白河市では、市役所東側の市民会館跡地に「健康増進」、「子育て支援」、「生きがいづくり」の機能を柱とした複合施設の整備を進めている。
市民交流スペース、子育て支援センター、生涯学習センター、中央保健センターなどの機能を備え、2027(令和9)年度の施設供用開始を目指している。敷地面積1万5733・4平方㍍。RC一部S造3階建てで、延べ床面積5510平方㍍。

昨年12月19日に建築工事の入札が指名競争で行われた。市のホームページで公表されている入札及び契約調書によると、《建築施工実績及び高い技術力を有する企業31社に対し、施工に必要な技術者の保有及び入札参加の意向を確認した結果、条件を満たし入札参加の意向を示した3者により指名競争入札を行うこととした》とのこと。
だが、指名3者のうち2者が辞退し、市は残った大林組と随意契約を結んだ。同社は1回目に47億円で応札していたが、予定価格の37億5600万円を超過していたため、見積もり合わせに移行した。しかし、価格が折り合わず、結局、同社も辞退したという(福島建設工業新聞2月10日付)。応札額と予定価格の間に約10億円もの開きがあったことになる。
指名競争入札で3者のみの応札となり、そこからさらに2者が辞退。残った1者の応札価格も予定価格をはるかに上回っていたことを考えると、「建設会社にとって、割に合わない工事」ということだろう。報道によると、市では早ければ4月にも再入札を行う方針とのことだが、予定価格を根本的に見直すなどしない限り、再び不調になる可能性が高いのではないか。
こうした疑問について、同市に問い合わせたところ、同市建築住宅課の原豊課長、市長公室地域拠点整備室の仁平真一室長が取材に対応し、「資材価格や労務単価が全国的に上昇しているのが一つの要因と考えています。我々は積算基準の単価に基づいて積算しているが、それがいまの情勢を反映した適切なものなのか、という問題もあるし、何とも言えません」と見解を示した。そのうえで、「新聞等でも報じられている通り、早ければ4月にも再入札を行い、2027(令和9)年度の施設供用開始のスケジュールを変更する予定はありません」との方針を示した。
何とも他人事のようなスタンスだが、業界関係者やマスコミ関係者は「いまのままでは入札が再び不調になる可能性が高い。予算や設計の見直しが今後必要になるが、市はどう対応するのか」との見立てを示す。
市内の事情通によると、市議会では以前から事業費高騰を懸念する声が上がっており、「『アーチを描くような凝った建物の設計にすると建設費が上がるのではないか』という指摘もあったが、鈴木和夫市長をはじめとする市執行部は『心配はない』というスタンスだった」という。
同市では2016年10月、多目的ホール「白河文化交流館コミネス」を開館したが、事業費が膨らみ、市議や市民から批判の声が上がった経緯がある。
「市議会には当初、コミネスの建設費は30億円程度になると説明されていたが、震災・原発事故後の人件費高騰と電車の振動・防音対策などを理由に膨らみ続け、最終的に総額103億円になりました。市執行部は『国の補助金や合併特例債を活用し、一般財源での負担は約4億8000万円で済んだ』と胸を張っていた。今回もコミネス同様、ずるずる事業費が膨らんでいくのではないでしょうか」(前出・市内の事情通)
果たして再入札はどのような結果になるのか。