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インタビュー

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

    【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  原町商工会議所の高橋隆助会頭は昨年から5期目の任期に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症の拡大など、厳しい環境下で、舵取り役を担ってきた。高橋会頭にコロナ5類以降の管内の経済状況や、地域の課題、今年度の重点事業、今後の抱負などについてインタビューを行った。 事業者が安心して事業できる環境を整備する  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行しました。  「5類移行により、状況は変わりつつあります。移動制限がなく、会議やセミナーなどはリアル開催になりました。親睦会などもこれまで通りの開催となり、飲食店も賑わいを取り戻しています。これからはビヨンドコロナをどのように行動していくかがカギになってくると思います。例えば、コロナ禍で営業自粛を余儀なくされた事業所に勤務していた方々が離職し、現在も前職復帰が進まない事例があります。また、オンライン会議をはじめ、加速度的に発展したIT、IOT、AIなどは今後さらなる発展が予測されます。大きく様変わりをした環境に対応していくことも急務だと思います」  ――円安や物価高が深刻になっています。  「8月に会員に実施した管内景気調査によると、約半数の事業者が『業績が悪化している』と回答しており、その理由に『仕入れ価格の動向』が最も多く挙げられています。経営上の問題としては全業種で『売り上げの停滞・減少』が挙げられ、製造業・サービス業では『価格転嫁できていない』、商業・建設業では『人材不足』の割合が高くなっています。物価高が経営を圧迫する中、『適正な価格転嫁』と『人材の確保』が今後の経営上の取り組みとして大変重要だと捉えています」  ――10月に「第4回ロボテス縁日 ロボット・ドローン大集合」が行われました。  「国家プロジェクトである『福島イノベーション・コースト構想』の認知度向上を軸に、南相馬市や県内外でロボット・ドローンの開発に取り組む企業・団体・大学等が研究と開発の成果を広く発表し、県民の皆様に親しんでいただける機会として開催されています。4回目の開催となった今年は、浪江町に設立された『福島国際研究教育機構(F―REI)』と『福島水素エネルギー研究フィールド』を紹介するコーナーを新たに設け、浜通り広域に渡って『復興』を感じ取ることができる内容としました。日本のロボット・ドローン産業の拠点として『福島ロボットテストフィールド』の知名度を向上させ、それがまた新たな産業を生み出す『種』となり復興の好循環へとつながることを祈念しています」  ――「相馬野馬追」が5月に変更する素案が決まりましたが、どう捉えていますか。  「かつてこの地域では『暮・正月』『お盆』『相馬野馬追』の3つの行事が生活や仕事の大きな節目となっていました。経済界も同様でこの3つの行事前に『納品』『集金』『支払い』などの商慣習を区切りとして行っていたこともありました。時代の変化と共にその慣習も見られなくなってきましたが、『相馬野馬追』はこの地域にとって生活慣習などにも影響する大切な行事です。その開催時期が変更されることは、近年の猛暑の影響もあり多くの人が賛成するところですが、地域行事・イベントをはじめ多くの生活や仕事のスケジュールが変わっていくことになろうと思います。例えば出場する騎馬武者は準備が2カ月前倒しになり、自分の準備や馬の調教もずれ込んできます。相馬野馬追に付随する行事もずれ込みますが、その半面6月、7月には仕事や事業に集中できるようになります。このように多くの物事が変わっていきます。今後は市役所を筆頭に全市で検討を重ねていく必要があると思います。商工会議所もしっかりと協力していきたいと考えています」  ――今年度の重点事業についてお聞かせください。  「今年度は次の3点を基本方針に取り組んでいます。1つ目が東日本大震災及び原発事故からの復旧・復興です。国の『第2期・復興創生期間』が残り3年度となる本年は、商工業者同士がつながりを持てる地域経済環境の整備を図りたいと思います。  2つ目は相談業務及び事業所支援の充実です。地域の商工業者に対して、伴走型支援を実施すると同時に個々では解決が困難な問題に対し、会員の意見を集約して建議活動を行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。複雑かつ多様化する問題に対して、日本商工会議所をはじめとした関係機関と連携して対処していきたいと考えています。  特に地域経済環境の整備は重要であると捉えており、福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流を促進するため、進出企業と当会議所役員・議員との交流会を実験的に開催しました。引き続き地域資源を活用した産業交流を促進し、新たな取引増加につながる事業を検討していきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「10月から開始したインボイス制度について、十分な理解が進んでいるとは言い難い背景から、中小企業者等への負担軽減措置が必要だと考えています。当会議所においても昨年からセミナーの開催、小冊子の配布、窓口での重点的な相談等を実施していますが、特に小規模事業者への支援を継続していきたいと思います。本制度は単に新たな制度の導入という概念に留まらず、事業者の取引そのものに影響を与えるもので、すでに一部の軽減措置は取られていますが、理解が完全に醸成されるまでは引き続き負担軽減措置をお願いしたいと思います。  また、ロシアのウクライナ侵攻や中東問題等、事業所を取り巻く地政学的環境はこの数年で急激に悪化しました。事業者にとって地政学リスクを踏まえた視点は不可欠となっていますが、自助できることには限りがありますので、国の積極的な関与や支援策の実施により、安定的な経営ができる環境整備を期待します。  加えて、ALPS処理水放出に伴う風評被害への対策や障害が生じた場合の適正な賠償、中間貯蔵施設の除去土壌の最終処分、1日も早い廃炉の実現など、原発事故に関する問題への対応もしっかり行っていただきたいと思います」  ――今後の抱負。  「地政学リスクへの対応、地域資源としてのイノベ構想の利活用、労働力不足、廃炉など、地域の商工業者が抱える問題は山積しています。また、人口減少社会の中での販路拡大や事業承継問題にも継続して取り組む必要があります。会議所としては、事業者が安心して事業を継続できる環境を整備するため、役職員全員で事業に取り組んでいきたいと思います」

  • 【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    えんどう・じゅんいち 1955年生まれ。高湯温泉吾妻屋社長。2015年から福島県温泉協会会長を務める。  ――温泉協会の活動と役割についてお聞かせください。  「名前の通り、福島県内の温泉に関わる旅館を中心とした組織で、会員数が130軒前後の任意団体です。法人団体ではありませんが、日本温泉協会とのつながりや県の薬務行政として温泉審議会に携わるなど、行政とのパイプ役として活動しています。加えて、会員の皆様に向けて温泉に関する勉強会を開催して知識向上に努めたり、各温泉地だけでは難しい取り組みを協会を通じて全県下でやっていったりと、多角的な役割を担っている組織と言えます」  ――コロナの法的位置付けが5類に移行され、9月からは観光キャンペーンが実施されています。  「昨年は全国旅行支援などの補助金制度がありましたが、5類移行に伴ってそれもなくなり、ある意味では今年からが勝負の年になっていくと言えます。温泉協会の会員の強みは、どこの施設も温泉を持っていることです。ある旅行会社が実施した『コロナ禍が明けたら何をしたいですか』というアンケートでは、『温泉に行きたい』という回答が最多でした。我々としても、そうした方々に来ていただけるよう温泉を最大限に活用していく考えです。実際、県の観光キャンペーンの影響もあってか、各地のお客様の入り込みは増えています」  ――高湯温泉と土湯温泉では、脱炭素化に向けた取り組みが進められており、持続可能な観光地づくりに取り組む国立公園内の地域を登録する環境省の「ゼロカーボンパーク」制度で、東北初の登録を受けました。  「都市部の温泉地にも脱炭素化への意識は芽生えつつあり、今回の『ゼロカーボンパーク』の登録によってその流れが大きく波及していくものと見ています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)や日本温泉協会が中心となり、脱炭素化を目指す動きが広まっていますが、今回の東北初の登録は脱炭素化への取り組みを周知する良いきっかけとなり、今後、高湯・土湯両地域合同で、どのような取り組みを進めていくのか協議していく考えです。  現状の取り組みとしては、土湯温泉では再生可能エネルギーの一つである温泉熱を利用したバイナリー発電施設の整備が進められており、高湯温泉は源泉かけ流しという形をとり自然の地形を生かして引くことを実施しています」  ――今後について。  「国内のインバウンドが増えている一方で、福島県への来客者数は決して多いとは言えません。その原因としては原発事故の影響が未だにあります。その点は国や県に正確な情報発信をお願いしたいですし、温泉地まで足を運ばずとも、国内の関係人口を増やすため行政に要望や提言していく予定です。  また、日本温泉協会で日本固有の温泉文化をユネスコの世界文化遺産に登録しようという動きが群馬県の山本一太知事を中心に展開されており、県温泉協会としても協力していく考えです。登録によって県内インバウンドの増加につながるものと見ています。  このほか、再生可能エネルギー事業において、福島県は原発事故の風評被害等、他県とは異なる状況にあることを考慮のうえ、福島県独自の再生可能エネルギー事業のガイドラインを作成し、温泉関係者や観光等に関係する機関を保護していくことも重要と考えます。  温泉は有限であり無限でないことを念頭に置き、これを守るべく会員皆で協力していく考えです。温泉を好きな皆様に、いつまでもこの素晴らしいお湯を楽しんでいただけるように努力していく所存です」

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

    【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    えだ・ふみお 1955年生まれ。2003年から町議を4期途中まで務め、その間、副議長などを歴任。2018年10月の町長選で初当選。現在2期目。 子育て支援と福祉環境の充実を図っていく  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「徐々にコロナ禍前の賑わいが戻りつつあると感じています。『花火の里浅川ロードレース大会』は、今年は過去最高の参加者数となりました。また、『浅川の花火』も、町内外から多くの方に来場いただき、例年以上の人出となり賑わいました。このほかにも、浅川町ならではの魅力ある地域資源が多くありますので、さらなる賑わいづくりのため、町の魅力発信に努めていきます」  ――エスプール(東京都千代田区)と包括連携協定を結び、ゼロカーボンシティへの取り組みを開始するそうですが。  「これまでも、地球温暖化対策実行計画に基づき、住宅用太陽光発電システム設置補助や公共施設照明のLED化、ふくしま森林再生事業への取り組み、ごみの分別指導、食品ロスの削減協力依頼など、さまざまな形で啓発や推進を図ってきました。今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、持続可能な地域づくりにつなげるためのロードマップを策定するほか、エネルギー利用の効率化に向け、次世代自動車の導入や建築物に対する高断熱化、太陽光発電設備の導入など、できるところから取り組んでいく予定です」  ――浅川中学校校舎の建て替え工事と、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想について。  「浅川中学校校舎新築工事は、8月に安全祈願祭を行い工事に着手しています。工事の進捗状況は、おおむね順調です。なお、別工事として新たに用地を取得し、テニスコート3面を整備する敷地造成工事は、予定通り8月中に完成し、9月上旬からテニス部の部活動で使用しています。今後も事故がないよう安全管理を徹底し、周辺地域の方々や学校生徒・教職員への安全にも配慮して、来年8月の新校舎完成を目指して工事を進めていきたいと考えています。  また、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想については、引き続き検討していきます」  ――今後の重点事業について。  「人口減少・少子高齢化対策が急務で、引き続き切れ目のない子育て支援と福祉環境の充実を図っていきます。特に子育て支援については、小中学校の入学祝金、高校生の通学費助成等のほか、今年度新たにこども園保育料の軽減や学校給食費の全額補助に取り組んでいます。今後も町民の声に耳を傾け、『子育てするなら浅川町』をモットーに、さらなる充実に努めていきます。そのほか、移住定住の促進や農業者支援、道路改良等の計画的なインフラ整備など、本町の重要課題への対応を一歩ずつ着実に進めていきます」 浅川町ホームページ

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

    【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられました。今年は相馬野馬追が通常開催されるなどイベントが戻りつつありますが市内の状況は。  「ワクチン接種への関心が大分薄れています。新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられる一方、ワクチンの副反応への警戒が残っていることが接種率低下につながっているようです。重症化率が高い高齢者や基礎疾患を抱える方を念頭に接種体制を整えています。高齢者が重症化しやすいのは、現在流行しているインフルエンザについても同じです。個人の意思を尊重した上で接種を勧め、流行と重症化リスクを下げるよう対応していきます。催しはできるだけ活発にやりたい。市の新春のつどいは、来年は行います」  ――一昨年2月、昨年3月に福島県沖地震が発生し、相馬市は2年連続で震度6強の揺れに見舞われました。この間、市内では台風などによる水害なども発生しましたが、復興状況と対策はいかがでしょうか。  「多くの住宅が損壊しました。行政として公費解体などできる支援はしてきたつもりですが、被害に遭った方の人生への影響は計り知れません。私の家も大規模半壊で建て替えざるを得ませんでした。70歳を過ぎて家を建てるのは容易でない。解体が必要な家屋は千数百軒で、約90%は解体が済んでいます。難しい判断なので解体はせかさず、時期を待って行政の手を差し伸べます。解体と移転が進むと更地が増えます。街なかを散歩すると空き地が増えているのが分かります。行政として、1年単位ではなく、10年、20年先を考えてリカバリーしなくてはなりません。リカバリーが新たな景観やビジネス創出につながってほしい。  建て替えてまた再起した飲食店やホテルもあり、繁盛している店舗もあります。市としては、もう被害には遭わせないという気持ちで水を吸い上げるポンプ車を新たに2台配備し、さらに宇多川と小泉川の河川改修をしました。過去には水田で保水効果があった土地が宅地化でアスファルトになるなど土地の変化が水害に与える影響は大きいですが、対策を抜かりなく行っていきます」  ――福島第一原発の処理水が放出されました。「常磐ものを食べて応援キャンペーン」が好調ですが観光の状況はいかがでしょうか。  「私が知る限りでは、マイナスの影響はそれほどありません。IAEAの厳しい基準を各国が支持しています。米国のエマニュエル駐日大使が相馬市を訪れ、意見交換をしました。海洋放出については大丈夫、つまり影響がないことを示す科学的な根拠があるという趣旨のことを言ってくれました。  中国内から日本の公共機関や店舗へ嫌がらせの電話が相次ぎ、それに対する反発で国民が冷静になった面はあります。相馬市内でも学校や病院、飲食店に中国語の電話や無言電話がずいぶんあり、業務を妨害されました。市民の間に科学的なデータに基づいて考えようという気持ちが芽生えました。  全国市長会会長として、教育現場で放射線を正しく学ばせてほしいとこれまで訴えてきました。高校入試に出題するように求めましたが、実現はまだ遠いです。副読本だけではリテラシーは十分に身に着かないと思います。  新たな名産として期待がかかるふぐの季節が始まりました。地元料理店での提供も徐々に増え、名物料理としても今後に期待ですが、漁業資源としては好調です。かねてからの名産地である山口県下関市のふぐ取扱業者が相当量買い取ってくれています。この前、全国ふぐ連盟の方々が相馬市を訪れ意見交換をしました。下関近海では温暖化の影響で近年ふぐが不漁です。相馬で獲れたふぐで下関のふぐ産業を支え、双方に実りあるようにしたいです」  ――今年度取り組んでいる重点施策についてお聞かせください。  「行政の役割は困った人たちに対して救いの手を伸べること、すなわち『不幸の緩和』です。自然災害や疫病への対応など住民の生活環境を守る義務を果たしていきます。無責任に夢みたいなことを語るよりも、目の前の義務を果たすことが一番大事なことだと思っています。  物価高で困窮者が増えています。政府が総合経済対策を進めていますので、市町村分について、生活困窮者には特に対応していきたいです」  ――全国市長会会長として政府に求めたいことは。 「たくさんあります。11月15日には副会長ら8人で与党の両政務調査会長と、内閣官房長官らを訪ね、『減税する際に市町村に迷惑を掛けない』との言質を取ってきました。減税とは地方自治体の税収減も意味するからです。  これまで他には児童・生徒が1人1台のタブレット端末で学ぶGIGAスクール構想の財源確保を要望してきました。同構想は5年を迎え、タブレット端末の更新を迎えます。5年に1回更新費用をその都度要望するのは非効率なので恒久財源を付けてほしいと訴えました。文部科学省は基金で対応することになりました。  来年から新型コロナワクチン接種が有料となりますが、単価が高いと市町村間の公費負担に差が出るので、負担に格差がないようにしてほしいと政府に要請しています」  ――今後の抱負を。  「重点施策と重複しますが、不幸な事態を最大限に緩和することです。長い目で見ると人口減少が不幸な事態です。それを解消するには企業誘致に励み、県外に流出が進む女性の働く場所をつくらないといけない。今年は企業誘致がまとまって、市内の工業団地用地をいくつか売却しました。人口減少に歯止めをかけるのは難しいですが、対策を積み重ねていかなければなりません。野球に例えればホームランを打つのではなく、バントでヒットを狙って、着実に返すような守り主体にしていかなければならない。  地道にコツコツが私の信条です。守りを継続していけば攻めに転じるチャンスが必ずある。一つが浜の駅松川浦です。浜の駅には原発事故後の風評被害の中、相馬の魚介類を味わってもらい『安全なんだな』と来場者に納得してもらう役割を担ってもらいました。『攻』というよりは『守』です。今や大勢の人で賑わい、近隣食堂に経済効果が波及するほどです。ところが、賑わいが商店街まで波及するかと期待したところに地震と水害、新型コロナ禍が襲いました。  市を挙げて地道にコツコツ石を積んでいたところを崩された感じです。打撃は大きいですが、『不幸の緩和』のために守り続け、幸福という攻めに転じるために、苦境の中でも対策は積み上げていかねばなりません。行政とはそういうものです」 相馬市ホームページ

  • 【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

    【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

     おおつき・ひろた 大槻商事、大槻電設工業代表取締役。2017年5月に県電設業協会長に就任(4期目)。福島商工会議所副会頭、県建設産業団体連合会副会長を兼務。 働き易く、魅力ある業界の構築に努める  ――協会の現状についてうかがいます。  「福島県電設業協会の会員数は現在50社であり、年々減少傾向にあります。内線工事、外線工事の有資格者・技術者不足による退会企業もあります」  ――業界を取り巻く課題についてうかがいます。  「まず、喫緊の課題として挙げられるのが『働き方改革』であると考えます。12月1日には自民党本部に陳情にうかがい、現状についてお話しさせていただきました。  労働における時間的な制限と工期がマッチングしなければ働き方改革の根本が揺らぐ事態となります。発注者側に対しては、残業など労働実態を反映させた工期を強く求めたいと思います。  今年は猛暑に見舞われ、作業も過酷を極めましたが、福島県では熱中症対策の一環として気温が35度以上になり作業を止めた場合に、その日の分を工期に加算し、期限を延ばす仕組みを確立していただいております。これは大変画期的なことである点を付言したいと思います。まずは人命が最優先ですので、ぜひ業界全体において浸透を図っていきたいと考えます。  次に、業界内における週休2日制の問題です。単独で受注する工事については完全に実施できますが、建築工事の現場となると大変難しいのが現状です。  建築工事は本体工事、電設工事、設備工事の三つの業者で基本的に構成されていますが、電設・設備業は建築物が完了したタイミングで工事に着手するという事情があります。もし建築工事で遅れが生じても、電設工事や設備工事は建築の工期に合わせなければなりません。その遅れにより作業工程が圧迫され、結果的に残業を余儀なくされてしまうのが実態です。  一方、県では現在この問題に対して、設備調整期間を設定し、特記仕様書にきちんと盛り込むなど適切な対応をしていただいています。運用に関してはこれからの課題となっていますが、設備調整期間が2週間と設定されれば、建築工事概成後、電設工事、設備工事で2週間の期間があらためて認められるようになるため、電設・設備業としては大変助かっています」  ――その他の重点事業についてうかがいます。  「各自治体に対しては、最低制限価格が担保される建築・電気・設備の3分割による分離発注を行っていただけるよう積極的に要請しています」  ――結びに、抱負をお聞かせください。  「業界の発展に向けてはまず魅力づくりが重要と考えます。完全週休2日制の実現など休日の確保をはじめ、電気がいかに日常生活や地域に寄与しているかについて、電設業の立場から効果的なPRを展開することで、電設業界に興味・関心を持っていただけるような取り組みについて議論を重ねていきたいと考えています」

  • 【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

    【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

     てづか・たかよし 1967年生まれ。福島市出身。東北大工学部資源工学科卒。1989年福島県入庁。道路整備課主幹、下水道課長などを歴任。今年4月より現職。 県民が求める社会資本整備・管理に取り組む  ――4月に県南建設事務所長に就任されました。管轄地域の印象はいかがでしょうか。  「栃木・茨城両県と接し、東北新幹線、東北道、あぶくま高原道などの高速交通網が発達している一方で、美しく豊かな自然に囲まれた地域でもあります。白河関跡、小峰城跡、棚倉城跡など歴史的文化遺産や伝統文化も多く魅力溢れる地域です」  ――2月4日には国道294号白河バイパスが開通しました。  「市街地を通る現道はクランクが多く、十分な歩道幅も取れないことから、1995(平成7)年度に延長4120㍍のバイパス整備に着手しました。開通により安全・安心な通行が確保されるとともに、市街地を経由して白河中央スマートインターチェンジと国道289号が直結し、白河厚生病院等へのアクセスが向上しました。市の循環バス『こみねっと』が4月からバイパス経由の新規路線を開設したほか、バイパス周辺にある小峰城や南湖公園への観光客も増加しています」  ――建設業界の人材不足が課題となっていますが、県としての対策は。  「県土木・建築総合計画でも目標の一つに『持続可能な建設産業』を掲げています。当事務所では担い手確保として、小学生や高校生、一般の方向けの現場見学会を実施しており、関心を持っていただけるようにそれぞれ内容を工夫しています。  一般の方向けの現場見学会としては、昨年度に南湖トンネル、今年度に堀川ダムでキャンプを実施し、施設の役割や建設業の重要さを学んでいただきました。子どもからお年寄りまで多数の参加があり、建設業をアピールできたのではないかと思います。  トンネルキャンプは全国でも2例目、ダムキャンプは全国でも初の試みだと思われます。今後も、担い手確保に向け日々シンカ(新化)し、有効な取り組みを進めます」  ――結びに抱負を。  「県土木・建築総合計画の地域別計画で定められている『県を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』の達成に向けて各種施策に取り組んでいきます。  道路事業では、国道289号、国道118号などの広域的な道路ネットワークの強化、幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化、産業や観光の振興を支援し、活力あるまちづくりを目指します。  国が進める阿武隈川の遊水地群整備をはじめ、各水系の流域治水対策事業や砂防事業などの推進、県有施設の長寿命化事業などにも重点的に取り組み、災害に強く安全で安心なまちづくりに努めます。  安全・安心、豊かさを次代につなげられるよう、県民が求める真に必要な社会資本の整備、管理に取り組んでいきます」 県南建設事務所ホームページ

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    さかもと・ひろゆき 1956年生まれ。田村高校、専修大学法学部卒。三春町総務課長、副町長などを歴任。2019年9月の町長選で初当選、今年9月に再選を果たす。  ――9月に行われた町長選で無投票再選を飾りました。  「選挙公約を記載したリーフレットを準備するなどして選挙に備えていましたが、無投票になったため、個人演説会もなく、様々な声を聞くことができず残念な部分もあります。選挙で審判を受けるのが本来あるべき形で、無投票によって全町民の信任を得られたわけではないことを自覚しつつ、職務に当たっていきたいと思います」  ――2期目の重要課題についてお聞かせください。  「1つは、1期目から取り組んでいる認定こども園建設と、アウトドア用品大手の『モンベルストア』が出店予定で、それに伴うアウトドア・アクティビティの環境創出です。こども園はすでに着工しており、モンベルストアは間もなく着工します。  また、新たな切り口として住環境を整備したいと思っています。具体的には空き家対策を町として進めていきたい。全国的に空き家の問題が叫ばれていますが、町内でも今後多くの空き家が出てきます。コンパクトシティのまちづくりを進めていくうえでも空き家対策は重要で、それに対する住宅のマスタープランを作成する予定です。  いま町で取り組んでいる第7次長期計画が令和6年で終え、令和7年から第8次長期計画に移行しますが、その中の柱の一つに、住環境の整備を盛り込み、新築や住み替えはもちろん、年を取り夫婦2人、あるいはどちらか一人だけになった時の住まいの流動化ということがあってもいいと思います。例えば、街なかのリフォームした住宅に移り住み思い入れのある元の住宅は残しておく。その方が亡くなってしまい、その住宅を誰も相続しないけど住宅の状態はいい場合は誰か別な方に住んでもらう。そういった形は、手間がかかるため民間業者では難しい。そこを行政として粘り強く地道に行い、少なくとも現在町内に住む方が、住むところがなくなり、町外に出るような事態は避けたいと思っています。  実際、町内には、家主さんから町が10年間の契約でお借りし、リフォームをして若者に貸し出す事業を行っています。現在は外国人実習生が住んでおり、そういった実績もありますから、状態の良い住宅を再利用できると思います。そういった考えにシフトしなければ住宅問題は今後もっと大きくなっていくと思います。簡単なことではありませんが、何もしないというのも行政の怠慢だとも思います。  もう1つは、間もなく町内の農業振興地域内の農用地区域の見直しを終えます。農用地として守っていく農地では、今後、何を栽培するかまだ決まっていないところもあります。町内はピーマンの指定産地になっていますが、すべての農地でピーマンを栽培しているわけではありません。国際情勢により小麦等の値段が高騰しており、国でも輸入に傾き過ぎる大豆と小麦などの栽培の奨励が行われています。とはいえ、農産物は一朝一夕でできるものではありません。町内では以前は大豆栽培が盛んでしたが、そうした過去の事例を踏まえつつ、農家に推奨作物を勧めると同時に、若い方が参入しやすい体制づくりを進めていきたいと考えています」  ――最初にお話があったこども園整備の現状は。  「原材料費高騰の心配がありましたが、事業者の企業努力もあってか大きな遅れはなく、順調に進んでいます。建設地は岩江地区になりますが、近隣から町内に転居する方は同地区に住宅を建てるケースが多く、同地区の住民の平均年齢が若くなっていますから、需要にも見合っていると思います。また、同園は町内東部から郡山市内の職場に通う方の通勤経路の途中に当たるため、利便性もあると思います。いまは広域行政の時代で、保育所や幼稚園も仕組みが変わりつつあり、今後は市町村を乗り越えた利用者の増加も想定しています。これから0歳保育もはじまりますが、今後は子どもを預けるための環境整備と、0歳から18歳のための政策を重点的に行っていきたいと思っています。また、町内唯一の高校である田村高校と連携を図りながら児童・生徒の育成に力を入れたいと考えています」  ――アウトドア用品大手の「モンベル」の店舗が町内にオープン予定で、町は同社と包括連携協定を結びました。  「『モンベルストア』が出店されるのは県内初で、近隣のキャンプ場との連携や登山客が多い会津地方などとも連携しながらつくり上げていきたいと思います。モンベルストアに訪れた方を町内の観光地などに誘導できるようにしたい。通年観光で神社仏閣などを歩いて回ってもらう取り組みに加え、ダム湖であるさくら湖の観光面でも、カヌー発着場の建設が行われています。そういった今までになかったスポーツが楽しめるようになるので期待しています。また、これを機に町民に向けて健康寿命延伸の観点から、町民に歩くことを推奨していきたいと思っています。今後は体力などに応じたコースなどの作成をモンベルと連携できればと考えています」  ――昨年、「滝桜」の天然記念物指定から100周年を迎えました。  「今年の来場者は12万8000人とコロナ前に比べ3割ほど増加しました。まだ5類指定前でしたが、売店も従来通り再開し、飲食の制限もありませんでしたので、その分増えたと見ています。ただ例年より開花が早すぎてバスツアーの来場者がほとんどいなかったのは残念でした」  ――そのほか、今後の重点施策について。  「河川改修が完了し、災害対策はほぼ終えています。ただ、ゲリラ豪雨など予測不可能な災害が多いのが実情で、町内にはアメダスと呼ばれる測定施設がないので町独自で整備しています。また、土砂崩れの危険を回避する傾斜測定を整備していきたいと考えています。そのほか、これからの超高齢化、人口減少の時代を迎えるに当たり、いまのうちに対策を行い、住環境整備やデジタル化によって、対策を講じることが必要になってきます。それらを2期目の任期中に進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負。  「様々な政策を行って町民の方と接する中で、町民の方々が安心・安全に生活できる環境を、もっともっとつくっていきたいと感じています。コロナが5類になり、様々な行事で見た町民は皆笑顔でまさしく楽しそうでした。行事など行政が何らかの形で関わっていくと思うので、町民の皆さんが機嫌よく暮らしていただけるような町にしていきたいと思います。そのためにも基本を守り、行政に当たっていきたいと思います」

  • 【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    すぎおか・まこと 1976年生まれ。日大理工学部卒。東京工業大大学院理工学研究科博士前期課程修了。飯舘村農政第一係長などを経て2020年月10月の村長選で初当選。 ここに住んでよかったと思う村を目指して。  ――帰還困難区域のうち、5月には長泥地区の特定復興再生拠点区域と拠点区域外の一部である長泥曲田公園の避難指示が解除されましたが、解除された地区について今後どのような取り組みを進めていく考えですか。  「避難指示解除はあくまで地区の再生・発展のための手段ですので、雇用の創出など優先すべきもの、実施できるものから実現していく方針です。現在、資源活用型堆肥製造施設を整備中ですが、同施設がその役割を果たすと思います。また、残る帰還困難区域についても、早期の避難指示解除を目指します」  ――ドラッグストアのハシドラッグと公設民営による出店を目指す他、セブンイレブンの移動販売が始まり、買い物環境の充実が進んでいます。住民の生活環境や利便性向上に向け取り組んでいる事業を教えてください。  「昨年度から村に移住していただいた医師の本田徹先生による訪問診療が浸透してきています。10月から福島交通が運行する路線バス『福島~医大経由南相馬』の運行ルートに飯舘村役場停留所が加わりました。今後も住民のみなさんや村に訪問される方の利便性向上のための事業を進めていきます」  ――休校中の相馬農業高校飯舘校周辺に産業団地を整備する方針を打ち出しました。今後の展望を教えてください。  「整備予定地として、インフラが存在し、整備が容易な村の中心となる場所、アクセスしやすく人が集まりやすい場所、村の産業特性を踏まえ産業集積の拠点となりうる場所を重視しました。令和4年度に実施した候補地調査により予定地としました。村の担い手を育成してきた場所ですので、そのような思いを込めて産業集積を進めたいです」  ――子育て支援や移住・定住に向けた取り組みについて伺います。  「移住については、福島県12市町村移住支援金、ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金の他、村単独での支援制度もあります。令和4年度から引き続き、移住サポートセンターを設置し、状況に応じた制度をご案内しています。  子育て応援策として、今年度から赤ちゃん誕生祝金や、小学校、中学校、高校の入学等準備費用の助成として子育て応援支援金を整備しました。また、不妊治療を受ける夫婦を対象に不妊治療費助成も進めています。  さらに、学んで村に帰ってきた方、移住した方が村内の企業に勤める際には奨学金の返還免除や奨学金返還支援事業補助金制度も整備しました。様々な方が住みやすく、帰って良かった、移住して良かったと実感する、選ばれる村を目指します」

  • 【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    かとう・こういち 1952年生まれ。岩瀬農業高卒。JAしらかわ理事などを歴任し、2004年から村議2期。2010年9月の村長選で初当選。昨年9月の村長選で4選を果たす。 ひと・くらし・しごとを基本理念に施策を実施。  ――新型コロナウイルスの5類移行の影響について。  「5類移行後は各地区の行事が再開されるなど、コロナ禍前の日常に戻りつつあります。また、中断していた中学3年生のマレーシアへの修学旅行も4年ぶりに再開され、生徒各自が感染対策を徹底したおかげで無事に帰ってくることができ、それぞれにとって素晴らしい経験になったのではないかと思います」  ――役場庁舎改築の進捗状況について。  「新築工事・改築工事共に順調に進んでおり、新南棟庁舎が完成し、5月29日から供用開始となりました。以前の庁舎よりも利便性が向上し、村民の方々からの評判も上々です。現在は旧庁舎の改築を進めており、来年1月中旬の竣工を予定しています」  ――移住・定住促進の取り組みについて。  「今年度は移住・定住パンフレットを作成し、村の分譲地販売と併せてPRを行っているほか、関東圏でのイベントにも参加しています。ほかにも、若い世代に向け、移住・定住支援事業や結婚新生活支援事業について周知していきたいと考えており、条件によっては村から補助金が交付されるので、そうした部分でも魅力ある住環境をアピールしていきます。本村は全国に先駆けて保育所・幼稚園の保育料完全無料化、小・中学校の給食費全額無料化を実施しているので、充実した子育て支援の面でもアピールしていく考えです」  ――4月に第6次総合振興計画を策定しました。  「『みんなが輝らめく 豊かな なかじまむら』を将来像に掲げ、ひと(社会)・くらし(環境)・しごと(経済)3つの基本理念に基づく施策を実施していきます。赤ちゃんから高齢者まで、誰一人取り残さない、全ての人がいきいきと生活を送ることができ、輝く笑顔あふれる村『ひと(社会)』、豊かな自然を大事にするとともに、ライフラインの整備に努め、安心して暮らすことができる環境を整える『くらし(環境)』、村内企業との連携、企業誘致、基幹産業である農業を守り、村民が豊かさを実感できる村づくり『しごと(経済)』を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「公共事業長寿命化計画等に基づき、中学校や公営住宅、農道などの長寿命化を図っていくほか、災害対策として、ため池浚渫や雨水を阿武隈川に排水する排水ポンプ設置工事を進めています。ほかにも、中島村健康づくり交流センター輝らフィットを活用した健康づくり、介護予防の充実、地域おこし協力隊の活用などを含めた新規就農者支援の体制づくりを進めていく考えです」

  • 【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    しおた・きんじろう 1947年生まれ。学法石川高校、亜細亜大学中退。石川町議2期、県議4期を歴任し、2018年9月の町長選で初当選。現在2期目。 若者に留まってもらうための施策に取り組む。  ――2期目がスタートして1年経ちました。現在の率直なご感想は。  「どこの町村も同様ですが、人口減少と少子高齢化に危機感を持っています。これからの町を担っていく若者にどう留まってもらうか、活力をどう高めていくか、そこに注力した政策づくりをしていかなければいけないと感じています」  ――道の駅整備計画の進捗状況はいかがでしょうか。  「議会から『県内では最後発の道の駅で勝負できるのか』、『赤字になったら一般財源を投入するような負の遺産にならないか』などの意見や要望を受け、これまで議論を重ねてきました。そこで導き出した答えは、設計と建設をヤマト(群馬県前橋市)、運営をTTC(静岡県熱海市)に委ねる、官民連携型の『O(維持管理・運営)+DB(設計施工一括)方式』を取り入れることでした。また、民間に委託する条件として、『地場産品を商品として売り出す』、『職員は地元で採用する』などを盛り込みました。2025年度中の開業を目指しており、来年度着工の予定です」  ――ドクターヘリの実績について。  「出動しないことに越したことはないのですが、昨年8月から運用を開始して25人の搬送実績となりました。その中の7人は、ドクターヘリを利用しなければ助からなかったかもしれない、と報告を受けています。町民が安心して暮らせるよう、今後も医療体制の充実に注力していきます」  ――重点事業について。  「子育て支援の一環として、産婦人科・小児科関連の相談をオンラインで受け付けるサービスを4月から開始しました。産婦人科医や小児科医、助産師が妊娠中の悩みや出産のこと、産後の心身の健康、子育ての悩み相談などに応じています。  もう一つは、町立認定こども園の開設について、来年度内を目標として進めています。将来の町を担っていく子どもたちが健康で元気に暮らせるようにしていきます。 先ほど申し上げたように、いずれも若者に留まってもらうための施策となります」  ――今後の抱負を。  「毎回繰り返してお伝えしていることですが、『聞く力』、『交渉する力』、『発信する力』の3つに注力して、町政運営していきます。限られた予算の中で何ができるかを精査し、ある程度絞って目標を定めていくことが重要だと思っています。町民が何を求めているか『聞き』、財源を確保すために『交渉』し、温泉、桜、鉱物、自由民権運動の発祥の地など町の魅力を『発信』していきます」

  • 【新地町】大堀武町長インタビュー

    【新地町】大堀武町長インタビュー

    おおほり・たけし 1951年生まれ。東北学院大学卒。陸上自衛隊で勤務後、新地町役場に入庁し、総務課長などを歴任。2018年の町長選で初当選。現在2期目。 町民の安全・安心に直結する事業を優先していく。  ――8月24日から福島第一原発に溜まるALPS処理水の海洋放出が始まりました。  「海洋放出についてはまだまだ課題も多く、我々は政府や専門家のような知見を持ち合わせていないので、互いに納得のいく形で進めていくことは困難を伴うと見ています。  8月21日、岸田文雄首相が全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと面会した際、『今後数十年の長期に渡ろうとも、全責任を持って対応することをお約束する』と話していました。国としても重い判断のもと海洋放出を実施したと思うので、本町としては県や関係自治体と連携しながら、安全かつ確実に実施されることを願い、推移を見守っていく所存です。放出によって生じる風評被害対策の実施と情報発信を行っていただき、国民だけでなく海外の方への理解醸成を図っていただきたいと考えています」  ――町第6次振興計画の進捗状況は。  「策定後の令和3年2月、翌4年3月に発生した福島県沖地震の対応もあって当初の予定より遅れているのは否めません。3年間の行動計画で、できるだけ軌道修正を図りながら実施していこうと考えています」  ――地域の魅力向上への取り組みとして「アートの町『新地』創造・アートの魅力発信事業」が展開されています。  「画家・志賀一男さんをはじめ、本町出身のアーティストが目覚ましい活躍を見せています。本町出身の画家・坂元郁夫さんからご提案いただいたこともあり、JR新地駅前に整備された町文化交流センターにおいて、絵画に焦点を当てたアートイベントを実施していく考えです。できるだけ多くの皆さまに見ていただき、心を豊かにしていただければと考えています。来年の町村合併70周年に合わせたプレイベントの意味合いもあり、反響次第では来年、より規模を大きくして実施する考えです」  ――今後の重点事業について。  「頻発する自然災害への対応は非常に重要な課題です。町民の安全・安心に直結する事業を優先していきます。今年度は高齢者の見守り事業を開始し、各地区に予算を出して、地域の団体の方々と協力して取り組んでいます。県には砂子田川と谷地田川の水害対策、駒ケ嶺地区の浸水対策を要望しており、老朽化が進む海抜0㍍地区の湛水防除施設に関しても、調整しながら年次計画で更新を進めています。  商業用地への食品スーパー誘致も課題であり、買い物環境の整備も進めていきます。併せて県立相馬総合高校新地校舎の利活用の協議も進めていきます」

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー2023.11

    【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

    さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「もともと人手不足が深刻な課題で、コロナ前はベトナムやミャンマーから外国人技能実習生を募り、資格を取ってもらうことで在留期間が3年から5年に延びるので、それを活用して人員確保に繋げようとしていました。その矢先にコロナの感染拡大だったので、この間完全に頓挫していました。とはいえ、外国人の方を呼び込んでも基本的には都市部の方に行く場合が多く、地方ではまだまだ外国人の方を迎え入れる動きが少ないというのも現状です。ビルメンテナンス業界でも機械化による業務効率化の動きはあるにせよ、まだまだマンパワーで動かなければならない場面が多いので、やはり人員の確保は大きな課題と言えます」  ――全国ビルメンテナンス協会では「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推奨しています。  「昨年10月頃からパートナーシップ構築宣言が出され、業務内容に見合った適正な金額で契約を結べるようにパートナーシップを締結し、発注者も請負業者も健全な関係を築こうというのが主な狙いです。県ビルメンテナンス協会としての本格的な取り組みとしてはこれからですが、労働環境や待遇改善といった部分に大きく関わってくるので、今後腰を据えて取り組んでいく考えです」  ――人材不足が叫ばれる中で、業務品質の維持は大きな課題とも言えます。  「コロナ禍では通常業務に加え除菌業務も併せて実施し、その意味ではコロナ禍以前よりも高い品質で業務を実施できたのではないかと見ています。しかし、それを踏まえた契約の仕様変更がなかなかうまくいかず、業務量が増えているのに対価は以前と同じという状況が発生しており、こうした部分も先述した待遇改善の話に絡んできます。特に官公庁関連では入札という形式を採っているので、価格競争が起きて安い方へと流れてしまう傾向があります。競争が起こるのは仕方ないにしても、『これより下がってはいけないライン』をもっと上げていただく必要があり、10月には最低賃金の更新があるので、それを見込んだ予算の増額を官公庁に要望しています。また、品確法の基本理念の1つとして、完成後の公共施設の適切な維持管理の重要性が明記され、関連する指針やガイドラインにより契約金額の変更が認められており、そうした部分からも働きかけたいと考えています」  ――今後の重点事業について。  「建物清掃管理評価資格者、通称インスペクターの資格を会員企業の中で最低1名ずつ取っていただき、維持管理業務の品質向上に努めるほか、エコチューニングの推進による建物の設備機器の運用改善、そして県内支援学校での技術指導の実施により、支援学校の生徒が卒業後にビルメンテナンス業界に入り、社会へと参画できるような道筋を作っていきたいと考えています」

  • 【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    おおうち・ひろゆき 1956年8月生まれ。高崎経済大卒。第一温調工業㈱社長。一般社団法人福島県空調衛生工事業協会副会長を経て、2020年5月から現職。 持続可能な社会・業界を目指す  ――福島県空調衛生工事業協会の概要についてうかがいます。  「当協会は、1983年10月28日、高度化する近代設備に対応できる技術・技能の研鑽と経営体質の強化を図り、管工事業界の社会的経済的地位の向上と公共の福祉の増進を図ることを目的として設立されました。現在の会員事業所数は49社で、建物の空調設備工事、給排水衛生設備工事を行っている県内業者で構成されています。  事業内容は、建築設備工事にかかる業務遂行上の諸問題を研究するとともに、技術力水準・生産性向上を目的とした特別技術講習会をはじめ、会員事業所における経営体質の強化を図るため、経営改善研修会をそれぞれ年1回実施しています。  また、会員事業所の労働安全衛生と技術力の向上を図るため、当協会、福島県電設業協会、福島県設備設計事務所協会で構成される『総合設備協会』の会員事業所が参加し安全大会、技術研修会を年1回実施しています。そのほか、国・県・県議会への要望活動や県との意見交換会等も行っています」  ――業界を取り巻く環境と今後の課題についてうかがいます。  「2024年4月から建設業でも『働き方改革』がスタートします。主な改革は法規制による労働時間の制限ですが、建築設備工事の工程は、建築工事、電気設備工事と連携しながら進めるため、自社のみで働き方改革ができないのが実態であり、施主、他工種の理解・協力を得ながら、実施していく必要があります」  ――今年度の重点事業についてうかがいます。  「若手技術者の技術力向上のため、重点目標事業の1つとして『空調衛生等設備工事の技術力向上に関する事業』があります。今年度は、特別技術講習会において建設現場における火災防止のための新工法について実機を使用した研修、地球温暖化防止対策としてのカーボンニュートラルに関連した取り組みや今後の動向を踏まえた研修を実施しました。  また、持続可能な開発目標『SDGs』の達成に向けた取り組みが社会的に求められる中、当協会でも社会的使命の観点から『ふくしまSDGsプラットフォーム』の会員として参画しています。今年度の経営改善研修会では、『持続可能な世界を築くために』と題して本県関係者による講義や、同プラットフォームの会員となっている当協会会員事業所の取り組みや現況を紹介しながらSDGsの理解を深めています」    ――今後の抱負について。  「国や県では『2050カーボンニュートラル宣言』を打ち出すなど、地球温暖化防止は喫緊の課題と認識しています。われわれは、空調設備、給排水衛生設備において、より効率性の高い機器や供給方式の提案に努めていきます。  また、少子高齢化に伴い担い手の確保が厳しい状況となっていますが、若年層の入職促進・定着、従業員の雇用維持に向けて、安心して働き続けることができる魅力ある空調給排水衛生工事業界にすることが重要と考えています」

  • 【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大学卒。1990年に県庁入庁。県土木部道路管理課長、道路計画課長を経て、2022年度から現職。 災害復旧、防災、道路整備に全力  ――台風13号による「線状降水帯」の影響で、いわき市内の至る所で浸水するなど甚大な被害が発生しました。管内の被害状況について。  「市内全域の河川流域で緊急安全確保(警戒レベル5)が発令され、人的被害や多数の床上・床下浸水が発生しました。当事務所管内では、10の河川で越水が確認され、一部の河川施設では護岸が崩落するなどの被害が発生しました。10月19日時点で公共土木施設の被害数及び被害額はいわき市を含め、河川69件、砂防設備11件、道路26件、橋梁1件 合計107件27億8200万円となっています」  ――今後の復旧の見通しについて。  「まず越水した河川では、河床に堆積した土砂等を速やかに除去し、治水機能の回復を図ります。被災した道路・河川等の土木施設については、速やかに調査・設計を実施しており、早期の工事着手により復旧に努めます。河川からの越水等により浸水被害が発生した地域については、線状降水帯の大雨による被災メカニズムを解析し、再度の災害を防止する対策について検討していきます」  ――防災対策事業に注力してきましたが、進捗状況は。  「頻発化・激甚化する自然災害から、住民の生命、暮らし、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策に計画的に取り組んでおり、今回の大雨でも一定の効果が確認できました。今年度は水災害対策として、河川の治水安全度の向上を図るための河道掘削や伐木、堤防強化、土砂災害防止対策のための砂防・急傾斜事業、道路の安全度を高める落石対策等を実施しており、引き続き防災対策事業を加速していきます。また、流域全体で水害を軽減させる『流域治水』についても、あらゆる関係者と連携・協力しながら効率的な対策を実施し、中小河川も含め災害に強い安全・安心な基盤づくりを推進していきます」  ――小名浜道路をはじめとする道路事業の進捗状況について。  「いわき市泉町から同市山田町に至る全長8・3㌔、4箇所のインターチェンジ(以下、IC)を有する無料の自動車専用道路で、『ふくしま復興再生道路』に位置付けられています。『小名浜港』と『常磐自動車道』を結び、小名浜港や周辺地域の産業・観光の拠点化を支援するために整備されます。常磐道から小名浜港までのアクセス時間が約15分短縮され、速達性の向上や定時性の確保等が期待されています。  現在9地区すべてで工事が進められており、高度な技術を要す区間は、本県から東日本高速道路㈱(以下、NEXCO東日本)へ委託し、工事を実施しています。8月には、NEXCO東日本により常磐道の上を跨ぐ本線部橋梁上部工が架設されるなど、着実に事業が進展しています。また、中通りへのアクセス機能向上を図るため、主要地方道いわき上三坂小野線の(仮称)山田IC(=小名浜道路の終点)から遠野町方面に至る約3・5㌔区間についても、道路改良工事を計画的に実施しており、引き続き信頼性の高い広域ネットワークの確保に取り組んでいきます」

  • 【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

    【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

     あさくら・つうえもん 1975年に二本松信用金庫に入庫。常務理事、専務理事を経て、今年6月から同信金初のプロパー理事長に。  ――6月に開催された総代会・理事会で理事長に選出されました。  「歴代理事長は地元有力者や監督官庁といった外部から選出され、私が初めての生え抜き理事長になります。また、今年で創立75周年という記念すべき年に8代目理事長に就任しました。常務や専務などを経験し、前理事長の下で仕事をしてきましたが、理事長はいままでの立場とは全く違うものだと実感しています。  当信金は14期連続で黒字決算を続けており、前会長や現会長が健全な経営を継続してきた成果だと思います。これをしっかりと継続していくことが私に課せられた経営課題であり、地域の皆様や利用されるお客様の信用・信頼につながると思っています」  ――新型コロナウイルスが5類に移行され、経済活動も正常化しつつある一方で、原材料費・燃料費高騰や人材不足の影響が続いています。  「5類移行により、飲食店等も回復しつつありますが、コロナ前の水準にはあと1歩というところだと思います。また、原材料費・燃料費高騰により、製造業や建設業で大きな影響を受けているところは少ないものの、今後については原材料高騰分を製品に価格転嫁しなければならないなど、不安視する事業所が多いのが現状です。当金庫では3カ月に1度、景気動向調査を行っていますが、今後を見据えると物価がさらに上がることは間違いありません。消費者がそれを理解するには時間がかかると思います。  人材不足については、将来的な展望がもう少し開けなければ人件費を上げるのも簡単ではありません。ただ、賃上げについて調査したところ半数ほどの企業が何らかの形で賃上げを行いたいと回答しています。  様々な課題はありますが、暗い話ばかりではなく明るい話題もあります。地域の企業が良くなれば、我々もおのずと良くなると思います。そういった好循環を生み出すきっかけづくりを様々な形で行っていきたいと思います」  ――「まつしんビジネスサポートクラブ」の活動状況について。  「『まつしんビジネスサポートクラブ』は1998年に設立し、管内の若手経営者や事業継承者を対象に勉強会や講演会を行っています。最近ではIT導入や事業後継問題、人材育成、異業種交流も活発に行われています。以前はISO取得を目指す事業所が多かったですが、最近はSDGsが重要になってきましたから、そのためのサポートも行っていきたいと思っています。  また、サポート事業とは別に、商工会議所からの依頼で、海外進出に向けての勉強会も行っていきたいと考えています。そういった支援活動を行うことで、地域企業の底上げにつなげていきたいと思います」  ――10月にはインボイス制度がスタートします。  「4月に取引企業を対象に行った調査では、85%が対応を終えており大きな心配はしていません。今後は帳票関係書類の電子化が課題になりますが、そういったサポートも行い、本業に集中して取り組んでいただけるよう支援していきたいですね」  ――今後の抱負。  「当信金では『お客様』『地域社会』『信用金庫』の三位一体の経営というのが創業当時から経営方針ですが、これらが皆良くならないと全体的な底上げにはなりません。そういった考えのもと、そのためのお手伝いをしていきたいと思います。  また、狭い管内で営業をしていますので、不採算店舗があったとしても、大手金融機関のように閉鎖するのではなく、地域の方が不便を感じないように店舗を維持していきたい。加えて、地域の行事等に積極的に参加するため、ボランティア休暇を設けるなど、地域とのつながりを大事にしていきたいと思います」

  • 【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

    【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

     ほそや・みのる 1953年生まれ。独協大学経済学部卒。㈱日本ビューホテル成田ビューホテル勤務後、父が開園したみその幼稚園(福島市)の事務長を経て理事長・園長を務める。今年6月から現職。  ――今年6月12日に開催された福島県私立幼稚園・認定こども園連合会の総会で理事長に選任されました。この間を振り返っての率直な感想をお聞かせください。  「重責を担う立場だと痛感していますが、就任したからには平栗裕治前理事長の実績をしっかり継承しつつ、さらなる福島県の幼児教育振興のため職責を全うしていきたいと思います」  ――少子化が急速に進んでおり、幼児教育を担う私立幼稚園・認定こども園連合会の会員にとっては大きな課題だと思います。現状をどのように捉えていますか。また、連合会として取り組むべきことはどんなことだと考えていますか。  「少子化対策と、幼児教育の質の維持向上は一心同体で考えるべきだと思っています。少子化だからこそ、質の高い人間づくりが求められます。特に幼稚園や認定こども園は人格形成の基礎である最も大切な根っこの教育の場であり、ある意味で善き日本人のDNAづくりの最後の砦であると考えます。  そして、到来する不透明な時代を生き抜く力を子ども達に備えさせるという意味では、大学教育に勝る教育と言えます。これらのことを踏まえながら、連合会としては実現可能な少子化対策と幼児教育支援充実を県に対し要望していきたいと思います」  ――幼稚園の教員不足も深刻な課題になっています。  「教員不足対策はもちろん重大な課題ですが、幼児教育に限らず、教育の質を向上させるためには教員の質を高めなければなりません。官民連携で、どうしたら質の高い人材を育成できるのか、そこをもう一度考え直してみなければなりません」  ――連合会として、今後どのような取り組みを進めていきますか。  「10月に東北6県の幼稚園・認定こども園の教職員約800人が集まり、郡山市で教員研修大会が開催されます。教員の質の向上に寄与する研修会にするため、郡山地区の園が中心となり準備を進めており、充実した内容にしたいと思っています。 また、県内には本連合会に加盟していない園もあるため、加盟拡大にも力を注ぎ組織力を強化することで要望等の実現に繋げたいと思っています。さらには各園の後継者育成にも取り組んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「名称の通り、本連合会には幼稚園と認定こども園が加盟しているため、振興対策も別々に立案しなければなりません。そのため本会は各窓口との情報収集・交換をはじめ、積極的に県内でのアンケート調査等を実施し、そのエビデンスに基づく振興対策を国・県に求めていきます」

  • 【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

    【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

     そうだ・まさゆき 1951生まれ。日本大学工学部卒。2007年に鮫川村議会議員になり、2015年4月から2023年3月まで副議長、同年4月から8月まで議長を務めた。8月27日投票の村長選で初当選を果たす。  ――8月に行われた村長選で初当選を果たしました。  「村の課題は山積しています。全国的に人口減少が叫ばれていますが、特に当村の場合は多くの若者が村外に流出している状況にあります。人口減少によって農業の後継者不足や中心地域の空洞化も進んでいる状態です。これらに対する対応・対策を考えた際に的確な判断の難しさや責任の重さを十分感じています。だからこそ、村民目線で住民の気持ちを優先的に考えて対応策を検討していきたいと思っています」  ――選挙では給食費無償化等の子育て支援策を打ち出していました。  「給食費無償化は、国が今年3月に少子化対策として実態調査を行うことを打ち出しましたが、本村は令和元年度から2分の1の支援を行ってきました。さらなる子育て世代の財政支援の拡充を図るため、まず給食費の無償化を進めていきたいと思っています。また、今は核家族や共働きが進み、放課後児童クラブに預ける家庭が多いのが実情で、クラブの改善は重要だと思っています。現在は預ける際は有料となっていますが、これも無料化にすることで子育て支援の拡充を図っていきたいと思います。本村は近隣町村と比較しても利便性が低い現状にあります。給食費に限らず、例えば通学の際の交通費補助等の再検討を含めて教育費に係る財政的な支援は重要だと思います。今は村外に通学する高校生に対して、1万円の交通費の補助を行っていますが、燃料費等の高騰が進んでおり、子育て世代では困窮している家庭も多いのが実情だと思います。それに対しても、もう少し何らかの支援を検討していきたいと考えています。  また、学力を上げることで将来の職業の選択肢も広がるなど、学力向上は将来の村の未来像を見据える上でも重要です。秋田県は学力向上に力を入れており、特に東成瀬村は『学力日本一の村』として全国に先駆けて学校教育に力を入れてきました。東成瀬村は当村より規模も小さく、学力支援は自治体の規模に関係ないことが証明されており、本村でも力を入れて進めていきたいと思います。本村には学習塾がなく時間をかけて村外の学習塾に通う児童・生徒も少なくありません。そこで小・中学生、とりわけ中学生向けの学習支援も進めていきたいと思います。教員の指導能力向上はもちろん、専門の教員を呼び、村で学習支援を行うことで学習塾に通う必要がなくなると思います。学習塾と提携している自治体もあり、そういった政策をどんどん取り入れていきたいと思っています。 こうした支援を進めることによって教育に関心のある若者が村内に留まったり、他町村からもそういった政策に惹かれて移住する子育て世代の需要もあると考えています」 日本一の村づくりを目指す  ――産業振興も重要です。  「新たな企業誘致は難しいのが現状です。そこで私は村の宝物だと思っている自然景観を産業振興につなげていきたいと思います。例えば、村内にある湯ノ田温泉は以前は東京都の上野駅に看板が掲げられるなど全国的に有名な温泉です。温泉だけでなく近隣にある強滝は岩と水の造形美も素晴らしく、川沿いの遊歩道は『ふくしま遊歩道50選』にも選ばれています。特に紅葉シーズンは毎年多くの観光客とカメラマンが訪れます。こういった景勝地をさらに増やしPRしていきたい。どんな遠いところでも美味しいものと、自然景観の豊かなところがあれば人は集まります。そういった政策を行うことで交流人口拡充を図りたい。それが村の活性化につながると思います。  村では以前から『まめで達者な村づくり』を進めてきました。これは60歳以上の高齢者などに大豆等の栽培をお願いすることで特産品開発を行うものです。高齢者が一生懸命に汗を流してつくった農産物が循環すれば、生産者である高齢者の健康づくりにつながりますから、あらためて仕掛けづくりを進めていきたいと思っています。商品も納豆や豆腐だけでなく、新たな開発を進めていきたいと思います。村内だけでなく東京農業大学といった外部の意見も頂戴しながら検討していきたいと思っています」  ――手まめ館は今後どういった施設にしていきたいでしょうか。  「私自身、村長就任前は村議を務めながらガソリンスタンドや整備工場を経営してきました。そういった意味で商売の経験は少しあると思っています。もっとも、私自身は工学部の土木学科を卒業しましたので、全く違う業界に入りました。勉強のため最初に行った研修は仙台駅の多くの人が通る一画で『おはようございます』『こんにちは』『ありがとうございます』といった挨拶を繰り返し行いました。最初は嫌でしたが、そういった経験を通して自分自身の自信につながりました。  それを踏まえ、まずは人づくりを進めていきたい。他企業に依頼するなどして人材指導のスペシャリストを招き、勉強会などを通したスキルアップも進めていきたいと思います。今年行われたWBCで監督を務めた栗山英樹さんの著書『育てる力』を読むと、資本主義の父と言われる渋沢栄一さんの講演をまとめた『論語と算盤』を参考に人づくりを進めたそうです。『論語』は道徳であり『算盤』は商売を指しています。渋沢栄一は論語と算盤を通じて道義を伴った商売の追求を説いています。どのような商売であっても結局は『人』が重要です。そういった意味でひとづくりの重要性をあらためて実感しました。人が良くなれば自然と同じ方向を向くと思います。皆『良くしたい』という思いは同じだと思いますから、それぞれの思いをしっかり受け止めていくことが重要だと思っています。そういう意識が全体として高まれば自然とすべてが向上していくと考えています」  ――議長や村議の経験をどう生かしていきますか。  「商売をしていた経験上、自分として大事にしてきたことは村民とのキャッチボールです。村民の声を聞いて『できないことはできない』『できることはできる』という即対応を心がけてきました。また、村民目線で村民の気持ちに立って行動することは議員でも行政の長でも同じです。今後もそういった気持ちを忘れずに行政運営に当たっていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「『大義なきところに人を集まらず』というスローガンを掲げながら『日本一の村つくり』『日本一の里山つくり』を目指すこと念頭に置いて村長選に立候補しました。村民の誰もが方向性は同じだと思います。自分の住んできた村に愛着を持ちながら最高の村づくりを進めていきたいと思います」

  • 【原町商工会議所】高橋隆助会頭インタビュー(2023.12)

     たかはし・りゅうすけ 1951年生まれ。原町高、拓殖大卒。㈱高良代表取締役。原町商工会議所副会頭を経て2010年11月から現職。現在5期目。  原町商工会議所の高橋隆助会頭は昨年から5期目の任期に入り、この間、震災・原発事故や新型コロナウイルス感染症の拡大など、厳しい環境下で、舵取り役を担ってきた。高橋会頭にコロナ5類以降の管内の経済状況や、地域の課題、今年度の重点事業、今後の抱負などについてインタビューを行った。 事業者が安心して事業できる環境を整備する  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行しました。  「5類移行により、状況は変わりつつあります。移動制限がなく、会議やセミナーなどはリアル開催になりました。親睦会などもこれまで通りの開催となり、飲食店も賑わいを取り戻しています。これからはビヨンドコロナをどのように行動していくかがカギになってくると思います。例えば、コロナ禍で営業自粛を余儀なくされた事業所に勤務していた方々が離職し、現在も前職復帰が進まない事例があります。また、オンライン会議をはじめ、加速度的に発展したIT、IOT、AIなどは今後さらなる発展が予測されます。大きく様変わりをした環境に対応していくことも急務だと思います」  ――円安や物価高が深刻になっています。  「8月に会員に実施した管内景気調査によると、約半数の事業者が『業績が悪化している』と回答しており、その理由に『仕入れ価格の動向』が最も多く挙げられています。経営上の問題としては全業種で『売り上げの停滞・減少』が挙げられ、製造業・サービス業では『価格転嫁できていない』、商業・建設業では『人材不足』の割合が高くなっています。物価高が経営を圧迫する中、『適正な価格転嫁』と『人材の確保』が今後の経営上の取り組みとして大変重要だと捉えています」  ――10月に「第4回ロボテス縁日 ロボット・ドローン大集合」が行われました。  「国家プロジェクトである『福島イノベーション・コースト構想』の認知度向上を軸に、南相馬市や県内外でロボット・ドローンの開発に取り組む企業・団体・大学等が研究と開発の成果を広く発表し、県民の皆様に親しんでいただける機会として開催されています。4回目の開催となった今年は、浪江町に設立された『福島国際研究教育機構(F―REI)』と『福島水素エネルギー研究フィールド』を紹介するコーナーを新たに設け、浜通り広域に渡って『復興』を感じ取ることができる内容としました。日本のロボット・ドローン産業の拠点として『福島ロボットテストフィールド』の知名度を向上させ、それがまた新たな産業を生み出す『種』となり復興の好循環へとつながることを祈念しています」  ――「相馬野馬追」が5月に変更する素案が決まりましたが、どう捉えていますか。  「かつてこの地域では『暮・正月』『お盆』『相馬野馬追』の3つの行事が生活や仕事の大きな節目となっていました。経済界も同様でこの3つの行事前に『納品』『集金』『支払い』などの商慣習を区切りとして行っていたこともありました。時代の変化と共にその慣習も見られなくなってきましたが、『相馬野馬追』はこの地域にとって生活慣習などにも影響する大切な行事です。その開催時期が変更されることは、近年の猛暑の影響もあり多くの人が賛成するところですが、地域行事・イベントをはじめ多くの生活や仕事のスケジュールが変わっていくことになろうと思います。例えば出場する騎馬武者は準備が2カ月前倒しになり、自分の準備や馬の調教もずれ込んできます。相馬野馬追に付随する行事もずれ込みますが、その半面6月、7月には仕事や事業に集中できるようになります。このように多くの物事が変わっていきます。今後は市役所を筆頭に全市で検討を重ねていく必要があると思います。商工会議所もしっかりと協力していきたいと考えています」  ――今年度の重点事業についてお聞かせください。  「今年度は次の3点を基本方針に取り組んでいます。1つ目が東日本大震災及び原発事故からの復旧・復興です。国の『第2期・復興創生期間』が残り3年度となる本年は、商工業者同士がつながりを持てる地域経済環境の整備を図りたいと思います。  2つ目は相談業務及び事業所支援の充実です。地域の商工業者に対して、伴走型支援を実施すると同時に個々では解決が困難な問題に対し、会員の意見を集約して建議活動を行っていきます。  3つ目は関係機関との連携強化です。複雑かつ多様化する問題に対して、日本商工会議所をはじめとした関係機関と連携して対処していきたいと考えています。  特に地域経済環境の整備は重要であると捉えており、福島イノベーション・コースト構想を活用して産業交流を促進するため、進出企業と当会議所役員・議員との交流会を実験的に開催しました。引き続き地域資源を活用した産業交流を促進し、新たな取引増加につながる事業を検討していきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「10月から開始したインボイス制度について、十分な理解が進んでいるとは言い難い背景から、中小企業者等への負担軽減措置が必要だと考えています。当会議所においても昨年からセミナーの開催、小冊子の配布、窓口での重点的な相談等を実施していますが、特に小規模事業者への支援を継続していきたいと思います。本制度は単に新たな制度の導入という概念に留まらず、事業者の取引そのものに影響を与えるもので、すでに一部の軽減措置は取られていますが、理解が完全に醸成されるまでは引き続き負担軽減措置をお願いしたいと思います。  また、ロシアのウクライナ侵攻や中東問題等、事業所を取り巻く地政学的環境はこの数年で急激に悪化しました。事業者にとって地政学リスクを踏まえた視点は不可欠となっていますが、自助できることには限りがありますので、国の積極的な関与や支援策の実施により、安定的な経営ができる環境整備を期待します。  加えて、ALPS処理水放出に伴う風評被害への対策や障害が生じた場合の適正な賠償、中間貯蔵施設の除去土壌の最終処分、1日も早い廃炉の実現など、原発事故に関する問題への対応もしっかり行っていただきたいと思います」  ――今後の抱負。  「地政学リスクへの対応、地域資源としてのイノベ構想の利活用、労働力不足、廃炉など、地域の商工業者が抱える問題は山積しています。また、人口減少社会の中での販路拡大や事業承継問題にも継続して取り組む必要があります。会議所としては、事業者が安心して事業を継続できる環境を整備するため、役職員全員で事業に取り組んでいきたいと思います」

  • 【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

    えんどう・じゅんいち 1955年生まれ。高湯温泉吾妻屋社長。2015年から福島県温泉協会会長を務める。  ――温泉協会の活動と役割についてお聞かせください。  「名前の通り、福島県内の温泉に関わる旅館を中心とした組織で、会員数が130軒前後の任意団体です。法人団体ではありませんが、日本温泉協会とのつながりや県の薬務行政として温泉審議会に携わるなど、行政とのパイプ役として活動しています。加えて、会員の皆様に向けて温泉に関する勉強会を開催して知識向上に努めたり、各温泉地だけでは難しい取り組みを協会を通じて全県下でやっていったりと、多角的な役割を担っている組織と言えます」  ――コロナの法的位置付けが5類に移行され、9月からは観光キャンペーンが実施されています。  「昨年は全国旅行支援などの補助金制度がありましたが、5類移行に伴ってそれもなくなり、ある意味では今年からが勝負の年になっていくと言えます。温泉協会の会員の強みは、どこの施設も温泉を持っていることです。ある旅行会社が実施した『コロナ禍が明けたら何をしたいですか』というアンケートでは、『温泉に行きたい』という回答が最多でした。我々としても、そうした方々に来ていただけるよう温泉を最大限に活用していく考えです。実際、県の観光キャンペーンの影響もあってか、各地のお客様の入り込みは増えています」  ――高湯温泉と土湯温泉では、脱炭素化に向けた取り組みが進められており、持続可能な観光地づくりに取り組む国立公園内の地域を登録する環境省の「ゼロカーボンパーク」制度で、東北初の登録を受けました。  「都市部の温泉地にも脱炭素化への意識は芽生えつつあり、今回の『ゼロカーボンパーク』の登録によってその流れが大きく波及していくものと見ています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)や日本温泉協会が中心となり、脱炭素化を目指す動きが広まっていますが、今回の東北初の登録は脱炭素化への取り組みを周知する良いきっかけとなり、今後、高湯・土湯両地域合同で、どのような取り組みを進めていくのか協議していく考えです。  現状の取り組みとしては、土湯温泉では再生可能エネルギーの一つである温泉熱を利用したバイナリー発電施設の整備が進められており、高湯温泉は源泉かけ流しという形をとり自然の地形を生かして引くことを実施しています」  ――今後について。  「国内のインバウンドが増えている一方で、福島県への来客者数は決して多いとは言えません。その原因としては原発事故の影響が未だにあります。その点は国や県に正確な情報発信をお願いしたいですし、温泉地まで足を運ばずとも、国内の関係人口を増やすため行政に要望や提言していく予定です。  また、日本温泉協会で日本固有の温泉文化をユネスコの世界文化遺産に登録しようという動きが群馬県の山本一太知事を中心に展開されており、県温泉協会としても協力していく考えです。登録によって県内インバウンドの増加につながるものと見ています。  このほか、再生可能エネルギー事業において、福島県は原発事故の風評被害等、他県とは異なる状況にあることを考慮のうえ、福島県独自の再生可能エネルギー事業のガイドラインを作成し、温泉関係者や観光等に関係する機関を保護していくことも重要と考えます。  温泉は有限であり無限でないことを念頭に置き、これを守るべく会員皆で協力していく考えです。温泉を好きな皆様に、いつまでもこの素晴らしいお湯を楽しんでいただけるように努力していく所存です」

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【富岡町】山本育男町長インタビュー(2023.12)

    やまもと・いくお 1958年8月生まれ。原町高、東京農業大卒。町議を連続5期務め、副議長などを歴任。2021年7月の富岡町長選で初当選を果たした。 帰還と移住促進や賑わいづくりに取り組んでいく  ――今年4月に「特定復興再生拠点区域」が避難指示解除となりました。  「11月現在で64世帯94人の方が居住しています。震災以前の夜の森地区は多くの方が住んでいた地域でした。同地区の生活環境を充実させ、にぎわいを取り戻すことが、町内の均衡ある発展、ひいては本町の真の復興につながるものと考えているので、買い物環境を備えた住民の憩いと交流の場となる温浴施設の整備を現在検討しています」  ――昨年「共生型サポートセンター」を開設しましたが、現在の状況は。  「特別養護老人ホーム『桜の園』には10月末現在、33人が入所しています。最大48人入所可能なので、運営スタッフを確保しながら、地域福祉の拠点として運営体制強化を図ってまいります。併設しているトータルサポートセンターとみおかは、高齢者等の支援に限らず、カフェやフィットネスジム、ワークショップルームなどがあり、交流の場として多くの方にご利用いただいています」  ――その他取り組んでいる重点事業は。  「1つ目は『農業と商工業の育成』です。現在、玉ネギの集出荷施設を建設中で、年度内に完了する予定です。令和2年4月に供用開始した富岡産業団地は進出企業がほぼ決定し、現在第2産業団地建設に向けて調査中です。  2つ目は『帰還と移住の促進』です。お試し住宅を利用した短期間の町内滞在や、帰還・移住関連補助金の問い合わせに丁寧に対応し、移住定住増加に繋げていきます。首都圏の親子を対象としたツアーを実施し、大変好評をいただきました。本町を訪れる人を一人でも増やすため、町の特性を生かした魅力的なイベントを積極的に企画してまいります。  3つ目は『子どもたちの環境作り』です。来年3月には放課後児童クラブが完成します。子育て世代が安心して働ける環境づくりを進め、子どもたちを大事にする町として充実を図っていきます。また、本町には現在小・中学生が71人いますが、中学校卒業後は町外の高校に進学することになります。その子どもたちが、本町に戻ってきたくなるような教育や施策を進めます」  ――今後の抱負を。  「町内には未だ避難指示が解除されていない地域があります。今後、必要となる環境整備を着実に進め、一刻も早く、1㍉でも広く避難指示の解除を実現させ、町が真に目指すところである町内全域の避難指示解除に向けて邁進していきます。また、にぎわいづくりにも力を入れ、人が人を呼び込む交流人口の拡大にも全力で取り組んでまいります」 富岡町ホームページ

  • 【浅川町】江田文男町長インタビュー(2023.12)

    えだ・ふみお 1955年生まれ。2003年から町議を4期途中まで務め、その間、副議長などを歴任。2018年10月の町長選で初当選。現在2期目。 子育て支援と福祉環境の充実を図っていく  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「徐々にコロナ禍前の賑わいが戻りつつあると感じています。『花火の里浅川ロードレース大会』は、今年は過去最高の参加者数となりました。また、『浅川の花火』も、町内外から多くの方に来場いただき、例年以上の人出となり賑わいました。このほかにも、浅川町ならではの魅力ある地域資源が多くありますので、さらなる賑わいづくりのため、町の魅力発信に努めていきます」  ――エスプール(東京都千代田区)と包括連携協定を結び、ゼロカーボンシティへの取り組みを開始するそうですが。  「これまでも、地球温暖化対策実行計画に基づき、住宅用太陽光発電システム設置補助や公共施設照明のLED化、ふくしま森林再生事業への取り組み、ごみの分別指導、食品ロスの削減協力依頼など、さまざまな形で啓発や推進を図ってきました。今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、持続可能な地域づくりにつなげるためのロードマップを策定するほか、エネルギー利用の効率化に向け、次世代自動車の導入や建築物に対する高断熱化、太陽光発電設備の導入など、できるところから取り組んでいく予定です」  ――浅川中学校校舎の建て替え工事と、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想について。  「浅川中学校校舎新築工事は、8月に安全祈願祭を行い工事に着手しています。工事の進捗状況は、おおむね順調です。なお、別工事として新たに用地を取得し、テニスコート3面を整備する敷地造成工事は、予定通り8月中に完成し、9月上旬からテニス部の部活動で使用しています。今後も事故がないよう安全管理を徹底し、周辺地域の方々や学校生徒・教職員への安全にも配慮して、来年8月の新校舎完成を目指して工事を進めていきたいと考えています。  また、浅川小学校跡地への役場庁舎移転構想については、引き続き検討していきます」  ――今後の重点事業について。  「人口減少・少子高齢化対策が急務で、引き続き切れ目のない子育て支援と福祉環境の充実を図っていきます。特に子育て支援については、小中学校の入学祝金、高校生の通学費助成等のほか、今年度新たにこども園保育料の軽減や学校給食費の全額補助に取り組んでいます。今後も町民の声に耳を傾け、『子育てするなら浅川町』をモットーに、さらなる充実に努めていきます。そのほか、移住定住の促進や農業者支援、道路改良等の計画的なインフラ整備など、本町の重要課題への対応を一歩ずつ着実に進めていきます」 浅川町ホームページ

  • 【相馬市】立谷秀清市長インタビュー(2023.12)

     たちや・ひできよ 1951年生まれ。県立医大卒。95年から県議1期。2001年の市長選で初当選。現在6期目。18年6月から全国市長会会長を務める。  ――5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられました。今年は相馬野馬追が通常開催されるなどイベントが戻りつつありますが市内の状況は。  「ワクチン接種への関心が大分薄れています。新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に引き下げられる一方、ワクチンの副反応への警戒が残っていることが接種率低下につながっているようです。重症化率が高い高齢者や基礎疾患を抱える方を念頭に接種体制を整えています。高齢者が重症化しやすいのは、現在流行しているインフルエンザについても同じです。個人の意思を尊重した上で接種を勧め、流行と重症化リスクを下げるよう対応していきます。催しはできるだけ活発にやりたい。市の新春のつどいは、来年は行います」  ――一昨年2月、昨年3月に福島県沖地震が発生し、相馬市は2年連続で震度6強の揺れに見舞われました。この間、市内では台風などによる水害なども発生しましたが、復興状況と対策はいかがでしょうか。  「多くの住宅が損壊しました。行政として公費解体などできる支援はしてきたつもりですが、被害に遭った方の人生への影響は計り知れません。私の家も大規模半壊で建て替えざるを得ませんでした。70歳を過ぎて家を建てるのは容易でない。解体が必要な家屋は千数百軒で、約90%は解体が済んでいます。難しい判断なので解体はせかさず、時期を待って行政の手を差し伸べます。解体と移転が進むと更地が増えます。街なかを散歩すると空き地が増えているのが分かります。行政として、1年単位ではなく、10年、20年先を考えてリカバリーしなくてはなりません。リカバリーが新たな景観やビジネス創出につながってほしい。  建て替えてまた再起した飲食店やホテルもあり、繁盛している店舗もあります。市としては、もう被害には遭わせないという気持ちで水を吸い上げるポンプ車を新たに2台配備し、さらに宇多川と小泉川の河川改修をしました。過去には水田で保水効果があった土地が宅地化でアスファルトになるなど土地の変化が水害に与える影響は大きいですが、対策を抜かりなく行っていきます」  ――福島第一原発の処理水が放出されました。「常磐ものを食べて応援キャンペーン」が好調ですが観光の状況はいかがでしょうか。  「私が知る限りでは、マイナスの影響はそれほどありません。IAEAの厳しい基準を各国が支持しています。米国のエマニュエル駐日大使が相馬市を訪れ、意見交換をしました。海洋放出については大丈夫、つまり影響がないことを示す科学的な根拠があるという趣旨のことを言ってくれました。  中国内から日本の公共機関や店舗へ嫌がらせの電話が相次ぎ、それに対する反発で国民が冷静になった面はあります。相馬市内でも学校や病院、飲食店に中国語の電話や無言電話がずいぶんあり、業務を妨害されました。市民の間に科学的なデータに基づいて考えようという気持ちが芽生えました。  全国市長会会長として、教育現場で放射線を正しく学ばせてほしいとこれまで訴えてきました。高校入試に出題するように求めましたが、実現はまだ遠いです。副読本だけではリテラシーは十分に身に着かないと思います。  新たな名産として期待がかかるふぐの季節が始まりました。地元料理店での提供も徐々に増え、名物料理としても今後に期待ですが、漁業資源としては好調です。かねてからの名産地である山口県下関市のふぐ取扱業者が相当量買い取ってくれています。この前、全国ふぐ連盟の方々が相馬市を訪れ意見交換をしました。下関近海では温暖化の影響で近年ふぐが不漁です。相馬で獲れたふぐで下関のふぐ産業を支え、双方に実りあるようにしたいです」  ――今年度取り組んでいる重点施策についてお聞かせください。  「行政の役割は困った人たちに対して救いの手を伸べること、すなわち『不幸の緩和』です。自然災害や疫病への対応など住民の生活環境を守る義務を果たしていきます。無責任に夢みたいなことを語るよりも、目の前の義務を果たすことが一番大事なことだと思っています。  物価高で困窮者が増えています。政府が総合経済対策を進めていますので、市町村分について、生活困窮者には特に対応していきたいです」  ――全国市長会会長として政府に求めたいことは。 「たくさんあります。11月15日には副会長ら8人で与党の両政務調査会長と、内閣官房長官らを訪ね、『減税する際に市町村に迷惑を掛けない』との言質を取ってきました。減税とは地方自治体の税収減も意味するからです。  これまで他には児童・生徒が1人1台のタブレット端末で学ぶGIGAスクール構想の財源確保を要望してきました。同構想は5年を迎え、タブレット端末の更新を迎えます。5年に1回更新費用をその都度要望するのは非効率なので恒久財源を付けてほしいと訴えました。文部科学省は基金で対応することになりました。  来年から新型コロナワクチン接種が有料となりますが、単価が高いと市町村間の公費負担に差が出るので、負担に格差がないようにしてほしいと政府に要請しています」  ――今後の抱負を。  「重点施策と重複しますが、不幸な事態を最大限に緩和することです。長い目で見ると人口減少が不幸な事態です。それを解消するには企業誘致に励み、県外に流出が進む女性の働く場所をつくらないといけない。今年は企業誘致がまとまって、市内の工業団地用地をいくつか売却しました。人口減少に歯止めをかけるのは難しいですが、対策を積み重ねていかなければなりません。野球に例えればホームランを打つのではなく、バントでヒットを狙って、着実に返すような守り主体にしていかなければならない。  地道にコツコツが私の信条です。守りを継続していけば攻めに転じるチャンスが必ずある。一つが浜の駅松川浦です。浜の駅には原発事故後の風評被害の中、相馬の魚介類を味わってもらい『安全なんだな』と来場者に納得してもらう役割を担ってもらいました。『攻』というよりは『守』です。今や大勢の人で賑わい、近隣食堂に経済効果が波及するほどです。ところが、賑わいが商店街まで波及するかと期待したところに地震と水害、新型コロナ禍が襲いました。  市を挙げて地道にコツコツ石を積んでいたところを崩された感じです。打撃は大きいですが、『不幸の緩和』のために守り続け、幸福という攻めに転じるために、苦境の中でも対策は積み上げていかねばなりません。行政とはそういうものです」 相馬市ホームページ

  • 【福島県電設業協会】大槻博太会長インタビュー

     おおつき・ひろた 大槻商事、大槻電設工業代表取締役。2017年5月に県電設業協会長に就任(4期目)。福島商工会議所副会頭、県建設産業団体連合会副会長を兼務。 働き易く、魅力ある業界の構築に努める  ――協会の現状についてうかがいます。  「福島県電設業協会の会員数は現在50社であり、年々減少傾向にあります。内線工事、外線工事の有資格者・技術者不足による退会企業もあります」  ――業界を取り巻く課題についてうかがいます。  「まず、喫緊の課題として挙げられるのが『働き方改革』であると考えます。12月1日には自民党本部に陳情にうかがい、現状についてお話しさせていただきました。  労働における時間的な制限と工期がマッチングしなければ働き方改革の根本が揺らぐ事態となります。発注者側に対しては、残業など労働実態を反映させた工期を強く求めたいと思います。  今年は猛暑に見舞われ、作業も過酷を極めましたが、福島県では熱中症対策の一環として気温が35度以上になり作業を止めた場合に、その日の分を工期に加算し、期限を延ばす仕組みを確立していただいております。これは大変画期的なことである点を付言したいと思います。まずは人命が最優先ですので、ぜひ業界全体において浸透を図っていきたいと考えます。  次に、業界内における週休2日制の問題です。単独で受注する工事については完全に実施できますが、建築工事の現場となると大変難しいのが現状です。  建築工事は本体工事、電設工事、設備工事の三つの業者で基本的に構成されていますが、電設・設備業は建築物が完了したタイミングで工事に着手するという事情があります。もし建築工事で遅れが生じても、電設工事や設備工事は建築の工期に合わせなければなりません。その遅れにより作業工程が圧迫され、結果的に残業を余儀なくされてしまうのが実態です。  一方、県では現在この問題に対して、設備調整期間を設定し、特記仕様書にきちんと盛り込むなど適切な対応をしていただいています。運用に関してはこれからの課題となっていますが、設備調整期間が2週間と設定されれば、建築工事概成後、電設工事、設備工事で2週間の期間があらためて認められるようになるため、電設・設備業としては大変助かっています」  ――その他の重点事業についてうかがいます。  「各自治体に対しては、最低制限価格が担保される建築・電気・設備の3分割による分離発注を行っていただけるよう積極的に要請しています」  ――結びに、抱負をお聞かせください。  「業界の発展に向けてはまず魅力づくりが重要と考えます。完全週休2日制の実現など休日の確保をはじめ、電気がいかに日常生活や地域に寄与しているかについて、電設業の立場から効果的なPRを展開することで、電設業界に興味・関心を持っていただけるような取り組みについて議論を重ねていきたいと考えています」

  • 【県南建設事務所】手塚孝良所長インタビュー

     てづか・たかよし 1967年生まれ。福島市出身。東北大工学部資源工学科卒。1989年福島県入庁。道路整備課主幹、下水道課長などを歴任。今年4月より現職。 県民が求める社会資本整備・管理に取り組む  ――4月に県南建設事務所長に就任されました。管轄地域の印象はいかがでしょうか。  「栃木・茨城両県と接し、東北新幹線、東北道、あぶくま高原道などの高速交通網が発達している一方で、美しく豊かな自然に囲まれた地域でもあります。白河関跡、小峰城跡、棚倉城跡など歴史的文化遺産や伝統文化も多く魅力溢れる地域です」  ――2月4日には国道294号白河バイパスが開通しました。  「市街地を通る現道はクランクが多く、十分な歩道幅も取れないことから、1995(平成7)年度に延長4120㍍のバイパス整備に着手しました。開通により安全・安心な通行が確保されるとともに、市街地を経由して白河中央スマートインターチェンジと国道289号が直結し、白河厚生病院等へのアクセスが向上しました。市の循環バス『こみねっと』が4月からバイパス経由の新規路線を開設したほか、バイパス周辺にある小峰城や南湖公園への観光客も増加しています」  ――建設業界の人材不足が課題となっていますが、県としての対策は。  「県土木・建築総合計画でも目標の一つに『持続可能な建設産業』を掲げています。当事務所では担い手確保として、小学生や高校生、一般の方向けの現場見学会を実施しており、関心を持っていただけるようにそれぞれ内容を工夫しています。  一般の方向けの現場見学会としては、昨年度に南湖トンネル、今年度に堀川ダムでキャンプを実施し、施設の役割や建設業の重要さを学んでいただきました。子どもからお年寄りまで多数の参加があり、建設業をアピールできたのではないかと思います。  トンネルキャンプは全国でも2例目、ダムキャンプは全国でも初の試みだと思われます。今後も、担い手確保に向け日々シンカ(新化)し、有効な取り組みを進めます」  ――結びに抱負を。  「県土木・建築総合計画の地域別計画で定められている『県を越えた広域連携の中心として、自然、歴史、伝統文化をいかしながら、持続的に発展する県南地域』の達成に向けて各種施策に取り組んでいきます。  道路事業では、国道289号、国道118号などの広域的な道路ネットワークの強化、幹線道路の整備を推進することで、地域の物流の円滑化、産業や観光の振興を支援し、活力あるまちづくりを目指します。  国が進める阿武隈川の遊水地群整備をはじめ、各水系の流域治水対策事業や砂防事業などの推進、県有施設の長寿命化事業などにも重点的に取り組み、災害に強く安全で安心なまちづくりに努めます。  安全・安心、豊かさを次代につなげられるよう、県民が求める真に必要な社会資本の整備、管理に取り組んでいきます」 県南建設事務所ホームページ

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【三春町】坂本浩之町長インタビュー【2023.11】

    さかもと・ひろゆき 1956年生まれ。田村高校、専修大学法学部卒。三春町総務課長、副町長などを歴任。2019年9月の町長選で初当選、今年9月に再選を果たす。  ――9月に行われた町長選で無投票再選を飾りました。  「選挙公約を記載したリーフレットを準備するなどして選挙に備えていましたが、無投票になったため、個人演説会もなく、様々な声を聞くことができず残念な部分もあります。選挙で審判を受けるのが本来あるべき形で、無投票によって全町民の信任を得られたわけではないことを自覚しつつ、職務に当たっていきたいと思います」  ――2期目の重要課題についてお聞かせください。  「1つは、1期目から取り組んでいる認定こども園建設と、アウトドア用品大手の『モンベルストア』が出店予定で、それに伴うアウトドア・アクティビティの環境創出です。こども園はすでに着工しており、モンベルストアは間もなく着工します。  また、新たな切り口として住環境を整備したいと思っています。具体的には空き家対策を町として進めていきたい。全国的に空き家の問題が叫ばれていますが、町内でも今後多くの空き家が出てきます。コンパクトシティのまちづくりを進めていくうえでも空き家対策は重要で、それに対する住宅のマスタープランを作成する予定です。  いま町で取り組んでいる第7次長期計画が令和6年で終え、令和7年から第8次長期計画に移行しますが、その中の柱の一つに、住環境の整備を盛り込み、新築や住み替えはもちろん、年を取り夫婦2人、あるいはどちらか一人だけになった時の住まいの流動化ということがあってもいいと思います。例えば、街なかのリフォームした住宅に移り住み思い入れのある元の住宅は残しておく。その方が亡くなってしまい、その住宅を誰も相続しないけど住宅の状態はいい場合は誰か別な方に住んでもらう。そういった形は、手間がかかるため民間業者では難しい。そこを行政として粘り強く地道に行い、少なくとも現在町内に住む方が、住むところがなくなり、町外に出るような事態は避けたいと思っています。  実際、町内には、家主さんから町が10年間の契約でお借りし、リフォームをして若者に貸し出す事業を行っています。現在は外国人実習生が住んでおり、そういった実績もありますから、状態の良い住宅を再利用できると思います。そういった考えにシフトしなければ住宅問題は今後もっと大きくなっていくと思います。簡単なことではありませんが、何もしないというのも行政の怠慢だとも思います。  もう1つは、間もなく町内の農業振興地域内の農用地区域の見直しを終えます。農用地として守っていく農地では、今後、何を栽培するかまだ決まっていないところもあります。町内はピーマンの指定産地になっていますが、すべての農地でピーマンを栽培しているわけではありません。国際情勢により小麦等の値段が高騰しており、国でも輸入に傾き過ぎる大豆と小麦などの栽培の奨励が行われています。とはいえ、農産物は一朝一夕でできるものではありません。町内では以前は大豆栽培が盛んでしたが、そうした過去の事例を踏まえつつ、農家に推奨作物を勧めると同時に、若い方が参入しやすい体制づくりを進めていきたいと考えています」  ――最初にお話があったこども園整備の現状は。  「原材料費高騰の心配がありましたが、事業者の企業努力もあってか大きな遅れはなく、順調に進んでいます。建設地は岩江地区になりますが、近隣から町内に転居する方は同地区に住宅を建てるケースが多く、同地区の住民の平均年齢が若くなっていますから、需要にも見合っていると思います。また、同園は町内東部から郡山市内の職場に通う方の通勤経路の途中に当たるため、利便性もあると思います。いまは広域行政の時代で、保育所や幼稚園も仕組みが変わりつつあり、今後は市町村を乗り越えた利用者の増加も想定しています。これから0歳保育もはじまりますが、今後は子どもを預けるための環境整備と、0歳から18歳のための政策を重点的に行っていきたいと思っています。また、町内唯一の高校である田村高校と連携を図りながら児童・生徒の育成に力を入れたいと考えています」  ――アウトドア用品大手の「モンベル」の店舗が町内にオープン予定で、町は同社と包括連携協定を結びました。  「『モンベルストア』が出店されるのは県内初で、近隣のキャンプ場との連携や登山客が多い会津地方などとも連携しながらつくり上げていきたいと思います。モンベルストアに訪れた方を町内の観光地などに誘導できるようにしたい。通年観光で神社仏閣などを歩いて回ってもらう取り組みに加え、ダム湖であるさくら湖の観光面でも、カヌー発着場の建設が行われています。そういった今までになかったスポーツが楽しめるようになるので期待しています。また、これを機に町民に向けて健康寿命延伸の観点から、町民に歩くことを推奨していきたいと思っています。今後は体力などに応じたコースなどの作成をモンベルと連携できればと考えています」  ――昨年、「滝桜」の天然記念物指定から100周年を迎えました。  「今年の来場者は12万8000人とコロナ前に比べ3割ほど増加しました。まだ5類指定前でしたが、売店も従来通り再開し、飲食の制限もありませんでしたので、その分増えたと見ています。ただ例年より開花が早すぎてバスツアーの来場者がほとんどいなかったのは残念でした」  ――そのほか、今後の重点施策について。  「河川改修が完了し、災害対策はほぼ終えています。ただ、ゲリラ豪雨など予測不可能な災害が多いのが実情で、町内にはアメダスと呼ばれる測定施設がないので町独自で整備しています。また、土砂崩れの危険を回避する傾斜測定を整備していきたいと考えています。そのほか、これからの超高齢化、人口減少の時代を迎えるに当たり、いまのうちに対策を行い、住環境整備やデジタル化によって、対策を講じることが必要になってきます。それらを2期目の任期中に進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負。  「様々な政策を行って町民の方と接する中で、町民の方々が安心・安全に生活できる環境を、もっともっとつくっていきたいと感じています。コロナが5類になり、様々な行事で見た町民は皆笑顔でまさしく楽しそうでした。行事など行政が何らかの形で関わっていくと思うので、町民の皆さんが機嫌よく暮らしていただけるような町にしていきたいと思います。そのためにも基本を守り、行政に当たっていきたいと思います」

  • 【飯舘村】杉岡誠村長インタビュー【2023.11】

    すぎおか・まこと 1976年生まれ。日大理工学部卒。東京工業大大学院理工学研究科博士前期課程修了。飯舘村農政第一係長などを経て2020年月10月の村長選で初当選。 ここに住んでよかったと思う村を目指して。  ――帰還困難区域のうち、5月には長泥地区の特定復興再生拠点区域と拠点区域外の一部である長泥曲田公園の避難指示が解除されましたが、解除された地区について今後どのような取り組みを進めていく考えですか。  「避難指示解除はあくまで地区の再生・発展のための手段ですので、雇用の創出など優先すべきもの、実施できるものから実現していく方針です。現在、資源活用型堆肥製造施設を整備中ですが、同施設がその役割を果たすと思います。また、残る帰還困難区域についても、早期の避難指示解除を目指します」  ――ドラッグストアのハシドラッグと公設民営による出店を目指す他、セブンイレブンの移動販売が始まり、買い物環境の充実が進んでいます。住民の生活環境や利便性向上に向け取り組んでいる事業を教えてください。  「昨年度から村に移住していただいた医師の本田徹先生による訪問診療が浸透してきています。10月から福島交通が運行する路線バス『福島~医大経由南相馬』の運行ルートに飯舘村役場停留所が加わりました。今後も住民のみなさんや村に訪問される方の利便性向上のための事業を進めていきます」  ――休校中の相馬農業高校飯舘校周辺に産業団地を整備する方針を打ち出しました。今後の展望を教えてください。  「整備予定地として、インフラが存在し、整備が容易な村の中心となる場所、アクセスしやすく人が集まりやすい場所、村の産業特性を踏まえ産業集積の拠点となりうる場所を重視しました。令和4年度に実施した候補地調査により予定地としました。村の担い手を育成してきた場所ですので、そのような思いを込めて産業集積を進めたいです」  ――子育て支援や移住・定住に向けた取り組みについて伺います。  「移住については、福島県12市町村移住支援金、ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金の他、村単独での支援制度もあります。令和4年度から引き続き、移住サポートセンターを設置し、状況に応じた制度をご案内しています。  子育て応援策として、今年度から赤ちゃん誕生祝金や、小学校、中学校、高校の入学等準備費用の助成として子育て応援支援金を整備しました。また、不妊治療を受ける夫婦を対象に不妊治療費助成も進めています。  さらに、学んで村に帰ってきた方、移住した方が村内の企業に勤める際には奨学金の返還免除や奨学金返還支援事業補助金制度も整備しました。様々な方が住みやすく、帰って良かった、移住して良かったと実感する、選ばれる村を目指します」

  • 【中島村】加藤幸一町長インタビュー【2023.11】

    かとう・こういち 1952年生まれ。岩瀬農業高卒。JAしらかわ理事などを歴任し、2004年から村議2期。2010年9月の村長選で初当選。昨年9月の村長選で4選を果たす。 ひと・くらし・しごとを基本理念に施策を実施。  ――新型コロナウイルスの5類移行の影響について。  「5類移行後は各地区の行事が再開されるなど、コロナ禍前の日常に戻りつつあります。また、中断していた中学3年生のマレーシアへの修学旅行も4年ぶりに再開され、生徒各自が感染対策を徹底したおかげで無事に帰ってくることができ、それぞれにとって素晴らしい経験になったのではないかと思います」  ――役場庁舎改築の進捗状況について。  「新築工事・改築工事共に順調に進んでおり、新南棟庁舎が完成し、5月29日から供用開始となりました。以前の庁舎よりも利便性が向上し、村民の方々からの評判も上々です。現在は旧庁舎の改築を進めており、来年1月中旬の竣工を予定しています」  ――移住・定住促進の取り組みについて。  「今年度は移住・定住パンフレットを作成し、村の分譲地販売と併せてPRを行っているほか、関東圏でのイベントにも参加しています。ほかにも、若い世代に向け、移住・定住支援事業や結婚新生活支援事業について周知していきたいと考えており、条件によっては村から補助金が交付されるので、そうした部分でも魅力ある住環境をアピールしていきます。本村は全国に先駆けて保育所・幼稚園の保育料完全無料化、小・中学校の給食費全額無料化を実施しているので、充実した子育て支援の面でもアピールしていく考えです」  ――4月に第6次総合振興計画を策定しました。  「『みんなが輝らめく 豊かな なかじまむら』を将来像に掲げ、ひと(社会)・くらし(環境)・しごと(経済)3つの基本理念に基づく施策を実施していきます。赤ちゃんから高齢者まで、誰一人取り残さない、全ての人がいきいきと生活を送ることができ、輝く笑顔あふれる村『ひと(社会)』、豊かな自然を大事にするとともに、ライフラインの整備に努め、安心して暮らすことができる環境を整える『くらし(環境)』、村内企業との連携、企業誘致、基幹産業である農業を守り、村民が豊かさを実感できる村づくり『しごと(経済)』を目指して取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「公共事業長寿命化計画等に基づき、中学校や公営住宅、農道などの長寿命化を図っていくほか、災害対策として、ため池浚渫や雨水を阿武隈川に排水する排水ポンプ設置工事を進めています。ほかにも、中島村健康づくり交流センター輝らフィットを活用した健康づくり、介護予防の充実、地域おこし協力隊の活用などを含めた新規就農者支援の体制づくりを進めていく考えです」

  • 【石川町】塩田金次郎町長インタビュー【2023.11】

    しおた・きんじろう 1947年生まれ。学法石川高校、亜細亜大学中退。石川町議2期、県議4期を歴任し、2018年9月の町長選で初当選。現在2期目。 若者に留まってもらうための施策に取り組む。  ――2期目がスタートして1年経ちました。現在の率直なご感想は。  「どこの町村も同様ですが、人口減少と少子高齢化に危機感を持っています。これからの町を担っていく若者にどう留まってもらうか、活力をどう高めていくか、そこに注力した政策づくりをしていかなければいけないと感じています」  ――道の駅整備計画の進捗状況はいかがでしょうか。  「議会から『県内では最後発の道の駅で勝負できるのか』、『赤字になったら一般財源を投入するような負の遺産にならないか』などの意見や要望を受け、これまで議論を重ねてきました。そこで導き出した答えは、設計と建設をヤマト(群馬県前橋市)、運営をTTC(静岡県熱海市)に委ねる、官民連携型の『O(維持管理・運営)+DB(設計施工一括)方式』を取り入れることでした。また、民間に委託する条件として、『地場産品を商品として売り出す』、『職員は地元で採用する』などを盛り込みました。2025年度中の開業を目指しており、来年度着工の予定です」  ――ドクターヘリの実績について。  「出動しないことに越したことはないのですが、昨年8月から運用を開始して25人の搬送実績となりました。その中の7人は、ドクターヘリを利用しなければ助からなかったかもしれない、と報告を受けています。町民が安心して暮らせるよう、今後も医療体制の充実に注力していきます」  ――重点事業について。  「子育て支援の一環として、産婦人科・小児科関連の相談をオンラインで受け付けるサービスを4月から開始しました。産婦人科医や小児科医、助産師が妊娠中の悩みや出産のこと、産後の心身の健康、子育ての悩み相談などに応じています。  もう一つは、町立認定こども園の開設について、来年度内を目標として進めています。将来の町を担っていく子どもたちが健康で元気に暮らせるようにしていきます。 先ほど申し上げたように、いずれも若者に留まってもらうための施策となります」  ――今後の抱負を。  「毎回繰り返してお伝えしていることですが、『聞く力』、『交渉する力』、『発信する力』の3つに注力して、町政運営していきます。限られた予算の中で何ができるかを精査し、ある程度絞って目標を定めていくことが重要だと思っています。町民が何を求めているか『聞き』、財源を確保すために『交渉』し、温泉、桜、鉱物、自由民権運動の発祥の地など町の魅力を『発信』していきます」

  • 【新地町】大堀武町長インタビュー

    おおほり・たけし 1951年生まれ。東北学院大学卒。陸上自衛隊で勤務後、新地町役場に入庁し、総務課長などを歴任。2018年の町長選で初当選。現在2期目。 町民の安全・安心に直結する事業を優先していく。  ――8月24日から福島第一原発に溜まるALPS処理水の海洋放出が始まりました。  「海洋放出についてはまだまだ課題も多く、我々は政府や専門家のような知見を持ち合わせていないので、互いに納得のいく形で進めていくことは困難を伴うと見ています。  8月21日、岸田文雄首相が全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと面会した際、『今後数十年の長期に渡ろうとも、全責任を持って対応することをお約束する』と話していました。国としても重い判断のもと海洋放出を実施したと思うので、本町としては県や関係自治体と連携しながら、安全かつ確実に実施されることを願い、推移を見守っていく所存です。放出によって生じる風評被害対策の実施と情報発信を行っていただき、国民だけでなく海外の方への理解醸成を図っていただきたいと考えています」  ――町第6次振興計画の進捗状況は。  「策定後の令和3年2月、翌4年3月に発生した福島県沖地震の対応もあって当初の予定より遅れているのは否めません。3年間の行動計画で、できるだけ軌道修正を図りながら実施していこうと考えています」  ――地域の魅力向上への取り組みとして「アートの町『新地』創造・アートの魅力発信事業」が展開されています。  「画家・志賀一男さんをはじめ、本町出身のアーティストが目覚ましい活躍を見せています。本町出身の画家・坂元郁夫さんからご提案いただいたこともあり、JR新地駅前に整備された町文化交流センターにおいて、絵画に焦点を当てたアートイベントを実施していく考えです。できるだけ多くの皆さまに見ていただき、心を豊かにしていただければと考えています。来年の町村合併70周年に合わせたプレイベントの意味合いもあり、反響次第では来年、より規模を大きくして実施する考えです」  ――今後の重点事業について。  「頻発する自然災害への対応は非常に重要な課題です。町民の安全・安心に直結する事業を優先していきます。今年度は高齢者の見守り事業を開始し、各地区に予算を出して、地域の団体の方々と協力して取り組んでいます。県には砂子田川と谷地田川の水害対策、駒ケ嶺地区の浸水対策を要望しており、老朽化が進む海抜0㍍地区の湛水防除施設に関しても、調整しながら年次計画で更新を進めています。  商業用地への食品スーパー誘致も課題であり、買い物環境の整備も進めていきます。併せて県立相馬総合高校新地校舎の利活用の協議も進めていきます」

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

    さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「もともと人手不足が深刻な課題で、コロナ前はベトナムやミャンマーから外国人技能実習生を募り、資格を取ってもらうことで在留期間が3年から5年に延びるので、それを活用して人員確保に繋げようとしていました。その矢先にコロナの感染拡大だったので、この間完全に頓挫していました。とはいえ、外国人の方を呼び込んでも基本的には都市部の方に行く場合が多く、地方ではまだまだ外国人の方を迎え入れる動きが少ないというのも現状です。ビルメンテナンス業界でも機械化による業務効率化の動きはあるにせよ、まだまだマンパワーで動かなければならない場面が多いので、やはり人員の確保は大きな課題と言えます」  ――全国ビルメンテナンス協会では「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推奨しています。  「昨年10月頃からパートナーシップ構築宣言が出され、業務内容に見合った適正な金額で契約を結べるようにパートナーシップを締結し、発注者も請負業者も健全な関係を築こうというのが主な狙いです。県ビルメンテナンス協会としての本格的な取り組みとしてはこれからですが、労働環境や待遇改善といった部分に大きく関わってくるので、今後腰を据えて取り組んでいく考えです」  ――人材不足が叫ばれる中で、業務品質の維持は大きな課題とも言えます。  「コロナ禍では通常業務に加え除菌業務も併せて実施し、その意味ではコロナ禍以前よりも高い品質で業務を実施できたのではないかと見ています。しかし、それを踏まえた契約の仕様変更がなかなかうまくいかず、業務量が増えているのに対価は以前と同じという状況が発生しており、こうした部分も先述した待遇改善の話に絡んできます。特に官公庁関連では入札という形式を採っているので、価格競争が起きて安い方へと流れてしまう傾向があります。競争が起こるのは仕方ないにしても、『これより下がってはいけないライン』をもっと上げていただく必要があり、10月には最低賃金の更新があるので、それを見込んだ予算の増額を官公庁に要望しています。また、品確法の基本理念の1つとして、完成後の公共施設の適切な維持管理の重要性が明記され、関連する指針やガイドラインにより契約金額の変更が認められており、そうした部分からも働きかけたいと考えています」  ――今後の重点事業について。  「建物清掃管理評価資格者、通称インスペクターの資格を会員企業の中で最低1名ずつ取っていただき、維持管理業務の品質向上に努めるほか、エコチューニングの推進による建物の設備機器の運用改善、そして県内支援学校での技術指導の実施により、支援学校の生徒が卒業後にビルメンテナンス業界に入り、社会へと参画できるような道筋を作っていきたいと考えています」

  • 【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    おおうち・ひろゆき 1956年8月生まれ。高崎経済大卒。第一温調工業㈱社長。一般社団法人福島県空調衛生工事業協会副会長を経て、2020年5月から現職。 持続可能な社会・業界を目指す  ――福島県空調衛生工事業協会の概要についてうかがいます。  「当協会は、1983年10月28日、高度化する近代設備に対応できる技術・技能の研鑽と経営体質の強化を図り、管工事業界の社会的経済的地位の向上と公共の福祉の増進を図ることを目的として設立されました。現在の会員事業所数は49社で、建物の空調設備工事、給排水衛生設備工事を行っている県内業者で構成されています。  事業内容は、建築設備工事にかかる業務遂行上の諸問題を研究するとともに、技術力水準・生産性向上を目的とした特別技術講習会をはじめ、会員事業所における経営体質の強化を図るため、経営改善研修会をそれぞれ年1回実施しています。  また、会員事業所の労働安全衛生と技術力の向上を図るため、当協会、福島県電設業協会、福島県設備設計事務所協会で構成される『総合設備協会』の会員事業所が参加し安全大会、技術研修会を年1回実施しています。そのほか、国・県・県議会への要望活動や県との意見交換会等も行っています」  ――業界を取り巻く環境と今後の課題についてうかがいます。  「2024年4月から建設業でも『働き方改革』がスタートします。主な改革は法規制による労働時間の制限ですが、建築設備工事の工程は、建築工事、電気設備工事と連携しながら進めるため、自社のみで働き方改革ができないのが実態であり、施主、他工種の理解・協力を得ながら、実施していく必要があります」  ――今年度の重点事業についてうかがいます。  「若手技術者の技術力向上のため、重点目標事業の1つとして『空調衛生等設備工事の技術力向上に関する事業』があります。今年度は、特別技術講習会において建設現場における火災防止のための新工法について実機を使用した研修、地球温暖化防止対策としてのカーボンニュートラルに関連した取り組みや今後の動向を踏まえた研修を実施しました。  また、持続可能な開発目標『SDGs』の達成に向けた取り組みが社会的に求められる中、当協会でも社会的使命の観点から『ふくしまSDGsプラットフォーム』の会員として参画しています。今年度の経営改善研修会では、『持続可能な世界を築くために』と題して本県関係者による講義や、同プラットフォームの会員となっている当協会会員事業所の取り組みや現況を紹介しながらSDGsの理解を深めています」    ――今後の抱負について。  「国や県では『2050カーボンニュートラル宣言』を打ち出すなど、地球温暖化防止は喫緊の課題と認識しています。われわれは、空調設備、給排水衛生設備において、より効率性の高い機器や供給方式の提案に努めていきます。  また、少子高齢化に伴い担い手の確保が厳しい状況となっていますが、若年層の入職促進・定着、従業員の雇用維持に向けて、安心して働き続けることができる魅力ある空調給排水衛生工事業界にすることが重要と考えています」

  • 【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大学卒。1990年に県庁入庁。県土木部道路管理課長、道路計画課長を経て、2022年度から現職。 災害復旧、防災、道路整備に全力  ――台風13号による「線状降水帯」の影響で、いわき市内の至る所で浸水するなど甚大な被害が発生しました。管内の被害状況について。  「市内全域の河川流域で緊急安全確保(警戒レベル5)が発令され、人的被害や多数の床上・床下浸水が発生しました。当事務所管内では、10の河川で越水が確認され、一部の河川施設では護岸が崩落するなどの被害が発生しました。10月19日時点で公共土木施設の被害数及び被害額はいわき市を含め、河川69件、砂防設備11件、道路26件、橋梁1件 合計107件27億8200万円となっています」  ――今後の復旧の見通しについて。  「まず越水した河川では、河床に堆積した土砂等を速やかに除去し、治水機能の回復を図ります。被災した道路・河川等の土木施設については、速やかに調査・設計を実施しており、早期の工事着手により復旧に努めます。河川からの越水等により浸水被害が発生した地域については、線状降水帯の大雨による被災メカニズムを解析し、再度の災害を防止する対策について検討していきます」  ――防災対策事業に注力してきましたが、進捗状況は。  「頻発化・激甚化する自然災害から、住民の生命、暮らし、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策に計画的に取り組んでおり、今回の大雨でも一定の効果が確認できました。今年度は水災害対策として、河川の治水安全度の向上を図るための河道掘削や伐木、堤防強化、土砂災害防止対策のための砂防・急傾斜事業、道路の安全度を高める落石対策等を実施しており、引き続き防災対策事業を加速していきます。また、流域全体で水害を軽減させる『流域治水』についても、あらゆる関係者と連携・協力しながら効率的な対策を実施し、中小河川も含め災害に強い安全・安心な基盤づくりを推進していきます」  ――小名浜道路をはじめとする道路事業の進捗状況について。  「いわき市泉町から同市山田町に至る全長8・3㌔、4箇所のインターチェンジ(以下、IC)を有する無料の自動車専用道路で、『ふくしま復興再生道路』に位置付けられています。『小名浜港』と『常磐自動車道』を結び、小名浜港や周辺地域の産業・観光の拠点化を支援するために整備されます。常磐道から小名浜港までのアクセス時間が約15分短縮され、速達性の向上や定時性の確保等が期待されています。  現在9地区すべてで工事が進められており、高度な技術を要す区間は、本県から東日本高速道路㈱(以下、NEXCO東日本)へ委託し、工事を実施しています。8月には、NEXCO東日本により常磐道の上を跨ぐ本線部橋梁上部工が架設されるなど、着実に事業が進展しています。また、中通りへのアクセス機能向上を図るため、主要地方道いわき上三坂小野線の(仮称)山田IC(=小名浜道路の終点)から遠野町方面に至る約3・5㌔区間についても、道路改良工事を計画的に実施しており、引き続き信頼性の高い広域ネットワークの確保に取り組んでいきます」

  • 【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

     あさくら・つうえもん 1975年に二本松信用金庫に入庫。常務理事、専務理事を経て、今年6月から同信金初のプロパー理事長に。  ――6月に開催された総代会・理事会で理事長に選出されました。  「歴代理事長は地元有力者や監督官庁といった外部から選出され、私が初めての生え抜き理事長になります。また、今年で創立75周年という記念すべき年に8代目理事長に就任しました。常務や専務などを経験し、前理事長の下で仕事をしてきましたが、理事長はいままでの立場とは全く違うものだと実感しています。  当信金は14期連続で黒字決算を続けており、前会長や現会長が健全な経営を継続してきた成果だと思います。これをしっかりと継続していくことが私に課せられた経営課題であり、地域の皆様や利用されるお客様の信用・信頼につながると思っています」  ――新型コロナウイルスが5類に移行され、経済活動も正常化しつつある一方で、原材料費・燃料費高騰や人材不足の影響が続いています。  「5類移行により、飲食店等も回復しつつありますが、コロナ前の水準にはあと1歩というところだと思います。また、原材料費・燃料費高騰により、製造業や建設業で大きな影響を受けているところは少ないものの、今後については原材料高騰分を製品に価格転嫁しなければならないなど、不安視する事業所が多いのが現状です。当金庫では3カ月に1度、景気動向調査を行っていますが、今後を見据えると物価がさらに上がることは間違いありません。消費者がそれを理解するには時間がかかると思います。  人材不足については、将来的な展望がもう少し開けなければ人件費を上げるのも簡単ではありません。ただ、賃上げについて調査したところ半数ほどの企業が何らかの形で賃上げを行いたいと回答しています。  様々な課題はありますが、暗い話ばかりではなく明るい話題もあります。地域の企業が良くなれば、我々もおのずと良くなると思います。そういった好循環を生み出すきっかけづくりを様々な形で行っていきたいと思います」  ――「まつしんビジネスサポートクラブ」の活動状況について。  「『まつしんビジネスサポートクラブ』は1998年に設立し、管内の若手経営者や事業継承者を対象に勉強会や講演会を行っています。最近ではIT導入や事業後継問題、人材育成、異業種交流も活発に行われています。以前はISO取得を目指す事業所が多かったですが、最近はSDGsが重要になってきましたから、そのためのサポートも行っていきたいと思っています。  また、サポート事業とは別に、商工会議所からの依頼で、海外進出に向けての勉強会も行っていきたいと考えています。そういった支援活動を行うことで、地域企業の底上げにつなげていきたいと思います」  ――10月にはインボイス制度がスタートします。  「4月に取引企業を対象に行った調査では、85%が対応を終えており大きな心配はしていません。今後は帳票関係書類の電子化が課題になりますが、そういったサポートも行い、本業に集中して取り組んでいただけるよう支援していきたいですね」  ――今後の抱負。  「当信金では『お客様』『地域社会』『信用金庫』の三位一体の経営というのが創業当時から経営方針ですが、これらが皆良くならないと全体的な底上げにはなりません。そういった考えのもと、そのためのお手伝いをしていきたいと思います。  また、狭い管内で営業をしていますので、不採算店舗があったとしても、大手金融機関のように閉鎖するのではなく、地域の方が不便を感じないように店舗を維持していきたい。加えて、地域の行事等に積極的に参加するため、ボランティア休暇を設けるなど、地域とのつながりを大事にしていきたいと思います」

  • 【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

     ほそや・みのる 1953年生まれ。独協大学経済学部卒。㈱日本ビューホテル成田ビューホテル勤務後、父が開園したみその幼稚園(福島市)の事務長を経て理事長・園長を務める。今年6月から現職。  ――今年6月12日に開催された福島県私立幼稚園・認定こども園連合会の総会で理事長に選任されました。この間を振り返っての率直な感想をお聞かせください。  「重責を担う立場だと痛感していますが、就任したからには平栗裕治前理事長の実績をしっかり継承しつつ、さらなる福島県の幼児教育振興のため職責を全うしていきたいと思います」  ――少子化が急速に進んでおり、幼児教育を担う私立幼稚園・認定こども園連合会の会員にとっては大きな課題だと思います。現状をどのように捉えていますか。また、連合会として取り組むべきことはどんなことだと考えていますか。  「少子化対策と、幼児教育の質の維持向上は一心同体で考えるべきだと思っています。少子化だからこそ、質の高い人間づくりが求められます。特に幼稚園や認定こども園は人格形成の基礎である最も大切な根っこの教育の場であり、ある意味で善き日本人のDNAづくりの最後の砦であると考えます。  そして、到来する不透明な時代を生き抜く力を子ども達に備えさせるという意味では、大学教育に勝る教育と言えます。これらのことを踏まえながら、連合会としては実現可能な少子化対策と幼児教育支援充実を県に対し要望していきたいと思います」  ――幼稚園の教員不足も深刻な課題になっています。  「教員不足対策はもちろん重大な課題ですが、幼児教育に限らず、教育の質を向上させるためには教員の質を高めなければなりません。官民連携で、どうしたら質の高い人材を育成できるのか、そこをもう一度考え直してみなければなりません」  ――連合会として、今後どのような取り組みを進めていきますか。  「10月に東北6県の幼稚園・認定こども園の教職員約800人が集まり、郡山市で教員研修大会が開催されます。教員の質の向上に寄与する研修会にするため、郡山地区の園が中心となり準備を進めており、充実した内容にしたいと思っています。 また、県内には本連合会に加盟していない園もあるため、加盟拡大にも力を注ぎ組織力を強化することで要望等の実現に繋げたいと思っています。さらには各園の後継者育成にも取り組んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「名称の通り、本連合会には幼稚園と認定こども園が加盟しているため、振興対策も別々に立案しなければなりません。そのため本会は各窓口との情報収集・交換をはじめ、積極的に県内でのアンケート調査等を実施し、そのエビデンスに基づく振興対策を国・県に求めていきます」

  • 【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

     そうだ・まさゆき 1951生まれ。日本大学工学部卒。2007年に鮫川村議会議員になり、2015年4月から2023年3月まで副議長、同年4月から8月まで議長を務めた。8月27日投票の村長選で初当選を果たす。  ――8月に行われた村長選で初当選を果たしました。  「村の課題は山積しています。全国的に人口減少が叫ばれていますが、特に当村の場合は多くの若者が村外に流出している状況にあります。人口減少によって農業の後継者不足や中心地域の空洞化も進んでいる状態です。これらに対する対応・対策を考えた際に的確な判断の難しさや責任の重さを十分感じています。だからこそ、村民目線で住民の気持ちを優先的に考えて対応策を検討していきたいと思っています」  ――選挙では給食費無償化等の子育て支援策を打ち出していました。  「給食費無償化は、国が今年3月に少子化対策として実態調査を行うことを打ち出しましたが、本村は令和元年度から2分の1の支援を行ってきました。さらなる子育て世代の財政支援の拡充を図るため、まず給食費の無償化を進めていきたいと思っています。また、今は核家族や共働きが進み、放課後児童クラブに預ける家庭が多いのが実情で、クラブの改善は重要だと思っています。現在は預ける際は有料となっていますが、これも無料化にすることで子育て支援の拡充を図っていきたいと思います。本村は近隣町村と比較しても利便性が低い現状にあります。給食費に限らず、例えば通学の際の交通費補助等の再検討を含めて教育費に係る財政的な支援は重要だと思います。今は村外に通学する高校生に対して、1万円の交通費の補助を行っていますが、燃料費等の高騰が進んでおり、子育て世代では困窮している家庭も多いのが実情だと思います。それに対しても、もう少し何らかの支援を検討していきたいと考えています。  また、学力を上げることで将来の職業の選択肢も広がるなど、学力向上は将来の村の未来像を見据える上でも重要です。秋田県は学力向上に力を入れており、特に東成瀬村は『学力日本一の村』として全国に先駆けて学校教育に力を入れてきました。東成瀬村は当村より規模も小さく、学力支援は自治体の規模に関係ないことが証明されており、本村でも力を入れて進めていきたいと思います。本村には学習塾がなく時間をかけて村外の学習塾に通う児童・生徒も少なくありません。そこで小・中学生、とりわけ中学生向けの学習支援も進めていきたいと思います。教員の指導能力向上はもちろん、専門の教員を呼び、村で学習支援を行うことで学習塾に通う必要がなくなると思います。学習塾と提携している自治体もあり、そういった政策をどんどん取り入れていきたいと思っています。 こうした支援を進めることによって教育に関心のある若者が村内に留まったり、他町村からもそういった政策に惹かれて移住する子育て世代の需要もあると考えています」 日本一の村づくりを目指す  ――産業振興も重要です。  「新たな企業誘致は難しいのが現状です。そこで私は村の宝物だと思っている自然景観を産業振興につなげていきたいと思います。例えば、村内にある湯ノ田温泉は以前は東京都の上野駅に看板が掲げられるなど全国的に有名な温泉です。温泉だけでなく近隣にある強滝は岩と水の造形美も素晴らしく、川沿いの遊歩道は『ふくしま遊歩道50選』にも選ばれています。特に紅葉シーズンは毎年多くの観光客とカメラマンが訪れます。こういった景勝地をさらに増やしPRしていきたい。どんな遠いところでも美味しいものと、自然景観の豊かなところがあれば人は集まります。そういった政策を行うことで交流人口拡充を図りたい。それが村の活性化につながると思います。  村では以前から『まめで達者な村づくり』を進めてきました。これは60歳以上の高齢者などに大豆等の栽培をお願いすることで特産品開発を行うものです。高齢者が一生懸命に汗を流してつくった農産物が循環すれば、生産者である高齢者の健康づくりにつながりますから、あらためて仕掛けづくりを進めていきたいと思っています。商品も納豆や豆腐だけでなく、新たな開発を進めていきたいと思います。村内だけでなく東京農業大学といった外部の意見も頂戴しながら検討していきたいと思っています」  ――手まめ館は今後どういった施設にしていきたいでしょうか。  「私自身、村長就任前は村議を務めながらガソリンスタンドや整備工場を経営してきました。そういった意味で商売の経験は少しあると思っています。もっとも、私自身は工学部の土木学科を卒業しましたので、全く違う業界に入りました。勉強のため最初に行った研修は仙台駅の多くの人が通る一画で『おはようございます』『こんにちは』『ありがとうございます』といった挨拶を繰り返し行いました。最初は嫌でしたが、そういった経験を通して自分自身の自信につながりました。  それを踏まえ、まずは人づくりを進めていきたい。他企業に依頼するなどして人材指導のスペシャリストを招き、勉強会などを通したスキルアップも進めていきたいと思います。今年行われたWBCで監督を務めた栗山英樹さんの著書『育てる力』を読むと、資本主義の父と言われる渋沢栄一さんの講演をまとめた『論語と算盤』を参考に人づくりを進めたそうです。『論語』は道徳であり『算盤』は商売を指しています。渋沢栄一は論語と算盤を通じて道義を伴った商売の追求を説いています。どのような商売であっても結局は『人』が重要です。そういった意味でひとづくりの重要性をあらためて実感しました。人が良くなれば自然と同じ方向を向くと思います。皆『良くしたい』という思いは同じだと思いますから、それぞれの思いをしっかり受け止めていくことが重要だと思っています。そういう意識が全体として高まれば自然とすべてが向上していくと考えています」  ――議長や村議の経験をどう生かしていきますか。  「商売をしていた経験上、自分として大事にしてきたことは村民とのキャッチボールです。村民の声を聞いて『できないことはできない』『できることはできる』という即対応を心がけてきました。また、村民目線で村民の気持ちに立って行動することは議員でも行政の長でも同じです。今後もそういった気持ちを忘れずに行政運営に当たっていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「『大義なきところに人を集まらず』というスローガンを掲げながら『日本一の村つくり』『日本一の里山つくり』を目指すこと念頭に置いて村長選に立候補しました。村民の誰もが方向性は同じだと思います。自分の住んできた村に愛着を持ちながら最高の村づくりを進めていきたいと思います」