飲食店内で女性店員に下半身露出【ふくしまの事件簿#24】

 盗撮事件で有罪となり、懲役刑が執行猶予中の男が手を染めてしまったのは飲食店内での公然わいせつだった。被告人の会社従業員羽山達也氏(31)=郡山市=は、4月16日午後8時ごろに市内のファストフード店の会計時に陰茎をズボンから露出したとして公然わいせつ容疑で逮捕・起訴された。判決は7月4日に言い渡される予定(原稿執筆は6月下旬)。

執行猶予中に暴発した男の性衝動

 公然わいせつに関しては、時折ストリップ劇場や人目に触れる場所でのヌード撮影が罪に問われることもある。過去には前衛芸術家が一糸まとわぬ身体表現を公衆の前で連日行い、待ち構えていた警察官たちに逮捕されたこともあった。

 ただ、多くの人が接するかもしれないのは、今回の事件のように露出した身体を誰かに見せたいという性癖から来る犯行だ。羽山氏も6月20日に地裁郡山支部で行われた初公判(下山洋司裁判官)で「性癖から来る衝動とストレス発散が要因」と動機を振り返った。別の盗撮事件では、昨年9月に懲役2年執行猶予4年が言い渡されており、猶予期間中の犯行だった。「直接の被害を生んではいけない」と思い、身体露出を始めたというが、「公然わいせつに被害者が存在しない」という考えは大きな誤解だ。犯行を目撃した女性店員は精神的ショックを抱え、今も接客相手が男性だと怯えるという。被害者は間違いなく存在する。

 「恐怖と不安から1人ではアルバイト先に行けなくなり、送迎してもらっています。男性自体が恐ろしくなりました。レジ打ちをする際にお客さんに男性が並んでいると同僚に代わってもらわなければなりません」(法廷で読み上げられた犯行目撃者の供述調書より)

 塾講師を務めていた羽山氏は、過去に住居などに侵入してカメラを設置し、盗撮したなどとして有罪判決受けていた。羽山氏は犯行の原因を歪んで抑えが利かなくなった性衝動にあると考えたという。専門病院で依存症の診断を受け、同じ悩みを抱える人たちとグループミーティングを重ねる療法を続け、少しずつ自分に向き合えるようになってきたと法廷で振り返った。

 被告人質問で、弁護人はなぜ身体露出という形で再び性犯罪に走ってしまったのかを聞いた。

 「一つは自分の性癖、もう一つはストレス発散のためだ。今年の3、4月ごろから少しずつ小さな悩みが重なり今回のような結末に至った」

 ――なぜ公然わいせつという形になったのか。

 「『直接被害を生んではだめ』と考えたからだ。今となっては甘い考えだった」

 ――今、法廷で犯行を目撃した女性の供述内容を聞いた。あなたは、この事件に被害者はいると思うか。

 「いると思う」

 次に検察官が質問に立ち、犯行の動機や再犯の可能性を聞いた。

 ――犯行の原因となったストレスとは具体的に何か。

 「アルバイトを重ねて忙しくなっていた。前回の事件後に仕事を辞め、家族と同居するようになり、食事の用意をするのだが食べてもらえないなどストレスに感じることが増えた。一人暮らしのように自由になれず億劫な気持ちになっていた」

 ――前回の事件でも担当した検察官は私だ。刑の執行猶予期間中に罪を犯したら執行猶予が取り消されると話したのは覚えているか。

 「覚えている」

 裁判は即日結審。検察側は前回の盗撮事件で執行猶予付きの有罪判決を受けてから7カ月以内に再び性犯罪に走った点をもって、社会での治療は困難とし、懲役6カ月の実刑判決を求めた。

 弁護側は、同じ性犯罪でも不同意わいせつのように相手の性的自由を侵害したわけではないと主張。一方で、「意に反して陰部を見せられた相手は性の選択権を奪われ実質的に被害者だ」という点を本人が十分理解し反省しているとした。更生のためにも実刑を受けるべきではなく、保護観察を受けながら社会生活の中で治療していく最後の機会(執行猶予付きの有罪判決)を与える必要を訴えた。

 隠部を公衆の面前で露出する行為は「変態」「露出狂」で済まされがちだが、その先には望まない目撃を強いられ、精神的ショックを抱えた被害者がいる。露出者自身も何が問題か想像できないように見える。

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