【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

 こくぶん・まもる 1966年9月生まれ。郡山市出身。東北学院大卒。89年に福島県庁入庁。総務部政策監、観光交流局長などを経て、昨年4月から現職。

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。とはいえ、コロナがなくなったわけではなく、まだまだ注意が必要だ。そんな中、県ではどのような対応をしているのか。健康・福祉などのその他の課題と合わせ、県保健福祉部の國分守部長に話を聞いた。(取材日9月12日)

県民が健康で幸福を実感できる県づくり

 ――5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。

 「5類移行により、法律に基づき行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、県民の皆様の自主的な取り組みを基本とする対応に変わりました。

 県では5類移行後も迅速な対応を図るため、知事をトップとした福島県新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議を設置し、関係課長による会議を毎月開催するなど、感染状況の把握と情報共有に努め、基本的な感染対策について注意喚起を図ってきました。また、医療提供体制については、法律に基づく入院措置による行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応への移行を段階的に進めています。

 新型コロナウイルス感染症の波は、今後も繰り返されることが予想されています。感染が拡大すると医療機関への負荷が高まるとともに、高齢者や基礎疾患のある方などの重症化も懸念されます。県では、引き続き、感染状況や医療負荷の状況に注視しながら、感染拡大防止のための情報発信や医療提供体制の確保に努めていく考えです」

 ――8月20日までの1週間に県内82の定点医療機関で確認された感染者は増加傾向にあります。

 「新型コロナウイルス感染症の新規患者数の定点あたりの報告数は、6月中旬以降増加しています。特に、8月14日から20日までの1週間は、25・27人と前週から2倍近い増加となり、全国平均の17・84人を大きく上回りました。その後は緩やかになったものの増加傾向は続いており、8月28日から9月3日までの1週間では27・62人となっています。昨年夏もお盆期間の前後にかけて新規陽性者が増加していたことから、夏休みやお盆期間中に人の流れが活発化したことが影響しているものと考えています。

 県民の皆様には、換気や場面に応じたマスクの着用、手洗い・手指消毒などの基本的な感染症対策を徹底いただくとともに、発熱やのどの痛みがあるなど普段の体調と異なる場合には外出に留意し、検査キットによる自主検査を行うなど『うつさない』行動を心掛けていただくようお願いします」
健康長寿県を目指す

 ――県では2035年度までを期間とする「第三次健康ふくしま21計画」の策定を進めています。

 「県では、総合計画で『全国に誇れる健康長寿県へ』を重要な施策に位置付け、県民の健康づくりに力を入れています。本年3月に『第二次健康ふくしま21計画』の最終評価を公表しましたが、健康寿命の延伸や要介護高齢者の抑制等は目標を達成した一方で、メタボリックシンドロームの該当者やがん検診の受診者など、健康指標の多くは依然として低迷していることが明らかとなりました。特に本県はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量がワースト2位など、震災以降の生活習慣の変化等により全国の中でも下位にあり、その改善のためには、県民一人ひとりが自身の健康の大切さに気づき、自分に合った健康づくりを実践していただくことが重要です。そのため、幅広い年代に楽しみながら健康づくりに取り組んでもらえるよう、健民アプリを活用して日々の体重を記録し適正体重を目指す『ふくしま測って体重チャレンジ』の実施、野菜から食べ始めるベジ・ファーストの推進、惣菜を段階的に減塩しスーパーで販売する食環境づくり事業などに取り組んでいます」

 ――介護・障害福祉施設では人材不足が顕著です。

 「県では、県内各地で開催する合同就職説明会をはじめ、優秀な介護職員や労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与のほか、介護職員の負担を軽減する介護助手の配置やワーク・ライフ・バランスの推進につながる週休3日制を導入する施設に対する支援など様々な事業に取り組んでいます。

 また、若い世代の介護への関心を高め、理解を促す取り組みとして、今年度は新たに、親子を対象に介護の魅力とやりがいを伝える参加型イベントを開催するとともに、若手介護職員や全国で介護の魅力発信を行っている方を高校に派遣し交流会等を開催するなど、イメージアップを強化しています」

 ――今年度の重点事業について。

 「今年度は重点事業として、避難地域の医療機関等の再開を支援し、医療提供体制の再構築を推進する『避難地域等医療復興事業』、県民の健康指標を改善するため健康行動の実践を促す『ふくしまメタボ改善チャレンジ事業』、介護支援ロボットやICTを導入することで介護職員の離職防止と定着促進を図るとともに人材不足を補う『ICT等を活用した介護現場生産性向上支援事業』などに取り組んでいます。

 震災・原子力災害からの復興・再生を成し遂げ、急激な人口減少や社会情勢の変化に対応できるよう、職員一丸となって効果的な施策を展開していきます」

 ――地方の立場から国に要望したいことはありますか。

 「新型コロナウイルスは5類感染症に移行しましたが、新たな感染症等の発生にも留意しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向け、平時から準備を整えておくことが必要です。このため、国には感染症対策や災害時医療を提供する医療機関の平時からの人的・財政的負担について支援いただくとともに、地域偏在や診療科偏在の解消等も含めた医療人材の確保に向けた対応を要望しています。
 また、コロナ禍において健康づくりの重要性が再認識されたことから、国民の健康を守る取り組みを一層強化していく必要があります。健康づくりの推進に向け、社会全体での意識醸成に国が率先して取り組むとともに、自治体や医療関係者等の連携強化、市町村による格差を防止するための財政的な支援等の拡充を要望しているところです」

 ――今後の抱負。

 「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、関係する全ての方々と連携しながら、全力で取り組んでいきます」

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