スナック店主に不同意わいせつ致傷【ふくしまの事件簿#29】

スナック店主に不同意わいせつ致傷【ふくしまの事件簿#29】

 南相馬市で昨年10月、車内で知人女性にわいせつな行為をし、けがを負わせたとして不同意わいせつ致傷罪に問われていた漁師の男に福島地裁は裁判員裁判で9月19日、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。男には精神鑑定の結果、知的障害が認められたが、裁判所は「勘違いがあったとは言え、被害女性が抵抗していたのを十分に認識しており、軽くすべき事情はない」と判断。女性に50万円を支払い示談が成立している点、障害に配慮した再犯防止の観点から社会生活を営みながら指導を受ける処置を科した。

漁師の男に保護観察付き有罪判決


 不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に強盗やけがを負わせる罪が加わると、より重罪となり、裁判員裁判の対象事件となる。今回、有罪判決が言い渡されたのは、漁師の村澤孝明氏(50)=南相馬市小高区浦尻。判決によると、昨年10月15日午前2時20分から40分ごろの間に、南相馬市小高区内の車内で知人女性(当時57歳)の口を手で押さえつけて服をずらし、胸を舐めるなどした結果、全治1週間の打撲傷を負わせた。

 刑務官2人に拘束されたまま現れた村澤氏は、漁師という職業からか赤く日に焼けた顔で、頭を坊主に刈り込んでいた。小柄な印象。裁判では犯行に至る経緯が明かされた。

 村澤氏は南相馬市で生まれ育ち、中学校を卒業後、長年瓦職人として働く。独身で、震災・原発事故後に父親や兄が所有する漁船に乗り、漁を手伝うようになった。被害女性との交流は2021年ごろに始まった。行きつけのスナックの店主で、村澤氏は月に2回程度利用していた。自宅から店までは歩くには遠く、代行を利用するのも金がかかるので、村澤氏が閉店まで待ち、女性が車で送っていくこともあった。

 村澤氏は店主の女性を慕い、いつしか恋愛感情に変わっていったという。村澤氏からアプローチはあったが、女性としてはあくまで、「ママ(店主)」、「タカちゃん」と互いに呼び合い、子ども扱いしていたという。異性としては意識しておらず、やんわりといなしていた。村澤氏が着用済みの下着を求めることがあったが、女性店員が別の客からもらった新品の下着をあげたり、村澤氏からの執拗な電話には知人男性を「旦那」と紹介して出させたりして、はぐらかしていたという。

 村澤氏は性的行為をしたいと口頭で伝えていたが、被害女性は承諾せず、しつこい場合は「また今度」とかわしていた。事件は被害女性が店で酒を飲んだ村澤氏を自宅まで送り届ける車内で起こった。村澤氏は車が自宅に近づき止まったタイミングで行為に及ぼうとし、被害女性から抵抗されても続けた。被害女性がその場をしのぐために「私の家に行くからやめて」と言ったところで手を止めた。

 実際は、車は双葉警察署浪江分庁舎に向かっており、村澤氏は通報されると察知し逃走した。女性の被害申告後、村澤氏は2024年11月に逮捕され、不同意わいせつ致傷罪で起訴された。

 裁判では精神鑑定した医師が知的障害の程度が犯行に及ぼした影響について見解を示した。

 「理解能力は未熟な点はあるが、行うべきではない犯罪と十分に認識していた。踏みとどまる能力は十分にあった」

 一方で、言葉の真意をつかめず、字義通りに受け取り、女性から村澤氏に対し異性として好意があると勘違いしてしまったことは「斟酌する事情がある」と述べた。

 村澤氏は金銭を計画的に管理できず浪費したことがあったため、収入は家族が必要な分を管理していた。被告人質問では、家族から物を投げつけられたり、「おめなんかいらねえ」と言われたりしたと打ち明け、「おもしろくなかった」と述べた。「一人暮らしができれば家を出たい」と考えていたという。

 客として対価を払うことで成り立つサービスだったとは言え、スナックでの交流は居心地がよかった。

 「店の雰囲気が楽しかった。心の優しいママだと思いました」

 専門家の見解では、村澤氏の犯行それ自体に障害の程度は影響しなかった。執行猶予付きの有罪判決が下され、更生の観点から保護観察が付いた。

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