菓子製造小売業の㈱三万石(郡山市、池田仁社長)が同市開成一丁目で営業していた地中海料理のレストラン「San filo(サンフィーロ)開成」が解体された。レストランには三万石開成店も併設されていた。
12月中旬に現地を訪れると、既に建物の3分の2が壊されていた。看板に書かれていた工期は10月17日から12月28日となっていた。
建物は2006年に約3億5000万円をかけて建設され、同年11月にイタリアン料理の「アンジェロ開成」としてオープンした。ランチタイムになると駐車場に入りきれない車が列をつくり、警備員が誘導するほどの人気店だったが、18年11月に閉店し、翌年7月にサンフィーロ開成としてリニューアルオープン後は客足が途絶えていた。
「アンジェロは1000円超のお手頃価格だったけど、サンフィーロは高くて、気軽に行けるお店じゃなかった」(ある主婦)
ホームページ(HP)によるとサンフィーロはランチ専門の営業で予約制コース、価格は3500円、5500円、1万円となっている。高級路線転換が客離れにつながったことは否めない。実際、駐車場は常にガラガラだった。
サンフィーロ開成はなぜ閉店したのか。三万石のHPを見ると「3月の地震の影響」とある。昨年3月16日に発生した福島県沖地震では相馬市などで最大震度6強を記録し、郡山市内の建物も数多く被災したが、同店もその一つだったという。
三万石の担当者に聞いた。
「建物は2021年2月に起きた地震でも大きな被害を受け、この時は大規模改修を行ったが、3月の地震で再び被害に遭った。特に電気設備の被害が深刻で、もう一度大規模改修をしても同じくらいの地震が来たら動力を確保できないという結論に至った。建物は2011年の東日本大震災でも被災しているので、耐震性の面でもリニューアルは厳しかったと思います」
気になるのは跡地の利活用だ。不動産登記簿謄本によると、同所は三万石の名義で、東邦銀行が2007年に同社を債務者とする極度額2億4000万円の根抵当権を設定している。賃借ではなく自社物件ということは、売却しない限り自社利用を目指す公算が高そう。
前出・担当者もこう話す。
「基本的には自社利用する方針だが、何を建てるかとか、どんな使い方をするかなど、具体的な内容は検討中です。いつごろオープンするといった時期も決まっていない」
サンフィーロ開成と同じ業態のレストランは福島市内にもあるが、同店も混雑している様子は見たことがない。跡地に再びレストランをつくるかどうかは分からないが、少なくとも「高級路線が客足を遠ざけた」反省は生かす必要があろう。
ところで三万石は、昨年3月に新会社㈱三万石商事(郡山市、池田仁社長)を設立している。目的は、三万石の外商部門とECサイト部門を新会社に分離・移管して人的資源を投入し、自らは製造と卸売に専念するため。これにより三万石商事は、コロナ以降好調なスーパーへの販路拡大、ネット販売などに注力。一方の三万石は、人件費圧縮と、製造品を三万石商事に卸売りすることで安定した売り上げを確保する狙いがあるとみられる。
三万石は2021年3月期決算が売上高30億円、7100万円の赤字だったが、22年3月期は同36億円、1億3500万円の黒字と持ち直した。今期決算で新会社設立の効果がどう表れるのか注目される。