性的マイノリティーを含む多様な人びとが暮らしやすい社会づくりをめざすイベント、「ふくしまレインボーマーチ」が2022年10月、福島市内で開催された。実行委員会によると同種のイベントは県内では初めて。約100人の参加者がレインボーフラッグをかかげて日曜の昼下がりを行進した。
2022年10月2日午後2時半。JR福島駅近くのイベントスペース、まちなか広場。レインボーフラッグを先頭に、約100人の参加者たちが行進を始めた。小旗を振って通行人に笑顔を振りまく。自作のプラカードをかかげる人もいれば、音楽に合わせて踊りながら歩く人もいる。横断幕にはこう書いてあった。
〈福島でありのままで生きて、福島をみんなの居場所にしたい〉
性自認や性的指向は人によって異なる。レズビアン(女性同性愛者)の人もいれば、ゲイ(男性同性愛者)の人、バイセクシュアル(女性にも男性にも性的に惹かれる)の人、トランスジェンダー(出生時の性と性自認が一致しない)の人もいる。
こうした人びとの頭文字をとって「LGBT」と呼ぶこともある。しかし、実際にはクエスチョニング(性自認や性的指向が定まっていない)の人など、もっと様々な人がいるため、「LGBTQ+」という言葉が広がりつつある。
多様な性への理解を深め、「みんなが生きやすい世の中をめざそう」と広くアピールするのが、このマーチの目的だ。ふくしまレインボーマーチ自体は3回目だが、過去2回は新型コロナの影響を受けてオンライン開催だった。町の中を実際に行進するのは今回が初めてだ。
先頭を歩くのは実行委員長の廣瀬柚香子さん(25)。廣瀬さんは矢吹町在住。自分のことを男性とも女性とも思えない「Xジェンダー」だと表現する。マーチを主催した理由をこう話す。
「マイノリティーではない人たちに対しては、『私たち性的マイノリティーが身近に存在しているんだよ』ということを知ってもらいたかったです。そして一緒に歩いてくださった皆さまには、『みんな自分らしく生きていて素敵だよ』っていうメッセージを伝えたかったです」
福島を変える第一歩
マーチには県外からも多くの人が参加した。岐阜県から参加したVENさんは、これまでに全国津々浦々、100カ所以上のレインボーマーチに参加してきた。
「歩行者天国で多くの人が手を振ってくださいました。警察の方もやさしく接してくれました。とても嬉しいですね。でもね……」
ゲイのVENさんは福島にも友人がいる。だが、その人は今回のマーチのことを知っていても、参加できなかった。残念ながら、性的マイノリティーへの差別や偏見がなくなったとは言い切れない現状がある。
「私の友人だけでなく、『一緒に歩きたくても歩けなかった』という人がたくさんいると思います。私はその人たちの分も歩きたいと思っています」とVENさんは語った。
午後3時、一団はスタート地点の「まちなか広場」に戻ってきた。マーチは成功のうちに終わった。実行委員長の大役を務めた廣瀬さんは、こう話した。
「今日歩くまではとても不安だったんですけど、みんなのパワーに支えられて緊張を吹き飛ばしてもらいました。みんなで一歩を踏み出した。そう思えるマーチでした。まちの方も手を振ってくれたりして。私、今まで福島は生きづらい場所だなと思っていたんですけど、変えていけるんじゃないかな、と今日思えました」
(ジャーナリスト・牧内昇平)