浪江競走馬トレセン〝説明会〟の中身

 浪江町末森地区で競走馬トレーニングセンターを整備する計画が進められている。

 事業主体は2022年1月設立の「Blooming Stables(ブルーミングステーブルス)」(東京都中央区日本橋、吉谷憲一郎社長)。資本金1000万円。事業目的は競走馬の生産、育成、調教、管理、売買など。吉谷氏は複数の競走馬の馬主を務める。

 8月24日には同町末森、大堀、田尻、小野田、川添北、川添南各地区の住民を対象に同社主催の説明会を開いた。住民説明会は非公開で、本誌記者は「後であらためて連絡して説明の場を設ける」とのことで会場に入ることができなかった(本誌だけへの対応?)。参加者の話や地元紙報道を基にあらためて情報を整理しておきたい。

 予定地は浪江町末森地区の特定復興再生拠点区域と、大堀地区の一部の帰還困難区域にある農地や山林。説明会開催のお知らせには「末森字仁田久保地内」と記されていた。

 総面積は約41㌶。1歳10カ月から競馬デビューまでの「育成」、レース間に体調を整える「外厩」などの役割を担う。最大512頭を収容できる馬房、16棟の厩舎を整備するほか、1200㍍の周回走路、東日本初の直線1㌔坂路コース、トレーニングセンター関連施設を設ける。併せて従業員寮、社員食堂も設置。雇用人数は130人程度を想定している。

競走馬トレーニングセンターのイメージ図(参加者に配布された資料より)
競走馬トレーニングセンターのイメージ図(参加者に配布された資料より)

 来年夏に着工し、2027(令和9)年秋ごろの開業を目指す方針。総事業費は約80億円で、経産省主管の「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」を活用する。

 《ブルーミングステーブルスによると、競走馬の生産頭数は近年、全国で7000頭を超える規模。年々増加している一方で、レースに向けた調教やレース間にトレーニングを行う施設が不足している現状にある。同社は競馬界のさまざまな需要を捉え、常磐道浪江インターチェンジが近くに立地するアクセス性、坂路コースが整備できる勾配ある環境などから、浪江町への整備を決めた》(福島民友8月25日付)

 吉谷社長は地元紙の取材に対し、「世界に通用する人材を集め、競馬界の発展と浪江の復興につなげたい」と意気込みを話していた。

 参加者によると、大半の参加者は当日初めて全容を知り、どんな計画なのか認識するので手一杯だった様子。質疑応答の時間には馬を運搬するトラックの経路や馬ふんの扱いに関する質問が出たそうだが、「原発事故後、耕作放棄地となっている農地を使ってもらうのは大歓迎」と主張する人もいたという。

 地元紙報道によるとトレーニングセンターの規模としては国内最大級とのこと。国指定重要無形民俗文化財・相馬野馬追など馬に関する文化が根付いている同町。それだけに同センターの計画は今後期待が高まりそうだが、準備段階の動きや計画地の選定過程をめぐり、吉田栄光町長や山本幸一郎町議の関与を疑う声が根強く残っている。本誌8月号では編集部に届いた同センターに関する疑問を綴った怪文書についてリポートした。競馬業界関係者からは「千葉県や茨城県に育成牧場がある中で福島のトレセンの需要が見込めるのか」との懸念、「業界全体が人手不足で、近年は外国人スタッフが増えている。浪江町でも外国人が増えるのではないか」と予想する声が聞こえる。

 こうした声が上がる中、説明会を非公開とした同社が、今後同施設をどのようにPRし、地域貢献につなげていくのか注目される。

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