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インタビュー

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

    【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

    【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

     おかべ・みつのり 1959年生まれ。学校法人中央工学校卒。株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選。現在6期目。  ――4月の町長選で6選を果たしました。  「自分なりの選挙を展開でき、それに町民の皆様が応えてくださったのは非常に身に余る思いです。当選させていただいた以上は新たな気持ちで行政運営に当たっていきます」  ――6月には4年ぶりに流鏑馬大会が開催され、秋の例大祭も開催されます。  「町内に流鏑馬保存会という組織があり、これは射手の育成を目的としていますが、その成果発表として例年、春と秋に流鏑馬大会を実施しています。春の陣が4年ぶりに開催され、この間、練習の成果を披露する場に恵まれなかったので、そうした意味でも開催できたことには大きな意義があり、秋の例大祭の前段としても弾みがついたと考えています。ただ、5類に移行したとはいえ、新型コロナウイルスの影響はまだまだ考慮しなければなりませんし、この4年間様々な事情で中止してきた経緯もあるので、再開というよりは新たなスタートを切る気持ちで取り組むべきだと考えています。その一環として例大祭の行列のスタート地点を郵便局から公民館に変更し、今後も様々な変更点やポイントを見直し、次年度の開催に向けて関係各所との協議・検討を進めていきます」  ――林業活性化に向け、町内業者と協力して持続可能な林業を目指す取り組みが進められています。  「まだ具体的な内容は完全に定まっていませんが、国・県の制度を踏まえた中で、間伐を中心に森林整備を実施しているところです。また、県と町と地元事業体で団体を組織し、経営収支をプラスに転換させる経営モデル構築の実証事業を行っています。この取り組みは林業事業体のレベル向上にもつながり、現在、町の森林経営計画は森林組合が森林所有者の代理で構築していますが、ゆくゆくは事業体自身で経営計画を構築することも可能になると考えています」  ――今後の重点事業について。  「以前から道の駅拡張について取り組んでおり、地権者の皆様のご理解が得られそうなところまで来ましたので、これを重点事業の一つに据えて取り組んでいきたいと考えています」  ――6期目の抱負について。  「基礎自治体は厳しい状況にありますが、町民の皆様が、笑顔で住んで良かった、ふるどので良かったと思えるようなまちづくりに邁進していかなければなりません。そのためには町民の皆様のご理解とご協力が不可欠です。『今後ともよろしくお願いいたします』という思いで町政運営に取り組んでいきたいと思います」

  • 【会津若松市】室井照平市長インタビュー

    【会津若松市】室井照平市長インタビュー

     むろい・しょうへい 1955年生まれ。東北大卒。会津若松市議2期。県議1期を経て2011年8月の会津若松市長選で初当選。今年7月に4選を果たす。  ――7月に行われた市長選で4選を果たしました。  「厳しい選挙戦の中、4選を果たすことができたのは市民の皆様のご支援があってこそで、あらためて御礼申し上げます。  4期目の抱負は、市民の皆様それぞれに夢を持っていただくことです。東洋経済新報社が全国812市区を対象に実施している『住みよさランキング』によると、2022年は全国66位で県内自治体では1位、2023年版では全国119位で県内自治体では3位の結果となりました。こうした結果の要因として、子育て支援をはじめとした施策が評価されたものと受け止めています。今後も子育て支援をはじめとしたさまざまな施策に注力し、市民の皆様に住みやすい町に住んでいるという実感を持っていただけるように取り組まなければなりません。住み続けたい、訪れたい、選ばれるまちの実現に向けて今後も全力で取り組みます。  1期目から掲げている『子どもたちには夢と希望を、若者には仕事・雇用を、お年寄りや障がいのある方には安心できるまちづくりを』というテーマを変わらず根幹に据えて、市民の皆様一人ひとりの思いを受け止めながら、市政運営にあたっていきます。また、様々な施策を通して、市民の皆様が郷土に愛着を持ち、地域に対する誇り『シビックプライド』を醸成し、誰もがこのまちで暮らし続けられるように、市民の皆様と共にまちづくりを着実に進めていきます」  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されましたが、観光業をはじめ市内経済への影響はいかがでしょうか。  「観光入込は、コロナ禍前の2019年度には及ばないものの、回復傾向にあります。具体的には、コロナ禍前が300万人だったのがコロナ禍では83万人にまで落ち込み、昨年は146万人にまで回復しました。5類移行後の5月以降はコロナ禍前の水準にさらに近づき、お盆時期を中心に家族旅行での来訪が目立っており、今年は250万人を越える入込が見込まれます。当面はコロナ禍以前の300万人に戻すことが目標です。また、インバウンドはコロナ禍前が2・5万人、コロナ禍には800人にまで減少しましたが、順調に回復しています。今後はコロナ禍前の10倍の25万人まで増加させることを目標としています。教育旅行については、コロナ禍でも好調を維持しており、5類移行後においても平日の観光需要を底上げしています。観光業以外でも、市内の経済状況は回復基調となっており、飲食業界や酒造業界への聞き取りでも、観光客の増加によって売り上げも堅調となっています。一方、原材料や電気代等の高騰は市内事業者に広く影響が出ており、今後も景況感は注視していく必要があります」  ――市役所新庁舎整備事業の進捗状況についてうかがいます。  「昨年10月に設計が完了し、今年3月に建設工事が始まりました。9月上旬時点で基礎工事が行われています。来年には庁舎周辺の道路拡幅工事や駐車場・駐輪場の工事を予定しており、順調に進めば2025年3月に新庁舎が完成し、同年度からの供用開始を予定しています。  新庁舎は、1937年から市の歴史を見続けてきた旧館を引き続き庁舎として保存・活用し、その隣に旧館のデザインを取り入れた地上7階建て、高さ30㍍の庁舎となります。全体の面積は約1万3700平方㍍で、免震構造を採用しているほか、高い省エネ性能を持ち、環境にも配慮しています。また、多くの部局が新庁舎に集約され、窓口利用が多い部局を低階層に配置するなど、市民の皆様の利便性の向上を図っています。この新庁舎が市民の皆様の安全・安心な暮らしを支え、災害時には被災対応の活動拠点となり、さらにはまちの要として、人が集い賑わいを作り出す会津のランドマークとなるよう、引き続き整備を進めていきます」  ――「スマートシティ会津若松」の取り組みが加速しています。  「スマートシティとは、〝便利で住みやすいまち〟を意味しており、本市では2013年3月より『スマートシティ会津若松』を掲げ、生活を取り巻く様々な分野でICTを活用することで、将来に向けて持続力と回復力のある力強い地域社会、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりを目指してきました。  昨年度、本市は『国のデジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ タイプ3』に東北地方で唯一採択され、食・農業、決済、観光、ヘルスケア、防災、行政という6つのデジタルサービスを実装しました。この間、市、会津大学、AiCTコンソーシアムの三者で『スマートシティ会津若松』に関する基本協定を締結したほか、市民の皆様を対象とするスマートシティサポーター制度や、地域の業界団体の方々を構成員とするスマートシティ会津若松共創会議を創設するなど、地域が一体となった推進体制を構築し、取り組みのさらなる深化・発展を目指してきました。  次なる取り組みとして、今秋以降、デジタル地域通貨『会津コイン』を使ったプレミアムポイント事業を開始するほか、今後は国の支援策等も活用しながら、引き続き会津大学およびAiCTコンソーシアムとの連携のもと、市民の皆様や企業の方々が『スマートシティ会津若松』の取り組みの成果を実感していただけるようなサービスを実装し、市民の皆様が生き甲斐と幸せを感じ、〝住み続けたい〟と思えるまちづくり、進学等で本市を離れる若者が、〝いずれ戻ってきたい〟と思えるまちづくりを目指し取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「少子化・人口減少対策は市の最重要課題であり、想定以上に出生数が減り、死亡者が増えているのが現状です。こうした現状を打破するためにも、Uターンや県外のお孫さんが祖父母の住む本市に移住する孫ターンの給付金制度、住宅取得支援や賃貸家賃補助、移住婚祝い金といった形で移住・定住支援に注力していきます。また、昨年実施した『ベビーファースト宣言』のもと、安心して子どもを産み育てる環境づくり、子どもたちがふるさとに誇りを持ちながら多様な学力を身に着ける環境づくりを進めていきます。  ほかにも新規就農者支援、新たな雇用に繋がる工業団地の整備も重要ですので、今後4年間でさらに内容を深化させていきたいと考えています。また、観光庁の『国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業』において、本市と磐梯町、北塩原村でのスキーと観光を軸にする計画が県内で唯一採択されました。今後は他自治体や関係団体との連携を図りながら、冬季間のインバウンド強化に向けて取り組んでいきます」

  • 【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

    【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

     こんの・まさお 1951年生まれ。福島商業高卒。㈱A水技研代表取締役。今年6月、県浄化槽協会会長に就任した。  ――新会長に就任しました。  「就任にあたり3つの目標を掲げました。  1つは合併浄化槽の普及促進です。県内は単独浄化槽とくみ取り式トイレが多く存在しており、汚水処理未普及の解消を図るうえでも、合併浄化槽の普及は必要不可欠です。国や県・市町村と連携し普及を促進していきたいと思っています。  2つはデジタル化の推進です。他業界と比べ協会内のデジタル化は極めて遅れています。IT技術で業務効率化を図り、人手不足などの諸問題を解決できるように意識改革を促したいと思います。  3つは後継者育成と浄化槽のイメージアップです。残念ながら『きれいな仕事ではない』というイメージがあるようで、会員企業からは『求人を出しても応募がない』などの声を多く耳にします。また、各企業が世代交代の時期を迎えている中で、『施工・保守点検・清掃の3業種の相互理解の醸成』の必要性も感じています。3業種の連携強化と次世代を見据えた取り組みを進めます」  ――県内の現状について。  「県内には約28万基の浄化槽が設置されており、そのうちトイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽が約15万基あります。単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換することは全国的な課題となっています。転換する場合の各種補助制度は拡充しており、個人負担は軽減されます」  ――国・県に望むことは。  「当協会は浄化槽ユーザーである一般住民の負担軽減を最優先にしています。残念ながら県内では毎年のように大きな災害に見舞われていますが、浄化槽はインフラ設備でありながらその復旧費用は個人負担となっています。被災浄化槽へのフォロー対策やスピード感のある復旧対応の在り方を明確に示し、対応する市町村担当局や一般住民が困ることのないよう、リードしてほしいと思います。また、合併処理浄化槽が老朽化したり、度重なる地震などで破損するケースも増えています。最新型の浄化槽はコンパクト化・省エネ化が進み、ランニングコストの低減効果があります。更新に対する助成制度の創設、下水道と比較してやや高額となる維持管理費用の助成制度創設など、住民負担の軽減対策を積極的に進めてほしいです」  ――今後の抱負を。  「恒久的で重要な汚水処理インフラである『浄化槽』への認知度が極めて低いことに強い危機意識を持っています。まずは業界体質の変革が必要です。現代社会の変化スピードに対応できているとは言えず、相当遅れていると感じます。人手不足解消策としてIT技術の導入はもとより、施工から維持管理まで浄化槽に関わる関係者の人材育成や待遇の在り方も抜本的な見直しが急務です。これからの時代に即した企業体系にシフトできるよう意識改革を行いながら永続性を確保し、安定的な業界となるよう進化していきます」 福島県浄化槽協会のホームページ

  • 【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

    【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

     さとう・としひこ 1951年2月生まれ。佐藤産業㈱代表取締役。2007年5月から県産業廃棄物協会長を務め、2019年4月から現職。  ――燃料費・光熱費の高騰が続いています。  「高騰分は処理費用の中に反映させますが、なかなか排出事業所に認めていただけないのが実情で、理解をいただくのに時間もかかり、現段階では会員企業の多くが経営的に非常に厳しい状況が続いています。今年8月に全国産業資源循環協会が景況動向調査を行ったところ、全国的にも大変厳しい状況が続いています」  ――労働安全衛生運動に取り組んでいます。  「我々の業界は労働災害が他産業に比べて非常に高い水準にあります。一時期は建設業の4倍だった時期もあり、2010年度に労働災害防止計画を策定しましたが、昨年は残念ながら休業4日以上の死傷者数は22名でした。特に墜落・転落事故や挟まれたり巻き込まれたりと転倒事故が多いのが実情です。そこで5月に全国産業資源循環連合会との連携のもと第3次労働災害防止計画を策定しました。次の事項について重点事項をまとめて会員の皆様と実施しました。まずは経営者の意識改革。経営者のリーダーシップの下で労使が一体となって労働安全衛生対策に取り組みました。二つ目が労働災害防止活動の推進です。安全衛生規程を作成し、それに基づき労働安全衛生活動に従業員として的確に対処できるようにしていきたい。今年は会員企業の代表者を対象としたトップセミナーをビッグパレットふくしまで開催しましましたが、100名ほどが集まり関心の高さを実感しました。9月からは各方部に分かれて労働安全衛生についての講習会も行っていますが、会員企業のみならず非会員企業にも意識を高めてもらいたいと思っています。ただ残念ながら5月の段階で11名の死傷者数が確認されているのが現状です。もう一度協会全体で真摯に取り組み労働災害発生の減少に向けて会員企業はもちろん非会員企業にも安全衛生の意識を高めてもらいたいと考えています」  ――今年度の重点事業について。  「1つは先ほど言った労働安全衛生活動の推進です。2つはカーボンニュートラルの推進。2050年に向けて取り組んでいきたいと思います。3つは会員の処理技術の向上です。処理技術向上のための講習会に対する補助等を行い、技術向上と人材育成を図っていきます。4つは県内では自然災害が頻発しており、協会と県で大規模災害時における災害廃棄物処理等の協定を結んでいます。それに基づき、災害が発生した際は、できるだけ早く対処したいと思っています」  ――今後の抱負。  「昨今、我々の業界は求められることが多く、カーボンニュートラルはもちろん、サーキュラーエコノミー社会の関心も高まっています。サーキュラーエコノミーは日本語に訳すと循環経済ということですが、協会一丸となって取り組んでいきたいと思っています」

  • 【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

    【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

     こくぶん・まもる 1966年9月生まれ。郡山市出身。東北学院大卒。89年に福島県庁入庁。総務部政策監、観光交流局長などを経て、昨年4月から現職。  新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。とはいえ、コロナがなくなったわけではなく、まだまだ注意が必要だ。そんな中、県ではどのような対応をしているのか。健康・福祉などのその他の課題と合わせ、県保健福祉部の國分守部長に話を聞いた。(取材日9月12日) 県民が健康で幸福を実感できる県づくり  ――5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。  「5類移行により、法律に基づき行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、県民の皆様の自主的な取り組みを基本とする対応に変わりました。  県では5類移行後も迅速な対応を図るため、知事をトップとした福島県新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議を設置し、関係課長による会議を毎月開催するなど、感染状況の把握と情報共有に努め、基本的な感染対策について注意喚起を図ってきました。また、医療提供体制については、法律に基づく入院措置による行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応への移行を段階的に進めています。  新型コロナウイルス感染症の波は、今後も繰り返されることが予想されています。感染が拡大すると医療機関への負荷が高まるとともに、高齢者や基礎疾患のある方などの重症化も懸念されます。県では、引き続き、感染状況や医療負荷の状況に注視しながら、感染拡大防止のための情報発信や医療提供体制の確保に努めていく考えです」  ――8月20日までの1週間に県内82の定点医療機関で確認された感染者は増加傾向にあります。  「新型コロナウイルス感染症の新規患者数の定点あたりの報告数は、6月中旬以降増加しています。特に、8月14日から20日までの1週間は、25・27人と前週から2倍近い増加となり、全国平均の17・84人を大きく上回りました。その後は緩やかになったものの増加傾向は続いており、8月28日から9月3日までの1週間では27・62人となっています。昨年夏もお盆期間の前後にかけて新規陽性者が増加していたことから、夏休みやお盆期間中に人の流れが活発化したことが影響しているものと考えています。  県民の皆様には、換気や場面に応じたマスクの着用、手洗い・手指消毒などの基本的な感染症対策を徹底いただくとともに、発熱やのどの痛みがあるなど普段の体調と異なる場合には外出に留意し、検査キットによる自主検査を行うなど『うつさない』行動を心掛けていただくようお願いします」健康長寿県を目指す  ――県では2035年度までを期間とする「第三次健康ふくしま21計画」の策定を進めています。  「県では、総合計画で『全国に誇れる健康長寿県へ』を重要な施策に位置付け、県民の健康づくりに力を入れています。本年3月に『第二次健康ふくしま21計画』の最終評価を公表しましたが、健康寿命の延伸や要介護高齢者の抑制等は目標を達成した一方で、メタボリックシンドロームの該当者やがん検診の受診者など、健康指標の多くは依然として低迷していることが明らかとなりました。特に本県はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量がワースト2位など、震災以降の生活習慣の変化等により全国の中でも下位にあり、その改善のためには、県民一人ひとりが自身の健康の大切さに気づき、自分に合った健康づくりを実践していただくことが重要です。そのため、幅広い年代に楽しみながら健康づくりに取り組んでもらえるよう、健民アプリを活用して日々の体重を記録し適正体重を目指す『ふくしま測って体重チャレンジ』の実施、野菜から食べ始めるベジ・ファーストの推進、惣菜を段階的に減塩しスーパーで販売する食環境づくり事業などに取り組んでいます」  ――介護・障害福祉施設では人材不足が顕著です。  「県では、県内各地で開催する合同就職説明会をはじめ、優秀な介護職員や労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与のほか、介護職員の負担を軽減する介護助手の配置やワーク・ライフ・バランスの推進につながる週休3日制を導入する施設に対する支援など様々な事業に取り組んでいます。  また、若い世代の介護への関心を高め、理解を促す取り組みとして、今年度は新たに、親子を対象に介護の魅力とやりがいを伝える参加型イベントを開催するとともに、若手介護職員や全国で介護の魅力発信を行っている方を高校に派遣し交流会等を開催するなど、イメージアップを強化しています」  ――今年度の重点事業について。  「今年度は重点事業として、避難地域の医療機関等の再開を支援し、医療提供体制の再構築を推進する『避難地域等医療復興事業』、県民の健康指標を改善するため健康行動の実践を促す『ふくしまメタボ改善チャレンジ事業』、介護支援ロボットやICTを導入することで介護職員の離職防止と定着促進を図るとともに人材不足を補う『ICT等を活用した介護現場生産性向上支援事業』などに取り組んでいます。  震災・原子力災害からの復興・再生を成し遂げ、急激な人口減少や社会情勢の変化に対応できるよう、職員一丸となって効果的な施策を展開していきます」  ――地方の立場から国に要望したいことはありますか。  「新型コロナウイルスは5類感染症に移行しましたが、新たな感染症等の発生にも留意しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向け、平時から準備を整えておくことが必要です。このため、国には感染症対策や災害時医療を提供する医療機関の平時からの人的・財政的負担について支援いただくとともに、地域偏在や診療科偏在の解消等も含めた医療人材の確保に向けた対応を要望しています。 また、コロナ禍において健康づくりの重要性が再認識されたことから、国民の健康を守る取り組みを一層強化していく必要があります。健康づくりの推進に向け、社会全体での意識醸成に国が率先して取り組むとともに、自治体や医療関係者等の連携強化、市町村による格差を防止するための財政的な支援等の拡充を要望しているところです」  ――今後の抱負。  「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、関係する全ての方々と連携しながら、全力で取り組んでいきます」

  • 【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

    【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

     みどりかわ・あけみ 東日本国際大学卒。東日本国際大学・いわき短期大学キャリアセンター勤務を経て現職。東日本国際大学・いわき短期大学東京事務所長、キャリアセンター顧問も兼務している。  今年創立120周年の節目を迎えた学校法人昌平黌(いわき市、緑川浩司理事長)。いわき市で、いわき短期大学附属幼稚園、東日本国際大学附属中学・高校、いわき短期大学、東日本国際大学を運営しており、各施設で「人間力」を重視した教育を展開している。具体的な教育内容や今後の展望について、緑川明美常務理事に話を聞いた。 「人間力」重視の教育を展開し、地域とともに歩んでいく。  ――学校法人昌平黌では、東日本国際大学をはじめ、さまざまな教育機関を運営しています。教育の特色を教えてください。  「当法人の教育理念の根幹に位置づけられるのが、建学の精神である孔子哲学(論語)です。孔子哲学を土台にした〝人間教育〟を一貫して大事にしており、幼児教育・学問との融合・融和を図り、『人間力』の育成に努めています。  一例を挙げますと、同短大幼児教育科では未来を担う子どもたちを教育する人財を育てています。孔子の論語を踏まえ、思いやりの心である『仁』、人間社会の規範に立って礼儀を重んずる『礼』を体現できる、自分は元より相手を思いやれる人間教育に傾注しています。また、人間尊重の精神はすべての学校に共通している点を付言したいと思います」  ――「人間力」を重視した教育について具体的に教えてください。  「当法人が打ち出す『人間力』は、開学からの『義を以て行い其の道に達す』、創立120周年を機に森田実名誉学長より贈られた『克己復礼為仁(己に克ちて礼に復するを、仁と為す)』に集約され、教育方針の確固たる軸となっています。『義』とは自分自身と真剣に向き合い、内面の部分から成長を促すことです。自信が持てない、引っ込み思案な生徒・学生でも、己と向き合い長所や素晴らしい個性に気づくことで、自信に満ちた朗らかな性格に変化していく姿を数多く見てきました。  また、最初から目的意識を持っている生徒・学生でも、実習やボランティアなど他人とのかかわり合いや異なる環境に身を置くことで、あらためて自分自身を見つめ直しながら成長していきます。  『克己復礼為仁』とは、究極の人間性である『仁』の実践について、孔子が説いた言葉です。ここでの『礼』とは単に儀礼作法にとどまるものではなく、人と人とのつながりの尊さを説く『和を以て尊しとなす』の精神そのものです。これも人間力の育成にとても重要な教えであり、社会活動では、目標に向かって知恵を絞り一緒に頑張れるかどうかが問われる局面があります。『和』を重んずる団結力こそが社会を前進させる原動力と認識しています」  ――今年で創立120周年を迎え、6月22日に記念式典が執り行われました。率直なご感想と今後の抱負についてうかがいます。  「創立120周年のスローガンは『夢をはじめよう』としました。10年前の創立110周年を迎えた際のスローガンは『踏み出す 次代への挑戦』でした。その2年前に東日本大震災が発生したのを受けて、〝ピンチ=チャンス〟という強い思いが込められています。非常事態の中、教職員とともに園児、生徒、学生のために何ができるのか、皆で知恵を絞って、さまざまな苦難を乗り越えることができました。あらためて振り返ると、他者への思いやり、つまりは『建学の精神』が息づいていたからこそ実現できたと痛感しています。創立120周年を迎えるに当たり、これまでの困難を克服したうえで、夢に向かって歩んでいこうとの強い思いを込めて新スローガンを決定しました。  創立120周年記念事業の一環として、8月に竣工したいわき短大附属幼稚園新園舎の整備が挙げられます。旧園舎の老朽化が課題となっていましたが、さらなる幼児教育の充実を図るべく、節目の年に新園舎建設に踏み切りました。開放感があり、木の温もりや自然との共生を肌で感じられる素晴らしい園舎です。  当法人には小学校がありませんが、幼稚園から始まる人間教育を中学・高校への架け橋とすべく、同幼稚園の卒園生を対象とした『昌平塾』の開設に向け鋭意整備を進めています。  また、創立120周年を迎えるにあたり盤石な未来を拓く『三つのビジョン』として、①『人間教育』こそ教育の原点、②地域貢献の人材を輩出、③地域に開かれた大学――の3点を掲げ、地域とともに歩み、地域に根差した揺るぎない発展を目指したいと考えます」  ――大学・短大の学生の自己実現について、どのようにサポートしていますか。  「自己実現の根源は夢や目標です。当法人では学生の目的意識の醸成と主体性を尊重したサポートに注力するとともに、学問や就活を問わず一人ひとりに真摯に向き合ったきめ細やかな指導ができる点が大きな強みと考えます。アットホームな環境も魅力の一つですし、教職員も学生一人ひとりに真剣に寄り添う意識がとても高いと実感します。  中・高、短大、大学を問わず、生徒・学生に共通しているのは、人間として『素直な心』を備えていることです。素直な人ほど社会人となってから明らかに成長する、また、『和』を重視する協調性も豊かだと言います。あらためて『素直な心』は人間力・成長力の源泉だと思います。今後も一人ひとりの『素直な心』を大切にする人間教育に一層注力していきます」 台風被災地区で支援活動  ――地域社会への貢献にも尽力していますが、今後の展開について。  「当法人が運営する学校の規模は決して大きくはありません。しかし、福島復興創世研究所をはじめとする11の研究所・研究センターを擁しており、所轄分野は多岐にわたります。  その多くは地域との深い関わりを持っています。少子高齢化など切実な課題を抱える地域社会の中で、無関係でいるということはあり得ません。むしろ地域の活性化と発展を担うという重要な使命を持つのが教育機関だと考えます。  地域貢献と言えば、去る9月8日の台風13号では、東日本大震災と令和元年東日本台風で被災・支援活動の両方を経験している職員が、本学ボランティアセンターを率いて連日に渡り支援活動を行っています。ボランティア隊メンバーは本学強化指定部の柔道部と野球部の学生で、本学バスから大きな体格の若者たちが現れたことで、地域の方々から『姿を見てとても心強く安心した』『いわきに東日本国際大学があって良かった』等々、たくさんの感謝とともに励ましの言葉もいただきました。  地域の未来をどう創造し、開いていくか、が問われている社会情勢です。当法人は時代の最先端を走る教育・研究の『知の拠点』としての責任を自覚し、地域社会の抱えるさまざまな問題を解決するため力を尽くしていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  一般社団法人・福島県建設業協会は5月に総会を開き、長谷川浩一会長(堀江工業社長)を再任した。新たな任期に入った長谷川会長に、大規模化・頻発化する災害復旧などへの対応や、働き方改革・担い手不足への対応、公共工事の入札で不祥事が相次いでいる問題への対策、業界の課題などについてインタビューした。 県土発展に貢献できるように課題克服に取り組む。  ――役員改選を経て会長職続投となりました。この間を振り返って。  「会長就任時の令和元年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、まさにコロナに翻弄された2期4年間でした。また、この間は、東日本大震災の復旧・復興事業が総仕上げを迎える一方で、史上最大級の台風被害となった令和元年東日本台風や、2年連続で発生した福島県沖地震などの大規模自然災害も頻発しました。建設業協会は地域の守り手として、昼夜を問わない応急業務対策への従事により、県民の安全・安心を確保しながら、復旧・復興工事の着実な進捗を担うなど、地域建設業の役割を全うできたと考えています」  ――来年4月から建設業でも時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となり、働き方改革の重要性がより高まっています。  「働き方改革については、ICT活用や現場技術者に対する支援などにより、時間外労働時間の短縮を図った具体的かつ先駆的な事例を紹介するとともに、当協会の働き方改革等検討ワーキンググループで作成したQ&A集を活用した会員への助言など、本会の『働き方改革行動指針』に基づき、会員企業の労働環境の改善を支援していきます。また、公的発注機関に対して、実態に見合った現場経費の積算、熱中症対策や書類作成に要する時間を加味した適正な工期設定、週休2日に対応した設計労務単価の引き上げなど、働き方改革を進めるために不可欠な対応を引き続き求めていきます。  一方、民間工事では依然として厳しい工期設定による工事契約が散見され、働き方改革が進まない一因となっています。今後は労働局の協力を得て、経済団体や大手企業に対し長時間労働削減への協力要請を行うなど、民間発注者に対しても建設業の働き方改革に対する理解と協力を求めていく考えです」 入札絡みの不祥事に遺憾  ――昨年、「第二次ふくしま建設業振興プラン」が策定されました。  「このプランでは①『経営力の強化、生産性の向上』、②『担い手の確保・育成』、③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の3つを根幹に据え、その達成に向けた取り組みを進めていきます。  具体的には①『経営力の強化、生産性の向上』の実現に向け、国や県と連携し、ICT技術の活用や建設DXの推進に向けた研修会の実施、各種情報提供を行うとともに、関係機関に対しては会員企業のICT機器の導入促進に向けた補助制度の充実などの支援を求めていきます。  ②『担い手の確保・育成』に向けては、これまで高校生を対象とした現場実習やインターンシップの開催、小・中学生を対象とした職業体験や現場見学会の開催、SNSを活用した建設業の魅力発信など、若年層を対象としたさまざまな広報活動を実施してきました。今年度は協会ホームページの全面リニューアルや道の駅での建設業のPRといった新たな取り組みを通じて、より広い年齢層に建設業の役割や魅力を発信していきます。技術者育成については、令和3年から開講した『土木初任者研修(前期)』に加え、令和4年からは後期講習も開講し、経験が浅い若手技術者の育成に注力しています。また、産学官連携による技術者育成である『ふくしまМE(メンテナンスエキスパート)』は、昨年度までの育成講座開催による認定者が700人を超えており、今後とも地域インフラの維持管理を担う技術者育成制度の充実に努めていきます。  ③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の実現に向けては、大規模化・頻発化する災害に加え、昨年発生した鳥インフルエンザの対応などを踏まえ、協会としての防災対応力を高め、『地域の守り手』としての社会的役割を果たしていきたいと考えています。現在はラインワークスを活用した災害時の連絡網の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害対応への強化を進めています。今年5月には、県より災害対策基本法に基づく『指定地方公共機関』の指定を受け、当協会が災害支援を担う公的な団体に位置付けられました。災害時の我々の役割が一層高まっているので、今後も大規模災害に備えた組織強化に努めます」  ――最近は公共工事の入札における設計金額の情報漏洩や贈収賄などの不祥事が相次いでいます。  「県内建設業界は、平成18年の公共工事に絡む不祥事によって社会的信用が大きく失墜した経緯から、猛省して不断に法令順守の徹底に努めてきました。その後、東日本大震災や豪雨災害等での初動対応やインフラの復旧・復興への貢献、様々な社会貢献活動を通じ、徐々に県民の信頼回復への手応えを感じていたところです。しかし残念ながら、近年公共工事に絡む不祥事が続いております。これは公正で透明性の高いものであるべき入札制度を貶め、建設業に対する県民の信頼を著しく失墜させる重大な犯罪行為であり、誠に遺憾なことと受け止めています。これらの事件を一会員企業の問題ではなく、協会全体の問題と捉え、会員に対してさらなる法令順守の徹底と、企業倫理の確立についてあらためて要請しました。今年度も引き続き、関係法令への理解を深め、コンプライアンス順守の機運を醸成する研修などを継続的に実施し、再発防止に努めていきます」  ――今年度の重点事業について。  「少子高齢化の進展に伴う就業人口の減少は、全産業共通の課題ですが、県内建設業界はより深刻な状況で、この中で若年者の入職・定着を促進するためには、建設業に将来を託すことができ、安心して働き続けられる新4K(給料・休日・希望・かっこいい)の魅力ある業界にすることが不可欠です。そのために協会として、働き方改革と担い手確保という相互に関連する2大課題について重点的に対応していく考えです」  ――今後の抱負。  「建設業界では、今後も担い手不足や事業継承問題などが懸念される中、建設DXを活用した生産性の向上や、SDGs・カーボンニュートラルへの対応といった新たな課題も山積しています。協会としては、建設業が地域の基幹産業として引き続き県土の発展に貢献していけるよう、『協会として何ができるか』を常に自問自答しながら、会員各社の知恵や経験を結集し、組織力を発揮することで課題の克服に取り組んでいきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 原発事故に伴う風評被害や、自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 生産者の所得が確保される形を早期に実現したい。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから1年超が経過しました。この間を振り返っての感想をお聞かせください。  「昨年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、県内では2021年2月、2022年3月に2年連続で福島県沖地震が発生し、新型コロナ感染症の拡大等、課題が山積する中、昨年6月に会長に就任しました。  肥料や燃料・飼料等、様々なものが高騰し農家経営は厳しさを増していきました。国や県へ要請活動を行ったことにより、飼料購入助成等が認められたことは、農家の窮状が理解されたとともに我々の活動が認知されたのかなと思っていますが、その一方で廃業に追い込まれた酪農家・畜産農家の方もいます。そのすべてが飼料高騰に起因するものとは言い切れませんが、もっとできることがあったのではないか、との思いも抱いています」  ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、2022年から2024年までの中期計画が策定されました。そのうち、農業産出額を震災・原発事故前の水準である2330億円まで回復させる目標を設定しましたが、その見通しについて。  「2330億円の早期実現を目標に取り組んできましたが、2021年度の農業産出額は1913億円となりました。大きな要因の1つに、復興すべき地域の復興が遅れている現実があります。もう1つは、想定していた以上に米価が下落してしまったことがあり、厳しい状況にあると思っています。  そうした中、水田(コメ)から国内需要の多い野菜等に作物転換していただく取り組みをスタートして2年目に入っています。そういった意味では新しい動きが出てきた年になったと思います」  ――「第41回JA福島大会」では、米の生産過剰基調により、生産品目の見直しが必要なことから、国産需要が見込まれる園芸品目への生産シフトを進めるため、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進める、ということも決議されました。その内容と進捗状況について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は既存産地のさらなる生産振興を図るとともに、基盤整備地区における高収益作物の大規模振興、園芸振興の取り組みを加速化させていくことを目的としています。  各JAが、これまで栽培した品目等を検討しながら、地域に合ったもの、あるいは新規で需要がありそうなものを検討してもらっています。5JA12地区で、きゅうり、ピーマン、アスパラガス、ねぎ、いちご、トマト、カスミソウなどの栽培に取り組んでいます」  ――中期計画では「組織基盤強化戦略」も大きな目標の1つに設定され、その中で組合員の維持・拡大、とりわけ、「女性組合員拡大」が目標に設定されましたが、その狙いと見通しはいかがでしょう。  「『第41回JA福島大会』で決議された中期計画の柱の1つに『組織基盤の強化』があります。いままで中心となって活動をしてきた人が高齢になり、新規就農者が定着しない中、組合員の維持・拡大は容易でない状況です。そんな中、正組合員の拡大と意思反映の強化のため、女性組合員の拡大、女性の経営への参画を進めています。2022年度末で、正組合員における女性の比率は20・4%で、前年度より増えていますが、さらなる拡大を目指します。  やはり、女性部ではどういうことをしているのか等々を理解していただくことが仲間を増やす第一歩になると思います。女性部の中には『フレッシュミズ』という組織があり、それが定着できずにいる地区もありますから、県内全体でフレッシュミズが構成されるように進めていきたいと思っています。女性部組織が楽しく、自らの経営や暮らしに役立つ組織であるということをいかにしてPRできるかが重要になると思います」 就農支援センターの実績  ――今年4月に、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。同センターの意義、これまでの実績等について。  「県に対し『新しく農業を始めたい人や規模拡大などを考えている生産者からの相談にワンストップ・ワンフロアで対応できるような仕組みづくりをしてほしい』と要請し続け、念願叶い、今年4月に、県、JAグループ、農業会議、農業振興公社が集う支援センターが自治会館の1階に開所しました。このような体制は福島県が最初だったこともあり、他県からの視察などもあります。中身については、電話相談、支援センターへの来訪、あるいはこちらから出向くなどの方法で対応しています。相談者も親から受け継いでの就農、全くの新規就農者、あるいは県外からの移住者など多種多様で、法人の新規参入相談もあります。  相談件数は4月から6月の3カ月間で298件に上り、内訳は就農相談が186件、経営相談が103件、企業等の参入相談が9件となっており、昨年同期と比較すると約2倍になっています」  ――東日本大震災・原発事故から12年超が経過しました。この間、福島県農畜産物は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、今後予定されているALPS処理水の海洋放出に伴うさらなる影響・懸念等について。  「処理水の問題は、農業分野においては、風評が懸念され、それらが最小限度で収まってほしいと思っています。我々が求めるのは、科学的な知見による安心感の伝達と、もし風評が発生した場合は、この12年間で賠償フレームができていますから、それらに基づいて対応をしてもらうことです。協議会員、生産者の方々が不安に思うことがないよう、対応していきたいと思います」  ――今後の抱負。  「毎年のように自然災害が発生し、しかも大規模化していくような気象環境になっていますので、まずは災害に強い生産基盤づくりを進め、従事する人々が生産意欲を持って取り組むことができ、所得が確保されるような姿を早く実現したいと思っています。そのためにも、先ほどお話しした『ふくしま園芸ギガ団地構想』の早期実現や就農支援センターが担う役割は大きいと思います」

  • 【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    すがま・やすいち 1959年生まれ。福島大中退。福島県総務部政策監、福島県観光物産交流協会常務理事、玉川村副村長などを歴任し、今年4月の玉川村長選で初当選。    ――玉川村長選では新人3人による三つどもえの激戦を制して初当選を果たしました。  「副村長を3年間務めていたものの知名度不足は否めず、苦戦を覚悟していました。ただ、支持者の皆さまに『顔と名前』の浸透に注力していただいた結果、日を追うごとに村長選への関心が高まり、村民の皆さまの政策への理解が深まっていくのを実感しました。あらためて村民の皆さま方に当選させていただいたと痛感するとともに、身が引き締まる思いです。選挙戦で寄せられた期待に応えるためにも、公約を着実に実現していかなければならないとの思いを強くしております」  ――1期目の重点施策について。  「『生まれて良かった、住んで良かった、選んで良かった玉川村』を基本コンセプトに掲げています。時代や社会の変化とともに進化しながら、村民の皆さまが安心・安全を実感し快適に暮らせる生活環境、質の高い行政サービスを提供していくことが何より肝要です。  喫緊の課題としては、人口減少対策が挙げられます。人口流出を阻止し、移住者等を増やす政策が必要となります。仕事・住居・教育・医療・子育て支援の充実と生活インフラの整備に加え、移住支援金をはじめ、移住者への手厚い支援など『総合政策』として取り組む必要があります。関係人口の創出と都市部からの移住・定住や二地域居住などを積極的に推進し、地域の活性化、振興策を講じていきます。  次いで、阿武隈川遊水地群整備計画です。村内で収穫量が最も多い優良な農地が買収されるなど、今後の村づくりに大きな影響を及ぼしかねない国家プロジェクトです。住居などの移転を迫られる方々が、これまでの生活の質を確保しながら安心・安全に暮らしていける環境を整えるのが本村の重要な役割と認識しています。対象者一人ひとりに寄り添った対策の実現に向け、国としっかり協議調整していきます。  そのほか、①複合型水辺施設を中心とした『かわまちづくり事業』、②旧須釜中学校校庭を活用した宅地造成事業、③泉郷駅前の活性化などのプロジェクトの推進、④基幹産業である農林業や商工業の振興、⑤いわゆる交通弱者対策としての『高齢者等QOL向上サービス実証事業』の展開と来年度以降の事業化、⑥地域のデジタル化推進を踏まえたプレミアム率30%の『デジタル商品券』の発行〝手ぶらキャッシュレス〟事業、⑦高齢の方々が末永く幸せに暮らしていけるための健康寿命の延伸事業――など、多様なニーズを把握しながら、地域に合ったきめ細かなサービスを提供できる仕組みづくりに鋭意努めます」  ――今後の抱負を。  「4月30日の就任から約4カ月が経過しました。この間、村民の皆さまをはじめ、職員、議会のご理解とご協力に深く感謝致します。『だれもが誇りを持てる魅力ある活力ある元気で豊かな玉川村』の実現に向け、皆さまのご意見やご要望に真摯に向き合いながら、本村における課題解決にしっかりコミットする『玉川モデル』としての施策の展開に邁進していく考えです」

  • 【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    うすき・ともき 1948年4月生まれ。喜多方商業高(現・喜多方桐桜高)卒。西会津町総務課長、副町長などを歴任。2017年7月の町長選で初当選。現在2期目。  ――昨年8月の大雨被害の復旧状況は。  「本町は未曾有の大雨による被害を受けました。発災後は、現地調査、測量設計を迅速に進め、施工可能箇所のうち、農地・農業用施設を含めたすべての被災箇所の工事を昨年度中に発注し、早期完成を図ってきたところです。特に水田については、今年の作付けに間に合うように工事を進めてきました。残る町道久良谷線については、難易度の関係から2024(令和6)年度の再開通を目指しています」  ――新型コロナウイルス感染症が5月8日から感染症法上5類に引き下げられました。  「この間、『なつかしcarショー』をはじめ、祭礼、各種総会、盆踊り、ビアガーデンが通常開催となりました。また、飲食を伴う会合なども再開され、飲食店も活気が戻りつつあります。今後もこれまで中止・規模縮小を余儀なくされた各種スポーツ大会などの行事が従来通り再開する運びとなります。一方、『Withコロナ』の観点から、引き続き感染防止対策にも努めていく考えです」  ――物価高の地域経済への影響について。  「ガソリン代、電気代、生活必需品に至るまで値上げとなり、町民生活に影響が及んでいます。冬季の暖房費の負担増を懸念しています。本町では、家計負担の軽減を図るべく、給食費の一部補助を実施しているほか、9月には商品券第6弾として、町民一人当たり5000円の消費再生商品券の発行を予定しています。また、町内事業所も収益が圧迫されている現状もあることから、100万円を上限に『中小企業等エネルギー価格高騰対策支援補助金』を創設し、支援策を講じています。そのほか、公共サービス事業者や町内商店向けの支援にも努めています」  ――その他の重点事業について。  「移住・定住の促進、空き家対策、結婚・出産祝い金の継続といった人口減少対策・子育て支援策の推進はもちろん、『西会津町デジタル戦略』に基づきDXをさらに加速させていきます。基幹産業である農業の振興を図るため、町農業公社を設立するほか、最新デジタル技術を駆使して生産者と消費者との〝絆〟を結び、西会津産米の販路開拓や農業所得向上につなげる『石高プロジェクト』を展開します。このほか、人手不足解消を図る仕組みづくりとしての『特定地域づくり協同組合』設立、人生100年時代を見据えた健康長寿・健康寿命延伸事業、西会津診療所の医療体制の強化、『日本の田舎、西会津町。』による町のブランド力強化、ふるさと応援寄付金の取り組み強化による自主財源のさらなる増額などにスピード感をもって取り組みます」

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    みやた・ひでとし 1950年2月生まれ。東北工業大工学部卒。2000年から塙町議3期。2016年の町長選で初当選し、現在2期目。  ――役場新庁舎の工事が進んでいます。 「建築費高騰を心配していましたが、影響は少なく、現在の進捗状況は30%弱で、順調に進んでいます。来年4月には完成し、5月中の開庁を目指しています。その後、現庁舎を解体し、駐車場と書類等を保管する書庫棟を建設する予定となっています」 ――「子ども第3の居場所b&gはなわ はなまるはうす」が開所しました。 「はなまるはうすは、日本財団とB&G財団が連携する『子ども第3の居場所』プロジェクトの一環として、家庭や学校だけではなく、子どもたちがのびのびと過ごせる第3の居場所を提供しています。 5月に開所し、まだ数カ月ですが、おかげ様で23名が利用登録をしています。利用する子どもたちも楽しそうで、教育施設ではありませんが、個別学習室もあって宿題をしたり本を読んだりして自由に過ごしています。また、同施設では地域の食材を使用したバランスの良い食事を提供しており、子どもたちが美味しそうに食べていました。町内の方々からお米や野菜の寄付をいただき、大変助かっています。最近は兄弟姉妹のいない家庭も多く、学校ではない場所で様々な世代の子ども同士がコミュニケーションをとるのは、とても良い機会だと思います。夜8時まで預けることができ、保護者の評判も上々です。 今後は、子どもだけでなく高齢者が子どもたちと料理をつくったり、高齢者が子どもたちに習字や将棋を教えたり、さらには子どもたちが学校の時間は高齢者の集会施設としての利用や一人暮らしの高齢者が食事をするといった、高齢者にとっても『第3の居場所』になるような施設のモデルを目指していきたいと考えています」 ――自転車での地域振興を進めています。 「東白川郡4町村で組織する『東白川地方自転車活用推進協議会』を中心に、自転車を活用した地域活性化を目指しています。それが県にも認められ、県で自転車道の整備を積極的に進めていただいています。また、自転車をそのまま列車に持ち込める水郡線サイクルトレインは、JR東日本管内では水郡線だけで、これまでは有人駅だけ利用可能でした。そこで協議会で要望活動を行い、無人駅である磐城塙駅と棚倉駅でも利用可能となりました。利用者からの評判も良く、今後も4町村が連携して進めていきたいと思っています」 ――今後の抱負。 「この町を次の世代にしっかり繋いでいき、持続させていくという使命があります。そのためにも今後も様々な施策を行っていきたいと思います」

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

    【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」

  • 【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    うえすぎ・けんたろう 1975年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。荒井広幸参院議員秘書などを経て2017年の衆院選(比例東北)で初当選。現在2期目。外務大臣政務官などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定を受け、県南・県中地域からなっていたこれまでの3区は、新2区と新3区に再編された。県南を地盤とする自民党の上杉謙太郎衆院議員(48)は、小選挙区を離れて比例東北から立候補することになった。自身を育ててくれた支援者への思いと、今後の方針を聞いた。  ――区割り改定を受け県衆院比例区支部長に就任しました。次期衆院選では比例東北ブロックから立候補します。これまでの経緯と現在の心境を教えてください。 「今回の区割り変更によって次の選挙については選挙区から出馬できず比例に回ることとなりました。私自身大変残念でありますし、今は状況を受け入れておりますが、昨年以来自分の中で相当な葛藤がありました。それはやはり今までご支援いただいていた旧3区の皆様の直接的な支部長ではなくなってしまうからです。これは地元の代表たる代議士にとっては致命的なことです。加えて、旧3区の皆様には秘書時代から含めると20年弱お世話になっています。本当に大切な方々であります。支援者の皆様に大変心苦しく申し訳ない思いでおります。法改正により仕方のないこととはいっても、複雑な思いの中で了承いたしました。 新2区には旧3区から須賀川、田村、石川地方が再編されています。旧2区時代の選挙全てに根本匠先生が出馬しており、かつ1度を除き全勝しています。また根本先生は自民党県連会長であり、岸田文雄総裁が率いる派閥の事務総長でもあり、実績も多々あります。新2区の大票田となる郡山市を地盤としており、そもそも新2区における支部長選任にあたっては私は選択肢に入っていなかったようです。一方新3区は、そもそも3区支部長が私であったことと、新3区に残った県南は前回選挙で私が勝利していることから、私も菅家一郎先生とともに選択肢に上がっておりました。どちらを選挙区支部長にするかについて、会津と県南における有権者数、両地域における過去の選挙での得票数や選挙区での党員の確保数、参議院選挙をはじめ自らが選対本部長等を務める選挙での貢献度、会津地域の地域性が選定の基準となったようです。 最終的には党本部と県連、私も菅家先生も所属する派閥の清和会で調整が進みました。その結果、次回の選挙における新3区支部長には菅家先生、比例に私ということになりました。菅家先生は前回選挙で対立候補に負けている地域で巻き返し勝利すること、私は県南で菅家先生を勝たせること、つまり会津と県南で協力すれば、新3区での勝算はあるという判断からのことでした。 私は選挙区で戦えなくなってしまいましたが、一歩引いた形で黒子に徹し、次の選挙でお二人が当選できるよう、お二人の選対本部長として戦います。すでに各地域支部を両代議士に繋ぐ会や、私の若手の後援会の皆様との懇親会などスタートしています。挨拶回りもスタートしています。そういった形で2区に再編された須賀川、田村、石川地方では根本先生の支持を訴え、3区に残った県南では菅家先生への支持を訴えていきます。また選挙以外では今までと変わらず旧3区の皆様の要望を聞き、地元の声を国政に届ける活動をしていきます。私のその後については、3区でのコスタリカを含めて、まずは次の選挙でお二人の選挙を全力で戦うことで初めて道が拓けてくると考えています」 ――上杉議員が地盤としていた旧3区は新2区と新3区に分断されます。 「昨年夏以降複数回にわたって東京選出の先輩議員らから『東京で出ないか』との提案がありましたが、その度に即座にお断りしてきました。お世話になってきた旧3区の人たちと今後も活動していくことが私の使命だと考えているからです。比例東北で出るのであれば、比例は東北全域が選挙区となるので、分断された旧3区の地域も今までと変わらず私の選挙区ということになります。そういう意味では、考え方によっては、今までお世話になった党員や後援会の人たちと関係を続けていけるというプラスの面もあります。しかし、選挙で出馬し、『上杉謙太郎』と名前を書いてもらうからこそ代議士ですので、大変辛いことですし、法改正と党本部の判断によるものとは言え、ご支援いただいてきた方々には本当に申し訳なく思います。私は福島県で生まれ育った訳ではありませんが、骨を埋めるつもりで白河に来て家族共々住んでいます。子供達も白河で育っています。未熟な私ですが、地元の支援者の皆様に政治家として育てていただき、次の選挙では『対立候補に勝てるかもしれない』というところまで来ていました。それが、お世話になった選挙区が分断されただけでなく、小選挙区からも身を引かなければならなくなったこの現状は、本当のところかなり受け入れ難いことでしたし、戦いにおいてはまさに次こそが勝負という時でしたから、まさにはしごを外されたような感覚があります。 今は受け入れて話せていますが、昨年から今年の春までの選挙区調整期間は本当に『まな板の鯉』状態でした。『今の3区の皆さんとこれからも政治活動を続けていきます。動く気はありません』というのが揺るがぬ本心で、この点を党本部、県連に伝えてきました。とはいえ、私がいったん引くことで、党内も県連内も対立することなく収まる結果となったことはよかったと思います。しっかりと謙虚に受け止めて自分の与えられた職務を全うし邁進していきます」 ――新3区支部長の菅家一郎衆院議員とは、どのような関係性を築いていきたいですか。 「何が何でも菅家先生に当選してもらう、そのために一丸となります。新3区の県南地方では必ず対立候補以上の得票数が得られるよう県議の先生方や各地域支部の皆様と協力をして菅家先生を連れて歩きます。すでに始まっています。まずは県南で菅家先生が受け入れてもらえるようご理解をいただきながら活動していきます。自分以外の選挙でも汗を流す。それを一生懸命やることが比例支部長に与えられた職務とも考えています」 ――次期衆院選に向けて、有権者にメッセージをお願いします。 「比例に行くからといって今までのご縁が切れる、離れてしまうということは一切ありません。これからもお世話になりますし、今後は複雑な立ち位置になりますが、選挙においては根本先生と菅家先生の当選のために、おそらく旧3区地域の各選対に入り、支援者の皆様とともに選挙を戦います。ある意味、今まで候補者として街宣車で外に出てしまっていたので支援者の方々と会えるのがほんの一瞬ということが多かったのですが、今度は選挙区の候補者ではないので支援者の方々と近くで頻繁に顔を突き合わせてある意味一緒に選挙活動ができます。そのような形で両代議士をしっかりと当選させるのが、比例で優遇された私に与えられた責任です。 東北全部が選挙区になりますが、目下、旧3区と新3区の声を両代議士と県議の先生らと連携して地元の皆様の声を国政に届けていきます」 【上杉謙太郎】衆議院議員のホームページ

  • 【郡山市】品川萬里市長インタビュー

    【郡山市】品川萬里市長インタビュー

     しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在市長3期目。  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。 「県の移行計画では9月末までに入院受け入れ医療機関を51医療機関から131医療機関へ、対応病床数も766病床から786病床へ段階的に拡大し、未対応であった医療機関に対しても働きかけを行うこととしています。外来診療体制も現在の689医療機関からすべての医療機関に働きかけ、インフルエンザと同等に幅広い医療機関による外来診療体制を構築することとしています。このことにより、これまで一部の医療機関での診療や入院であったものからすべての医療機関での診療等が可能となり、郡山市内においても診療可能となる医療機関の増加が想定されることから、診療や入院の受け入れを行ってきた医療機関の負担は軽減されると考えられます。 一方、これまで診療や入院の受け入れを行ってこなかった医療機関では新たな感染防止対策をとるなどの負担が考えられますが、県では必要となる感染防止等の設備整備の補助や院内感染発生に伴う休止・縮小に対する支援、個人防護具の配布等の財政支援措置を準備しています。市としては県や医師会などと連携してサポートを行っていきます。 ワクチン接種については5月8日から『令和5年春開始接種』が始まり、本市でも4月24日から接種券を発送しています。市民の皆様には羅患時の重症化リスクを低減し、ひいては医療機関の負担軽減に結び付くと考えられることから、接種についてご検討をお願い致します」 ――一家4人死亡事故を受け、市道を点検した結果、危険交差点が222カ所あることが判明しました。 「2月3日までに222カ所の点検を行い、180カ所で対策を検討していましたが、その後、郡山地区交通安全協会や郡山市交通対策協議会などから新たに61カ所の交差点の情報が寄せられ、それらの点検を行った結果、58カ所を追加し、238カ所の交差点で対策が必要であると判定しています。対策工事については市民の皆様の安全を確保するため迅速な対応に努め、昨年度中に区画線・路面表示の対策を5カ所実施し、現在は133カ所について工事発注の手続きを進めており、カラー舗装の工事を6月に、カーブミラーや路面標示などの工事を7月までに完了する見込みです。残り100カ所についても県公安委員会と連携し、1日も早い完了を目指します」 ――開成山公園と公園内の体育施設がPFIを導入した新しい公園・体育施設に生まれ変わります。 「開成山公園は2017年の都市公園法改正により創設されたPark―PFIを活用し整備を行うこととしました。体育施設はPFI法及び郡山市PFIガイドライン等に基づき19年度にPFI導入可能性調査を行った結果、施設改修と維持管理・運営を一体的に行うPFI事業としての効果が十分に発揮できると判断しました。開成山公園は目指すべき姿を『郡山の「未来を切り拓く」セントラルパーク』とし、自由広場の芝生化、駐車場の拡充及びトイレの改修・新築等といった公園施設の整備とともに、民間事業者による飲食店等の新設など市制施行100周年の節目となる2024年のリニューアルオープンを目指し、民間事業者との協奏による整備を行っていきます。さらには気候変動に対応する防災機能の強化、ベビーファースト、SDGsを実現させるべく、市民の財産である開成山公園をより有効活用し、秘めたる力を発揮させていくとともに、先人たちの偉業に思いを馳せながら『次の100年』を目指した公園整備を行っていきます。体育施設は年齢、障がいの有無などに関わらず、すべての市民がスポーツに親しみ、各種プロスポーツ大会や大規模大会が開催される市のスポーツの拠点形成を目指します。改修工事は宝来屋郡山体育館が今年10月から2024年9月まで、郡山ヒロセ開成山陸上競技場が24年2月から25年3月末まで、ヨーク開成山スタジアムが24年8月から25年3月末まで、開成山弓道場が24年12月から25年3月末までとなっており、オープン時期は施設により異なります」 ――今年度の重点施策について。 「少子高齢化・人口減少の中にあっても持続的発展を遂げる都市を目指すため、今年度の市政執行方針を『「ベビーファースト(子本主義)実現型」課題解決先進都市の創生』と定め、子どもの視点に立ったまちづくりを推進していきます。主な施策としては学校給食の公費負担を実施したことです。私は教科書が無償であるのと同様に『給食は食育教育の教科書である』と考えているため、本年度から市独自の施策として中学校の給食費を全額公費負担とし、小学校の給食費も国の地方創生臨時交付金を活用し、全額公費負担としたところです。また、DXの推進に加え、気候変動や地球温暖化対策といったGXの推進にも重点を置き、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ目標の実現を目指します」  ――来年、市制施行100周年を迎えます。 「明治時代に行われた安積開拓をきっかけに全国各地から士族が移住してきました。安積疏水は農業の発展はもとより、疏水を利用した水力発電により養蚕などの産業や工業の発展をもたらしました。1924年に郡山町と小原田村が合併し郡山市となり、その後も幾度かの合併を経て65年の大合併により現在の形となりました。この間、東日本大震災や自然災害など幾多の困難もありましたが、多くの先人たちが築き上げた礎のおかげで、市制100周年を迎えることができると考えています。次の100年に向け、先人たちの思いをつなぎ、安積開拓の理念『開物成務』のもと、市民や事業者が自由かつ存分に活躍してもらえる、自治力のある都市の実現を図っていきます。 記念事業についてはオール郡山で記念事業に取り組むため、次代を担う世代の方々や市民活動団体関係者、報道機関などの22名で構成された『郡山市制施行100周年記念事業プロモーション委員会』において、市の政策との整合性にも留意しつつ、記念事業が次の100年を見据え、未来メッセージを発信していく意義のあるものとなるよう検討していただいています。委員会からは音楽イベントの開催、プロスポーツの記念試合開催などのほか、歴史・観光・子ども・産業などのアイデアをいただいており、今後、記念事業の内容について検討していきます」 ――今後の抱負を。 「『誰一人取り残されない』SDGsの基本理念のもと、市民・団体・事業者などの皆様との『公民協奏』『セーフコミュニティ活動』の推進を念頭に各種施策を総合的・持続的に実施することにより、市民・事業者の皆様が思う存分に活躍できるまちづくりを進めてまいります」 郡山市のホームページ

  • 【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

    【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

     あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。2019年4月、経営統合で設立されたアレンザホールディングスの社長となり、今年5月、会長兼CEOに就任した。  ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)は5月24日、定時株主総会と取締役会を開き、浅倉俊一社長が代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、後任にホームセンターバローの和賀登盛作氏が就任した。浅倉会長兼CEOに、現状や今後の見通しについて話を聞いた。 世代を担う人財を育てるのが私の役割  ――3月にダイユーエイトの会長兼CEOに就き、5月にはアレンザホールディングスの会長兼CEOにも就任しました。 「以前から70歳で後進に道を譲りたいと思っていましたが、コロナ禍で3年間先送りしている状況でした。アレンザホールディングスも今年で5年目となり、ちょうどいいタイミングだと考えました。次世代を担う人財を育てていくことが私の役割だと考えています」 ――アレンザホールディングスの2023年2月期連結決算(収益認識を除外した数値ベース)は、営業収益1583億4900万円(前期比100・9%)、営業利益52億8200万円(同84・1%)、経常利益59億0600万円(同86・3%)、当期純利益27億円(同66・0%)で、増収減益となりました。 「増収になった要因は、新店9店舗出店による売り上げ増と、昨年3月に発生した福島県沖地震の特需などによりダイユーエイト既存店の売り上げが伸びたことです。 減益となった要因は販管費の増加が大きかったです。前年同期比23億円増で、その内訳は水道光熱費6億円、人件費6億円、物流費用2億円、キャッシュレス・EC手数料2億円、その他新店の開業経費などとなっています。加えて、タイム社において、会計上の理由で繰延税金資産の取り崩しが約5億円発生したことも当期の利益に影響しました。 光熱費高の影響は大きかったですが、照明の明るさを下げたり、LEDに換えたりして電気代の節約に取り組みました。また、減益となった一方で、粗利率は0・5%改善しました。これは売り上げにおけるプライベートブランド(PB)商品の割合比率が11%から13・5%に向上したためです」 ――ダイユーエイトの既存店ベースで、客単価が前年同期比3・9%増加しましたが、来店客数が同3・6%減少したことにより、既存店売上高は0・1%の増加となりました。要因をお聞かせください。 「客数の減少は〝コロナ特需〟の反動減によるものです。2022年2月期は〝巣ごもり需要〟によってマスクなどの衛生用品のほか、DIY用品、インテリアの売り上げが伸びていました。一方、客単価が増加したのは、原価の値上げ分を適正に売価へ反映してきた結果、物価上昇分がそのまま上乗せとなったためです」 エイトプロ出店を加速  ――職人向けの工具などをそろえた「エイトプロ」の郡山安積店(郡山市)が新規オープンしました。福島店に次いでの出店となりました。 「概ね計画通りに進捗しています。特に主力の工具部門が好調で、予想を上回る売り上げを上げています。プロショップはまだまだ伸びしろがあると感じています。 今期は3店舗の新規出店を計画しており、そのうち岩沼店(宮城県岩沼市)と福島本内店(福島市)の2店舗はすでに具体的な物件を確保しています」 ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられました。ダイユーエイトはじめ、アレンザホールディングス傘下の店舗において、売れ筋商品・売り場作りなどに変化はありましたか。 「マスクなど衛生用品の売り上げが大きく減少し、旅行などの需要回復に伴い来店客数が減少しています。今後はホームセンターの主力部門である園芸・植物での『地域一番店』を目指して、ドラッグストアやスーパーマーケットとの差別化を図っていきます。またDIY用品の強化や棚割り改革を行い、地域の需要にきめ細かく対応していきたいです」 ――ペットワールドアミーゴは屋島店(香川県高松市)をはじめ、3店舗の出店がありました。今後の戦略をお聞かせください。 「ペット事業は特需の反動減で一時低迷していましたが、その影響が昨年12月くらいに一巡し、それ以降は既存店ベースで前年並み、あるいは上回るところも出てきています。特に犬フード、猫フード、トリミング、ペットホテルが好調に推移しています」 ――福島県経済の今後の展望について、考えをお聞かください。 「東日本大震災・原発事故以降、だいぶ風評被害がありましたが、徐々に回復してきていると感じています。県内の農業や水産業は、高い品質と安全性があることから需要が高まりつつあります。観光業も、県内の温泉や自然景観などを生かした観光プランの開発によって回復傾向にあります。一方、流通・小売業では大手企業が活発に出店を進めており、商業施設やショッピングモールの開業が相次いでいます。 今後は、地域特性を生かした商品を生み出したり、地域の需要にきめ細かく対応するなどして、地元消費者の支持を獲得することが求められるようになると思います。またIT技術を活用し、店舗とオンラインショップを組み合わせた販売形態を構築したり、店舗内でイベントなどを開くなどして、顧客獲得にも積極的に取り組む必要があるでしょう」 ――ホールディングス発足4年を振り返って。 「企業が統合することによって生まれる『シナジー効果』を求めて、商品開発や物流コスト節減、粗利率の改善に取り組んできました。特に粗利率の改善については、メーカー統一による原価価格引き下げ、PB商品開発の拡大を進めてきました。2023年2月期と、経営統合前の2019年2月期の粗利率の差異は、ダイユーエイトが+1・9%、タイムが+0・8%、ホームセンターバローが+2・3%です。今後もPB商品の拡大に取り組んでいきます」 ――今期(2024年2月期)の経営方針として、商品力の向上、店舗力の向上、新規出店、差別化戦略、DX推進、SDGs推進、M&A戦略を掲げています。 「『商品力の向上』として、今期PB商品売り上げ構成比18%の実現を目標に掲げています。具体的には、単品販売力の向上や定番棚割りの見直しを行っていきます。PB商品における海外開発の割合は7割を占めていましたが、コロナ後は3割まで下がり、粗利率が低下しました。海外開発の割合をコロナ前の基準まで引き上げていきたいですね。 『店舗力の向上』として、ホームセンター11店舗、アミーゴ4店舗、MAX福島店の改装を実施し、14店舗の新規出店を計画しています」

  • 【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

    【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

     ひきち・としみつ 1964年生まれ。福島市出身。東北大学工学部卒。いわき建設事務所長、土木部次長(道路担当)などを歴任。昨年4月から現職。  本県は東日本大震災や令和元年の台風、一昨年、昨年の大地震、会津北部での豪雨と立て続けに災害に見舞われている。道路や橋梁の復旧に設備の強靭化と県土木部の役割は増す。復興への寄与と脱炭素の取り組みを就任2年目の曳地利光部長に聞いた。入札不正、収賄事件で低下した信頼を回復するための取り組みも尋ねた。 安全で安心な県土づくりを着実に進めていく  ――県土木部長に就任し1年2カ月が経ちました。 「就任直前の2022年2月、只見町の雪崩であいよし橋が流失し、同3月には福島県沖地震が襲いました。就任後の同8月には会津北部を中心に豪雨が発生するなど様々な自然災害の影響を受けた1年でした。新型コロナウイルスの影響下の中、災害対応やインフラの整備・維持管理などに取り組んでいただいた建設業に携わる皆様の御尽力に心から御礼申し上げます。 1年を振り返り、改めて安全で安心な県土づくりに取り組む必要があることを実感しました。昨年度からスタートした『福島県土木・建築総合計画』に基づき、県土の持続的な発展のために必要な取り組みを着実に進めていきます。 復興事業については、2015年度までの『集中復興期間』とこれに続く20年度までの『第1期復興・創生期間』に、津波被災地の災害復旧と防災集団移転などの事業がほぼ完了しています。 一方で、原子力災害による避難地域等のインフラについては、『第2期復興・創生期間』に復興を支える道路事業等を展開していますが、復興のステージが進むにつれて新たな課題が顕在化しています。 これらの課題を5月に初めて開いた『東北震災復興のみらいを語る懇談会』で、国土交通大臣、岩手・宮城両県知事及び仙台市長と共有し、連携を一層緊密に図りながら解決に取り組んでいくことを確認しました。 福島の復興はいまだ途上であり、今後も長く戦いが続きますが、引き続き土木部職員一丸となって安全で安心な県土づくりに取り組んでいきます」 不祥事を「自分事に」  ――県発注工事の入札で設計金額を教えた見返りに現金や飲食代などの賄賂を受け取ったとして、収賄容疑で県中流域下水道建設事務所の職員が逮捕・起訴されました。土木関連事業の入札に関する設計金額や非公表の工事単価などの情報漏洩が相次ぐ中、今後の対応についてうかがいます。 「土木部では、別の事件で1月に農林水産部職員が逮捕されたことを受け、入札前工事の設計金額を閲覧できる職員を必要最小限に限定するシステム改修を2月に実施しました。 土木部としては、コンプライアンスの徹底や服務規律の保持について、職員一人一人が不祥事案を『自分事』として捉えられるよう面談や研修などの取り組みを愚直に繰り返し行っていきます。さらに、今回の事件の事実関係や原因を踏まえ、第三者委員会からの意見をいただきながら、再発防止策がより効果的なものとなるよう取り組みます」 ――昨年度より、建設行政の新たな指針とする「福島県土木・建築総合計画」が始動しました。 「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波による災害、東京電力福島第一原子力発電所事故による災害を踏まえ、土木部は国・市町村等と連携しながら被災地の復旧・復興に全力で取り組み、津波被災地における復興まちづくり、復興公営住宅の整備等による居住の安定確保、地域連携道路やふくしま復興再生道路等の整備による県内ネットワークの強化等を着実に進めてきました。 一方で、今なお多くの方が県内外で避難を続けているなど、復興は途上にあり、復興や住民帰還の進捗に伴って新たな課題も生じています。 気候変動により豪雨災害が激甚化・頻発化しており、令和元年東日本台風により本県でも大きな被害が発生しました。豪雨災害以外でも、2年連続で大規模な地震に見舞われるなど、あらためて人的被害を防止するため、社会資本の充実を図ることが、極めて重要であることを強く認識しました。 このような中、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等の時代潮流の変化に対応し、30年後のありたい姿を実現するため、2021年に福島県総合計画が策定されました。その計画を具現化するために、土木部は22年度から30年度までの9年間を計画期間とした『福島県土木・建築総合計画』を同12月に策定しました。『安全・安心、豊かさを次代につなぐ県土づくり』を基本目標に、7つの目標と14の施策を設定しています。 この計画に基づき、震災からの復興と地方創生をさらに加速させます。防災・減災、国土強靱化や、建設業の振興を推進するため、国や市町村、建設業に携わる皆様と連携を一層密にしながら、社会資本の整備に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路の進捗状況と効果について。 「ふくしま復興再生道路は、基幹的な道路に囲まれる範囲にある主要8路線、29工区について、これまでに福島市と浪江町を結ぶ国道114号の山木屋1・2・3工区など、22工区(3月末時点)が完了しております。本道路の整備によって、避難住民の帰還や帰還後の生活再建、産業再生や交流人口の拡大による地域活性化が図れます。引き続き、小名浜港と常磐道を結ぶ小名浜道路や、浜通りと中通りを結ぶ吉間田滝根線など、残る工区の早期供用に向けて整備を進めていきます」 ――その他の重要施策についてうかがいます。 「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業基盤の再構築を目指す福島イノベーション・コースト構想では、浪江町の水素製造拠点の開所や、南相馬市の福島ロボットテストフィールドでの活用事例の増加、さらには関連企業の立地など、これまでの取り組みの成果が着実に表れています。今年4月には、福島国際研究教育機構(F―REI)が設立されました。避難地域で行われている様々な取り組みを加速させるため、広域ネットワークの形成などインフラ整備を進めることが、土木部の重要な役割だと考えております。 土木部では、低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した公共土木施設や建築物の整備を進めるとともに、小名浜港における次世代エネルギー受入環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化などを推進するため、『小名浜港港湾脱炭素化推進計画』を策定していきます。 建築物についても、室内温熱環境を向上しつつ大幅な省エネルギー化を実現することが重要課題となっていることから、県有建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めていきます」

  • 【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    さとう・じゅんいち 1961年9月、磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年磐梯町長選で無投票初当選。今年6月の同町長選で無投票再選を果たした。  ――磐梯町長選挙では無投票で再選を果たされました。 「無投票で再選できましたことにあらためて感謝いたします。2期目のテーマは、『内部の変革と体制づくり』が重要だと認識しています。1期目では、デジタル変革(DX)戦略室を設置し、各部署の横断的かつ柔軟な業務対応と効率化を図りましたが、DXはあくまで手段であり、行政サービスの出口戦略に至るのに、一番重要なのは役場内部の変革です。 今や、行政は同じ仕事を日々こなしていくだけの時代はもう終わったといっても過言ではありません。職員一人ひとりが自ら考え、行動に移すことが求められています。一方、それらの定着化を図るうえで、まず職員を育てる必要がありますが、現在の役場の枠組みでは限界があります。2期目では、組織の変革による職員の意識改革と行政のスピードアップ化へ大きく舵を切る覚悟です。 この間、職員間のチャットツールを導入し、情報共有の徹底化を図ってきました。これにより、担当の職員が仕事を抱え込むことはなくなり、チーム内はもちろんチーム外の職員からも知恵やアイデアが出されるなど着実に成果が上がっています。 従前の行政の問題点の1つに、閉鎖的な職場環境による想像力の低下と視野狭窄が挙げられます。質の高い行政サービスを実現するためにも職員のスキルアップや能力開発が不可欠との観点から、民間企業をはじめ、外郭団体などで兼業してもらうことも検討しています。役場内の情報管理は全てクラウド化しているので業務に支障が出ることはない点を付言したいと思います。また、『攻守兼備の行政』の実現に向け、営業・マーケティング戦略と総務・管理、それぞれに特化した副町長二人制の導入を前向きに検討します」 ――2期目の重点施策について。 「再選を目指すにあたって以下の『5つの骨太方針』を示しました。今後は実現に向け粛々と取り組む所存です。 1つは、人口減少対策の基本となる施策である子育て・教育の充実です。『子ども子育てワンストップ窓口』を設置し、子育て支援を展開していきます。教育は個々の性格、家庭環境で育まれたものをサポートして伸ばすことであり、それが学習における習熟度、成長率を左右すると考えます。子どもたち一人ひとりに合わせた『インクルーシブ教育』の徹底を目指して議論を重ね、教育施策の柱に据える考えです。加えて、町内の保育・教育施設を一体的に運営する学園構想を推進し、0歳から15歳までにどういう教育を進めていくか、根本的に見直します。先ずは幼稚園と保育園を再編して認定こども園を作る方針で、協議会を立ち上げて具体的に検討します。 2つは、本町の基幹産業である農業振興です。農業振興公社を設立し、農業従事者の皆さまが継続して働ける仕組みを作ります。併せてマーケティングも行い、農産物の付加価値を向上させます。農業は魅力にあふれた事業だと思いますが、後継者不足が深刻です。十分な収入が得られ、休みもある仕事ならば就農希望者も増えると思いますが、現実はなかなか厳しいのが実態です。 問題は流通過程の中で生産者と消費者との距離が離れてしまうことです。生産者と消費者が直接つながり、『良質な農産物を供給してくれる』という信頼関係ができていれば、多少価格が高くても買い求めるようになりますし、SNSや口コミを通じて評判も広まっていくと思います。その結果、生産者の収入が上がれば、新規就農者も増えていくものと考えます。農業振興公社を中心にさまざまな施策を打ち出し『儲かる農業』を実現できるよう注力します。 3つは、観光振興と地域ブランド強化です。磐梯町がどこにあるのか分からない人も多いと思いますが、『会津磐梯山と名水のまち』と打ち出せば、イメージが掴みやすくなり、認知度が広まっていくと考えます。『磐梯町ブランド』が確立されれば、農産物の売り上げにもプラスになるはずです。認知度アップのために、民謡・会津磐梯山の磐梯町バージョンを作りイベント時には必ず流して、PRしていく考えです。 観光はコロナ禍で厳しい状況が続いてきましたが、民間の力を生かすため連携しながら支援していくことが何より重要と考えています。そのため、ばんだい振興公社を立ち上げ、町内の観光スポットである『道の駅ばんだい』、『史跡慧日寺跡』を一体として運用していく体制を構築しました。年間約82万人が訪れる道の駅ばんだいを拠点に、史跡慧日寺跡などを回遊していただく『滞在型観光』を目指します。集客面ではインバウンドも鋭意強化していく考えです。スキー場を訪れるオーストラリア、台湾からの個人客に加え、雪のない東南アジアへの営業強化、民間施設への集客支援を実施していきます。 4つは、移住定住の推進です。本町を知っていただいた方に、『住んでみたいまち』、『住みやすいまち』と思っていただけるようしっかり取り組みます。地方への移住定住は、まずそこで暮らしていくための環境を整備する必要があります。 本町では町唯一の大型商業施設が閉店したのを受け、2021年に『公有民営方式』で民間スーパーを誘致しました。さらに、地域おこし協力隊や地域活性化起業人を採用して、さまざまな形で地域を活性化させ魅力を向上させてきました。町内には有力企業の工場が進出しており、働き口の確保もサポートしていきます。移住定住関連の各種補助金も見直し、空き家バンクに加え空き地バンクを追加します。各地区を調査し、空き地を有効活用していくとともに町営住宅整備も計画する考えです。民間活力の導入を図り、民間アパートや分譲地も増やしていきます。 結びに、共創協働のまちづくりです。町民全員が幸せになるためには、行政の一方的な取り組みだけでは難しく、町民と共にまちづくりを進めていくことが重要です。町民と対話し、いろいろな課題を共有して、『まちをどうしていきたいか』という思いを一つにすることが大切であると認識しています。町民の思いを行政が支えていく形で、一緒に事業を進めていく所存です」 幸せに暮らせる環境を  ――町民へのメッセージを。 「人口減少社会は避けて通れない問題であるのは事実です。引き続き磐梯町の魅力をより大胆に発信しながら関係人口の創出、移住・定住の促進を図り、町内の活性化に注力するとともに、本町の日常生活に幸せを感じて暮らせるような仕組みづくりや環境づくりを鋭意進めていきます。併せて、町民の皆さまがオープンに議論できる機会を提供し、その内容を踏まえた新しい形での行政サービスを提供できるよう努めます」

  • 【南会津町】渡部正義町長インタビュー

    【南会津町】渡部正義町長インタビュー

     わたなべ・まさよし 1958年7月生まれ。県立田島高校卒。旧田島町役場入庁後、総合政策課長、総務課長などを歴任。南会津町副町長を経て昨年4月の町長選で初当選を果たした。  ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。この間の町内における状況とアフターコロナ対策について。 「5月から6月にかけて総会シーズンを迎えましたが、終了後に懇親会が催されるケースが目立つなど、コロナ前の日常が戻りつつあると実感しています。町民は『しっかりと感染対策をしながら経済を回していくことが重要』と認識されているようで、最近では地域経済が非常に活発になってきたと思います。 一方、飲食業の方にお話を聞くと、昼の時間帯は客足が戻ってきたが、夜の時間帯までは完全に戻っていないとの声が聞かれます。生産工場や建設業では、集団感染が発生した場合、生産ラインを止めなくてはならない、あるいは作業現場を止めなくてはならない、といった不安やリスクを依然として感じているのではないかと考えます。 新型コロナが落ち着きつつある一方で、最近では、電気料金の値上げや物価高騰の影響が深刻です。当町では、その対策として、電気料金や燃料費高騰に苦しむ事業者に対し、100万円を上限とする原油価格等高騰対策事業(事業費4000万円)を4月から実施するなどして、支援に取り組んでいます。 そのほか、新型コロナや物価高の影響による消費低迷からの回復を図るため、地域振興緊急対策事業(同1410万円)としてプレミアム付商品券の発行に向け取り組んでいます。また、酪農家からは飼料代の高騰により相当影響が出ているとの声や、農家の方からは農業資材の高止まりに苦慮されている話が寄せられているので、的確な支援策を検討しています。今後補正予算などで、全体を見据えて、限られた財源を有効に使っていく考えです」 ――公約である子育て・医療福祉政策の充実をはじめ、結婚支援対策、若年層の定住対策の進捗状況についてうかがいます。 「子育て支援については、まず保育所の0~2歳児の保育料負担軽減対策(同1141万円)です。全額負担について検討を重ねましたが、最終的には町が半額支援するという結論に至りました。次いで、新たなお子さんが生まれた際に10万円分の商品券を贈呈して誕生を祝うとともに、必要なものを町内で消費していただくための当町単独事業『パパママ応援交付金事業』(同710万円)を実施しています。 国と連携した事業としては『妊娠出産21プロジェクト事業』(同853万円)で、母子手帳交付時に5万円、出生時に5万円の現金を支給するとともに、伴走型支援として保健師による一貫した訪問活動を展開しています。 そのほか、地域子育て支援拠点事業として、出産をはじめ、幼少期、学童期の子どもを持つ親からの相談にきめ細かに対応するため、健康福祉課内の『子育て世代包括支援センターえがお』を核とした相談・支援体制の構築に努めています。 医療福祉については、昨年12月に県立南会津病院の病院長が不在となることが懸念された中、この間、南会津郡内の首長・議長会と連携して実情を訴え、4月1日から確実に病院長を配置していただけるよう、県に要望活動を行ってきました。紆余曲折ありましたが、坂下厚生総合病院で病院長を経験された松井遵一郎先生が南会津病院長として就任され、今までと変わりなく診療が行われています。同病院の医療体制の強化は南会津郡で最優先課題に位置づけられます。現在、常勤医がいない産婦人科、精神科、眼科における常勤医の配置をはじめ、小児周産期医療体制の充実、人工透析専門医と看護師の増員について引き続き要望していきます。 結婚支援対策については、7人の縁結びサポーターによるお相手紹介・結構相談全般を担う『縁結びサポーター事業』をはじめ、南会津地方振興局と合同で開催する婚活イベントを1回、本町単独の婚活イベントを2回予定しています。そのほか、身だしなみやマナー、異性とのスマートな話し方を学ぶ『スキルアップセミナー』の実施、結婚して居住する費用もしくは引っ越し費用について60万円を上限に補助する『結婚新生活支援事業』を展開しています。 現在、若い職員たちによる結婚支援策の検討・立案により『あづまっぺ実行委員会』が設立されました。今の若者たちの結婚観を踏まえ、肩ひじ張らずさりげなく出会える機会の必要性から、町が運営するインターネットコミュニティサイト『#ミィズ』を立ち上げ、6月12日現在で56人の方が登録されています。併せて、南会津町結婚サポート企業の登録も始めました。町内に立地する事業所や団体に呼びかけ、結婚支援の官民連携を図っており、6月5日時点で22の事業所に参画いただいています。 若者の定住対策については、Uターン、Iターンの仕組み作りが重要だと考えます。住宅取得時の支援をはじめ、移住してきた方々が地域でしっかり馴染んで生活してもらうための体制構築などを『定住対策プロジェクト事業』に盛り込み、鋭意進めています。また、人手不足が慢性化する中、若者の定住も含めて、新たな求人活動や事業所をPRするための費用の一部を助成する取り組みについて、『働き手確保支援事業』として新規で着手したところです。南郷トマト生産を中心とする新規就農者への支援、林産業の雇用促進、町内で新たに起業・商売したい方の支援対策として、『ビジネスチャレンジ支援事業』も展開しています」 観光商品開発に努める  ――関係・交流人口の創出にも注力されています。 「首都圏を中心に多くの企業でコミュニケーション能力や提案能力を高める研修が求められている中、当町の地域資源を生かした研修でディスカッション能力や提案力の向上を図る『チームビルディングツーリズム事業』を試験的に実施しています。現在は、モニターツアーという形で実施していますが、研修を実施した事業所からは非常に好評であり、関係人口創出のポテンシャルを感じています。また、埼玉県の埼玉栄高校などを運営する学校法人佐藤栄学園、千葉県の市立船橋高校との『町有施設等の利用に関する協定』を通じた高校合宿誘致事業にも引き続き尽力する考えです。そのほか、農家の生活体験を教育プログラムに組み入れた教育旅行『南会津農村生活体験推進協議会支援事業』も実施しています。『星空誘客事業』では、当地域の星空がどのぐらい素晴らしいのかという魅力を再認識していただけるよう、住民向けの星空観察会を実施しています。今後は商品化に向けた事例調査を進めながら、宿泊を伴う観光商品の開発に努めていく考えです」

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

     おかべ・みつのり 1959年生まれ。学校法人中央工学校卒。株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選。現在6期目。  ――4月の町長選で6選を果たしました。  「自分なりの選挙を展開でき、それに町民の皆様が応えてくださったのは非常に身に余る思いです。当選させていただいた以上は新たな気持ちで行政運営に当たっていきます」  ――6月には4年ぶりに流鏑馬大会が開催され、秋の例大祭も開催されます。  「町内に流鏑馬保存会という組織があり、これは射手の育成を目的としていますが、その成果発表として例年、春と秋に流鏑馬大会を実施しています。春の陣が4年ぶりに開催され、この間、練習の成果を披露する場に恵まれなかったので、そうした意味でも開催できたことには大きな意義があり、秋の例大祭の前段としても弾みがついたと考えています。ただ、5類に移行したとはいえ、新型コロナウイルスの影響はまだまだ考慮しなければなりませんし、この4年間様々な事情で中止してきた経緯もあるので、再開というよりは新たなスタートを切る気持ちで取り組むべきだと考えています。その一環として例大祭の行列のスタート地点を郵便局から公民館に変更し、今後も様々な変更点やポイントを見直し、次年度の開催に向けて関係各所との協議・検討を進めていきます」  ――林業活性化に向け、町内業者と協力して持続可能な林業を目指す取り組みが進められています。  「まだ具体的な内容は完全に定まっていませんが、国・県の制度を踏まえた中で、間伐を中心に森林整備を実施しているところです。また、県と町と地元事業体で団体を組織し、経営収支をプラスに転換させる経営モデル構築の実証事業を行っています。この取り組みは林業事業体のレベル向上にもつながり、現在、町の森林経営計画は森林組合が森林所有者の代理で構築していますが、ゆくゆくは事業体自身で経営計画を構築することも可能になると考えています」  ――今後の重点事業について。  「以前から道の駅拡張について取り組んでおり、地権者の皆様のご理解が得られそうなところまで来ましたので、これを重点事業の一つに据えて取り組んでいきたいと考えています」  ――6期目の抱負について。  「基礎自治体は厳しい状況にありますが、町民の皆様が、笑顔で住んで良かった、ふるどので良かったと思えるようなまちづくりに邁進していかなければなりません。そのためには町民の皆様のご理解とご協力が不可欠です。『今後ともよろしくお願いいたします』という思いで町政運営に取り組んでいきたいと思います」

  • 【会津若松市】室井照平市長インタビュー

     むろい・しょうへい 1955年生まれ。東北大卒。会津若松市議2期。県議1期を経て2011年8月の会津若松市長選で初当選。今年7月に4選を果たす。  ――7月に行われた市長選で4選を果たしました。  「厳しい選挙戦の中、4選を果たすことができたのは市民の皆様のご支援があってこそで、あらためて御礼申し上げます。  4期目の抱負は、市民の皆様それぞれに夢を持っていただくことです。東洋経済新報社が全国812市区を対象に実施している『住みよさランキング』によると、2022年は全国66位で県内自治体では1位、2023年版では全国119位で県内自治体では3位の結果となりました。こうした結果の要因として、子育て支援をはじめとした施策が評価されたものと受け止めています。今後も子育て支援をはじめとしたさまざまな施策に注力し、市民の皆様に住みやすい町に住んでいるという実感を持っていただけるように取り組まなければなりません。住み続けたい、訪れたい、選ばれるまちの実現に向けて今後も全力で取り組みます。  1期目から掲げている『子どもたちには夢と希望を、若者には仕事・雇用を、お年寄りや障がいのある方には安心できるまちづくりを』というテーマを変わらず根幹に据えて、市民の皆様一人ひとりの思いを受け止めながら、市政運営にあたっていきます。また、様々な施策を通して、市民の皆様が郷土に愛着を持ち、地域に対する誇り『シビックプライド』を醸成し、誰もがこのまちで暮らし続けられるように、市民の皆様と共にまちづくりを着実に進めていきます」  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されましたが、観光業をはじめ市内経済への影響はいかがでしょうか。  「観光入込は、コロナ禍前の2019年度には及ばないものの、回復傾向にあります。具体的には、コロナ禍前が300万人だったのがコロナ禍では83万人にまで落ち込み、昨年は146万人にまで回復しました。5類移行後の5月以降はコロナ禍前の水準にさらに近づき、お盆時期を中心に家族旅行での来訪が目立っており、今年は250万人を越える入込が見込まれます。当面はコロナ禍以前の300万人に戻すことが目標です。また、インバウンドはコロナ禍前が2・5万人、コロナ禍には800人にまで減少しましたが、順調に回復しています。今後はコロナ禍前の10倍の25万人まで増加させることを目標としています。教育旅行については、コロナ禍でも好調を維持しており、5類移行後においても平日の観光需要を底上げしています。観光業以外でも、市内の経済状況は回復基調となっており、飲食業界や酒造業界への聞き取りでも、観光客の増加によって売り上げも堅調となっています。一方、原材料や電気代等の高騰は市内事業者に広く影響が出ており、今後も景況感は注視していく必要があります」  ――市役所新庁舎整備事業の進捗状況についてうかがいます。  「昨年10月に設計が完了し、今年3月に建設工事が始まりました。9月上旬時点で基礎工事が行われています。来年には庁舎周辺の道路拡幅工事や駐車場・駐輪場の工事を予定しており、順調に進めば2025年3月に新庁舎が完成し、同年度からの供用開始を予定しています。  新庁舎は、1937年から市の歴史を見続けてきた旧館を引き続き庁舎として保存・活用し、その隣に旧館のデザインを取り入れた地上7階建て、高さ30㍍の庁舎となります。全体の面積は約1万3700平方㍍で、免震構造を採用しているほか、高い省エネ性能を持ち、環境にも配慮しています。また、多くの部局が新庁舎に集約され、窓口利用が多い部局を低階層に配置するなど、市民の皆様の利便性の向上を図っています。この新庁舎が市民の皆様の安全・安心な暮らしを支え、災害時には被災対応の活動拠点となり、さらにはまちの要として、人が集い賑わいを作り出す会津のランドマークとなるよう、引き続き整備を進めていきます」  ――「スマートシティ会津若松」の取り組みが加速しています。  「スマートシティとは、〝便利で住みやすいまち〟を意味しており、本市では2013年3月より『スマートシティ会津若松』を掲げ、生活を取り巻く様々な分野でICTを活用することで、将来に向けて持続力と回復力のある力強い地域社会、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりを目指してきました。  昨年度、本市は『国のデジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ タイプ3』に東北地方で唯一採択され、食・農業、決済、観光、ヘルスケア、防災、行政という6つのデジタルサービスを実装しました。この間、市、会津大学、AiCTコンソーシアムの三者で『スマートシティ会津若松』に関する基本協定を締結したほか、市民の皆様を対象とするスマートシティサポーター制度や、地域の業界団体の方々を構成員とするスマートシティ会津若松共創会議を創設するなど、地域が一体となった推進体制を構築し、取り組みのさらなる深化・発展を目指してきました。  次なる取り組みとして、今秋以降、デジタル地域通貨『会津コイン』を使ったプレミアムポイント事業を開始するほか、今後は国の支援策等も活用しながら、引き続き会津大学およびAiCTコンソーシアムとの連携のもと、市民の皆様や企業の方々が『スマートシティ会津若松』の取り組みの成果を実感していただけるようなサービスを実装し、市民の皆様が生き甲斐と幸せを感じ、〝住み続けたい〟と思えるまちづくり、進学等で本市を離れる若者が、〝いずれ戻ってきたい〟と思えるまちづくりを目指し取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「少子化・人口減少対策は市の最重要課題であり、想定以上に出生数が減り、死亡者が増えているのが現状です。こうした現状を打破するためにも、Uターンや県外のお孫さんが祖父母の住む本市に移住する孫ターンの給付金制度、住宅取得支援や賃貸家賃補助、移住婚祝い金といった形で移住・定住支援に注力していきます。また、昨年実施した『ベビーファースト宣言』のもと、安心して子どもを産み育てる環境づくり、子どもたちがふるさとに誇りを持ちながら多様な学力を身に着ける環境づくりを進めていきます。  ほかにも新規就農者支援、新たな雇用に繋がる工業団地の整備も重要ですので、今後4年間でさらに内容を深化させていきたいと考えています。また、観光庁の『国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業』において、本市と磐梯町、北塩原村でのスキーと観光を軸にする計画が県内で唯一採択されました。今後は他自治体や関係団体との連携を図りながら、冬季間のインバウンド強化に向けて取り組んでいきます」

  • 【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

     こんの・まさお 1951年生まれ。福島商業高卒。㈱A水技研代表取締役。今年6月、県浄化槽協会会長に就任した。  ――新会長に就任しました。  「就任にあたり3つの目標を掲げました。  1つは合併浄化槽の普及促進です。県内は単独浄化槽とくみ取り式トイレが多く存在しており、汚水処理未普及の解消を図るうえでも、合併浄化槽の普及は必要不可欠です。国や県・市町村と連携し普及を促進していきたいと思っています。  2つはデジタル化の推進です。他業界と比べ協会内のデジタル化は極めて遅れています。IT技術で業務効率化を図り、人手不足などの諸問題を解決できるように意識改革を促したいと思います。  3つは後継者育成と浄化槽のイメージアップです。残念ながら『きれいな仕事ではない』というイメージがあるようで、会員企業からは『求人を出しても応募がない』などの声を多く耳にします。また、各企業が世代交代の時期を迎えている中で、『施工・保守点検・清掃の3業種の相互理解の醸成』の必要性も感じています。3業種の連携強化と次世代を見据えた取り組みを進めます」  ――県内の現状について。  「県内には約28万基の浄化槽が設置されており、そのうちトイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽が約15万基あります。単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換することは全国的な課題となっています。転換する場合の各種補助制度は拡充しており、個人負担は軽減されます」  ――国・県に望むことは。  「当協会は浄化槽ユーザーである一般住民の負担軽減を最優先にしています。残念ながら県内では毎年のように大きな災害に見舞われていますが、浄化槽はインフラ設備でありながらその復旧費用は個人負担となっています。被災浄化槽へのフォロー対策やスピード感のある復旧対応の在り方を明確に示し、対応する市町村担当局や一般住民が困ることのないよう、リードしてほしいと思います。また、合併処理浄化槽が老朽化したり、度重なる地震などで破損するケースも増えています。最新型の浄化槽はコンパクト化・省エネ化が進み、ランニングコストの低減効果があります。更新に対する助成制度の創設、下水道と比較してやや高額となる維持管理費用の助成制度創設など、住民負担の軽減対策を積極的に進めてほしいです」  ――今後の抱負を。  「恒久的で重要な汚水処理インフラである『浄化槽』への認知度が極めて低いことに強い危機意識を持っています。まずは業界体質の変革が必要です。現代社会の変化スピードに対応できているとは言えず、相当遅れていると感じます。人手不足解消策としてIT技術の導入はもとより、施工から維持管理まで浄化槽に関わる関係者の人材育成や待遇の在り方も抜本的な見直しが急務です。これからの時代に即した企業体系にシフトできるよう意識改革を行いながら永続性を確保し、安定的な業界となるよう進化していきます」 福島県浄化槽協会のホームページ

  • 【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

     さとう・としひこ 1951年2月生まれ。佐藤産業㈱代表取締役。2007年5月から県産業廃棄物協会長を務め、2019年4月から現職。  ――燃料費・光熱費の高騰が続いています。  「高騰分は処理費用の中に反映させますが、なかなか排出事業所に認めていただけないのが実情で、理解をいただくのに時間もかかり、現段階では会員企業の多くが経営的に非常に厳しい状況が続いています。今年8月に全国産業資源循環協会が景況動向調査を行ったところ、全国的にも大変厳しい状況が続いています」  ――労働安全衛生運動に取り組んでいます。  「我々の業界は労働災害が他産業に比べて非常に高い水準にあります。一時期は建設業の4倍だった時期もあり、2010年度に労働災害防止計画を策定しましたが、昨年は残念ながら休業4日以上の死傷者数は22名でした。特に墜落・転落事故や挟まれたり巻き込まれたりと転倒事故が多いのが実情です。そこで5月に全国産業資源循環連合会との連携のもと第3次労働災害防止計画を策定しました。次の事項について重点事項をまとめて会員の皆様と実施しました。まずは経営者の意識改革。経営者のリーダーシップの下で労使が一体となって労働安全衛生対策に取り組みました。二つ目が労働災害防止活動の推進です。安全衛生規程を作成し、それに基づき労働安全衛生活動に従業員として的確に対処できるようにしていきたい。今年は会員企業の代表者を対象としたトップセミナーをビッグパレットふくしまで開催しましましたが、100名ほどが集まり関心の高さを実感しました。9月からは各方部に分かれて労働安全衛生についての講習会も行っていますが、会員企業のみならず非会員企業にも意識を高めてもらいたいと思っています。ただ残念ながら5月の段階で11名の死傷者数が確認されているのが現状です。もう一度協会全体で真摯に取り組み労働災害発生の減少に向けて会員企業はもちろん非会員企業にも安全衛生の意識を高めてもらいたいと考えています」  ――今年度の重点事業について。  「1つは先ほど言った労働安全衛生活動の推進です。2つはカーボンニュートラルの推進。2050年に向けて取り組んでいきたいと思います。3つは会員の処理技術の向上です。処理技術向上のための講習会に対する補助等を行い、技術向上と人材育成を図っていきます。4つは県内では自然災害が頻発しており、協会と県で大規模災害時における災害廃棄物処理等の協定を結んでいます。それに基づき、災害が発生した際は、できるだけ早く対処したいと思っています」  ――今後の抱負。  「昨今、我々の業界は求められることが多く、カーボンニュートラルはもちろん、サーキュラーエコノミー社会の関心も高まっています。サーキュラーエコノミーは日本語に訳すと循環経済ということですが、協会一丸となって取り組んでいきたいと思っています」

  • 【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

     こくぶん・まもる 1966年9月生まれ。郡山市出身。東北学院大卒。89年に福島県庁入庁。総務部政策監、観光交流局長などを経て、昨年4月から現職。  新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。とはいえ、コロナがなくなったわけではなく、まだまだ注意が必要だ。そんな中、県ではどのような対応をしているのか。健康・福祉などのその他の課題と合わせ、県保健福祉部の國分守部長に話を聞いた。(取材日9月12日) 県民が健康で幸福を実感できる県づくり  ――5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。  「5類移行により、法律に基づき行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、県民の皆様の自主的な取り組みを基本とする対応に変わりました。  県では5類移行後も迅速な対応を図るため、知事をトップとした福島県新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議を設置し、関係課長による会議を毎月開催するなど、感染状況の把握と情報共有に努め、基本的な感染対策について注意喚起を図ってきました。また、医療提供体制については、法律に基づく入院措置による行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応への移行を段階的に進めています。  新型コロナウイルス感染症の波は、今後も繰り返されることが予想されています。感染が拡大すると医療機関への負荷が高まるとともに、高齢者や基礎疾患のある方などの重症化も懸念されます。県では、引き続き、感染状況や医療負荷の状況に注視しながら、感染拡大防止のための情報発信や医療提供体制の確保に努めていく考えです」  ――8月20日までの1週間に県内82の定点医療機関で確認された感染者は増加傾向にあります。  「新型コロナウイルス感染症の新規患者数の定点あたりの報告数は、6月中旬以降増加しています。特に、8月14日から20日までの1週間は、25・27人と前週から2倍近い増加となり、全国平均の17・84人を大きく上回りました。その後は緩やかになったものの増加傾向は続いており、8月28日から9月3日までの1週間では27・62人となっています。昨年夏もお盆期間の前後にかけて新規陽性者が増加していたことから、夏休みやお盆期間中に人の流れが活発化したことが影響しているものと考えています。  県民の皆様には、換気や場面に応じたマスクの着用、手洗い・手指消毒などの基本的な感染症対策を徹底いただくとともに、発熱やのどの痛みがあるなど普段の体調と異なる場合には外出に留意し、検査キットによる自主検査を行うなど『うつさない』行動を心掛けていただくようお願いします」健康長寿県を目指す  ――県では2035年度までを期間とする「第三次健康ふくしま21計画」の策定を進めています。  「県では、総合計画で『全国に誇れる健康長寿県へ』を重要な施策に位置付け、県民の健康づくりに力を入れています。本年3月に『第二次健康ふくしま21計画』の最終評価を公表しましたが、健康寿命の延伸や要介護高齢者の抑制等は目標を達成した一方で、メタボリックシンドロームの該当者やがん検診の受診者など、健康指標の多くは依然として低迷していることが明らかとなりました。特に本県はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量がワースト2位など、震災以降の生活習慣の変化等により全国の中でも下位にあり、その改善のためには、県民一人ひとりが自身の健康の大切さに気づき、自分に合った健康づくりを実践していただくことが重要です。そのため、幅広い年代に楽しみながら健康づくりに取り組んでもらえるよう、健民アプリを活用して日々の体重を記録し適正体重を目指す『ふくしま測って体重チャレンジ』の実施、野菜から食べ始めるベジ・ファーストの推進、惣菜を段階的に減塩しスーパーで販売する食環境づくり事業などに取り組んでいます」  ――介護・障害福祉施設では人材不足が顕著です。  「県では、県内各地で開催する合同就職説明会をはじめ、優秀な介護職員や労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与のほか、介護職員の負担を軽減する介護助手の配置やワーク・ライフ・バランスの推進につながる週休3日制を導入する施設に対する支援など様々な事業に取り組んでいます。  また、若い世代の介護への関心を高め、理解を促す取り組みとして、今年度は新たに、親子を対象に介護の魅力とやりがいを伝える参加型イベントを開催するとともに、若手介護職員や全国で介護の魅力発信を行っている方を高校に派遣し交流会等を開催するなど、イメージアップを強化しています」  ――今年度の重点事業について。  「今年度は重点事業として、避難地域の医療機関等の再開を支援し、医療提供体制の再構築を推進する『避難地域等医療復興事業』、県民の健康指標を改善するため健康行動の実践を促す『ふくしまメタボ改善チャレンジ事業』、介護支援ロボットやICTを導入することで介護職員の離職防止と定着促進を図るとともに人材不足を補う『ICT等を活用した介護現場生産性向上支援事業』などに取り組んでいます。  震災・原子力災害からの復興・再生を成し遂げ、急激な人口減少や社会情勢の変化に対応できるよう、職員一丸となって効果的な施策を展開していきます」  ――地方の立場から国に要望したいことはありますか。  「新型コロナウイルスは5類感染症に移行しましたが、新たな感染症等の発生にも留意しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向け、平時から準備を整えておくことが必要です。このため、国には感染症対策や災害時医療を提供する医療機関の平時からの人的・財政的負担について支援いただくとともに、地域偏在や診療科偏在の解消等も含めた医療人材の確保に向けた対応を要望しています。 また、コロナ禍において健康づくりの重要性が再認識されたことから、国民の健康を守る取り組みを一層強化していく必要があります。健康づくりの推進に向け、社会全体での意識醸成に国が率先して取り組むとともに、自治体や医療関係者等の連携強化、市町村による格差を防止するための財政的な支援等の拡充を要望しているところです」  ――今後の抱負。  「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、関係する全ての方々と連携しながら、全力で取り組んでいきます」

  • 【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

     みどりかわ・あけみ 東日本国際大学卒。東日本国際大学・いわき短期大学キャリアセンター勤務を経て現職。東日本国際大学・いわき短期大学東京事務所長、キャリアセンター顧問も兼務している。  今年創立120周年の節目を迎えた学校法人昌平黌(いわき市、緑川浩司理事長)。いわき市で、いわき短期大学附属幼稚園、東日本国際大学附属中学・高校、いわき短期大学、東日本国際大学を運営しており、各施設で「人間力」を重視した教育を展開している。具体的な教育内容や今後の展望について、緑川明美常務理事に話を聞いた。 「人間力」重視の教育を展開し、地域とともに歩んでいく。  ――学校法人昌平黌では、東日本国際大学をはじめ、さまざまな教育機関を運営しています。教育の特色を教えてください。  「当法人の教育理念の根幹に位置づけられるのが、建学の精神である孔子哲学(論語)です。孔子哲学を土台にした〝人間教育〟を一貫して大事にしており、幼児教育・学問との融合・融和を図り、『人間力』の育成に努めています。  一例を挙げますと、同短大幼児教育科では未来を担う子どもたちを教育する人財を育てています。孔子の論語を踏まえ、思いやりの心である『仁』、人間社会の規範に立って礼儀を重んずる『礼』を体現できる、自分は元より相手を思いやれる人間教育に傾注しています。また、人間尊重の精神はすべての学校に共通している点を付言したいと思います」  ――「人間力」を重視した教育について具体的に教えてください。  「当法人が打ち出す『人間力』は、開学からの『義を以て行い其の道に達す』、創立120周年を機に森田実名誉学長より贈られた『克己復礼為仁(己に克ちて礼に復するを、仁と為す)』に集約され、教育方針の確固たる軸となっています。『義』とは自分自身と真剣に向き合い、内面の部分から成長を促すことです。自信が持てない、引っ込み思案な生徒・学生でも、己と向き合い長所や素晴らしい個性に気づくことで、自信に満ちた朗らかな性格に変化していく姿を数多く見てきました。  また、最初から目的意識を持っている生徒・学生でも、実習やボランティアなど他人とのかかわり合いや異なる環境に身を置くことで、あらためて自分自身を見つめ直しながら成長していきます。  『克己復礼為仁』とは、究極の人間性である『仁』の実践について、孔子が説いた言葉です。ここでの『礼』とは単に儀礼作法にとどまるものではなく、人と人とのつながりの尊さを説く『和を以て尊しとなす』の精神そのものです。これも人間力の育成にとても重要な教えであり、社会活動では、目標に向かって知恵を絞り一緒に頑張れるかどうかが問われる局面があります。『和』を重んずる団結力こそが社会を前進させる原動力と認識しています」  ――今年で創立120周年を迎え、6月22日に記念式典が執り行われました。率直なご感想と今後の抱負についてうかがいます。  「創立120周年のスローガンは『夢をはじめよう』としました。10年前の創立110周年を迎えた際のスローガンは『踏み出す 次代への挑戦』でした。その2年前に東日本大震災が発生したのを受けて、〝ピンチ=チャンス〟という強い思いが込められています。非常事態の中、教職員とともに園児、生徒、学生のために何ができるのか、皆で知恵を絞って、さまざまな苦難を乗り越えることができました。あらためて振り返ると、他者への思いやり、つまりは『建学の精神』が息づいていたからこそ実現できたと痛感しています。創立120周年を迎えるに当たり、これまでの困難を克服したうえで、夢に向かって歩んでいこうとの強い思いを込めて新スローガンを決定しました。  創立120周年記念事業の一環として、8月に竣工したいわき短大附属幼稚園新園舎の整備が挙げられます。旧園舎の老朽化が課題となっていましたが、さらなる幼児教育の充実を図るべく、節目の年に新園舎建設に踏み切りました。開放感があり、木の温もりや自然との共生を肌で感じられる素晴らしい園舎です。  当法人には小学校がありませんが、幼稚園から始まる人間教育を中学・高校への架け橋とすべく、同幼稚園の卒園生を対象とした『昌平塾』の開設に向け鋭意整備を進めています。  また、創立120周年を迎えるにあたり盤石な未来を拓く『三つのビジョン』として、①『人間教育』こそ教育の原点、②地域貢献の人材を輩出、③地域に開かれた大学――の3点を掲げ、地域とともに歩み、地域に根差した揺るぎない発展を目指したいと考えます」  ――大学・短大の学生の自己実現について、どのようにサポートしていますか。  「自己実現の根源は夢や目標です。当法人では学生の目的意識の醸成と主体性を尊重したサポートに注力するとともに、学問や就活を問わず一人ひとりに真摯に向き合ったきめ細やかな指導ができる点が大きな強みと考えます。アットホームな環境も魅力の一つですし、教職員も学生一人ひとりに真剣に寄り添う意識がとても高いと実感します。  中・高、短大、大学を問わず、生徒・学生に共通しているのは、人間として『素直な心』を備えていることです。素直な人ほど社会人となってから明らかに成長する、また、『和』を重視する協調性も豊かだと言います。あらためて『素直な心』は人間力・成長力の源泉だと思います。今後も一人ひとりの『素直な心』を大切にする人間教育に一層注力していきます」 台風被災地区で支援活動  ――地域社会への貢献にも尽力していますが、今後の展開について。  「当法人が運営する学校の規模は決して大きくはありません。しかし、福島復興創世研究所をはじめとする11の研究所・研究センターを擁しており、所轄分野は多岐にわたります。  その多くは地域との深い関わりを持っています。少子高齢化など切実な課題を抱える地域社会の中で、無関係でいるということはあり得ません。むしろ地域の活性化と発展を担うという重要な使命を持つのが教育機関だと考えます。  地域貢献と言えば、去る9月8日の台風13号では、東日本大震災と令和元年東日本台風で被災・支援活動の両方を経験している職員が、本学ボランティアセンターを率いて連日に渡り支援活動を行っています。ボランティア隊メンバーは本学強化指定部の柔道部と野球部の学生で、本学バスから大きな体格の若者たちが現れたことで、地域の方々から『姿を見てとても心強く安心した』『いわきに東日本国際大学があって良かった』等々、たくさんの感謝とともに励ましの言葉もいただきました。  地域の未来をどう創造し、開いていくか、が問われている社会情勢です。当法人は時代の最先端を走る教育・研究の『知の拠点』としての責任を自覚し、地域社会の抱えるさまざまな問題を解決するため力を尽くしていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  一般社団法人・福島県建設業協会は5月に総会を開き、長谷川浩一会長(堀江工業社長)を再任した。新たな任期に入った長谷川会長に、大規模化・頻発化する災害復旧などへの対応や、働き方改革・担い手不足への対応、公共工事の入札で不祥事が相次いでいる問題への対策、業界の課題などについてインタビューした。 県土発展に貢献できるように課題克服に取り組む。  ――役員改選を経て会長職続投となりました。この間を振り返って。  「会長就任時の令和元年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、まさにコロナに翻弄された2期4年間でした。また、この間は、東日本大震災の復旧・復興事業が総仕上げを迎える一方で、史上最大級の台風被害となった令和元年東日本台風や、2年連続で発生した福島県沖地震などの大規模自然災害も頻発しました。建設業協会は地域の守り手として、昼夜を問わない応急業務対策への従事により、県民の安全・安心を確保しながら、復旧・復興工事の着実な進捗を担うなど、地域建設業の役割を全うできたと考えています」  ――来年4月から建設業でも時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となり、働き方改革の重要性がより高まっています。  「働き方改革については、ICT活用や現場技術者に対する支援などにより、時間外労働時間の短縮を図った具体的かつ先駆的な事例を紹介するとともに、当協会の働き方改革等検討ワーキンググループで作成したQ&A集を活用した会員への助言など、本会の『働き方改革行動指針』に基づき、会員企業の労働環境の改善を支援していきます。また、公的発注機関に対して、実態に見合った現場経費の積算、熱中症対策や書類作成に要する時間を加味した適正な工期設定、週休2日に対応した設計労務単価の引き上げなど、働き方改革を進めるために不可欠な対応を引き続き求めていきます。  一方、民間工事では依然として厳しい工期設定による工事契約が散見され、働き方改革が進まない一因となっています。今後は労働局の協力を得て、経済団体や大手企業に対し長時間労働削減への協力要請を行うなど、民間発注者に対しても建設業の働き方改革に対する理解と協力を求めていく考えです」 入札絡みの不祥事に遺憾  ――昨年、「第二次ふくしま建設業振興プラン」が策定されました。  「このプランでは①『経営力の強化、生産性の向上』、②『担い手の確保・育成』、③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の3つを根幹に据え、その達成に向けた取り組みを進めていきます。  具体的には①『経営力の強化、生産性の向上』の実現に向け、国や県と連携し、ICT技術の活用や建設DXの推進に向けた研修会の実施、各種情報提供を行うとともに、関係機関に対しては会員企業のICT機器の導入促進に向けた補助制度の充実などの支援を求めていきます。  ②『担い手の確保・育成』に向けては、これまで高校生を対象とした現場実習やインターンシップの開催、小・中学生を対象とした職業体験や現場見学会の開催、SNSを活用した建設業の魅力発信など、若年層を対象としたさまざまな広報活動を実施してきました。今年度は協会ホームページの全面リニューアルや道の駅での建設業のPRといった新たな取り組みを通じて、より広い年齢層に建設業の役割や魅力を発信していきます。技術者育成については、令和3年から開講した『土木初任者研修(前期)』に加え、令和4年からは後期講習も開講し、経験が浅い若手技術者の育成に注力しています。また、産学官連携による技術者育成である『ふくしまМE(メンテナンスエキスパート)』は、昨年度までの育成講座開催による認定者が700人を超えており、今後とも地域インフラの維持管理を担う技術者育成制度の充実に努めていきます。  ③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の実現に向けては、大規模化・頻発化する災害に加え、昨年発生した鳥インフルエンザの対応などを踏まえ、協会としての防災対応力を高め、『地域の守り手』としての社会的役割を果たしていきたいと考えています。現在はラインワークスを活用した災害時の連絡網の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害対応への強化を進めています。今年5月には、県より災害対策基本法に基づく『指定地方公共機関』の指定を受け、当協会が災害支援を担う公的な団体に位置付けられました。災害時の我々の役割が一層高まっているので、今後も大規模災害に備えた組織強化に努めます」  ――最近は公共工事の入札における設計金額の情報漏洩や贈収賄などの不祥事が相次いでいます。  「県内建設業界は、平成18年の公共工事に絡む不祥事によって社会的信用が大きく失墜した経緯から、猛省して不断に法令順守の徹底に努めてきました。その後、東日本大震災や豪雨災害等での初動対応やインフラの復旧・復興への貢献、様々な社会貢献活動を通じ、徐々に県民の信頼回復への手応えを感じていたところです。しかし残念ながら、近年公共工事に絡む不祥事が続いております。これは公正で透明性の高いものであるべき入札制度を貶め、建設業に対する県民の信頼を著しく失墜させる重大な犯罪行為であり、誠に遺憾なことと受け止めています。これらの事件を一会員企業の問題ではなく、協会全体の問題と捉え、会員に対してさらなる法令順守の徹底と、企業倫理の確立についてあらためて要請しました。今年度も引き続き、関係法令への理解を深め、コンプライアンス順守の機運を醸成する研修などを継続的に実施し、再発防止に努めていきます」  ――今年度の重点事業について。  「少子高齢化の進展に伴う就業人口の減少は、全産業共通の課題ですが、県内建設業界はより深刻な状況で、この中で若年者の入職・定着を促進するためには、建設業に将来を託すことができ、安心して働き続けられる新4K(給料・休日・希望・かっこいい)の魅力ある業界にすることが不可欠です。そのために協会として、働き方改革と担い手確保という相互に関連する2大課題について重点的に対応していく考えです」  ――今後の抱負。  「建設業界では、今後も担い手不足や事業継承問題などが懸念される中、建設DXを活用した生産性の向上や、SDGs・カーボンニュートラルへの対応といった新たな課題も山積しています。協会としては、建設業が地域の基幹産業として引き続き県土の発展に貢献していけるよう、『協会として何ができるか』を常に自問自答しながら、会員各社の知恵や経験を結集し、組織力を発揮することで課題の克服に取り組んでいきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 原発事故に伴う風評被害や、自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 生産者の所得が確保される形を早期に実現したい。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから1年超が経過しました。この間を振り返っての感想をお聞かせください。  「昨年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、県内では2021年2月、2022年3月に2年連続で福島県沖地震が発生し、新型コロナ感染症の拡大等、課題が山積する中、昨年6月に会長に就任しました。  肥料や燃料・飼料等、様々なものが高騰し農家経営は厳しさを増していきました。国や県へ要請活動を行ったことにより、飼料購入助成等が認められたことは、農家の窮状が理解されたとともに我々の活動が認知されたのかなと思っていますが、その一方で廃業に追い込まれた酪農家・畜産農家の方もいます。そのすべてが飼料高騰に起因するものとは言い切れませんが、もっとできることがあったのではないか、との思いも抱いています」  ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、2022年から2024年までの中期計画が策定されました。そのうち、農業産出額を震災・原発事故前の水準である2330億円まで回復させる目標を設定しましたが、その見通しについて。  「2330億円の早期実現を目標に取り組んできましたが、2021年度の農業産出額は1913億円となりました。大きな要因の1つに、復興すべき地域の復興が遅れている現実があります。もう1つは、想定していた以上に米価が下落してしまったことがあり、厳しい状況にあると思っています。  そうした中、水田(コメ)から国内需要の多い野菜等に作物転換していただく取り組みをスタートして2年目に入っています。そういった意味では新しい動きが出てきた年になったと思います」  ――「第41回JA福島大会」では、米の生産過剰基調により、生産品目の見直しが必要なことから、国産需要が見込まれる園芸品目への生産シフトを進めるため、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進める、ということも決議されました。その内容と進捗状況について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は既存産地のさらなる生産振興を図るとともに、基盤整備地区における高収益作物の大規模振興、園芸振興の取り組みを加速化させていくことを目的としています。  各JAが、これまで栽培した品目等を検討しながら、地域に合ったもの、あるいは新規で需要がありそうなものを検討してもらっています。5JA12地区で、きゅうり、ピーマン、アスパラガス、ねぎ、いちご、トマト、カスミソウなどの栽培に取り組んでいます」  ――中期計画では「組織基盤強化戦略」も大きな目標の1つに設定され、その中で組合員の維持・拡大、とりわけ、「女性組合員拡大」が目標に設定されましたが、その狙いと見通しはいかがでしょう。  「『第41回JA福島大会』で決議された中期計画の柱の1つに『組織基盤の強化』があります。いままで中心となって活動をしてきた人が高齢になり、新規就農者が定着しない中、組合員の維持・拡大は容易でない状況です。そんな中、正組合員の拡大と意思反映の強化のため、女性組合員の拡大、女性の経営への参画を進めています。2022年度末で、正組合員における女性の比率は20・4%で、前年度より増えていますが、さらなる拡大を目指します。  やはり、女性部ではどういうことをしているのか等々を理解していただくことが仲間を増やす第一歩になると思います。女性部の中には『フレッシュミズ』という組織があり、それが定着できずにいる地区もありますから、県内全体でフレッシュミズが構成されるように進めていきたいと思っています。女性部組織が楽しく、自らの経営や暮らしに役立つ組織であるということをいかにしてPRできるかが重要になると思います」 就農支援センターの実績  ――今年4月に、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。同センターの意義、これまでの実績等について。  「県に対し『新しく農業を始めたい人や規模拡大などを考えている生産者からの相談にワンストップ・ワンフロアで対応できるような仕組みづくりをしてほしい』と要請し続け、念願叶い、今年4月に、県、JAグループ、農業会議、農業振興公社が集う支援センターが自治会館の1階に開所しました。このような体制は福島県が最初だったこともあり、他県からの視察などもあります。中身については、電話相談、支援センターへの来訪、あるいはこちらから出向くなどの方法で対応しています。相談者も親から受け継いでの就農、全くの新規就農者、あるいは県外からの移住者など多種多様で、法人の新規参入相談もあります。  相談件数は4月から6月の3カ月間で298件に上り、内訳は就農相談が186件、経営相談が103件、企業等の参入相談が9件となっており、昨年同期と比較すると約2倍になっています」  ――東日本大震災・原発事故から12年超が経過しました。この間、福島県農畜産物は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、今後予定されているALPS処理水の海洋放出に伴うさらなる影響・懸念等について。  「処理水の問題は、農業分野においては、風評が懸念され、それらが最小限度で収まってほしいと思っています。我々が求めるのは、科学的な知見による安心感の伝達と、もし風評が発生した場合は、この12年間で賠償フレームができていますから、それらに基づいて対応をしてもらうことです。協議会員、生産者の方々が不安に思うことがないよう、対応していきたいと思います」  ――今後の抱負。  「毎年のように自然災害が発生し、しかも大規模化していくような気象環境になっていますので、まずは災害に強い生産基盤づくりを進め、従事する人々が生産意欲を持って取り組むことができ、所得が確保されるような姿を早く実現したいと思っています。そのためにも、先ほどお話しした『ふくしま園芸ギガ団地構想』の早期実現や就農支援センターが担う役割は大きいと思います」

  • 【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    すがま・やすいち 1959年生まれ。福島大中退。福島県総務部政策監、福島県観光物産交流協会常務理事、玉川村副村長などを歴任し、今年4月の玉川村長選で初当選。    ――玉川村長選では新人3人による三つどもえの激戦を制して初当選を果たしました。  「副村長を3年間務めていたものの知名度不足は否めず、苦戦を覚悟していました。ただ、支持者の皆さまに『顔と名前』の浸透に注力していただいた結果、日を追うごとに村長選への関心が高まり、村民の皆さまの政策への理解が深まっていくのを実感しました。あらためて村民の皆さま方に当選させていただいたと痛感するとともに、身が引き締まる思いです。選挙戦で寄せられた期待に応えるためにも、公約を着実に実現していかなければならないとの思いを強くしております」  ――1期目の重点施策について。  「『生まれて良かった、住んで良かった、選んで良かった玉川村』を基本コンセプトに掲げています。時代や社会の変化とともに進化しながら、村民の皆さまが安心・安全を実感し快適に暮らせる生活環境、質の高い行政サービスを提供していくことが何より肝要です。  喫緊の課題としては、人口減少対策が挙げられます。人口流出を阻止し、移住者等を増やす政策が必要となります。仕事・住居・教育・医療・子育て支援の充実と生活インフラの整備に加え、移住支援金をはじめ、移住者への手厚い支援など『総合政策』として取り組む必要があります。関係人口の創出と都市部からの移住・定住や二地域居住などを積極的に推進し、地域の活性化、振興策を講じていきます。  次いで、阿武隈川遊水地群整備計画です。村内で収穫量が最も多い優良な農地が買収されるなど、今後の村づくりに大きな影響を及ぼしかねない国家プロジェクトです。住居などの移転を迫られる方々が、これまでの生活の質を確保しながら安心・安全に暮らしていける環境を整えるのが本村の重要な役割と認識しています。対象者一人ひとりに寄り添った対策の実現に向け、国としっかり協議調整していきます。  そのほか、①複合型水辺施設を中心とした『かわまちづくり事業』、②旧須釜中学校校庭を活用した宅地造成事業、③泉郷駅前の活性化などのプロジェクトの推進、④基幹産業である農林業や商工業の振興、⑤いわゆる交通弱者対策としての『高齢者等QOL向上サービス実証事業』の展開と来年度以降の事業化、⑥地域のデジタル化推進を踏まえたプレミアム率30%の『デジタル商品券』の発行〝手ぶらキャッシュレス〟事業、⑦高齢の方々が末永く幸せに暮らしていけるための健康寿命の延伸事業――など、多様なニーズを把握しながら、地域に合ったきめ細かなサービスを提供できる仕組みづくりに鋭意努めます」  ――今後の抱負を。  「4月30日の就任から約4カ月が経過しました。この間、村民の皆さまをはじめ、職員、議会のご理解とご協力に深く感謝致します。『だれもが誇りを持てる魅力ある活力ある元気で豊かな玉川村』の実現に向け、皆さまのご意見やご要望に真摯に向き合いながら、本村における課題解決にしっかりコミットする『玉川モデル』としての施策の展開に邁進していく考えです」

  • 【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    うすき・ともき 1948年4月生まれ。喜多方商業高(現・喜多方桐桜高)卒。西会津町総務課長、副町長などを歴任。2017年7月の町長選で初当選。現在2期目。  ――昨年8月の大雨被害の復旧状況は。  「本町は未曾有の大雨による被害を受けました。発災後は、現地調査、測量設計を迅速に進め、施工可能箇所のうち、農地・農業用施設を含めたすべての被災箇所の工事を昨年度中に発注し、早期完成を図ってきたところです。特に水田については、今年の作付けに間に合うように工事を進めてきました。残る町道久良谷線については、難易度の関係から2024(令和6)年度の再開通を目指しています」  ――新型コロナウイルス感染症が5月8日から感染症法上5類に引き下げられました。  「この間、『なつかしcarショー』をはじめ、祭礼、各種総会、盆踊り、ビアガーデンが通常開催となりました。また、飲食を伴う会合なども再開され、飲食店も活気が戻りつつあります。今後もこれまで中止・規模縮小を余儀なくされた各種スポーツ大会などの行事が従来通り再開する運びとなります。一方、『Withコロナ』の観点から、引き続き感染防止対策にも努めていく考えです」  ――物価高の地域経済への影響について。  「ガソリン代、電気代、生活必需品に至るまで値上げとなり、町民生活に影響が及んでいます。冬季の暖房費の負担増を懸念しています。本町では、家計負担の軽減を図るべく、給食費の一部補助を実施しているほか、9月には商品券第6弾として、町民一人当たり5000円の消費再生商品券の発行を予定しています。また、町内事業所も収益が圧迫されている現状もあることから、100万円を上限に『中小企業等エネルギー価格高騰対策支援補助金』を創設し、支援策を講じています。そのほか、公共サービス事業者や町内商店向けの支援にも努めています」  ――その他の重点事業について。  「移住・定住の促進、空き家対策、結婚・出産祝い金の継続といった人口減少対策・子育て支援策の推進はもちろん、『西会津町デジタル戦略』に基づきDXをさらに加速させていきます。基幹産業である農業の振興を図るため、町農業公社を設立するほか、最新デジタル技術を駆使して生産者と消費者との〝絆〟を結び、西会津産米の販路開拓や農業所得向上につなげる『石高プロジェクト』を展開します。このほか、人手不足解消を図る仕組みづくりとしての『特定地域づくり協同組合』設立、人生100年時代を見据えた健康長寿・健康寿命延伸事業、西会津診療所の医療体制の強化、『日本の田舎、西会津町。』による町のブランド力強化、ふるさと応援寄付金の取り組み強化による自主財源のさらなる増額などにスピード感をもって取り組みます」

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    みやた・ひでとし 1950年2月生まれ。東北工業大工学部卒。2000年から塙町議3期。2016年の町長選で初当選し、現在2期目。  ――役場新庁舎の工事が進んでいます。 「建築費高騰を心配していましたが、影響は少なく、現在の進捗状況は30%弱で、順調に進んでいます。来年4月には完成し、5月中の開庁を目指しています。その後、現庁舎を解体し、駐車場と書類等を保管する書庫棟を建設する予定となっています」 ――「子ども第3の居場所b&gはなわ はなまるはうす」が開所しました。 「はなまるはうすは、日本財団とB&G財団が連携する『子ども第3の居場所』プロジェクトの一環として、家庭や学校だけではなく、子どもたちがのびのびと過ごせる第3の居場所を提供しています。 5月に開所し、まだ数カ月ですが、おかげ様で23名が利用登録をしています。利用する子どもたちも楽しそうで、教育施設ではありませんが、個別学習室もあって宿題をしたり本を読んだりして自由に過ごしています。また、同施設では地域の食材を使用したバランスの良い食事を提供しており、子どもたちが美味しそうに食べていました。町内の方々からお米や野菜の寄付をいただき、大変助かっています。最近は兄弟姉妹のいない家庭も多く、学校ではない場所で様々な世代の子ども同士がコミュニケーションをとるのは、とても良い機会だと思います。夜8時まで預けることができ、保護者の評判も上々です。 今後は、子どもだけでなく高齢者が子どもたちと料理をつくったり、高齢者が子どもたちに習字や将棋を教えたり、さらには子どもたちが学校の時間は高齢者の集会施設としての利用や一人暮らしの高齢者が食事をするといった、高齢者にとっても『第3の居場所』になるような施設のモデルを目指していきたいと考えています」 ――自転車での地域振興を進めています。 「東白川郡4町村で組織する『東白川地方自転車活用推進協議会』を中心に、自転車を活用した地域活性化を目指しています。それが県にも認められ、県で自転車道の整備を積極的に進めていただいています。また、自転車をそのまま列車に持ち込める水郡線サイクルトレインは、JR東日本管内では水郡線だけで、これまでは有人駅だけ利用可能でした。そこで協議会で要望活動を行い、無人駅である磐城塙駅と棚倉駅でも利用可能となりました。利用者からの評判も良く、今後も4町村が連携して進めていきたいと思っています」 ――今後の抱負。 「この町を次の世代にしっかり繋いでいき、持続させていくという使命があります。そのためにも今後も様々な施策を行っていきたいと思います」

  • 【猪苗代町】二瓶盛一町長インタビュー

     にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。  ――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。 「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。 狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」 ――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。 「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。 JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」 移住・定住促進に努める ――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。 「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。 私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。 令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」 ――選挙公約について。 「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。 猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。 また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。 少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」 ――今後の抱負。 「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。 また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」

  • 【上杉謙太郎】衆議院議員インタビュー

    うえすぎ・けんたろう 1975年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。荒井広幸参院議員秘書などを経て2017年の衆院選(比例東北)で初当選。現在2期目。外務大臣政務官などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定を受け、県南・県中地域からなっていたこれまでの3区は、新2区と新3区に再編された。県南を地盤とする自民党の上杉謙太郎衆院議員(48)は、小選挙区を離れて比例東北から立候補することになった。自身を育ててくれた支援者への思いと、今後の方針を聞いた。  ――区割り改定を受け県衆院比例区支部長に就任しました。次期衆院選では比例東北ブロックから立候補します。これまでの経緯と現在の心境を教えてください。 「今回の区割り変更によって次の選挙については選挙区から出馬できず比例に回ることとなりました。私自身大変残念でありますし、今は状況を受け入れておりますが、昨年以来自分の中で相当な葛藤がありました。それはやはり今までご支援いただいていた旧3区の皆様の直接的な支部長ではなくなってしまうからです。これは地元の代表たる代議士にとっては致命的なことです。加えて、旧3区の皆様には秘書時代から含めると20年弱お世話になっています。本当に大切な方々であります。支援者の皆様に大変心苦しく申し訳ない思いでおります。法改正により仕方のないこととはいっても、複雑な思いの中で了承いたしました。 新2区には旧3区から須賀川、田村、石川地方が再編されています。旧2区時代の選挙全てに根本匠先生が出馬しており、かつ1度を除き全勝しています。また根本先生は自民党県連会長であり、岸田文雄総裁が率いる派閥の事務総長でもあり、実績も多々あります。新2区の大票田となる郡山市を地盤としており、そもそも新2区における支部長選任にあたっては私は選択肢に入っていなかったようです。一方新3区は、そもそも3区支部長が私であったことと、新3区に残った県南は前回選挙で私が勝利していることから、私も菅家一郎先生とともに選択肢に上がっておりました。どちらを選挙区支部長にするかについて、会津と県南における有権者数、両地域における過去の選挙での得票数や選挙区での党員の確保数、参議院選挙をはじめ自らが選対本部長等を務める選挙での貢献度、会津地域の地域性が選定の基準となったようです。 最終的には党本部と県連、私も菅家先生も所属する派閥の清和会で調整が進みました。その結果、次回の選挙における新3区支部長には菅家先生、比例に私ということになりました。菅家先生は前回選挙で対立候補に負けている地域で巻き返し勝利すること、私は県南で菅家先生を勝たせること、つまり会津と県南で協力すれば、新3区での勝算はあるという判断からのことでした。 私は選挙区で戦えなくなってしまいましたが、一歩引いた形で黒子に徹し、次の選挙でお二人が当選できるよう、お二人の選対本部長として戦います。すでに各地域支部を両代議士に繋ぐ会や、私の若手の後援会の皆様との懇親会などスタートしています。挨拶回りもスタートしています。そういった形で2区に再編された須賀川、田村、石川地方では根本先生の支持を訴え、3区に残った県南では菅家先生への支持を訴えていきます。また選挙以外では今までと変わらず旧3区の皆様の要望を聞き、地元の声を国政に届ける活動をしていきます。私のその後については、3区でのコスタリカを含めて、まずは次の選挙でお二人の選挙を全力で戦うことで初めて道が拓けてくると考えています」 ――上杉議員が地盤としていた旧3区は新2区と新3区に分断されます。 「昨年夏以降複数回にわたって東京選出の先輩議員らから『東京で出ないか』との提案がありましたが、その度に即座にお断りしてきました。お世話になってきた旧3区の人たちと今後も活動していくことが私の使命だと考えているからです。比例東北で出るのであれば、比例は東北全域が選挙区となるので、分断された旧3区の地域も今までと変わらず私の選挙区ということになります。そういう意味では、考え方によっては、今までお世話になった党員や後援会の人たちと関係を続けていけるというプラスの面もあります。しかし、選挙で出馬し、『上杉謙太郎』と名前を書いてもらうからこそ代議士ですので、大変辛いことですし、法改正と党本部の判断によるものとは言え、ご支援いただいてきた方々には本当に申し訳なく思います。私は福島県で生まれ育った訳ではありませんが、骨を埋めるつもりで白河に来て家族共々住んでいます。子供達も白河で育っています。未熟な私ですが、地元の支援者の皆様に政治家として育てていただき、次の選挙では『対立候補に勝てるかもしれない』というところまで来ていました。それが、お世話になった選挙区が分断されただけでなく、小選挙区からも身を引かなければならなくなったこの現状は、本当のところかなり受け入れ難いことでしたし、戦いにおいてはまさに次こそが勝負という時でしたから、まさにはしごを外されたような感覚があります。 今は受け入れて話せていますが、昨年から今年の春までの選挙区調整期間は本当に『まな板の鯉』状態でした。『今の3区の皆さんとこれからも政治活動を続けていきます。動く気はありません』というのが揺るがぬ本心で、この点を党本部、県連に伝えてきました。とはいえ、私がいったん引くことで、党内も県連内も対立することなく収まる結果となったことはよかったと思います。しっかりと謙虚に受け止めて自分の与えられた職務を全うし邁進していきます」 ――新3区支部長の菅家一郎衆院議員とは、どのような関係性を築いていきたいですか。 「何が何でも菅家先生に当選してもらう、そのために一丸となります。新3区の県南地方では必ず対立候補以上の得票数が得られるよう県議の先生方や各地域支部の皆様と協力をして菅家先生を連れて歩きます。すでに始まっています。まずは県南で菅家先生が受け入れてもらえるようご理解をいただきながら活動していきます。自分以外の選挙でも汗を流す。それを一生懸命やることが比例支部長に与えられた職務とも考えています」 ――次期衆院選に向けて、有権者にメッセージをお願いします。 「比例に行くからといって今までのご縁が切れる、離れてしまうということは一切ありません。これからもお世話になりますし、今後は複雑な立ち位置になりますが、選挙においては根本先生と菅家先生の当選のために、おそらく旧3区地域の各選対に入り、支援者の皆様とともに選挙を戦います。ある意味、今まで候補者として街宣車で外に出てしまっていたので支援者の方々と会えるのがほんの一瞬ということが多かったのですが、今度は選挙区の候補者ではないので支援者の方々と近くで頻繁に顔を突き合わせてある意味一緒に選挙活動ができます。そのような形で両代議士をしっかりと当選させるのが、比例で優遇された私に与えられた責任です。 東北全部が選挙区になりますが、目下、旧3区と新3区の声を両代議士と県議の先生らと連携して地元の皆様の声を国政に届けていきます」 【上杉謙太郎】衆議院議員のホームページ

  • 【郡山市】品川萬里市長インタビュー

     しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在市長3期目。  ――新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。 「県の移行計画では9月末までに入院受け入れ医療機関を51医療機関から131医療機関へ、対応病床数も766病床から786病床へ段階的に拡大し、未対応であった医療機関に対しても働きかけを行うこととしています。外来診療体制も現在の689医療機関からすべての医療機関に働きかけ、インフルエンザと同等に幅広い医療機関による外来診療体制を構築することとしています。このことにより、これまで一部の医療機関での診療や入院であったものからすべての医療機関での診療等が可能となり、郡山市内においても診療可能となる医療機関の増加が想定されることから、診療や入院の受け入れを行ってきた医療機関の負担は軽減されると考えられます。 一方、これまで診療や入院の受け入れを行ってこなかった医療機関では新たな感染防止対策をとるなどの負担が考えられますが、県では必要となる感染防止等の設備整備の補助や院内感染発生に伴う休止・縮小に対する支援、個人防護具の配布等の財政支援措置を準備しています。市としては県や医師会などと連携してサポートを行っていきます。 ワクチン接種については5月8日から『令和5年春開始接種』が始まり、本市でも4月24日から接種券を発送しています。市民の皆様には羅患時の重症化リスクを低減し、ひいては医療機関の負担軽減に結び付くと考えられることから、接種についてご検討をお願い致します」 ――一家4人死亡事故を受け、市道を点検した結果、危険交差点が222カ所あることが判明しました。 「2月3日までに222カ所の点検を行い、180カ所で対策を検討していましたが、その後、郡山地区交通安全協会や郡山市交通対策協議会などから新たに61カ所の交差点の情報が寄せられ、それらの点検を行った結果、58カ所を追加し、238カ所の交差点で対策が必要であると判定しています。対策工事については市民の皆様の安全を確保するため迅速な対応に努め、昨年度中に区画線・路面表示の対策を5カ所実施し、現在は133カ所について工事発注の手続きを進めており、カラー舗装の工事を6月に、カーブミラーや路面標示などの工事を7月までに完了する見込みです。残り100カ所についても県公安委員会と連携し、1日も早い完了を目指します」 ――開成山公園と公園内の体育施設がPFIを導入した新しい公園・体育施設に生まれ変わります。 「開成山公園は2017年の都市公園法改正により創設されたPark―PFIを活用し整備を行うこととしました。体育施設はPFI法及び郡山市PFIガイドライン等に基づき19年度にPFI導入可能性調査を行った結果、施設改修と維持管理・運営を一体的に行うPFI事業としての効果が十分に発揮できると判断しました。開成山公園は目指すべき姿を『郡山の「未来を切り拓く」セントラルパーク』とし、自由広場の芝生化、駐車場の拡充及びトイレの改修・新築等といった公園施設の整備とともに、民間事業者による飲食店等の新設など市制施行100周年の節目となる2024年のリニューアルオープンを目指し、民間事業者との協奏による整備を行っていきます。さらには気候変動に対応する防災機能の強化、ベビーファースト、SDGsを実現させるべく、市民の財産である開成山公園をより有効活用し、秘めたる力を発揮させていくとともに、先人たちの偉業に思いを馳せながら『次の100年』を目指した公園整備を行っていきます。体育施設は年齢、障がいの有無などに関わらず、すべての市民がスポーツに親しみ、各種プロスポーツ大会や大規模大会が開催される市のスポーツの拠点形成を目指します。改修工事は宝来屋郡山体育館が今年10月から2024年9月まで、郡山ヒロセ開成山陸上競技場が24年2月から25年3月末まで、ヨーク開成山スタジアムが24年8月から25年3月末まで、開成山弓道場が24年12月から25年3月末までとなっており、オープン時期は施設により異なります」 ――今年度の重点施策について。 「少子高齢化・人口減少の中にあっても持続的発展を遂げる都市を目指すため、今年度の市政執行方針を『「ベビーファースト(子本主義)実現型」課題解決先進都市の創生』と定め、子どもの視点に立ったまちづくりを推進していきます。主な施策としては学校給食の公費負担を実施したことです。私は教科書が無償であるのと同様に『給食は食育教育の教科書である』と考えているため、本年度から市独自の施策として中学校の給食費を全額公費負担とし、小学校の給食費も国の地方創生臨時交付金を活用し、全額公費負担としたところです。また、DXの推進に加え、気候変動や地球温暖化対策といったGXの推進にも重点を置き、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ目標の実現を目指します」  ――来年、市制施行100周年を迎えます。 「明治時代に行われた安積開拓をきっかけに全国各地から士族が移住してきました。安積疏水は農業の発展はもとより、疏水を利用した水力発電により養蚕などの産業や工業の発展をもたらしました。1924年に郡山町と小原田村が合併し郡山市となり、その後も幾度かの合併を経て65年の大合併により現在の形となりました。この間、東日本大震災や自然災害など幾多の困難もありましたが、多くの先人たちが築き上げた礎のおかげで、市制100周年を迎えることができると考えています。次の100年に向け、先人たちの思いをつなぎ、安積開拓の理念『開物成務』のもと、市民や事業者が自由かつ存分に活躍してもらえる、自治力のある都市の実現を図っていきます。 記念事業についてはオール郡山で記念事業に取り組むため、次代を担う世代の方々や市民活動団体関係者、報道機関などの22名で構成された『郡山市制施行100周年記念事業プロモーション委員会』において、市の政策との整合性にも留意しつつ、記念事業が次の100年を見据え、未来メッセージを発信していく意義のあるものとなるよう検討していただいています。委員会からは音楽イベントの開催、プロスポーツの記念試合開催などのほか、歴史・観光・子ども・産業などのアイデアをいただいており、今後、記念事業の内容について検討していきます」 ――今後の抱負を。 「『誰一人取り残されない』SDGsの基本理念のもと、市民・団体・事業者などの皆様との『公民協奏』『セーフコミュニティ活動』の推進を念頭に各種施策を総合的・持続的に実施することにより、市民・事業者の皆様が思う存分に活躍できるまちづくりを進めてまいります」 郡山市のホームページ

  • 【アレンザHD】浅倉俊一会長兼CEOインタビュー

     あさくら・しゅんいち 1950年生まれ。聖光学院高卒。76年に㈱アサクラ(現ダイユーエイト)創業。2019年4月、経営統合で設立されたアレンザホールディングスの社長となり、今年5月、会長兼CEOに就任した。  ホームセンターのダイユーエイトなどを展開するアレンザホールディングス(福島市)は5月24日、定時株主総会と取締役会を開き、浅倉俊一社長が代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、後任にホームセンターバローの和賀登盛作氏が就任した。浅倉会長兼CEOに、現状や今後の見通しについて話を聞いた。 世代を担う人財を育てるのが私の役割  ――3月にダイユーエイトの会長兼CEOに就き、5月にはアレンザホールディングスの会長兼CEOにも就任しました。 「以前から70歳で後進に道を譲りたいと思っていましたが、コロナ禍で3年間先送りしている状況でした。アレンザホールディングスも今年で5年目となり、ちょうどいいタイミングだと考えました。次世代を担う人財を育てていくことが私の役割だと考えています」 ――アレンザホールディングスの2023年2月期連結決算(収益認識を除外した数値ベース)は、営業収益1583億4900万円(前期比100・9%)、営業利益52億8200万円(同84・1%)、経常利益59億0600万円(同86・3%)、当期純利益27億円(同66・0%)で、増収減益となりました。 「増収になった要因は、新店9店舗出店による売り上げ増と、昨年3月に発生した福島県沖地震の特需などによりダイユーエイト既存店の売り上げが伸びたことです。 減益となった要因は販管費の増加が大きかったです。前年同期比23億円増で、その内訳は水道光熱費6億円、人件費6億円、物流費用2億円、キャッシュレス・EC手数料2億円、その他新店の開業経費などとなっています。加えて、タイム社において、会計上の理由で繰延税金資産の取り崩しが約5億円発生したことも当期の利益に影響しました。 光熱費高の影響は大きかったですが、照明の明るさを下げたり、LEDに換えたりして電気代の節約に取り組みました。また、減益となった一方で、粗利率は0・5%改善しました。これは売り上げにおけるプライベートブランド(PB)商品の割合比率が11%から13・5%に向上したためです」 ――ダイユーエイトの既存店ベースで、客単価が前年同期比3・9%増加しましたが、来店客数が同3・6%減少したことにより、既存店売上高は0・1%の増加となりました。要因をお聞かせください。 「客数の減少は〝コロナ特需〟の反動減によるものです。2022年2月期は〝巣ごもり需要〟によってマスクなどの衛生用品のほか、DIY用品、インテリアの売り上げが伸びていました。一方、客単価が増加したのは、原価の値上げ分を適正に売価へ反映してきた結果、物価上昇分がそのまま上乗せとなったためです」 エイトプロ出店を加速  ――職人向けの工具などをそろえた「エイトプロ」の郡山安積店(郡山市)が新規オープンしました。福島店に次いでの出店となりました。 「概ね計画通りに進捗しています。特に主力の工具部門が好調で、予想を上回る売り上げを上げています。プロショップはまだまだ伸びしろがあると感じています。 今期は3店舗の新規出店を計画しており、そのうち岩沼店(宮城県岩沼市)と福島本内店(福島市)の2店舗はすでに具体的な物件を確保しています」 ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に引き下げられました。ダイユーエイトはじめ、アレンザホールディングス傘下の店舗において、売れ筋商品・売り場作りなどに変化はありましたか。 「マスクなど衛生用品の売り上げが大きく減少し、旅行などの需要回復に伴い来店客数が減少しています。今後はホームセンターの主力部門である園芸・植物での『地域一番店』を目指して、ドラッグストアやスーパーマーケットとの差別化を図っていきます。またDIY用品の強化や棚割り改革を行い、地域の需要にきめ細かく対応していきたいです」 ――ペットワールドアミーゴは屋島店(香川県高松市)をはじめ、3店舗の出店がありました。今後の戦略をお聞かせください。 「ペット事業は特需の反動減で一時低迷していましたが、その影響が昨年12月くらいに一巡し、それ以降は既存店ベースで前年並み、あるいは上回るところも出てきています。特に犬フード、猫フード、トリミング、ペットホテルが好調に推移しています」 ――福島県経済の今後の展望について、考えをお聞かください。 「東日本大震災・原発事故以降、だいぶ風評被害がありましたが、徐々に回復してきていると感じています。県内の農業や水産業は、高い品質と安全性があることから需要が高まりつつあります。観光業も、県内の温泉や自然景観などを生かした観光プランの開発によって回復傾向にあります。一方、流通・小売業では大手企業が活発に出店を進めており、商業施設やショッピングモールの開業が相次いでいます。 今後は、地域特性を生かした商品を生み出したり、地域の需要にきめ細かく対応するなどして、地元消費者の支持を獲得することが求められるようになると思います。またIT技術を活用し、店舗とオンラインショップを組み合わせた販売形態を構築したり、店舗内でイベントなどを開くなどして、顧客獲得にも積極的に取り組む必要があるでしょう」 ――ホールディングス発足4年を振り返って。 「企業が統合することによって生まれる『シナジー効果』を求めて、商品開発や物流コスト節減、粗利率の改善に取り組んできました。特に粗利率の改善については、メーカー統一による原価価格引き下げ、PB商品開発の拡大を進めてきました。2023年2月期と、経営統合前の2019年2月期の粗利率の差異は、ダイユーエイトが+1・9%、タイムが+0・8%、ホームセンターバローが+2・3%です。今後もPB商品の拡大に取り組んでいきます」 ――今期(2024年2月期)の経営方針として、商品力の向上、店舗力の向上、新規出店、差別化戦略、DX推進、SDGs推進、M&A戦略を掲げています。 「『商品力の向上』として、今期PB商品売り上げ構成比18%の実現を目標に掲げています。具体的には、単品販売力の向上や定番棚割りの見直しを行っていきます。PB商品における海外開発の割合は7割を占めていましたが、コロナ後は3割まで下がり、粗利率が低下しました。海外開発の割合をコロナ前の基準まで引き上げていきたいですね。 『店舗力の向上』として、ホームセンター11店舗、アミーゴ4店舗、MAX福島店の改装を実施し、14店舗の新規出店を計画しています」

  • 【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

     ひきち・としみつ 1964年生まれ。福島市出身。東北大学工学部卒。いわき建設事務所長、土木部次長(道路担当)などを歴任。昨年4月から現職。  本県は東日本大震災や令和元年の台風、一昨年、昨年の大地震、会津北部での豪雨と立て続けに災害に見舞われている。道路や橋梁の復旧に設備の強靭化と県土木部の役割は増す。復興への寄与と脱炭素の取り組みを就任2年目の曳地利光部長に聞いた。入札不正、収賄事件で低下した信頼を回復するための取り組みも尋ねた。 安全で安心な県土づくりを着実に進めていく  ――県土木部長に就任し1年2カ月が経ちました。 「就任直前の2022年2月、只見町の雪崩であいよし橋が流失し、同3月には福島県沖地震が襲いました。就任後の同8月には会津北部を中心に豪雨が発生するなど様々な自然災害の影響を受けた1年でした。新型コロナウイルスの影響下の中、災害対応やインフラの整備・維持管理などに取り組んでいただいた建設業に携わる皆様の御尽力に心から御礼申し上げます。 1年を振り返り、改めて安全で安心な県土づくりに取り組む必要があることを実感しました。昨年度からスタートした『福島県土木・建築総合計画』に基づき、県土の持続的な発展のために必要な取り組みを着実に進めていきます。 復興事業については、2015年度までの『集中復興期間』とこれに続く20年度までの『第1期復興・創生期間』に、津波被災地の災害復旧と防災集団移転などの事業がほぼ完了しています。 一方で、原子力災害による避難地域等のインフラについては、『第2期復興・創生期間』に復興を支える道路事業等を展開していますが、復興のステージが進むにつれて新たな課題が顕在化しています。 これらの課題を5月に初めて開いた『東北震災復興のみらいを語る懇談会』で、国土交通大臣、岩手・宮城両県知事及び仙台市長と共有し、連携を一層緊密に図りながら解決に取り組んでいくことを確認しました。 福島の復興はいまだ途上であり、今後も長く戦いが続きますが、引き続き土木部職員一丸となって安全で安心な県土づくりに取り組んでいきます」 不祥事を「自分事に」  ――県発注工事の入札で設計金額を教えた見返りに現金や飲食代などの賄賂を受け取ったとして、収賄容疑で県中流域下水道建設事務所の職員が逮捕・起訴されました。土木関連事業の入札に関する設計金額や非公表の工事単価などの情報漏洩が相次ぐ中、今後の対応についてうかがいます。 「土木部では、別の事件で1月に農林水産部職員が逮捕されたことを受け、入札前工事の設計金額を閲覧できる職員を必要最小限に限定するシステム改修を2月に実施しました。 土木部としては、コンプライアンスの徹底や服務規律の保持について、職員一人一人が不祥事案を『自分事』として捉えられるよう面談や研修などの取り組みを愚直に繰り返し行っていきます。さらに、今回の事件の事実関係や原因を踏まえ、第三者委員会からの意見をいただきながら、再発防止策がより効果的なものとなるよう取り組みます」 ――昨年度より、建設行政の新たな指針とする「福島県土木・建築総合計画」が始動しました。 「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波による災害、東京電力福島第一原子力発電所事故による災害を踏まえ、土木部は国・市町村等と連携しながら被災地の復旧・復興に全力で取り組み、津波被災地における復興まちづくり、復興公営住宅の整備等による居住の安定確保、地域連携道路やふくしま復興再生道路等の整備による県内ネットワークの強化等を着実に進めてきました。 一方で、今なお多くの方が県内外で避難を続けているなど、復興は途上にあり、復興や住民帰還の進捗に伴って新たな課題も生じています。 気候変動により豪雨災害が激甚化・頻発化しており、令和元年東日本台風により本県でも大きな被害が発生しました。豪雨災害以外でも、2年連続で大規模な地震に見舞われるなど、あらためて人的被害を防止するため、社会資本の充実を図ることが、極めて重要であることを強く認識しました。 このような中、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等の時代潮流の変化に対応し、30年後のありたい姿を実現するため、2021年に福島県総合計画が策定されました。その計画を具現化するために、土木部は22年度から30年度までの9年間を計画期間とした『福島県土木・建築総合計画』を同12月に策定しました。『安全・安心、豊かさを次代につなぐ県土づくり』を基本目標に、7つの目標と14の施策を設定しています。 この計画に基づき、震災からの復興と地方創生をさらに加速させます。防災・減災、国土強靱化や、建設業の振興を推進するため、国や市町村、建設業に携わる皆様と連携を一層密にしながら、社会資本の整備に取り組んでいきます」 ――ふくしま復興再生道路の進捗状況と効果について。 「ふくしま復興再生道路は、基幹的な道路に囲まれる範囲にある主要8路線、29工区について、これまでに福島市と浪江町を結ぶ国道114号の山木屋1・2・3工区など、22工区(3月末時点)が完了しております。本道路の整備によって、避難住民の帰還や帰還後の生活再建、産業再生や交流人口の拡大による地域活性化が図れます。引き続き、小名浜港と常磐道を結ぶ小名浜道路や、浜通りと中通りを結ぶ吉間田滝根線など、残る工区の早期供用に向けて整備を進めていきます」 ――その他の重要施策についてうかがいます。 「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業基盤の再構築を目指す福島イノベーション・コースト構想では、浪江町の水素製造拠点の開所や、南相馬市の福島ロボットテストフィールドでの活用事例の増加、さらには関連企業の立地など、これまでの取り組みの成果が着実に表れています。今年4月には、福島国際研究教育機構(F―REI)が設立されました。避難地域で行われている様々な取り組みを加速させるため、広域ネットワークの形成などインフラ整備を進めることが、土木部の重要な役割だと考えております。 土木部では、低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した公共土木施設や建築物の整備を進めるとともに、小名浜港における次世代エネルギー受入環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化などを推進するため、『小名浜港港湾脱炭素化推進計画』を策定していきます。 建築物についても、室内温熱環境を向上しつつ大幅な省エネルギー化を実現することが重要課題となっていることから、県有建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めていきます」

  • 【磐梯町】佐藤淳一町長インタビュー

    さとう・じゅんいち 1961年9月、磐梯町生まれ。日大工学部卒。磐梯リゾート開発取締役総支配人を経て、2015年の磐梯町議選で初当選。19年磐梯町長選で無投票初当選。今年6月の同町長選で無投票再選を果たした。  ――磐梯町長選挙では無投票で再選を果たされました。 「無投票で再選できましたことにあらためて感謝いたします。2期目のテーマは、『内部の変革と体制づくり』が重要だと認識しています。1期目では、デジタル変革(DX)戦略室を設置し、各部署の横断的かつ柔軟な業務対応と効率化を図りましたが、DXはあくまで手段であり、行政サービスの出口戦略に至るのに、一番重要なのは役場内部の変革です。 今や、行政は同じ仕事を日々こなしていくだけの時代はもう終わったといっても過言ではありません。職員一人ひとりが自ら考え、行動に移すことが求められています。一方、それらの定着化を図るうえで、まず職員を育てる必要がありますが、現在の役場の枠組みでは限界があります。2期目では、組織の変革による職員の意識改革と行政のスピードアップ化へ大きく舵を切る覚悟です。 この間、職員間のチャットツールを導入し、情報共有の徹底化を図ってきました。これにより、担当の職員が仕事を抱え込むことはなくなり、チーム内はもちろんチーム外の職員からも知恵やアイデアが出されるなど着実に成果が上がっています。 従前の行政の問題点の1つに、閉鎖的な職場環境による想像力の低下と視野狭窄が挙げられます。質の高い行政サービスを実現するためにも職員のスキルアップや能力開発が不可欠との観点から、民間企業をはじめ、外郭団体などで兼業してもらうことも検討しています。役場内の情報管理は全てクラウド化しているので業務に支障が出ることはない点を付言したいと思います。また、『攻守兼備の行政』の実現に向け、営業・マーケティング戦略と総務・管理、それぞれに特化した副町長二人制の導入を前向きに検討します」 ――2期目の重点施策について。 「再選を目指すにあたって以下の『5つの骨太方針』を示しました。今後は実現に向け粛々と取り組む所存です。 1つは、人口減少対策の基本となる施策である子育て・教育の充実です。『子ども子育てワンストップ窓口』を設置し、子育て支援を展開していきます。教育は個々の性格、家庭環境で育まれたものをサポートして伸ばすことであり、それが学習における習熟度、成長率を左右すると考えます。子どもたち一人ひとりに合わせた『インクルーシブ教育』の徹底を目指して議論を重ね、教育施策の柱に据える考えです。加えて、町内の保育・教育施設を一体的に運営する学園構想を推進し、0歳から15歳までにどういう教育を進めていくか、根本的に見直します。先ずは幼稚園と保育園を再編して認定こども園を作る方針で、協議会を立ち上げて具体的に検討します。 2つは、本町の基幹産業である農業振興です。農業振興公社を設立し、農業従事者の皆さまが継続して働ける仕組みを作ります。併せてマーケティングも行い、農産物の付加価値を向上させます。農業は魅力にあふれた事業だと思いますが、後継者不足が深刻です。十分な収入が得られ、休みもある仕事ならば就農希望者も増えると思いますが、現実はなかなか厳しいのが実態です。 問題は流通過程の中で生産者と消費者との距離が離れてしまうことです。生産者と消費者が直接つながり、『良質な農産物を供給してくれる』という信頼関係ができていれば、多少価格が高くても買い求めるようになりますし、SNSや口コミを通じて評判も広まっていくと思います。その結果、生産者の収入が上がれば、新規就農者も増えていくものと考えます。農業振興公社を中心にさまざまな施策を打ち出し『儲かる農業』を実現できるよう注力します。 3つは、観光振興と地域ブランド強化です。磐梯町がどこにあるのか分からない人も多いと思いますが、『会津磐梯山と名水のまち』と打ち出せば、イメージが掴みやすくなり、認知度が広まっていくと考えます。『磐梯町ブランド』が確立されれば、農産物の売り上げにもプラスになるはずです。認知度アップのために、民謡・会津磐梯山の磐梯町バージョンを作りイベント時には必ず流して、PRしていく考えです。 観光はコロナ禍で厳しい状況が続いてきましたが、民間の力を生かすため連携しながら支援していくことが何より重要と考えています。そのため、ばんだい振興公社を立ち上げ、町内の観光スポットである『道の駅ばんだい』、『史跡慧日寺跡』を一体として運用していく体制を構築しました。年間約82万人が訪れる道の駅ばんだいを拠点に、史跡慧日寺跡などを回遊していただく『滞在型観光』を目指します。集客面ではインバウンドも鋭意強化していく考えです。スキー場を訪れるオーストラリア、台湾からの個人客に加え、雪のない東南アジアへの営業強化、民間施設への集客支援を実施していきます。 4つは、移住定住の推進です。本町を知っていただいた方に、『住んでみたいまち』、『住みやすいまち』と思っていただけるようしっかり取り組みます。地方への移住定住は、まずそこで暮らしていくための環境を整備する必要があります。 本町では町唯一の大型商業施設が閉店したのを受け、2021年に『公有民営方式』で民間スーパーを誘致しました。さらに、地域おこし協力隊や地域活性化起業人を採用して、さまざまな形で地域を活性化させ魅力を向上させてきました。町内には有力企業の工場が進出しており、働き口の確保もサポートしていきます。移住定住関連の各種補助金も見直し、空き家バンクに加え空き地バンクを追加します。各地区を調査し、空き地を有効活用していくとともに町営住宅整備も計画する考えです。民間活力の導入を図り、民間アパートや分譲地も増やしていきます。 結びに、共創協働のまちづくりです。町民全員が幸せになるためには、行政の一方的な取り組みだけでは難しく、町民と共にまちづくりを進めていくことが重要です。町民と対話し、いろいろな課題を共有して、『まちをどうしていきたいか』という思いを一つにすることが大切であると認識しています。町民の思いを行政が支えていく形で、一緒に事業を進めていく所存です」 幸せに暮らせる環境を  ――町民へのメッセージを。 「人口減少社会は避けて通れない問題であるのは事実です。引き続き磐梯町の魅力をより大胆に発信しながら関係人口の創出、移住・定住の促進を図り、町内の活性化に注力するとともに、本町の日常生活に幸せを感じて暮らせるような仕組みづくりや環境づくりを鋭意進めていきます。併せて、町民の皆さまがオープンに議論できる機会を提供し、その内容を踏まえた新しい形での行政サービスを提供できるよう努めます」

  • 【南会津町】渡部正義町長インタビュー

     わたなべ・まさよし 1958年7月生まれ。県立田島高校卒。旧田島町役場入庁後、総合政策課長、総務課長などを歴任。南会津町副町長を経て昨年4月の町長選で初当選を果たした。  ――5月8日から新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが2類相当から5類に引き下げられました。この間の町内における状況とアフターコロナ対策について。 「5月から6月にかけて総会シーズンを迎えましたが、終了後に懇親会が催されるケースが目立つなど、コロナ前の日常が戻りつつあると実感しています。町民は『しっかりと感染対策をしながら経済を回していくことが重要』と認識されているようで、最近では地域経済が非常に活発になってきたと思います。 一方、飲食業の方にお話を聞くと、昼の時間帯は客足が戻ってきたが、夜の時間帯までは完全に戻っていないとの声が聞かれます。生産工場や建設業では、集団感染が発生した場合、生産ラインを止めなくてはならない、あるいは作業現場を止めなくてはならない、といった不安やリスクを依然として感じているのではないかと考えます。 新型コロナが落ち着きつつある一方で、最近では、電気料金の値上げや物価高騰の影響が深刻です。当町では、その対策として、電気料金や燃料費高騰に苦しむ事業者に対し、100万円を上限とする原油価格等高騰対策事業(事業費4000万円)を4月から実施するなどして、支援に取り組んでいます。 そのほか、新型コロナや物価高の影響による消費低迷からの回復を図るため、地域振興緊急対策事業(同1410万円)としてプレミアム付商品券の発行に向け取り組んでいます。また、酪農家からは飼料代の高騰により相当影響が出ているとの声や、農家の方からは農業資材の高止まりに苦慮されている話が寄せられているので、的確な支援策を検討しています。今後補正予算などで、全体を見据えて、限られた財源を有効に使っていく考えです」 ――公約である子育て・医療福祉政策の充実をはじめ、結婚支援対策、若年層の定住対策の進捗状況についてうかがいます。 「子育て支援については、まず保育所の0~2歳児の保育料負担軽減対策(同1141万円)です。全額負担について検討を重ねましたが、最終的には町が半額支援するという結論に至りました。次いで、新たなお子さんが生まれた際に10万円分の商品券を贈呈して誕生を祝うとともに、必要なものを町内で消費していただくための当町単独事業『パパママ応援交付金事業』(同710万円)を実施しています。 国と連携した事業としては『妊娠出産21プロジェクト事業』(同853万円)で、母子手帳交付時に5万円、出生時に5万円の現金を支給するとともに、伴走型支援として保健師による一貫した訪問活動を展開しています。 そのほか、地域子育て支援拠点事業として、出産をはじめ、幼少期、学童期の子どもを持つ親からの相談にきめ細かに対応するため、健康福祉課内の『子育て世代包括支援センターえがお』を核とした相談・支援体制の構築に努めています。 医療福祉については、昨年12月に県立南会津病院の病院長が不在となることが懸念された中、この間、南会津郡内の首長・議長会と連携して実情を訴え、4月1日から確実に病院長を配置していただけるよう、県に要望活動を行ってきました。紆余曲折ありましたが、坂下厚生総合病院で病院長を経験された松井遵一郎先生が南会津病院長として就任され、今までと変わりなく診療が行われています。同病院の医療体制の強化は南会津郡で最優先課題に位置づけられます。現在、常勤医がいない産婦人科、精神科、眼科における常勤医の配置をはじめ、小児周産期医療体制の充実、人工透析専門医と看護師の増員について引き続き要望していきます。 結婚支援対策については、7人の縁結びサポーターによるお相手紹介・結構相談全般を担う『縁結びサポーター事業』をはじめ、南会津地方振興局と合同で開催する婚活イベントを1回、本町単独の婚活イベントを2回予定しています。そのほか、身だしなみやマナー、異性とのスマートな話し方を学ぶ『スキルアップセミナー』の実施、結婚して居住する費用もしくは引っ越し費用について60万円を上限に補助する『結婚新生活支援事業』を展開しています。 現在、若い職員たちによる結婚支援策の検討・立案により『あづまっぺ実行委員会』が設立されました。今の若者たちの結婚観を踏まえ、肩ひじ張らずさりげなく出会える機会の必要性から、町が運営するインターネットコミュニティサイト『#ミィズ』を立ち上げ、6月12日現在で56人の方が登録されています。併せて、南会津町結婚サポート企業の登録も始めました。町内に立地する事業所や団体に呼びかけ、結婚支援の官民連携を図っており、6月5日時点で22の事業所に参画いただいています。 若者の定住対策については、Uターン、Iターンの仕組み作りが重要だと考えます。住宅取得時の支援をはじめ、移住してきた方々が地域でしっかり馴染んで生活してもらうための体制構築などを『定住対策プロジェクト事業』に盛り込み、鋭意進めています。また、人手不足が慢性化する中、若者の定住も含めて、新たな求人活動や事業所をPRするための費用の一部を助成する取り組みについて、『働き手確保支援事業』として新規で着手したところです。南郷トマト生産を中心とする新規就農者への支援、林産業の雇用促進、町内で新たに起業・商売したい方の支援対策として、『ビジネスチャレンジ支援事業』も展開しています」 観光商品開発に努める  ――関係・交流人口の創出にも注力されています。 「首都圏を中心に多くの企業でコミュニケーション能力や提案能力を高める研修が求められている中、当町の地域資源を生かした研修でディスカッション能力や提案力の向上を図る『チームビルディングツーリズム事業』を試験的に実施しています。現在は、モニターツアーという形で実施していますが、研修を実施した事業所からは非常に好評であり、関係人口創出のポテンシャルを感じています。また、埼玉県の埼玉栄高校などを運営する学校法人佐藤栄学園、千葉県の市立船橋高校との『町有施設等の利用に関する協定』を通じた高校合宿誘致事業にも引き続き尽力する考えです。そのほか、農家の生活体験を教育プログラムに組み入れた教育旅行『南会津農村生活体験推進協議会支援事業』も実施しています。『星空誘客事業』では、当地域の星空がどのぐらい素晴らしいのかという魅力を再認識していただけるよう、住民向けの星空観察会を実施しています。今後は商品化に向けた事例調査を進めながら、宿泊を伴う観光商品の開発に努めていく考えです」