結局焦げ付いた【なこそ病院】の超異例融資

 本誌昨年12月号に「開業10年で閉院 なこそ病院の〝闇〟」という記事を掲載した。

 2014年に新築された、いわき市勿来町の「なこそ病院」が昨年春から夏にかけて突然解体された。病院を運営する医療法人社団栄央会は給料未払いが長年続き、2023年から休眠。民事訴訟も2件起こされていたことが分かった。

 建物には県が多額の補助金を支給していたが、栄央会と県の間で財産処分の手続きを終える前に解体されたため、県地域医療課は「なぜ解体を急いだのか、甚だ遺憾」と困惑している。解体したのは栄央会に土地を貸していた地元スーパー・マルトだが、同社は本誌の取材に、解体の理由を代理人弁護士を通じてこう答えている。

 「依頼人(マルト)は病院に建物の底地を賃貸していたが、地代の未払いが続いたため賃貸借契約を解除し、建物収去・土地明渡訴訟を提起し勝訴判決を得て裁判所に強制執行を申し立てた。それを受け、裁判所執行官により建物の解体・収去手続きがなされ、建物が解体された」

 地代の未払いを理由とするが、多額の費用を要する解体を、栄央会に代わってマルトがしなければならない根本的な理由はこの回答からは判然としなかった。ちなみに12月号記事では、医療関係者が「栄央会との賃貸契約で毎年保証金を積み立てさせる条項があったようで、その金を使って解体したのかも。忌々しい建物を放置しておくのはマルトにとって許せなか
ったのではないか」とコメントしている。

 「忌々しい建物」とは、マルトがすぐ隣にショッピングモールをオープンさせ病院との一体的開発に協力したのに、短期間で閉院したことから「裏切られた」という思いを指している。すぐ近くにはマルトの本社もあるため「目に入る場所に、訴訟相手の所有物が存在し続けるのは我慢ならない」という心理も働いたのかもしれない。

 それはともかく、12月号の記事を読んで「栄央会に融資した顔ぶれを見て驚いた」と話すのは、いわき市内の医療関係者である。

 「記事には『2014年に独立行政法人福祉医療機構から6億5000万円の融資を受けた』とあるが、同機構から融資を受けるにはそれなりのコネが必要なので、栄央会の人脈が気になりました」(同)

 福祉医療機構(東京都港区、松縄正理事長)は厚生労働省とこども家庭庁が主管官庁で資本金約3538億円。福祉・医療関連の貸し付けや経営サポートなどを行っている。

 なこそ病院の内情を知る事情通に福祉医療機構から融資を受けることができた理由を尋ねると「国会議員の口添えがあったから」と答えた。

 「なこそ病院開設時の理事長・永井博典医師が、麻布高校の同級生・中川雅治参院議員を頼った」(同)

 中川氏は東京都選挙区選出で3期務め、2022年に政界を引退。現職時代は自民党(安倍派)に所属し環境大臣(2017年8月~2018年10月)などを歴任した。

 「ただ、栄央会は決算が悪かったため、永井氏が個人保証する条件で融資が行われた。融資を受けること自体難しいのに、個人保証付きという条件も超異例だった」(同)

 栄央会の経営が傾いた際、法人関係者は身売りに奔走したが、交渉時に経営資料を見せると、交渉相手は必ずと言っていいほど、福祉医療機構から個人保証付きで融資を受けていることに驚いたという。

 結局、なこそ病院は閉院(解体)し、栄央会も休眠状態。永井氏は2020年に亡くなり、中川氏も政界を引退した。残ったのは焦げ付いた超異例の融資だけ。永井氏の個人保証で、福祉医療機構がどれくらい回収できたかは不明である。

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