会津美里町本郷地区の住民から、ある情報が寄せられた。「いままで通行できた道路が廃止され、不便になる。何とかならないのか」というような内容だ。
容認派は「子どもたちのためだから」

まずは、問題の背景について説明しておく。
会津美里町は本郷地区にある本郷小学校と本郷中学校を義務教育学校として一体化し、昨年4月に「本郷学園」を開校した。同校では、従来の小学校に当たる1年生から6年生(前期課程)と、中学校に当たる7年生から9年生(後期課程)が一緒に学ぶ。
もともと本郷小学校と本郷中学校は道路を隔てて向かいにあり、両校が一体化され本郷学園になってからは、旧本郷小学校の校舎が西校舎、旧本郷中学校の校舎が東校舎となった。同校の児童生徒は道路を渡って西校舎と東校舎を行き来するが、新年度からその道路を廃止して学校用地にすることを決めた。
町が地域住民に配布した「本郷学園間道路通行止めのお知らせ」には次のように記されている。
《(前略)開校から懸案でありました、児童生徒が授業等で横断しております旧本郷小学校、旧本郷中学校間の道路につきまして、安全対策のため道路を廃止して学校敷地とし、(中略)自動車の車両を通行止めとすることといたしました。つきましては、今後自動車等の通り抜けができなくなりますので、道路を利用されている皆さまには大変ご迷惑をおかけいたしますが、児童生徒の安全確保のため、何卒ご理解ご協力をいただきますようお願い申し上げます》
「通行止め」と聞くと、一時的なもののような印象を受ける人は少なくないと思われるが、ここにあるように道路が廃止され、未来永劫通行ができなくなる。ただし、歩行者は通行可能。自転車は降車したうえで手押しでの通行が許される。通行止めになるのは3月31日から。
これに対し、地元住民からこんな意見が寄せられた。
「この道路が止められると、近隣住民としては非常に不便になる。緊急車両や降雪・積雪時の除雪車両も通れなくなる。遮断機付きの信号機を設置するなどの対応で、児童生徒の安全性を確保しつつ、地域住民の不便にならないようにできないものかと思ってしまう」
地域住民に聞く

町によると、旧本郷小学校の敷地は、もともとは会津工業高校本郷分校があったところ。1999年に閉校となった後、町で譲り受け、旧本郷小学校を建設した。その際、本郷小学校と本郷中学校の間の道路を少し広げた。いまから10年ほど前の話だ。ただ、この道路は町道ではなく、法定外道路という位置付けになるのだという。
この道路廃止に当たり、2023年夏に住民説明会を実施したほか、地元行政区長らに意見のとりまとめを依頼した。
「(西校舎と東校舎の行き来の際)児童生徒は教材を持って道路を横断したり、雨の日は傘を持って移動しなければならず、何とかしたいと思っていました。そうした中で、今回の一体化工事(西校舎と東校舎間の道路を廃止して学校敷地にすること)について、住民説明会を実施したほか、地元行政区長らに意見のとりまとめを依頼し、おおむね合意は得られたと認識しています」(町教育委員会)
前段で歩行者は通行可能と説明したが、これは住民からの意見集約を経て取り入れられた要素。そうして理解醸成に努めてきたとのことだが、まだ納得していない人も一定数いるようだ。
本誌が周辺で聞き込みをしたところ、ある住民はこう話した。
「そりゃあ、(地域住民の思いは)いろいろありますよ。私が聞いた感じでは、(廃止される道路の)東側の人は『反対』『あそこが通れないと不便になる』という人が多く、西側の人は『特に影響はないから(廃止になっても)構わない』『どっちでもいい』という人が多いかな」(男性住民)
本誌が「説明会が開かれたそうだが、そこでは反対意見は出なかったのか」と尋ねると、「行っていないから分からない。(学校に通う)子どもがいる世帯以外は行っていないんじゃないか」とのこと。
町によると、説明会の出席者は約15人だった。そのため、地元行政区長らに依頼し、広く周知し意見を募ったわけ。
「私は自転車で移動することが多い(車を運転しない)から、そんなに影響はないかな。何より、子ども(児童生徒)たちの安全のためだから」(近隣の高齢女性)
一方で、現場から直線距離で2、300㍍ほど離れたところ(地図上の県道付近)で聞いてみると、道路が廃止されることを「知らない」という人がほとんど。この問題は、ごく限られたエリアの話のようだ。
周辺は、本郷学園南側に役場本郷支所があり、比較的住宅が密集している。役場支所の東側には歯科医院、内科医院、その南側には町立認定こども園(本郷こども園)がある。とはいえ、その道路が廃止されたら、多少の遠回りを強いられることになる人(世帯)はあるだろうが、そこまで大きな不便をきたすようには感じられなかった。もっとも、実際にそこで生活している人からすると、そうではない部分もあるのだろうが、高齢女性住民が話したように「児童生徒のため」と思って受け入れるしかないのではないか。町はそう思って理解してもらえるように努めるべきだろう。