【国見町】村上利通町長インタビュー【2024.12月】

【国見町】村上利通町長インタビュー【2024.12月】

経歴

むらかみ・としみち 1964年4月生まれ。東北大経済学部卒業後、1987年に県庁入庁。県生活環境総務課長、県南地方振興局次長を経て今年3月に退職し、11月の町長選で初当選を果たした。

 ――3人が立候補した選挙戦を制し初当選しました。

 「厳しい戦いでした。2515票(得票率49%)という結果は、町政の刷新を訴えたことが一定の評価をいただけたと思っています。無名の新人の私が現職に約500票の差を付けることができたのは、町民の皆様の広い支持があってのことです。責任に身が引き締まります。遊説を重ねると、日を追うごとに励ましの言葉を多くいただきました。さまざまな声を胸に、町民の皆様の暮らし向上のために尽力していきます」

 ――選挙で町内を回る中で、町の課題を多く耳にしたと思います。特にどのような点を重点的に解決すべきと感じましたか。

 「課題は多岐にわたります。選挙では、5つの目標を掲げました。①住民主役の信頼される自治体づくり、②安全安心でいつまでも住み続けられる地域づくり、③互いに支え合い助け合える思いやりのある地域づくり、④誰もがイキイキと活躍できる地域づくり、⑤住んでよかった選んでよかったと実感できる地域づくりです。まずは1番目に掲げた住民の皆様が主役となる信頼される町政を目指します。高規格救急車事業とその報道に始まる混乱した状況を踏まえて、公正かつ透明な行政運営を徹底します。

 住民の方々の話を聞く中で、人口減少・高齢化で、地域コミュニティーの力が弱まっているのを痛感しました。災害時の避難・救助活動や日常の防犯活動に支障が出ます。自助・共助の取り組みを支援する施策を充実させたいです。

 地域経済に関しては、有数の集客施設である道の駅『国見あつかしの郷』の現状に満足せず、魅力をより高めていきます。南の伊達市ではイオンモール、北隣の宮城県白石市では新たに道の駅を造る計画があります。あつかしの郷も新設の観光拠点に負けないように町ならではの魅力を打ち出していかねばなりません。イベントを活用して人の流れを商店街に導き、日常的な賑わいにつなげられないかと構想しています。一方で、道の駅巡りが趣味の旅行者もいます。近隣の観光施設と連携して相乗効果を高めていきます」

 ――前町長は高規格救急車事業の検証結果とその提言を受けて、提言を今後の町の事務執行に生かしているかどうかを検証する委員会を立ち上げるなどの再発防止策を示しました。再発防止策を踏襲するかどうかお聞きします。

 「執行部の予算案や事務執行に対し、議会がチェック機能を果たすのが地方自治体で採用している二元代表制です。執行部があらかじめ議会に代わって検証のための委員会をつくるのは少し趣旨に外れると思います。託された職務をしっかり果たし、今ある仕組みの中でそれぞれが役割を徹底するのが先決です。

 執行部としては、各部署の業務を最終的には私がチェックし、議会に説明を尽くし、理解を得て議決を得ていきたい。事業の中身によっては専門家の知見を伺ったり、住民の皆様に直接意見をお聞きする場が必要だと思います。技術的な点は専門家でなければ判断ができないものもあります。それについては、プロジェクトごとの委員会やアドバイザーに入ってもらうなど、本来当然やるべき方法を徹底します。

 一大事業である高規格救急車事業に関して、第三者委員会の報告書は町長と幹部職員からなる庁議に諮る意思決定プロセスが機能していなかったと指摘しています。町長をはじめ、副町長、課長級職員ら幹部が一堂に会し、施策を吟味する役割を持つ会議ですが、自由闊達に意見が言える場でないと機能は果たせません。行政トップはあらゆる権限と責任を持ち、惰性で会議を続けていればトップの意見が唯一絶対のものとなりがちです。誰でも意見が述べやすいよう風通しの良い会議にし、役場の組織全体にもその風を吹きわたらせます」


信頼される役場を

 ――選挙戦では5つの目標を掲げました。どこから着手しますか。

 「まずは国見町の信頼回復に取り組みます。町政が混乱している姿が全国で注目されました。信頼を修復し、立て直すことが私に課された役目と捉えています。まずは町の主権者である町民の皆様から信頼される役場を目指します。そのためには公正かつ透明な行政運営の徹底が不可欠です。私自身が役場職員と積極的にコミュニケーションを取り、風通しの良い組織を目指します。

 町に住む方が十分な収入が得られるよう産業振興に取り組みます。町の基幹産業は農業です。特に桃の生産量は町村では全国1位です。隣町の桑折町が『献上桃の郷』なら、国見町では『日本一の桃の町国見』をもっと打ち出していきます。あらゆる農業に従事する方々が十分な収入を確保し、『稼げる農業』にするためには、道の駅の活用やプロモーション、農商工業の連携などが重要になってきます。そのための支援を拡充していきたいです。農業、商業、工業が互いに影響を与えバランスよく振興していくことが大切です。商店街では空き地や空き家が目立っています。空き地や空き家を街なかの資源と捉え、賑わいの起点となるような取り組みを考えています」

 ――県職員時代には名古屋事務所長や県南地方振興局次長を務めました。在職中には福島大大学院で経済学を修め、三菱総合研究所に派遣されコンサル業の現場に身を置きました。これらの経験がどのように町に役立てられると思いますか。

 「いろんな方と仕事でお付き合いさせていただいた中で養った考え方やその分野・業界での視点は、必ず町のために役立てられると思います。交遊関係が県内外に広がり、コネクションを持たせていただきました。町民の皆様の意見に耳を傾けることを第一にし、さらに今までの仕事で関係を築き、信頼を置く方々の知恵をお借りしながら、町の課題解決に生かしたいです」

 ――今後の抱負について。

 「産業振興の点で国見町は地の利があります。幹線道路の国道4号が通り、片側2車線に拡張されました。東北自動車道のインターチェンジは、国道4号のすぐ近くにある。東北本線が通り、町内に駅が二つあります。工場など商工業の拠点を今まで以上に呼び込める素地があります。それだけに2022年に過疎地域に指定された時は衝撃でした。産業振興につながる地理的条件はそろっています。将来の展望が開ける町という新たなイメージで見ていただけるように環境を整備していきたいです。

 そのために全国から企業に来ていただけるような受け皿を整えます。工業用地になるのか、住宅用地になるのかは未定ですが、町の発展につながる土地利用ができるよう場所をリストアップしていく予定です」

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