施設(10店)、3・4階ではスポーツクラブが営業している。2階はレストランとホテルフロントで、5階から上が客室(159室)になっている。 近隣の商店主は 「この間、中心市街地の賑わい復活を目指して取り組んできたが、一帯の人通りは相変わらず少ない。そうした中、中心市街地を牽引するうすいの隣のホテルが閉館するのは非常に寂しい」 と、同ホテルの営業終了を残念がっている。 同業者の間では、昨年秋から「プリシードが閉館するらしい」とウワサになっていたが、営業終了の理由はともかく「このタイミングで閉館するのはもったいない」という声が聞かれていた。 ホテルと言うと新型コロナの影響で苦戦している印象を受けるが、実は思いのほか好調なのだという。 あるホテル業関係者の話。 「他市の状況は分かりませんが、郡山市内のホテルは今、コロナ前より稼働率は高いと思いますよ」 理由は同市の〝地の利〟にある。 「市内には民間の大きな病院が複数あるので、全国から来た医療機器や医薬品の営業マンが頻繁にホテルを利用しています。彼らは市内のホテルに連泊しながら今日は会津、明日は白河、明後日はいわきと動いているので、常連の宿泊で一定の稼働率が保たれているのです」(同) タクシードライバーからはこんな話も聞かれた。 「一昨年2月、昨年3月の福島県沖地震で、県内には保険会社の調査員が全国から来ていました。調査員は市内のホテルに長期滞在し、そこからタクシーを使ってあちこちの物件の被害状況を確認していました。私も県南や浜通りなどに調査員を何度もお連れしましたよ」 つまり、新型コロナでイベントやコンベンションが中止され、ホテルは苦戦しているかと思いきや、それに代わる需要で売り上げを確保していたというのだ。 「最近はインバウンドも徐々に回復しており、団体の外国人旅行客の姿も見るようになっています。今、市内のホテルはどこも忙しいと思いますよ」(前出・ホテル業関係者) こうした状況下でホテルプリシード郡山はなぜ営業を終えるのか。二つの事情がある。 一つは、建物を所有する会社との賃貸借契約が満了を迎えることだ。 同ホテルを営業しているのは㈱ホテルプリシード郡山(郡山市中町12―2)。1992年6月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・宮尾武志、取締役・桜井滋之、西岡巌、監査役・細川和洋の各氏。 一方、建物と土地を所有するのは不動産業の㈱橋本本店(郡山市麓山一丁目9―1)。2013年11月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・橋本善郎、取締役・橋本ひろみ、橋本眞明、橋本眞由美の各氏。 建物は1993年6月竣工で、当時は同じ社名で別会社の㈱橋本本店(橋本善郎社長、78年10月設立、資本金8800万円)が所有していたが、98年に商号を㈱橋本地所に変更。2013年11月に分社化し、新たに設立した前述の橋本本店に所有権を移した経緯がある。 つまり同ホテルは、ホテルプリシード郡山が橋本本店から建物を借りて1993年8月から営業してきたが、両社が交わした賃貸借契約の期間が「30年」だったため、契約満了を迎える今年(2023年)で営業を終えることとなったのだ。 もう一つの事情は、同ホテルの親会社の意向だ。 ホテルプリシード郡山は大手ゼネコン・大成建設(東京都新宿区)のグループ会社。大成建設はこれまでホテルプリシード名古屋(愛知県)など全国数カ所でホテルを建設・営業してきたが、売却するなどして少しずつ手放し、現在はホテルプリシード郡山だけとなっていた。今後は本業に注力するためホテル事業から撤退する模様で、最後の1カ所となっていた同ホテルも賃貸借契約が満了を迎えるのを機に営業終了を決めたのだ。 もっとも、前出・ホテル業関係者は「市内のホテルはコロナ前より好調」と話していたが、民間信用調査会社によると、ホテルプリシード郡山は売り上げが年々落ち込み、万年赤字に陥っていた(別表)。新型コロナ前より客足が好調なのは事実かもしれないが、累積赤字を踏まえると、大成建設にとってはホテル事業から完全撤退する〝潮時〟だったということだろう。 同ホテルの営業終了を報じた福島民報(昨年12月2日付)には《営業終了後に会社を清算し、従業員28人の再就職を支援する》とある。 同ホテルの官野友博副総支配人は次のように話す。 「ホテルは3月末で営業を終えますが、建物内の商業施設とスポーツクラブは5月末まで営業します。そこでテナント契約は満了となり、退去してもらうことになっています。別の場所で営業を継続するかどうかは分かりません。今は当社従業員の再就職先を探しているところです。当ホテルが終了後、建物がどうなるかはオーナー(橋本本店)に聞いてほしい」 「今後の利活用は検討中」 今後の建物の利活用だが、159の客室やフロントがあることからも分かる通り「ホテルの造り」になっているため、ホテルプリシード郡山が撤退後、別のホテルが入居しなければ建物は有効に機能しない。しかし前出・ホテル業関係者によると 「橋本本店は別のホテルを入れようとしていたが、契約を結ぶまでには至らなかったようだ」 と〝後釜探し〟が難航していることを示唆する。 不動産登記簿を確認すると、建物と土地には借主である大成建設が賃貸借契約に基づく保証金返還請求権として9億円と6億円の抵当権を設定している。債務者は貸主の橋本地所。それ以外の担保は、建物建設時に計47億円の抵当権や複数の根抵当権が設定された形跡があるが(債務者、根抵当権者は橋本本店、橋本地所、橋本善郎氏)、すべて解除(弁済)されている。 橋本本店に今後の建物の利活用について尋ねると、こう答えた。 「何を入居させるか、建物を解体するかどうかも含めて全くの未定。現在検討中です。それ以上はお答えできない」 建物の規模を考えると、ホテルプリシード郡山からの家賃収入はそれなりの金額だったろうから〝空きビル〟の状態が続くほど経営に響くのではないか。 建物は築30年だが、東日本大震災や二度の福島県沖地震でも大きな被害は出ておらず、今後も従前通り利用可能とみられる。そうなると、解体という選択は現実的ではない。 「解体費用は億単位になるので、行政の補助なしに企業単独で捻出するのは難しい」(ある不動産業者) 建物を有効活用するには、やはりホテルプリシード郡山に代わるホテルを入居させるしかないようだ。ベストな方法は同ホテルが引き続き営業することだったが、本業に注力したい大成建設としては、30年の長期契約を終えた後に再び賃貸借契約を結ぶのは難しかったのだろう。 今後のポイントは、橋本本店が新しいホテルを呼び寄せることができるかどうかにかかっている。
保土谷化学工業㈱郡山工場(郡山市谷島町4―5)が敷地内で水素ステーションの開設を目指している。現在、2024年秋の開所に向けて準備中だが、地元経済人はこの取り組みを歓迎する一方、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈している。 水素ステーションの開設は、1月13日付の地元紙に掲載された「ふくしまトップインタビュー」という記事で、同社の武居厚志郡山工場長の紹介とともに明かされた。 《今年は新事業をスタートさせる予定だ。工場敷地内に商業用定置式の水素ステーション開設を目指す。過酸化水素の原料用に製造した水素の一部を燃料電池車(FCV)向けに販売する。販売する水素の全てを自社製で賄うのは全国初の試みで、年内の着工、2024(令和6)年の開所を想定している》 これに先立って水素ステーション開設を報じた昨年12月29日付の福島民報では▽利便性を高めるため、敷地東側の東部幹線沿いでの開所を検討、▽周辺にコンビニや飲食店などを誘致し、JR郡山駅東口の活性化につなげる、という方針も紹介されていた。 同記事によると、水素は郡山工場の主力製品である過酸化水素の原料の一つとして同工場内で製造している。これまでは余剰分を他社に販売していた。水素ステーションが開設されれば、製造と供給を同一敷地内で行う全国初のケースになる。 郡山工場の担当者はこう話す。 「計画の詳細はまだ発表していません。今は『2024年秋の開所を目指す』という段階で、今後、水素ステーション建設に関する国、県、市の補助金を申請予定です」 担当者によると、県内で水素を製造しているところは限られ、市内では同社のみだという。 「これまでの水素ステーションは別の場所で製造した水素を(ステーションまで)輸送していました。そこで当社は、自社で製造した水素を有効活用したい考えから、敷地内に水素ステーションを開設しようと考えました」(同) 市内では佐藤燃料㈱が県内2番目の商業用定置式水素ステーションを2022年2月に開設している。 佐藤燃料と共同で水素ステーションを開設した日本水素ステーションネットワーク合同会社(東京都千代田区)の資料「水素ステーションの現状と課題」(2022年7月28日付)によると、東北6県のFCV台数(東北運輸局の次世代自動車普及状況より、同年5月末時点)は469台だが、このうち福島は351台と7割超を占める。2位が宮城112台、あとは山形4台、青森2台、岩手・秋田0台だから、福島県での普及が際立っていることが分かる。 福島県は2016年に策定した福島新エネ社会構想に基づき、水素社会の実現に取り組んでいる。FCDの台数が抜きん出て多いのはその表れで、それだけ水素ステーションの需要も見込めるということだ。ましてや郡山工場の場合、水素を製造しているとなれば、同じ敷地内にステーションを開設することでより円滑な供給が期待できる。加えてコンビニや飲食店が誘致されれば、東京ドーム6個分という広大な工場敷地により殺風景に映る駅東口の光景が見違えることも考えられる。 「コンビニや飲食店があれば水素を充填中の待ち時間を有効に使っていただけると思います。水素ステーションの付加価値を高められるよう併設を目指したい」(前出・担当者) 改まらない〝上から目線〟 実は、本誌は昨年秋、ある経済人からこれらの話を耳にしていた。この経済人は「水素製造が主力となり広い工場敷地が余っているため、民営公園を整備することも考えているようだ」とも話し「停滞する駅東口開発の弾みになる」と水素ステーション開設に期待を滲ませていたが、同時に興味深かったのは、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈したことだった。 「菅野利和副市長と村上一郎副市長が郡山工場を訪ね『工場敷地内に道路を通したい』と協力を要請したそうです。二人はドローンで撮影したと思われる航空写真を示し『この辺りにこういう道路を通したい』『用地は無償で協力してほしい』と言ったそうです」(経済人) この要請に、同社の松本祐人社長は後日、親しい知人に「そういう話は失礼だ」「株主もいるのに用地を無償で協力できるはずがない」と不快感を露わにしたという。 「駅東口開発を進めたい品川萬里市長は、これまでも郡山工場にいろいろな話を持ちかけてきたが、どれも一方的な要請で、同社と協議しながら共同歩調で進める様子は皆無だという。同社としては長年お世話になっている同市の発展に協力したいが、一緒に取り組むという姿勢ではなく『こうやるから協力してくれ』と〝上から目線〟のやり方が改まらないので、心底協力したいという気持ちになれないようです」(同) 郡山駅東口の開発は同市の懸案事項だが、カギを握るのが一帯で操業する郡山工場の行方にある。すなわち、代替地を用意して移転してもらうか、あるいは、現在地で操業を続けるにしても広大な工場敷地をどうにか活用できないかといった話は、公式に議論されることなく与太話の類いに長年終始している。 同社の松本社長は滝田康雄会頭をはじめ郡山商工会議所と良好な関係を築いており、滝田会頭が音頭を取るまちづくり構想「郡山グランドデザインプロジェクト」に協力する意向も持っているが、いかんせん同会議所と同市の関係が良好とは言い難いため、地元経済界からは 「品川市長が本気で駅東口開発を進めたいなら、郡山工場や同会議所に丁寧にアプローチすべきだ」 という苦言が以前から漏れているのだ。今回の道路整備をめぐる要請も、事実であれば丁寧さを欠いているのは明らかだ。 「同市が本気で道路を通したければ『駅東口をこういう形で発展させたい。そのためには、ここに道路が必要なので協力してほしい』とアプローチすべきだ。その青写真もないまま、単に『道路を通したい』では同社も協力する気持ちになれないと思います」(前出・経済人) 前出・郡山工場の担当者に、副市長二人から協力要請があったか尋ねると、 「市職員の方と非公式にお会いする機会は結構あるが、公式にそういう打診が来たことはありません」 と言うから「非公式の相談」はあったのかもしれない。 菅野副市長と村上副市長にも文書で質問したが「回答は差し控える」(広聴広報課)。 水素ステーションが開設され、コンビニや飲食店が併設されても、工場敷地にはまだまだ余裕がある。前出・経済人が言う「民営公園」は郡山工場の担当者が「そこまでは考えていない」と否定しており不透明だが、品川市長が本気で駅東口開発に取り組むなら、郡山工場を同列のパートナーと見なし、共同歩調を取る姿勢を見せないと停滞打破にはつながらないのではないか。
公務員の性犯罪が県内で相次いでいる。町職員、中学教師、警察官、自衛官と職種は多様。教師と警官に至っては立場を利用した犯行だ。「お堅い公務員だから間違ったことはしない」という性善説は捨て、住民が監視を続ける必要がある。 男性に性交強いた富岡町男性職員【町の性的少数者支援策にも影響か】 1月24日、準強制性交などに問われている元富岡町職員北原玄季被告(22)=いわき市・本籍大熊町=の初公判が地裁郡山支部で開かれた。郡山市や相双地区で、睡眠作用がある薬を知人男性にだまして飲ませ、性交に及んだとして、同日時点で二つの事件で罪に問われている。被害者は薬の作用で記憶を失っていた。北原被告は他にも同様の事件を起こしており、追起訴される予定。次回は2月20日午後2時半から。 北原被告は高校卒業後の2019年4月に入庁。税務課課税係を経て、退職時は総務課財政係の主事を務めていた。20年ごろから不眠症治療薬を処方され、一連の犯行に使用した。 昨年5月には、市販ドリンクに睡眠薬を混ぜた物を相双地区の路上で知人男性に勧め犯行に及んだ。同9月の郡山市の犯行では、「酔い止め」と称し、酒と一緒に別の知人男性に飲ませていた。 懸念されるのは、富岡町が県内で初めて導入しようとしている、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」への影響だ。多様性を認める社会に合致し、移住にもつながる可能性のある取り組みだが、いかんせんタイミングが悪かった。町も影響がないことを祈っている様子。 優先すべきは厳罰を求めている被害者の感情だ。薬を盛られ、知らない間に性暴力を受けるのは恐怖でしかない。罪が確定してからになるだろうが、山本育男町長は「性別に関係なく性暴力は許さない」というメッセージを出す必要がある。 男子の下半身触った石川中男性講師【保護者が恐れる動画拡散の可能性】 石川中学校の音楽講師・西舘成矩被告(40)は、男子生徒42人の下半身を触ったとして昨年11月に懲戒免職。その後、他の罪も判明し、強制わいせつや児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・起訴された。 県教委の聞き取りに「女子に対してやってはいけないという認識はあったが、男子にはなかった」と話していたという(昨年11月26日付福島民友)。 事情通が内幕を語る。 「あいつは地元の寺の息子だよ。生徒には人気があったらしいな。被害に遭った子どもが友達に『触られた』と話したらしい。そしたらその友達がたまげちゃって、別の先生に話して公になった」 当人たちは「おふざけ」の延長と捉えていたとのこと。ただ、10代前半の男子は、性に興味津々でも正しい知識は十分身に着いていないだろう。監督すべき教師としてあるまじき行為だ。 西舘被告は一部行為の動画撮影に及んでいた。それらはネットを介し世界中で売買されている可能性もある。子どもの将来と保護者の不安を考えれば「トンデモ教師が起こしたワイセツ事件」と矮小化するのは早計だ。注目度の高い初公判は2月14日午後1時半から地裁郡山支部で開かれる予定。 うやむやにされる「警察官の犯罪」【巡査部長が原発被災地で下着物色】 浜通りの被災地をパトロールする部署の男性巡査部長(38)が、大熊町、富岡町の空き家に侵入し女性用の下着を盗んでいた。配属後間もない昨年4月下旬から犯行を50~60回繰り返し、自宅からはスカートやワンピースなど約1000点が見つかった(昨年12月8日付福島民友)。1人の巡回が多く、行動を不審に思った同僚が上司に報告し、発覚したという。県警は逮捕せず、書類のみ地検に送った。巡査部長は懲戒免職になっている。 県警は犯人の実名を公表していないが、《児嶋洋平本部長は、「任意捜査の内容はこれまでも(実名は)言ってきていない」などと説明した》(同12月21日付朝日新聞)。身内に甘い。 通常は押収物を武道場に並べるセレモニーがあるが、今回はないようだ。昨年6月に郡山市の会社員の男が下着泥棒で逮捕された時は、1000点以上の押収物を陳列した。容疑は同じだが、立場を利用した犯行という点でより悪質なのに、対応に一貫性がない。 初犯であり、社会的制裁を受けているとして不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高いが、物色された被災者の怒りは収まらないだろう。 判然としない強制わいせつ自衛官【裁判に揺れる福島・郡山両駐屯地】 五ノ井さんに集団で強制わいせつした男性自衛官たちが勤務していた陸自郡山駐屯地 昨年12月5日、陸上自衛隊福島駐屯地の吾妻修平・3等陸曹(27)=福島市=が強制わいせつ容疑で逮捕された(同6日付福島民報)。5月25日夜、市内の屋外駐車場で面識のない20代女性の体を触るなどわいせつな行為をしたという。事件の日、吾妻3等陸曹は午後から非番だった。2月7日午前11時から福島地裁で初公判が予定されている。 県内の陸自駐屯地をめぐっては、郡山駐屯地で男性自衛官たちからわいせつな行為を受けた元自衛官五ノ井里奈さん(23)=宮城県出身=が国と加害者を相手取り民事訴訟を起こす準備を進めている。刑事では強制わいせつ事件として、検察が再捜査しているが、嫌疑不十分で不起訴になる可能性もある。五ノ井さんは最悪の事態を考え提訴を検討したということだろう。 加害者が県内出身者かどうかが駐屯地を受け入れている郡山市民の関心事だが、明らかになる日は近い。
専門家が指摘する危険地点の特徴 1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀) 報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。 軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。 もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性 今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。 県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証
「営業しただけ赤字増加」で見切り 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「自粛」が求められる場面が増えている。とりわけ、酒類を扱う「夜の飲食店」に行く機会が減った人は多いと思われる。当然、客が来なければ飲食店もやっていけない。いわゆる〝コロナ閉店〟する飲食店は少なくないという。実際に〝コロナ閉店〟した郡山市のバー店主に話を聞いた。 「店を開ければ開けただけ赤字が増えるんですから、やってられませんよ。幸い、『やめられるメド』が立ったので閉店しました」 こう話すのは、郡山市のJR郡山駅近く、陣屋でバーを経営していた男性。この男性は昨年秋前に自身が経営していたバーを閉店した。いわゆる〝コロナ閉店〟である。 「2020年2、3月にコロナの問題が本格化して以降は、多少の変化はありつつも、ずっと厳しい状況が続いていました。歓送迎会や忘新年会など、本来なら最もにぎわうシーズンですら、お客さんがかなり少なく、ゼロという日も少なくなかったですからね。特に『どこかでクラスターが発生した』といった報道等が出ると、発生源の店舗が入居するビルはもちろん、その周辺には人が寄り付かなくなります。一度そうなってしまうと、なかなか客足は戻りません」(元バー店主の男性) 本誌2020年10月号に「クラスター発生に揺れた郡山と会津若松」という特集記事を掲載し、郡山市のホストクラブでクラスターが発生したことを受け、行政の対応、関係者の足取り、店舗の対応などについてリポートした。その中で、周辺店舗関係者の「緊急事態宣言解除後、少しずつ売り上げが戻っていたが、今回のクラスター発生で再び下降している。こんなことが二度、三度と続けば持たない」、「クラスター発生を機に駅前全体の客足が鈍っている。他店からも『いつまで持つか』という嘆きが聞かれる。回復にはまだまだ時間がかかるだろう」といった声を紹介した。そういった事例が出ると、周辺店舗やその後の客足など影響が大きいというのだ。 人通りが少ない郡山市飲食店街(陣屋) それでなくても、この間、接待を伴う飲食店、酒類の提供を行う飲食店に対しては、まん延防止等重点措置や、県独自の緊急・集中対策によって、営業自粛・時短営業を求められることが多かった。 「少し落ち着いてきたと思ったら、まん延防止や県独自の措置によって営業自粛・時短営業要請が発令される、ということの繰り返しでしたからね。もっとも、営業自粛・時短営業要請の期間は協力金が受け取れたため、店を開けて客が全く来ないときよりはマシでした。といっても、協力金は各種支払いに全部消えましたけど」(同) 協力金の仕組み 例えば、2021年1月13日から2月14日までに出された営業自粛・時短営業要請では、1日当たり4万円の協力金が支給された。33日間で計132万円だったが、「家賃の支払いを待ってもらっていた分、カラオケのリース料、酒卸業者への支払いなどで全部なくなった。むしろ、それだけではまかなえなかった」(同)という。 その後は、郡山市の場合、2021年7月26日から8月16日までは、県の「集中対策」として、営業自粛・時短営業要請が出され、この時は売り上げに応じて、「1日2万5000円〜」というルールで協力金が支払われた。昨年1月27日から2月21日までは、まん延防止等重点措置として営業自粛・時短営業要請が出され、この時は「前年度、前々年度の売上高に応じて1日当たり2万5000円〜7万5000円」の売上高方式か、「前年度、前々年度比の1日当たりの売上高減少額の4割」の売上高減少方式を選択できる仕組みだった。 ただ、いずれにしても、「協力金は各種支払いにすべて消える」といった状況だったという。 ちなみに、本誌はこの間、感染リスクが高いとされる業種(旅客業、宿泊・飲食サービス業など)は国内総生産(GDP)の5%程度で、これまで政府がコロナ対策として投じてきた予算が数十兆円に上ることを考えると、東京電力福島第一原発事故に伴う賠償金の事例に当てはめて補償するというような対応が可能で、そうすべきだった――と書いた。 一番厳しかった一昨年夏 男性によると、最も厳しかったのは2021年夏ごろだったという。感染拡大「第5波」が到来し、感染力が強く、重症化のリスクも高いとされる変異種「デルタ株」が流行していたころだ。 「あの時期は本当に厳しかった。平日(月〜木)はほぼお客さんがゼロという日が続き、週末(金・土)だって、それほど入るわけではありませんでしたから。それでも、私は1人でやっていたから、まだマシだったと思う。従業員がいたら、どうしようもなかった」(同) コロナ前、平日(月〜木)は売り上げが5万円から8万円、週末(金・土)はその約3倍で、週50万円〜80万円の売り上げがあった。それがひどい時は平日はほぼゼロ、週末はコロナ前の平日並みになった。それでも、家賃や光熱費などの固定経費は変わらない。結果、「店を開ければ開けただけ赤字が増える」状況だったというのである。 「最近は少し規制などが緩くなり、以前よりはマシになりました。週末の居酒屋などはそこそこ入っていると思います。ただ、バーや女性が接待する店はまだまだ戻っていない。私の知り合いの店でも、女性キャストは週の半分は休みという感じです。週末は黒字だが、平日の赤字分をカバーしきれない、といった店が多いのではないか」(同) 冒頭、男性は「『やめられるメド』が立った」と語ったが、一番大きいのは、「テナント退去時の修繕費が最初に納めた敷金でまかなえたこと」という。そのほか、残っていた各種支払いがあったが、何とかそのメドが立ったから閉店を決めた。 「テナント退去時の修繕費がどうなるのかが怖かったが、敷金でまかなえたので良かった。逆に、やめたいと思っても、その(修繕費の)見通しが立たなくてやめられないところもあると思います」(同) 男性の知人の店舗でも、やめたところが何軒かあり、「いつやめたのか分からないが、気付いたら閉店していたところもあった」という。 コロナが出始めたころは、ワクチンが普及し、ある程度、通常の生活ができるようになり、客足が戻ってくることを期待していたようだ。ただ、思いのほか長引き、見切りを付けた。最後に男性は「こんなことなら、もっと早くやめれば良かった」と語った。 関連記事は下記のリンクから読めます! https://www.seikeitohoku.com/koriyama-city-hostess-bar/
「2次会なし」で客の奪い合い勃発 新型コロナ感染が日本で拡大してから3年近くが経った。2022年初めまでは緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令され、営業を自粛した飲食店には売り上げ実績の一部が補償された。昨年末は制限のない初めての忘年会シーズンを迎えたが、夜の街の客足はどうなったか。酒類を提供し、接待を伴うことから特に影響が大きいスナックやバー、クラブの店舗数を電話帳で比較した。初回は郡山市。 民間信用調査会社の東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月、忘・新年会を実施するかについて県内に本社を置く企業にアンケートを行ったところ、回答企業の約8割が「実施しない」と答えた。同月1~8日までインターネットで実施し、80社が回答した。以下は福島民報12月14日付より。 ・緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に関係なく、「無条件で開催しない」と答えた企業は77・50%で10月の前回調査57・14%から20・36㌽上昇。 ・同社郡山支店の担当者は「感染者が増減を繰り返し、ピークが見えない状況で会合開催のハードルが上がっている」と分析する。 NHK(同16日配信)は、「10月後半から新型コロナの感染者が急拡大したことが飲み会自粛につながった。職場単位の大勢でなく、少人数での飲み会が主流になるとみられる」と担当者の見解を紹介している。 開催すると答えた企業でも、そのうち60%以上が2次会を自粛するか、人数を制限するとしている。アンケートからは、新型コロナで大規模な宴会が激減したうえ、「飲み会離れ」が進んでいる実態が見えてきた。 本誌は2005年7月号「2年間で270軒も閉店した福島の飲食店事情」で福島市のバー、スナックの衰退を書いた。飲み慣れた世代が高齢となり、退職や病気で店に行かなくなった。若年世代は会社で飲みに行く習慣に抵抗があり、客数増加は見込めないと分析した。 平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街 「飲み会離れ」は全国的な傾向だが、福島県は事情が少し違う。記事掲載後も東日本大震災・原発事故で経済が落ち込み、確かに客足は減った。「復興バブル」で建設業・除染作業員が県内に進出し、浜通りと中通りの夜の街は一時活気を取り戻したが、復興バブルの終焉が徐々に訪れていたところに新型コロナの影響が直撃した。 新型コロナ拡大から約3年が経ち、夜の街を探る必要がある。2005年の記事では、NTT「タウンページ」の01年と03年の飲食業の掲載数を比較し、閉店数を推計した、今回もその手法を使う。固定電話を置かず、携帯電話やSNSでやり取りする店舗も増えているので正確ではないが、目安にはなるだろう。電話帳記載の店舗が減るということは、老舗が減ったということでもある。 初回は「商都」郡山市を調べる。県が2022年8月に公表した「2019年度市町村民経済計算」によると、市町村内総生産=市町村ごとの経済規模は同市が一番大きい。トップ3は、①郡山市1兆3600億円(県全体の17・1%)、②いわき市1兆3500億円(同17・0%)、③福島市1兆1400億円(同14・4%)だ。 「タウンページ」(2021年10月現在)によると、飲食店関係の掲載数は多い順に次の通り。業種は電話帳の記載に基づく。10店未満の専門店は省略した。 飲食店(居酒屋、食堂の一部重複)195店スナック 159店居酒屋 136店ラーメン店 72店食堂 69店レストラン(ファミレス除く) 48店焼肉・ホルモン料理店 46店うどん・そば店 42店バー・クラブ 42店すし店(回転ずし除く) 40店中華・中国料理店 39店焼き鳥店 32店日本料理店 29店イタリア料理店 15店割烹・料亭 12店うなぎ料理店 10店とんかつ店 10店 重複もあるので、概算で約計900店舗。スナック、居酒屋が圧倒的に多い。接待を伴う飲食店として、特に新型コロナで影響を受けたスナック、バー・クラブの数を調べた。新陳代謝の盛んな業界だから、減少が多くても、新規参入が同じくらいあれば問題はない。新型コロナが襲う2年前の「タウンページ」(2019年11月時点)と比べてみた。 スナック 47店減少、新掲載は5店。 バー・クラブ 5店減少、新掲載は1店。 バー・クラブは約1割減、スナックは約3割減少している。業種や店名を変えた可能性もある。念のため、郡山駅西口の繁華街、駅前と大町に住所があるスナック21店舗に電話をかけた。うち1店舗は営業中。残りの20店は「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが流れた。電話番号を変えたか固定電話の契約を終えたということ。閉店の可能性が高い。下記は2年の間に電話帳から消えたスナック一覧表。 ■コロナ前(2019年)から現在(2021年)までの間に電話帳から消えたスナック 【陣屋】アイギー、明日香、アンク、アンナ、夜上海、我愛你、笑顔、オリーブ、カラオケスナック風の歌がきこえる、絹、Club Vanilla、スナック桜子、Chil、瓶、プティ、桃色うさぎ 【駅前2】絹の家、Nori、花華ふぁふぁ 【大町】こいこい、TELLME、ぶす 【その他】アグライア(朝日)、壱番館(大槻)、イマージュ(朝日)、うさぎ屋薇庵(中町)、小山田壱番館(大槻)、カトリーヌ(菜根)、カミニート(堤下)、ギャップ(中町)、ケイズ・フォー(Ks4fth・中町)、コパン(中町)、サラン韓国スナック(朝日)、スナック華(久留米)、すなっく英の妹(島)、スナックピュア(安積)、スナック福(大槻)、スナックモナリザ(菜根)、スナックやすらぎ(富久山)、スナック夢(朝日)、セカンドハウス(桑野)、SoL(朝日)、たつみ(堂前)、だんらん(麓山)、紬の里(堂前)、ポセイドン(堤下)、美郷(七ッ池) 現在営業している店はどのような状況か。郡山一の繁華街「陣屋」に絞って調査した。陣屋通りの付近で、住所で言えば駅前1丁目に当たる。 感染防止で常連客のみ 前出の東京商工リサーチのアンケートから分かるように、飲み会自体が減り、客層は団体や企業関係から個人グループが主体になっている。週末の金、土曜日はそれなりに人が入っていると想定して、忘年会シーズンの12月17日(土)、開店準備の時間を見計らって午後6~8時の間に電話した。ランダムに22店舗にかけると、いずれも回線は生きていた。6軒が電話に出たので、客の入り具合や経営状況を聞いた。 あるスナックのママAは語る。 「コロナがはやってからもう3年になりますでしょ。まあ何とかやってるって感じね。一番頭を悩ませているのが家賃と人件費です。売り上げが減ったからといって安くはなりません」 あるキャバクラの店長の話。 「まん延防止などが出されることはなくなったが、体感としては昨年よりもお客様は減っています。平日は人が出歩かず、ひっそりとしていますよ。金、土は人が入るといっても平日と比べてマシという程度です。会社の忘年会の2次会、3次会で利用する方が多かったのですが団体客は少ないですね。一グループ多くて3、4人程度です。なじみのお客様に支えられている状態です。営業時間を短くしたり、女の子の出勤を調整している店はあると聞きますが、幸いウチは例年並みの出勤調整に抑えられています」 別のスナックのママBはこう打ち明ける。 「11月から忘年会の予約が入っているのが当たり前だったんですよ。1次会は食事をして、2、3次会でなじみの店でカラオケ、というのがコロナ前の流れでした。2次会は今まずないでしょう。感染を恐れて歌う人も減っているので、カラオケは飲み会の必須ではなくなりましたね。団体は常連さんがゴルフのコンペ後に利用するくらいです」 ママBは、行き場のないいらだちを筆者に向けた。 「雑誌の取材ですか。本当だったら土曜の夜8時に応じるなんてできないんですよ。つまり……そう、ヒマってことです。雑誌だったら宣伝でもしてもらいたいもんだわ。いつまで店を続けられそうかって? そんなの分かりません!」 客には来てほしいが感染を広めてはならないというジレンマがある。 ママCは、 「うちは新規のお客様は断っています。常連さんとその紹介のあった方だけです。『感染者が出た店』となるのが一番怖い。自分も感染したくはない。濃厚接触者になっただけでお店に出られなくなるし、店を数日閉めているとウワサになる。今来てくれるお客様を手放さないように、細々とでも営業するしかないんでしょうね」 電話調査とは別に、県内で飲食店を経営し、業界事情に詳しい男性に話を聞いた。 「繁華街に構える店は家賃が重い負担となってのしかかっています。逆に言えば『家賃さえ下がれば何とかやっていける』という人もいる。潰れない飲食店というのは、住宅街にある町中華のように、住居と一体になった手持ちの物件で営業している店でしょうね」 2次会以降がなくなったことは、スナックの概念にも変化を起こしているという。 「スナックと居酒屋が合体した『イナック』が登場しています。ご飯ものを充実させて、客単価を上げています。2軒目、3軒目に行く客が見込めないので、誰もが1軒目の店になろうと少ないパイの取り合いになっている」(同) 「業種転換したい」 郡山社交飲食業組合・組合長の太田和彦さん(67)=味の串天=は、「組合は約50年前にできましたが、郡山の飲食業も長い時間をかけて廃業、新規開店が繰り返されました。新しい店は組合に入らないところも多い。現在の加盟事業者は14店舗です」と明かす。 うち12店舗がバーやスナック。新型コロナ後は深夜12時前に店を閉める店が増えたという。 「バーやスナックに限りませんが、組合員は私を筆頭に高齢化しています。コロナ禍がきっかけで閉店を考える店もある。スナックの経営者からは『業種転換をしたいがどうしたらいいか』との相談もあります。ここに来てガス代と電気代は値上げ、ビールの仕入れ値も昨年10月に値上がりしました。提供する値段はそうそう上げられません。夜の飲食業はお酒の注文が入って利益が出る仕組みなので、どの店も痛いです」(同) 酒の席で同じ職場の者同士が打ち解ける「飲みにケーション」という言葉も死語になりつつある。新型コロナ拡大が拍車をかけた。 婚活事業などを手がけるタメニー(東京)が昨年11月に会社員の20~39歳の未婚男女2400人に行ったアンケートでは、社内でどのような方法でコミュニケーションを取っているか聞いている。飲み会は8・2%で8位。Eメールのやり取りよりも下だ。 ①直接対面での会話53・4%②通話での会話25・1%③ウェブミーティング17・0%④定例ミーティング16・6%⑤チャットツール15・9%⑥Eメール13・3%⑦1対1のミーティング8・5%⑧飲み会8・2% 以下、ランチ会や社内イベントなどが続く。 「どんな方法でコミュニケーションを取るといいと思いますか」との理想的な方法を調べた質問でも、飲み会は6・9%(8位)で現実の順位と大きな変わりはない。中堅社員がこのような意識ということは、将来的に会社の飲み会は消滅するだろう。中小民間では賃金が上がらないにもかかわらず、物価高が続いている。消費者の財布の紐は固い。 非正規雇用女性の働き口 キャバクラやスナックなどの店が減ることは貧困問題の深刻化にもつながる。水商売は、家族を養わなければならない女性に比較的高い収入を保障し、セーフティネットの役割も果たしてきた。詳しい統計はないが、ネットでキャバクラやスナックの求人欄を見ると、「シングルマザー歓迎」「寮・託児所完備」を押し出している店が多いことから、業界もシングルマザーを積極的に受け入れていることが分かる。 背景には、女性の正社員が男性と比べて少なく、男女の賃金格差が生まれてしまうという事情がある。シングルマザーが昼のパートなど非正規雇用で稼いだだけでは家族を食べさせていけない。 新型コロナが蔓延し始めた2020年には「女性店員が子どもへの感染を恐れ出勤を控える動きもあった」と県内のキャバクラ経営者は語る。キャバクラやスナックが減り、働き口が減った後、彼女たちは別の仕事に行ってしまったのか。その収入で暮らしていけるのか。飲食業が潰れるということは、別のところにしわ寄せが行くということでもある。 関連記事は下記のリンクから読めます! https://www.seikeitohoku.com/koriyama-city-hostess-bar-owner/
菓子製造小売業の㈱三万石(郡山市、池田仁社長)が同市開成一丁目で営業していた地中海料理のレストラン「San filo(サンフィーロ)開成」が解体された。レストランには三万石開成店も併設されていた。 12月中旬に現地を訪れると、既に建物の3分の2が壊されていた。看板に書かれていた工期は10月17日から12月28日となっていた。 建物は2006年に約3億5000万円をかけて建設され、同年11月にイタリアン料理の「アンジェロ開成」としてオープンした。ランチタイムになると駐車場に入りきれない車が列をつくり、警備員が誘導するほどの人気店だったが、18年11月に閉店し、翌年7月にサンフィーロ開成としてリニューアルオープン後は客足が途絶えていた。 「アンジェロは1000円超のお手頃価格だったけど、サンフィーロは高くて、気軽に行けるお店じゃなかった」(ある主婦) ホームページ(HP)によるとサンフィーロはランチ専門の営業で予約制コース、価格は3500円、5500円、1万円となっている。高級路線転換が客離れにつながったことは否めない。実際、駐車場は常にガラガラだった。 サンフィーロ開成はなぜ閉店したのか。三万石のHPを見ると「3月の地震の影響」とある。昨年3月16日に発生した福島県沖地震では相馬市などで最大震度6強を記録し、郡山市内の建物も数多く被災したが、同店もその一つだったという。 三万石の担当者に聞いた。 「建物は2021年2月に起きた地震でも大きな被害を受け、この時は大規模改修を行ったが、3月の地震で再び被害に遭った。特に電気設備の被害が深刻で、もう一度大規模改修をしても同じくらいの地震が来たら動力を確保できないという結論に至った。建物は2011年の東日本大震災でも被災しているので、耐震性の面でもリニューアルは厳しかったと思います」 気になるのは跡地の利活用だ。不動産登記簿謄本によると、同所は三万石の名義で、東邦銀行が2007年に同社を債務者とする極度額2億4000万円の根抵当権を設定している。賃借ではなく自社物件ということは、売却しない限り自社利用を目指す公算が高そう。 前出・担当者もこう話す。 「基本的には自社利用する方針だが、何を建てるかとか、どんな使い方をするかなど、具体的な内容は検討中です。いつごろオープンするといった時期も決まっていない」 サンフィーロ開成と同じ業態のレストランは福島市内にもあるが、同店も混雑している様子は見たことがない。跡地に再びレストランをつくるかどうかは分からないが、少なくとも「高級路線が客足を遠ざけた」反省は生かす必要があろう。 ところで三万石は、昨年3月に新会社㈱三万石商事(郡山市、池田仁社長)を設立している。目的は、三万石の外商部門とECサイト部門を新会社に分離・移管して人的資源を投入し、自らは製造と卸売に専念するため。これにより三万石商事は、コロナ以降好調なスーパーへの販路拡大、ネット販売などに注力。一方の三万石は、人件費圧縮と、製造品を三万石商事に卸売りすることで安定した売り上げを確保する狙いがあるとみられる。 三万石は2021年3月期決算が売上高30億円、7100万円の赤字だったが、22年3月期は同36億円、1億3500万円の黒字と持ち直した。今期決算で新会社設立の効果がどう表れるのか注目される。
県は2022年11月8日、郡山市富田町の旧農業試験場跡地を売却するため条件付き一般競争入札を行い、総合南東北病院を運営する脳神経疾患研究所(郡山市、渡辺一夫理事長)など5者でつくる共同事業者が最高額の74億7600万円で落札した。同研究所は南東北病院をはじめ複数の医療施設を同跡地に移転させ、2027年度をめどに開設する計画。 同跡地はふくしま医療機器開発支援センターに隣接し、同市が医療機器関連産業の集積を目指すメディカルヒルズ郡山構想の対象地域になっている。そうした中、同研究所が2021年8月、同跡地に移転すると早々に発表したため、入札前から「落札者は同構想に合致する同研究所で決まり」という雰囲気が漂っていた。自民党の重鎮・佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているというウワサも囁かれた。 ところが2022年夏ごろ、「ゼビオが入札に参加するようだ」という話が急浮上。予想外のライバル出現に同研究所は慌てた。同社はかつて、同跡地にトレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを整備する計画を密かに練ったことがある。 ある事情通によると「ゼビオはメディカルヒルズ郡山構想に合致させるため、スポーツとリハビリを組み合わせた施設を考えていたようだ」。しかし、入札価格が51億5000万円だったため、同社は落札には至らなかった。ちなみに県が設定した最低落札価格は39億4000万円。 同研究所としては、本当はもっと安く落札する予定が、ゼビオの入札参加で想定外の出費を強いられた可能性がある。
専門学校グループ「学校法人国際総合学園 FSGカレッジリーグ」(郡山市)は1984(昭和59)年の開校以来、38年間積み上げてきた指導ノウハウと、2万0900人以上の卒業生ネットワークによる学生支援体制を備え、若者の学び場の充実を図り続けてきた。同グループは5校57学科で構成されており、東北最大級の規模を誇る。 グループ校の一つ、国際アート&デザイン大学校では9月、米国発メタバース「Virbela(バーベラ)」の日本向けプラットフォーム「GIGA TOWN(ギガタウン)」を活用した実証授業を実施した。専門学校としては初の試み。 メタバースとはインターネットの中に構築された仮想空間のこと。自分自身の分身(アバター)を操作して他者と交流できる。ゲームなどで使われてきたが、近年はビジネスシーンでの利用も進んでおり、今後の成長が見込まれている。 同校は「ギガタウン」の日本公式販売代理店・㈱ガイアリンク(長野県)と連携。学生らはアバターを使って「ギガタウン」での授業に参加し、事例研究、ゲーム、ディスカッション、グループ発表などを行った。 参加した学生からは「実際にその場で授業を受けているような臨場感があり、楽しかった。テーブルごとに個別通話できたり、画面を複数に分けて資料を提示できるなど、さまざまな機能があり、使いやすかったです」との声が聞かれた。 実証授業は学生の夢や目標達成のためのスキル、コミュニケーション力を育む目的で行われたもの。同校では5月にも、ICT関連やデジタルコンテンツ分野の教育機関を運営するデジタルハリウッド㈱(東京都)と連携し、アバター生成・操作のアプリケーションを使用した実証授業を行っている。 同グループでは教育のICT化を進める「Ed―Tech推進室」が中心となって、ICT技術・デジタル化を活用した効果的な授業の在り方を検討しており、同校の授業に積極的に取り入れている。 例えば、同校コミックマスター科では県内で初めて、アニメーション制作ソフト「Live2D」を授業に導入した。同ソフトは低コストで原画の画風を保ったアニメーションが制作できることから、家庭用ゲームやスマートフォンアプリに多く使用されている。同校は「Live2D」モデル作成ソフトライセンス無償貸与の教育支援プログラム認定校に県内で唯一指定されているため、授業での使用が可能となった。 一方でアナログテクニックを身に付ける実習も充実させており、どんな現場にも対応できる即戦力のスペシャリストの養成に努める。 ICT関連の資格取得も全力で支援しており、「PhotoShop(フォトショップ)クリエイター能力認定試験」の合格率は100%を誇る。さらにCGクリエイター検定の文部科学大臣賞を全国で唯一3年連続受賞している。 同グループが目標として掲げているのは「ONLY1、No・1」の教育実績。今後もコロナ禍以降本格的に導入したICT教育を発展させる形で、メタバースを活用した授業を推進し、学生一人ひとりのニーズに沿った教育を行うことで、夢の実現をサポートしていく考えだ。 FSGカレッジリーグのホームページ FSGカレッジリーグのオープンキャンパス・保護者説明会に参加する
災害時に地域のインフラを支えるのが建設業だ。災害が発生すると、建設関連団体は行政と交わした防災協定に基づき緊急点検や応急復旧などに当たるが、実務を担うのは各団体の会員業者だ。しかし、近年は団体に加入しない業者が増え、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は減り続けている。会員業者が増えないのは「団体加入のメリットがないから」という指摘が一般的だが、意外にも行政の姿勢を問う声も聞かれる。郡山市の建設業界事情を追った。 災害対応に無関心な業者に老舗から恨み節 地域のインフラを支える建設業 「今、郡山の建設業界は真面目にやっている業者ほど損している。正直、私も馬鹿らしくなる時がある」 こう嘆くのは、郡山市内の老舗建設会社の役員だ。 2011年3月に発生した東日本大震災。かつて経験したことのない揺れに見舞われた被災地では道路、トンネル、橋、上下水道などのインフラが損壊し、住民は大きな不便を来した。ただ、不便は想像していたほど長期化しなかった。発災後、各地の建設業者がすぐに被災現場に駆け付け、応急措置を施したからだ。 震災から11年8カ月経ち、復興のスピードが遅いという声もあるが、当時の適切な対応がなかったら復興はさらに遅れていたかもしれない。業者の果たした役割は、それだけ大きかったことになる。 震災後も台風、大雨、大雪などの自然災害が頻発している。その規模は地球温暖化の影響もあって以前より大きくなっており、被害も拡大・複雑化する傾向にある。 必然的に業者の出動頻度も年々高まっている。以前から「地域のインフラを支えるのが建設業の役割」と言われてきたが、大規模災害の増加を受け、その役割はますます重要になっている。 前出・役員も何か起きれば平日休日、昼夜を問わず、すぐに現場に駆け付ける。 「理屈ではなく、もはや習性なんでしょうね」(同) と笑うが、安心・安全な暮らしが守られている背景にはこうした業者の活躍があることを、私たちはあらためて認識しなければならない。 そんな役員が「真面目にやるのが馬鹿らしくなる」こととは何を指すのか。 「災害対応に当たるのは主に建設関連団体に加入する業者です。各団体は市と防災協定を結び、災害が発生したら会員業者が被災現場に出て緊急点検や応急復旧などを行います。しかし近年は、どの団体も会員数が減っており、災害は頻発しているのに〝地域の守り手〟は少なくなっているのです」(同) 2022年9月現在、郡山市は136団体と災害関連の連携協定を交わしているが、「災害時における応援対策業務の支援に関する協定書」を締結しているのはこおりやま建設協会、県建設業協会郡山支部、県造園建設業協会郡山支部、ダンプカー協会、郡山建設業者同友会、市交通安全施設整備協会、郡山電設業者協議会、県中通信情報設備協同組合、市管工事協同組合、郡山鳶土工建設業組合、県南電気工事協同組合など十数団体に上る。 いくつかの団体に昔と今の会員数を問い合わせたが、増えているところはなく、団体によってはピーク時の6割程度にまで減っていた。 「業者の皆さんに広く加入を呼びかけているが、増える気配はないですね」(ある組合の女性事務員) 会費は月額1万円程度なので、負担にはならない。しかし、 「経営者が2代目、3代目に代わるタイミングで会員を辞める会社が結構あります。時代の流れもあるでしょうし、若い経営者の価値観が昔と変わっていることも影響していると思います」(同) それでも、会員になるメリットがあれば、経営者が代わっても引き続き団体に加入するのだろうが、 「加入を呼びかける立場の私が言うのも何ですが、明確なメリットと聞かれたら答えられない」(同) 昔は今より同業者同士のつながりが大切にされ、先輩―後輩のつながりで業界のしきたりを習ったり、仕事の紹介を受けたり、技術を学び合うなど団体加入には一定のメリットがあった。 今はどうか。別の団体の幹部に加入の具体的なメリットを尋ねると 「対外的な信用が得られます。組合は『社内にこういう技術者がいなければならない』など、入るのに一定の条件が必要。つまり組合に入っていれば、それだけで技術力が伴っている証拠になる」 正直、そこに魅力を感じて団体に加入する業者はいないだろう。 「ウチみたいに昔から入っているところはともかく、新規会員を増やしたいなら加入のメリットがないと厳しいでしょうね」(前出・老舗建設会社の役員) 会員数の減少は、そのまま〝地域の守り手〟の減少に直結する。それはいざ災害が発生した時、緊急点検や応急復旧などに当たってくれる業者が限られることを意味する。 それでなくても郡山は、新規会員が増えにくい状況にある。理由は、震災後に増えた「新参者」の存在だ。別の建設会社の社長が解説してくれた。 「新参者とは震災後、除染を目的に県外からやって来た人たちです。建設業界はそれまで深刻な不況で、公共工事の予算は年々減っていた。そこに原発事故が起こり、除染という新しい仕事が出現。『福島に行けば仕事がある』と、全国から業者が押し寄せたのです」 除染事業に従事するには「土木一式工事」や「とび・土工・コンクリート工事」の建設業許可が必要になる。許可を得て、資機材を揃えて大手ゼネコンの4次、5次下請けに入る小規模の会社はあっと言う間に増えていった。 「新参者が増えるのは行政にとってもありがたかった。住民が『早く除染してほしい』と求める中、業者の数がいないと予定通り除染は進まないわけですからね」(同) 尻拭いを押し付ける郡山市 郡山市役所 しかし、同じ仕事が永遠に存在するはずもなく、市内の除染が一通り終わると新参者の出番も減った。 この社長によると、新参者はその後、①経営に行き詰まって倒産、②浜通りなど除染事業が続いている地域に移動、③一般の土木工事に衣替え――の三つに分かれたという。 「一般の土木工事に衣替えした業者は、正確な数は分からないが結構います。私のように昔から郡山で仕事をやっていれば、社名を聞くだけでそこが新参者かどうか分かる。傾向としては、カタカナやアルファベットなど横文字の社名は該当することが多い」(同) 郡山市の「令和3・4年度指名競争入札参加有資格業者名簿」(2022年4月1日現在)を見ると、土木一式工事の許可業者は103、とび・土工・コンクリート工事の許可業者は225ある(いずれも市内に本社がある業者のみをカウント)。二つを見比べると、土木一式工事の許可業者はとび・土工・コンクリート工事の許可も併せて得ている。そこで後者の業者名を確認していくと、新参者に該当するのではないかと思われる業者は40社前後、全体の2割近くを占めていた。 除染事業がなくなっても、新たな仕事を求め、生き残りを図ろうとする姿はたくましい。建設業許可を得て一般の土木工事に従事するのだから法令違反でもない。社長も「そこを否定するつもりはない」と話す。ただ「新参者は暗黙のルールを守らないため業界全体が歪みつつある」というのだ。 「新参者は地域性を考えない。例えば、A社が本社を置く〇〇地域で道路工事が発注されたら、一帯の道路事情を知るのはA社なので、入札では自然とA社に任せようという雰囲気になる。これは談合で決めているわけではなく、不可侵というか暗黙のルールでそうなるのです。だから、A社は隣の××地域や遠く離れた△△地域の道路工事は取りにいかない。しかし、新参者は『競争入札なんだから地域性は関係ない』と落札してしまうわけです」(同) 新参者から言わせれば「暗黙のルールに基づく調整こそ談合みたいなもの」となるのだろう。ただ、〇〇地域の住民からすれば、見たことも聞いたこともない業者より、馴染みのあるA社に工事をやってもらった方が安心なのは間違いない。 「A社がある道路工事を仕上げ、そこから先の道路工事が新たに発注された時、継続性で言ったらA社が受注した方が工事はスムーズに進む可能性が高い。しかし、新参者はそういう配慮もなく、お構いなしに落札してしまう」(同) しかしこれも、新参者から言わせると「落札して何が悪い」となるのだろうが、社長が解せないのは、その後の尻拭いを市から依頼されることにある。 「もともと除染からスタートした業者なので、土木工事の許可を持っていると言っても技術力が備わっていない。そのせいで、工事終了後に施工不良個所が見つかるケースが少なくないのです。解せないのは、市がその修繕を当該業者にやらせるのではなく、再発注も面倒なので、現場に近い地元業者にこっそり頼むことです。市には世話になっているので頼まれれば手伝うが、地域性や継続性を無視して落札した新参者の尻拭いを、私たちに押し付けるのは納得がいかない」 実は、そんな新参者の多くは建設関連団体に加入していないのだ。再び前出・老舗建設会社の役員の話。 「新参者は建設関連団体に入っていないから、災害が起きても被災現場に駆け付けない。でも、入札では災害対応に当たる私たちと同列で競争し、仕事を取っている。不正をしているわけでなく、正当な競争の結果と言われればそれまでだが、地域に貢献している自負がある私たちからすると釈然としない」 「災害対応に正当な評価を」 会員業者は日曜夜に被災現場に出動しても、防災協定に基づくボランティアのため、月曜朝からは通常業務を行わなければならない。一方、建設関連団体に加入していない業者は被災現場に出動することなく休日を過ごし、月曜から淡々と通常業務に当たる。だからと言って、未加入の業者にペナルティーが科されることはなく、被災現場に出動した業者に特別なインセンティブがあるわけでもない。 これでは、会員業者が「真面目にやるのが馬鹿らしい」と愚痴を漏らすのは当然で、わざわざ建設関連団体に加入する新規業者も現れない。 「市がズルいのは、入札は公平・公正を理由にどの業者も分け隔てなく競争させ、災害や施工不良など困ったことが起きた時は建設関連団体を頼ることだ。真面目にやっている私たちからすると、市に都合よく使われている感は否めない」(同) これでは、新規会員はますます増えない。そこでこの役員が提案するのが、市が建設関連団体加入のメリットを創出することだ。 「会員業者は指名競争入札で指名されやすいといったインセンティブがあれば、災害対応に当たる私たちも少しはやりがいが出るし、今まで災害対応に無関心だった新参者も建設関連団体に入ろうという気持ちになるのではないか」(同) 郡山市では1000万円以上の工事は制限付一般競争入札、1000万円未満の工事は指名競争入札を導入しているが、2021年度の入札結果を見ると、落札額の合計は制限付一般競争入札が約99億8000万円、指名競争入札が約25億7200万円に対し、発注件数は前者が約150件、後者が約640件と指名競争入札の方が4倍以上多い。役員によると、会社の規模が小さい新参者は指名競争入札に参加する割合が高いという。 同市の指名競争入札に参加するには2年ごとに市の審査を受け、入札参加有資格業者になる必要がある。その手引きを見ると、市内に本社を置く業者が提出する書類に「災害協定の締結」「除雪委託契約の締結」の有無に関する記載欄があるが、市がそれをどれくらい重視しているかは分からない。 前述した建設関連団体のいくつかに問い合わせた際、 「災害協定を結んでいるかどうかは、市が審査をする上で少しは加点要素になっていると思う」(前出・女性事務員) 「実際に被災現場に駆け付けている点は(指名の際に)加味してほしいと市に申し入れている。そこを市がもっと評価してくれれば新規会員も増えると思うんですが」(前出・別の組合幹部) と語っていたが、市が日頃の災害対応を正当に評価しているかというと、建設関連団体にはそう感じられないのだろう。 「会員業者が増えないと災害対応が機能しない。それによって困るのは市民です。そこで、安心・安全な暮らしを維持するため、災害協定と除雪委託契約の締結を指名競争入札に参加するための重要要件にしてはどうか。そうすれば、建設関連団体に無関心の新参者も加入を検討するし、新規会員が増えれば災害が起きた時、市民も助かります」(同) 指名競争を増やす福島県の狙い 福島県庁 県では佐藤栄佐久元知事時代に起きた談合事件を受け、2006年12月に入札等制度改革に係る基本方針を決定。指名競争入札を廃止し、予定価格250万円を超える工事は条件付一般競争入札に切り替えた。しかし、過度な競争や少子高齢化で経営が悪化し、災害対応や除雪に携わる業者がいなくなれば地域の安心・安全確保に支障を来すとして〝地域の守り手〟である中小・零細業者を育成する観点から「地域の守り手育成型方式」という指名競争入札を2020年度から試行している。 農林水産部と土木部が発注する3000万円未満の工事を指名競争入札にしているが、入札参加資格の要件には「災害時の出動実績又は災害応援協定締結」と「除雪業務実績又は維持補修業務実績」が挙げられている。指名競争入札を増やすことで〝地域の守り手〟を支えていこうという県の狙いがうかがえる。 会津地方は郡山と比べて仕事量が少ないため、新しい会社が次々と誕生することもなく、昔から営業している会社が建設関連団体を形成し、地域のインフラを支える構図が成立している。業者数は少ないが、地域を守るという意識が業界全体で統一されている。 これに対し郡山は、業者数は多いが建設関連団体の会員業者は少ないため、業界全体で地域を守るという意識が希薄だ。もし入札制度を変えることで会員業者が増え、市民の安心・安全を確保できるなら、市は真剣に検討すべきではないか。 「入札の大前提にあるのは公平・公正だが、時代の変化と共に変えるべきものは変えなければならないことも承知しています。災害が年々増えている中、業者の協力がなければ市民の生命と財産は守れません。その災害対応については、市でも審査時に評価してきましたが、出動頻度が増えている今、それをどのように評価すべきかは今後の検討課題になると思います。県が試行している指名競争入札なども参考にしながら考えたい」(市契約検査課) 官が民に、建設関連団体への加入を〝強要〟するのは筋違いかもしれない。しかし現実に、災害の増加に反比例して〝地域の守り手〟は減少している。だったら、普段から災害対応に当たっている業者には、その労に報いるためインセンティブを与えるべきだし、それが魅力になって団体に加入する業者が増えれば、建設業界全体で地域を守るという意識が醸成され、災害に強いまちづくりが実現できるのではないか。 郡山市ホームページ あわせて読みたい 建設業者「越県・広域合併」の狙い【小野中村】【南会西部建設】 「地域の守り手」企業を衰退させる県の入札制度 福島市「デコボコ除雪」今シーズンは大丈夫?