本誌昨年2月号に「今春同時改選 議員定数議論で対応分かれた古殿町、玉川村、平田村」という記事を掲載した。古殿町、玉川村、平田村の石川郡3町村は、昨年3月に同時日程で議員選挙が行われた。それに先立ち、それぞれの町村議会で議員定数のあり方を議論してきたが、結果は三者三様のものだったため、その詳細をリポートしたもの。その後、玉川村と平田村で動きが出ているので続報を伝える。
注目は新人議員のスタンス

任期満了に伴う古殿町議選、玉川村議選、平田村議選が昨年3月19日告示、24日投開票の日程で行われた。それを前に、各議会で議員定数をどうするかの検討が行われた。そこに至る共通の理由として言えるのは、人口減少が進む中で、定数はこのままでいいのか、削減を含めて議論する必要があるのではないか、ということである。
結果から言うと、古殿町は2減(12人→10人)、玉川村は現状維持(12人)、平田村はひとまず現状維持(12人)として改選後の議会で再度議論するという三者三様だった。
同じ石川郡、しかも同時改選ということもあり、議会関係者、住民はそれぞれの議会の動きに注目しており、「向こう(近隣町村)はこうだったが、ウチは……」、「ウチはこうだったけど、向こうはどういう流れであの結論に至ったのか気になる」といった話をされる機会もあった。
そんな中で議員選挙があり、その後、現状維持とした玉川村と平田村で動きが出ている。
玉川村議会は、2023年10月から11月にかけて、議員定数に関する住民アンケートを実施した。対象は全1799世帯、回答数は1029件(回収率57・2%)だった。
最も多かった回答は現在の定数12から2減の「10人」で402(39・1%)。以下、現状維持の「12人」が382(37・1%)、「8人以下」が156(15・2%)と続いた。この3つで全体の90%超を占める。2減の「10人」と、現状維持の「12人」が拮抗しているが、「8人以下」を含めた「削減」という点で見るならば過半数に達する。
同村議会はアンケート結果を踏まえ、全員協議会で検討し、2023年12月議会で議員発議によって、議員定数を10にする条例改正案が提出された。採決の結果、賛成5、反対6の賛成少数で否決された。
当時、賛成した議員は「村民からは、だったらなぜアンケートを実施したのかと言われた」と、早速批判があったことを明かした。「住民の意見」がハッキリ出ている中で、「現状維持」の判断をしたのだから、そうした批判が出るのは当然だろう。
そんな同村議会では、8月ごろに全員協議会を開き、議員定数に関する投票を行う予定という。ある関係者はこう話す。
「アンケートで村民の意見を聞いておきながら、削減を求める声が多いと分かると、ああでもない、こうでもないと言って、削減に反対するのは理解できない。そんな中で、再度協議の場を設けても、堂々巡りになってしまう。そもそも民意は(アンケートで)出ているわけだから、議論をする必要もない。ですから、2減の10人にする案を出して、いきなり賛否を問う形で進めようと、議会内で動いています」
平田村議会の動き

一方、平田村議会は、2023年9月に3回の全員協議会を開き、議員定数について検討した。
その中で出された意見は、「人口が減少していることや、住民の声などを踏まえると、削減すべき」というものと、「削減ありきではなく、総合的に考えるべき」というもの。そのほか、「20年以上の議員は引退して後継者に託すべき」、「若い人が立候補できるような条件整備が必要」、「仮に議員を2人削減しても、費用面での効果は予算総額の0・17%に過ぎない」といった意見もあった。当初は、条件付きでの「削減派」が8人、「現状維持派」が4人だったという。
その後、検討が進められる中で、定数を削減した場合、現状維持とした場合のメリット・デメリットが挙げられた。そうして、意見が出されていくうちに、「削減派」と「現状維持派」が拮抗していき、最終的には6対6になった。
そのため、「今回は現状維持とし、これらの問題に対しては、住民からの意見等も聞きながら、次期議員で引き続き協議を進めるべきである」との結論に至った。
つまりは、結論を改選後の議会に持ち越したのである。ただ、逆に言うと、改選後の議会でじっくり議論ができるということでもある。
同村議会事務局によると、「全員協議会で意見を出し合っているところ。もう少し時間をかけて話し合いを進めていくことになると思います」という。
次回改選までは3年弱あり、さすがにそこまではかからないだろうが、じっくりと議論を進めているようだ。同村は玉川村と違い最初からその予定だったから、当然の動きと言える。
昨年の両村議会議員選挙では、新人が玉川村で5人、平田村で2人当選している。現職議員は改選前に議論したときと同じスタンスを取ることが予想されるため、新人議員がどんな意見なのかで結論が決まりそう。そう考えると新人議員の動向は興味深い。今後の本格的な検討(玉川村は採決)に向けて、新人議員のスタンスに注目したい。
本誌は以前から、議員定数削減には否定的で、むしろ議員は増やすべきと指摘してきた。その場合、議員報酬を下げ、全体の議会費が上がらないようにすることが求められる。同時に、仕事(会社勤め)をしていても議員になり、その務めが果たせるよう、選挙のあり方、さらには議会開催の方法なども変えていかなければならない。
究極的に、正解はどこにあるかと言ったら「住民にとってどんな形が有益か」ということに尽きる。議員定数を減らすことが住民にとって有益ならそれで良し。本誌が主張するように、議員・議会へのハードルを下げ、もっとフランクに議論できるような仕組みをつくる方が有益ならそうすべき。もっと言うと、地方自治法(94条、95条)では、町村に限り、議会を置かず、それに代わって選挙権を有する住民による総会(町村総会)を設けることができる、と規定されている。いまは総会を採用している自治体はないが、その方が有益と考えるなら、それを検討・導入すべき。議員定数議論の本質はそういうことだ。