【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

【福島県土木部】曳地利光部長インタビュー

 ひきち・としみつ 1964年生まれ。福島市出身。東北大学工学部卒。いわき建設事務所長、土木部次長(道路担当)などを歴任。昨年4月から現職。

 本県は東日本大震災や令和元年の台風、一昨年、昨年の大地震、会津北部での豪雨と立て続けに災害に見舞われている。道路や橋梁の復旧に設備の強靭化と県土木部の役割は増す。復興への寄与と脱炭素の取り組みを就任2年目の曳地利光部長に聞いた。入札不正、収賄事件で低下した信頼を回復するための取り組みも尋ねた。

安全で安心な県土づくりを着実に進めていく

 ――県土木部長に就任し1年2カ月が経ちました。

 「就任直前の2022年2月、只見町の雪崩であいよし橋が流失し、同3月には福島県沖地震が襲いました。就任後の同8月には会津北部を中心に豪雨が発生するなど様々な自然災害の影響を受けた1年でした。新型コロナウイルスの影響下の中、災害対応やインフラの整備・維持管理などに取り組んでいただいた建設業に携わる皆様の御尽力に心から御礼申し上げます。

 1年を振り返り、改めて安全で安心な県土づくりに取り組む必要があることを実感しました。昨年度からスタートした『福島県土木・建築総合計画』に基づき、県土の持続的な発展のために必要な取り組みを着実に進めていきます。

 復興事業については、2015年度までの『集中復興期間』とこれに続く20年度までの『第1期復興・創生期間』に、津波被災地の災害復旧と防災集団移転などの事業がほぼ完了しています。

 一方で、原子力災害による避難地域等のインフラについては、『第2期復興・創生期間』に復興を支える道路事業等を展開していますが、復興のステージが進むにつれて新たな課題が顕在化しています。

 これらの課題を5月に初めて開いた『東北震災復興のみらいを語る懇談会』で、国土交通大臣、岩手・宮城両県知事及び仙台市長と共有し、連携を一層緊密に図りながら解決に取り組んでいくことを確認しました。

 福島の復興はいまだ途上であり、今後も長く戦いが続きますが、引き続き土木部職員一丸となって安全で安心な県土づくりに取り組んでいきます」

不祥事を「自分事に」

 ――県発注工事の入札で設計金額を教えた見返りに現金や飲食代などの賄賂を受け取ったとして、収賄容疑で県中流域下水道建設事務所の職員が逮捕・起訴されました。土木関連事業の入札に関する設計金額や非公表の工事単価などの情報漏洩が相次ぐ中、今後の対応についてうかがいます。

 「土木部では、別の事件で1月に農林水産部職員が逮捕されたことを受け、入札前工事の設計金額を閲覧できる職員を必要最小限に限定するシステム改修を2月に実施しました。

 土木部としては、コンプライアンスの徹底や服務規律の保持について、職員一人一人が不祥事案を『自分事』として捉えられるよう面談や研修などの取り組みを愚直に繰り返し行っていきます。さらに、今回の事件の事実関係や原因を踏まえ、第三者委員会からの意見をいただきながら、再発防止策がより効果的なものとなるよう取り組みます」

 ――昨年度より、建設行政の新たな指針とする「福島県土木・建築総合計画」が始動しました。

 「2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波による災害、東京電力福島第一原子力発電所事故による災害を踏まえ、土木部は国・市町村等と連携しながら被災地の復旧・復興に全力で取り組み、津波被災地における復興まちづくり、復興公営住宅の整備等による居住の安定確保、地域連携道路やふくしま復興再生道路等の整備による県内ネットワークの強化等を着実に進めてきました。

 一方で、今なお多くの方が県内外で避難を続けているなど、復興は途上にあり、復興や住民帰還の進捗に伴って新たな課題も生じています。

 気候変動により豪雨災害が激甚化・頻発化しており、令和元年東日本台風により本県でも大きな被害が発生しました。豪雨災害以外でも、2年連続で大規模な地震に見舞われるなど、あらためて人的被害を防止するため、社会資本の充実を図ることが、極めて重要であることを強く認識しました。

 このような中、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等の時代潮流の変化に対応し、30年後のありたい姿を実現するため、2021年に福島県総合計画が策定されました。その計画を具現化するために、土木部は22年度から30年度までの9年間を計画期間とした『福島県土木・建築総合計画』を同12月に策定しました。『安全・安心、豊かさを次代につなぐ県土づくり』を基本目標に、7つの目標と14の施策を設定しています。

 この計画に基づき、震災からの復興と地方創生をさらに加速させます。防災・減災、国土強靱化や、建設業の振興を推進するため、国や市町村、建設業に携わる皆様と連携を一層密にしながら、社会資本の整備に取り組んでいきます」

 ――ふくしま復興再生道路の進捗状況と効果について。

 「ふくしま復興再生道路は、基幹的な道路に囲まれる範囲にある主要8路線、29工区について、これまでに福島市と浪江町を結ぶ国道114号の山木屋1・2・3工区など、22工区(3月末時点)が完了しております。本道路の整備によって、避難住民の帰還や帰還後の生活再建、産業再生や交流人口の拡大による地域活性化が図れます。引き続き、小名浜港と常磐道を結ぶ小名浜道路や、浜通りと中通りを結ぶ吉間田滝根線など、残る工区の早期供用に向けて整備を進めていきます」

 ――その他の重要施策についてうかがいます。

 「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域等の産業基盤の再構築を目指す福島イノベーション・コースト構想では、浪江町の水素製造拠点の開所や、南相馬市の福島ロボットテストフィールドでの活用事例の増加、さらには関連企業の立地など、これまでの取り組みの成果が着実に表れています。今年4月には、福島国際研究教育機構(F―REI)が設立されました。避難地域で行われている様々な取り組みを加速させるため、広域ネットワークの形成などインフラ整備を進めることが、土木部の重要な役割だと考えております。

 土木部では、低炭素社会の実現に向け、環境に配慮した公共土木施設や建築物の整備を進めるとともに、小名浜港における次世代エネルギー受入環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化などを推進するため、『小名浜港港湾脱炭素化推進計画』を策定していきます。

 建築物についても、室内温熱環境を向上しつつ大幅な省エネルギー化を実現することが重要課題となっていることから、県有建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を進めていきます」

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