クマの隠れ家になる中間貯蔵施設

クマの隠れ家になる中間貯蔵施設

 中間貯蔵施設の地権者らで組織されている「30年中間貯蔵施設地権者会」(門馬好春会長)に対する環境省の説明会が昨年12月3日、大熊町の交流施設「linKる大熊」で開催された。

地権者説明会で明かされた「現状」

 環境省福島地方環境事務所の担当者の説明によると、現在の契約状況はグラフの通り。契約形式の内訳は、売買が約8割、地上権設定が約2割。

用地面積の取得状況(全体面積=約1600㌶)
用地面積の取得状況(全体面積=約1600㌶)
地権者の契約状況(全体人数=2360人)
地権者の契約状況(全体人数=2360人)

 土壌貯蔵施設は大熊町に1~5工区、双葉町に1~3工区設けられ、大熊1工区、双葉2工区はすでに貯蔵容量を満たし受け入れを完了した。大熊1工区、双葉1、2工区には焼却灰などを鋼製角形容器に入れて貯蔵する「廃棄物貯蔵施設」も設けられている。そのうち双葉1工区は貯蔵容量の上限である1万4678個に達し、貯蔵を完了している。

 作業環境の空間線量率は最も低い双葉1工区西側で0・14~0・16マイクロ シーベルト毎時。最も高い双葉3工区で0・11~2・92マイクロ シーベルト毎時。敷地内の井戸水や周辺の河川の放射性セシウムの濃度は大半が検出下限値未満だった。

 県内の多くの自治体の除染は終了したが、帰還困難区域が残る自治体では特定帰還居住区域の除染がいまも進められ、除染廃棄物が運び込まれている。

 国は2045年3月までに県外最終処分に向けた措置を講ずる方針を法律に明記しているが、残り約20年となった現在も場所の選定すら進んでいない。ここから貯蔵済みの土壌や鋼製角形容器に入った廃棄物をすべて運び出して原状復旧できるのか。質疑応答の時間には、参加していた地権者会メンバーからも疑問の声が飛んでいた。

 同日、地権者会は石原宏高環境大臣宛てに以下の5点を求める要望書を提出した。

 ①福島県外最終処分場選定の早期かつ具体的な取り組みの強力な実行

 ②原発事故前の土地価格と損失補償基準要綱第19条の地代補償への見直し

 ③事業終了前に行う地上権設定契約書に基づいた原状回復の協議と実行

 ④中間貯蔵施設、周辺地域への火災防止並びに猛獣等安全対策の徹底

 ⑤マスコミ公開の場で専門家も参加できる当会との団体交渉の再開

 地権者会では30年後の確実な土地返還と併せて、「公共事業の用地補償に関しては明確なルールがあるのに、地上権価格はルールを逸脱して低く設定されている」として改善を求めてきた。要望書もそれに基づいた内容となっているが、興味深いのは④に関する要望だ。

 地権者会関係者によると、敷地内は草刈りされていない場所が目立つという。そうした状況が続けば、クマやイノシシなどが出没しやすくなったり、枯れ草から引火するリスクが高くなり、作業員や一時立ち入りする人が被害を受ける可能性が高くなる。実際、環境省福島地方環境事務所によると、クマに関しては、今年度少なくとも同敷地内で4件の目撃情報があったという。現在は主要な道路沿いの草刈りを実施しているが、地権者会ではさらなる安全対策を求めており、同事務所担当者はひとまず取得済みの土地は草刈りを徹底する方針を示した。

 県外最終処分の方針や除染土の扱いはもちろん、約20年にわたる敷地内管理・活用の在り方も、中間貯蔵施設をめぐる問題として今後議論の対象になりそうだ。

地権者会への環境省説明会の様子
地権者会への環境省説明会の様子

関連記事

  1. 【汚染水海洋放出】怒涛のPRが始まった【電通】

    【汚染水海洋放出】怒涛のPRが始まった【電通】

  2. 「次の大地震に備えて廃炉を」警鐘鳴らす能登の反原発リーダー【北野進さん】

    【北野進】「次の大地震に備えて廃炉を」

  3. 浪江競走馬トレセン〝説明会〟の中身

  4. 野村吉太郎弁護士が編著した『福島第一原発事故中通り訴訟』(作品社)

    原発事故「中通り訴訟」の記録著書発行

  5. 甲状腺がん検査を巡る見過ごせない指摘

    甲状腺がん検査を巡る見過ごせない指摘

  6. ALPS処理水放出差し止め訴訟

    ALPS処理水放出差し止め訴訟

  7. 津波被災地のいまを描いた映画『水平線』

    津波被災地のいまを描いた映画『水平線』

  8. 【浪江町民の憂い②】エフレイ職員移住の効果は限定的!?

    【浪江町民の憂い②】エフレイ職員移住の効果は限定的!?

政経東北 最新号

月刊「政経東北」2026年3月号

人気記事

  1. 【猪苗代町】飛び地メガソーラーが「認定取り消し」
  2. 【天栄村】犬同伴コテージ「死亡火災」の一部始終
  3. 政経東北【2026年2月号】
  4. 【和久田麻由子】NHK女子アナの結婚相手は会津出身・箱根ランナー【猪俣英希】
  5. 政経東北【2026年3月号】
  6. 手厚すぎる公務員「病気休暇制度」
  7. 【玄葉光一郎】衆院議員空虚な「知事転身説」

最近の記事

  1. 政経東北【2026年3月号】 政経東北【2026年3月号】
  2. ふくしまの事件簿【パチンコ店2700万円窃盗】③
  3. 【FTV】気象予報士【斎藤恭紀】さんが県民から信頼される理由
  4. 【楽天ドラフト4位】「打てる捕手」大栄利哉選手(学法石川)に迫る
  5. 8カ月間も「野放し」だった福島市在住【連続自殺ほう助犯】
PAGE TOP