盗撮した県総合療育センター元男性職員の〝余罪〟

盗撮した県総合療育センター元男性職員の〝余罪〟

身体障害を抱える女性Aさんが、県総合療育センター(郡山市)に通っていた3年前に理学療法士の男性からリハビリ中に性被害を受けたと告発した。男性は、女性が被害を施設に打ち明ける前に別の盗撮行為で逮捕されており有罪となった。女性は自身の被害を届け出るが不起訴。センターも「証明できない」と事件性を認めず、「センターの対応に不適切な点はなかった」とする。女性は被害の記憶とセンターへの不信感から次第に通えなくなった。「母親も目撃しているので県には被害を認めてほしい。私を1人の人間として扱ってもらえれば、今後このような被害はなくなるはず」と話す。

障害抱える利用者が「わいせつ被害」を告発

県総合療育センター(郡山市)
県総合療育センター(郡山市)

県の出先機関である県総合療育センターは、障害児入所施設と病院を兼ねる。「手足または体幹の機能の不自由な児童に対し、通所あるいは入所により、治療・訓練・ 生活指導及び教育を有機的に行い、それに加えて総合的な外来診療部門を充実して、障がいの早期発見並びに早期治療・訓練及び教育を行うための総合療育を目的としている」(事業概要より)。1963(昭和38)年に郡山療育園として開園し、1984(昭和59)年に心身障害児総合療育センターと養護教育センター整備に着手後、1987(昭和62)年に県心身障害児総合療育センターに改称した。2004年に現在の名称になった。整形外科、小児科、リハビリテーション科をはじめ八つの診療科目がある。

Aさんは体が不自由で「バギー」と呼ばれる身体障害者向けの車いすが欠かせない。県総合療育センターには、治療やリハビリのために長年にわたって月2回のペースで通っていた。

被害に遭ったのは2023年10月のことだという。リハビリを担当した理学療法士の男性(50代)に胸を触られた。Aさんは通常、医師の診察を受けた後に45分ほどリハビリに励む。その日も計画書に則り、理学療法士の助けを受けて手や足をストレッチしたり、自力で立ったり座ったりする練習をした。

「加害者が担当になったのはその日が初めてでした。センター内でそれまでも見掛けたことはありました。おどおどしていて、おとなしい印象でしたが、その日はいつもと違いやたら喋っていました」(Aさん)

異変を感じたのは立ったり座ったりする座位の練習をする時だった。

「リハビリが終盤になり、後ろから抱き着かれました。私の胸の辺りで腕を組むような感じで、がっつりと押さえてきました。ブルブル、ブルブルと小刻みに震えていて気持ち悪いと思ったけど声が出ませんでした。怖くて『やめて』とも言えず、『気持ち悪いな』と思っていたら終わりました。時間はとても長く感じました」

Aさんの母親はリハビリに毎回付き添っている。母親も異変を目撃していたという。

「後ろから抱き着くようにしてリハビリに臨む先生はいなかったのでおかしいなと思いました」(母親)

母親によると、感覚として3分以上は後ろから抱き着き震えていたという。理学療法士は何事もなかったようにAさんをベッドからバギーに移動させてリハビリは終了した。Aさんはすぐには自分の身に起こったことを理解できなかった。

「その時は性被害に遭うということがどういうことなのか理解できませんでした。気持ち悪いなと思って数日間悩んでいる時にセンターから電話が来て加害者が逮捕されたと知りました」(Aさん)

容疑はAさんへの行為ではなかった。問題の理学療法士は、盗撮行為を行ったために、性的姿態撮影処罰法違反(撮影未遂)容疑で2023年10月に郡山署に逮捕された。犯行自体はセンターの業務と関係はない。同8月に本宮市内のスーパーで女性の後ろから近づき、靴に装着した小型カメラで盗撮を試みた。センターからの電話は、その理学療法士から何らかの被害を受けていないか確認する内容だった。

Aさんはセンターから尋ねられても、すぐに自分の被害を打ち明けることはできなかったという。年長の知人女性に相談し、自分がリハビリ中に受けた行為を性犯罪と認識した。警察に電話すると、「洗っていても構わないので被害を受けた時に着ていた服を持ってきてください」と言われ、警察署に向かった。盗撮行為で逮捕された理学療法士は、不同意わいせつ容疑でも取り調べを受け、センター内でも現場検証が行われた。

盗撮は有罪でも「わいせつ行為」は不起訴

センターでもAさんが受けた被害を聞き取りしようとしていた。

「加害者が逮捕されてすぐに所長を務める医師が面談を申し入れてきました。私はその時は食事が喉を通らないほど気持ちが悪く余裕がなかったので断りました。面談はそのままなくなりました」

翌2024年3月に問題の理学療法士は盗撮行為について罰金30万円の略式命令を受けた。自らが盗撮行為を認め有罪となったことを意味する。だが、Aさんが受けた不同意わいせつについては不起訴処分となった。理学療法士は同5月には県から停職6カ月の懲戒処分を受け、県職員を依願退職した。

本誌は県総合療育センターにAさんから被害申告を受けた後の対応を尋ねた。事務長が対応した。

事務長は、「警察の捜査が入ったのは事実です。捜査の結果、Aさんが言う被害については不起訴処分になりました」。

性被害を訴えたAさんへの対応については、

「プライバシーに関わるので回答は差し控えます」

Aさんとしては、リハビリを担当した男性理学療法士の不同意わいせつ行為が不起訴になったことが納得できない。女性のスカート内の撮影を試みるという別の性犯罪で有罪になり、懲戒処分後に職場を去っているが、自分へのわいせつ行為も認めて償ってほしいという。

「第三者による調査や有効な再発防止策を望みます」(Aさん)

Aさんによると、2024年8月には女性の理学療法士に、胸に痛みを感じるほど強くわしづかみにされたという。これも同様に捜査の結果、不起訴になった。

いずれもリハビリ中にAさんが主張する性被害は起きた。性被害の現場では、加害行為に直面すると、とっさの抵抗が困難になる「凍りつき症候群」が知られている。Aさんは身体障害の影響のため、なおさら体で拒否を示すことは難しい。

「誰もが同じ1人の人間として扱ってもらえれば、リハビリ現場での被害はなくなるはずです」

最後に、Aさんは開放的なセンターになるように求めた。

「治療のために県外にある子どもに特化した拠点医療機関に入院したことがあります。子ども向けの病院だからか建物の雰囲気も明るく、職員の風通しも良いように感じました。一方で福島県の総合療育センターは、建物のつくりも組織体制も閉鎖的に映ります。子どもから大人までが利用する場所なので風通しが良い環境になってほしいです」

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