東日本大震災・原発事故後に復興活動に携わる団体「福興浜団」の代表・上野敬幸氏(52)=南相馬市原町区萱浜=が、活動に携わっていた知人女性に性的暴行を加えたとして不同意性交等罪に問われている。事件の現場となった群馬県の前橋地裁で、これまでに5回の公判が開かれた(被害者の証人尋問があった5月16日の第3回公判を6月号で詳報)。
被害を相談された会社社長が証言
第4回公判(7月3日)には、事件が起こった前日の夜に上野氏と被害女性が参加した酒宴に同席した女性Bさんが被告人側の証人として、第5回公判(9月18日)には、被害女性が働く会社の社長で事件当日に被害の相談を受けた男性Cさんが検察側の証人として出廷した。
福興浜団は南相馬市に活動拠点を置くボランティア団体。代表の上野氏は東日本大震災の津波で子ども2人と両親を亡くした。東京電力福島第一原発事故の影響で人が入れず、捜索活動が進まなかった沿岸部で地元消防団の仲間と共に家族の行方を探し続けた。その後は消防団を母体に福興浜団を立ち上げ、菜の花を植えた巨大迷路や追悼の花火大会を企画し地域を盛り上げてきた。
そうした上野氏の人生は、ドキュメンタリー映画や書籍で取り上げられ、2021年の東京五輪では聖火ランナーを務めた。福島の復興活動に携わる人の中で知らない人はいない存在だった。
なぜ群馬県の裁判所で審理が行われているかというと、事件が起こったのが同県内だったからだ。今年1月30日に開かれた初公判で検察官が読み上げた起訴状によると、上野氏は昨年7月18日午前3時28分ごろから同9時42分ごろの間に同県太田市内のビジネスホテルで女性Aさん(当時25歳)と飲酒中、性的行為が予想しえない状況に置いて「触らせろ」「見せろ」などと言って恐怖を与え性交に及んだという。
上野氏は起訴内容を否認し、無罪を主張している。主な理由としては「性交しようとしたが、自分の年齢と飲酒の影響で行為ができなかった」「Aさんに口頭で『いいですか』と確認はしなかったが、Aさんに嫌がる様子はなく応じてくれたので同意はあると思っている」など。
刑法改正で従来の強制性交等罪を基に不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が新設され、2023年7月13日から施行された。性被害の実態に鑑み、性行為をさせるまでに暴行、脅迫を用いなくとも「同意しない意思を形成・表明、又は全うすることが困難にさせること」などがあれば罰せられるようになった。例えば、相手の不意を突いたり、予想と異なる事態に直面させて恐怖を抱かせたり驚愕させたりしてフリーズ状態に陥らせるほか、上司と部下、取引先などの立場に乗じた影響力が挙げられる。
被害者Aさんが証人尋問で語ったのは、Aさんにとって上野氏が親ほどの年齢差があり、仕事やボランティア活動での付き合い上、大きな影響力を持っていたということだった。Aさんは大学時代に上野氏が主人公のドキュメンタリー映画に感銘を受け、福島での復興活動や取材活動に携わりたいと思うようになったという。
大学時代にインバウンド(訪日外国人)相手の事業を繰り広げる企業にインターンとして入り、卒業後に業務委託として携わった。同社は東日本大震災の被災3県が復興している様子を海外に発信し、ブランド化する業務を担っていた。業務には映像撮影などの取材もあった。(Aさんが被害を申告した同社のC社長の証人尋問より)。
2023年5月に福興浜団主催のイベントにボランティアとして関わり、初めて上野氏と会ったAさんは、より復興に貢献したいと業務を兼ねて昨年3月に福島県浜通りに移住したという。Aさんが事件のあった同7月に群馬県太田市を上野氏と共に訪ねたのも、震災・原発事故から避難し群馬県に移住した女性Bさんと上野氏らの交流を取材する一環だったと、AさんとCさんは法廷で語った。
昨年7月18日の朝方に事件は起こった。Cさんによると、その日の夜に部下のAさんから電話で業務報告があった。話を聞くうちに、被害に遭ったことを打ち明けられたという。Cさんは、電話を聞きながらパソコンに打ち込んだというメモを基にAさんから申告を受けた被害内容を法廷で話した。
裁判官の注目点
時系列順に裁判官から証人への質問を抜粋する。裁判官3人の合議制で審理されている。
まずは7月3日に行われたBさんの証人尋問。裁判官1人が質問した。
――飲酒をした翌日の昼食会で、あなたから被告人に3次会(上野氏とAさんが、Bさんから紹介されたバーで飲んだ会)の様子を聞いたか。
「二日酔いで辛そうな上野さんに『何時まで飲んだの?』と聞いた。閉店の午前3時ごろまで飲んでいたようだった」
――被告人とAさんが宿泊先で飲み直したということは聞いたか。
「それは聞いていない」
――あなたは被告人の印象について「無邪気な少年のよう」と語っていた。どういう意味か。
「福興浜団にはさまざまな男女がいる。上野さんは付き合いが長い仲間とは仲良くふざけ合っていた。水鉄砲で水を掛け合ったりして笑っている。それを見ているうちに私たちも笑顔になる。そういう様子を見て『少年のような無邪気さ』を持っていると思った」
――被告人はAさんと話している時もそのようにリラックスした印象だったのか。
「はい。いつもと変わらない様子だった」
次に9月18日に行われたCさんの証人尋問。同じ裁判官が1人だけ質問した。
――あなたはAさんから群馬での業務報告を受けた後に被害の申告を受けたと話している。Aさんが被害を打ち明けたきっかけは、あなたが「何があったか」と聞いたからか。
「はい。最初に1時間にわたり話す中で、Aさんがあれほど楽しみにしていた被告人と群馬の現地の人との交流の様子がほとんど出てこなかった。違和感があって『何かあったのか』と聞くと被害を打ち明けられた」
――Aさんは最初から被害について話したのか。
「時系列に順を追って話していた。最初に3次会の話、次に被告人とコンビニに酒を買いに行った話、宿泊先の部屋での話になった時にそこで起こった被害について話した」
――Aさんが「キスをされた」とか最初に被害の程度を小さくして報告したことはあったか。
「ない」
予定していた3人全員の証人尋問が終わった。次回の被告人質問では、証言台に上野氏が立つ。10月16日午後1時10分に開廷予定。
























