国見町と法廷闘争を繰り広げた「愛知の行政マン」こと簗瀬貴央氏(61)=愛知県西尾市=を覚えているだろうか。情報公開請求や訴訟を駆使して他自治体の法令違反を監視することをライフワークにする手ごわい相手だ。なぜ「愛知の行政マン」と呼ばれているのかと言うと、簗瀬氏は提訴時、愛知県西尾市の危機管理部長だったからだ(今年3月に役職定年で退職)。
西尾市議選に立候補して次点落選
法令遵守が行き届いていなかった国見町は簗瀬氏の標的になった。簗瀬氏は、町の救急車リース事業にまつわる法令違反を公益通報した職員を町が懲戒処分したのは公益通報者保護法違反に当たると思い、処分の根拠となる公文書を情報公開請求。町は条例で何人にも認めている情報公開請求権を曲解し、「簗瀬氏は町民ではないので請求権がない」と全面不開示の上、不服申し立ての手続きを却下した。町の舐めた対応に憤った簗瀬氏は、開示を求めて町を提訴した(2024年7月号)。
国見町の敗訴が濃厚だったが、結果は町が一部開示に応じ、「妥当」と判断した簗瀬氏が訴えを取り下げた。
国見町との訴訟を終えたことで町との闘いが遠い出来事になっているのかと思いきや、視線はまだ北に向いていた。
「8月20日付の朝日新聞に国見町の救急車事業の記事が載っていましたね。地元の方はよく知っているのでしょうが、まとめ記事を通して事業の構図が全国に伝わったのではないでしょうか」(簗瀬氏)
そんな簗瀬氏自身もニュースの対象になっていた。
「地元の西尾市議会議員選挙に出たんです。落選しましたが」
6月15日に投開票された同市議選(定数30)には35人が立候補し、簗瀬氏の得票数は31番目の1405票(得票率1・8%)だった。
「市職員は今の市長に疲弊しており、議員になって市長の方針をただしたいとの思いがありました。無所属で手弁当ながら健闘できたと思います。市議選は参院選の前哨戦と位置づけられ、政党の公認候補は告示前から『政治活動』と称して名前を連呼し、ネット広告も打っていた。甘く見ていました」(同)
西尾市役所を退庁したこともあり、今後は気兼ねなく市に開示請求や住民監査請求ができると話す簗瀬氏。福島県に遠征に来ることは当分なさそうだ。
























