東京電力福島第一原発事故から15年が経ち、当初指定された避難指示区域は帰還困難区域の特定復興再生拠点区域以外のところが残るのみ。ただ、その区域も2029年までの解除を目指して環境整備が進められている。2029年というとあと4年弱だが、現状はどうなのか。最も帰還困難区域の面積が広い浪江町を取材した。
2029年の避難指示解除まで4年弱

原発事故に伴う避難指示区域は、当初は警戒区域・計画的避難区域として設定され、後に避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域の3つに再編された。避難指示解除準備区域と居住制限区域は、すべて解除されている。
一方、帰還困難区域は、文字通り住民が戻って生活することが難しい地域とされてきた。ただ、住民からの要望を受け、帰還困難区域のうち比較的放射線量が低いところを「特定復興再生拠点区域」(以下、「復興拠点」)として定め、除染や各種インフラ整備などが実施された。現在、復興拠点に指定されたエリアはすべて避難指示が解除されている。
もっとも、帰還困難区域は7市町村にまたがり、総面積は約337平方㌔に上るが、このうち復興拠点に指定されたのは帰還困難区域全体の10%程度。大部分は手付かずのままだった。
そんな中、2023年6月に「改正・福島復興再生特別措置法」が成立し、その中で、復興拠点外に「特定帰還居住区域」を設定するということが盛り込まれた。具体的には、帰還困難区域を抱える市町村は、「特定帰還居住区域復興再生計画」を策定して、国に認定申請し、認定が受けられれば計画に基づき、国が国費で除染、家屋解体、インフラ整備などを実施する。避難指示解除は「2020年代」、すなわち2029年までに実施することになっている。
こうした方針に基づき、大熊町(2023年9月)、双葉町(2023年9月)、浪江町(2024年1月)、富岡町(2024年2月)、南相馬市(2025年3月)、葛尾村(2025年7月)が特定帰還居住区域復興再生計画を策定して国の認定を受けた。
このうち、最も帰還困難区域の面積が広い浪江町を取材したところ、町担当者は「現在は国の方で除染や家屋解体などの環境整備をしてもらっており、2020年代の解除に向けて準備を進めているところです」という。
同町ではこの間、2回にわたり住民意向調査を実施している。1回目は2022年度で、それを基に特定帰還居住区域復興再生計画を策定した。2回目は2024年度に実施し、1回目の意向調査で「帰還意向あり」と回答した世帯を除いて実施した。
この2回の意向調査の集計によると、対象世帯数は760世帯、回答世帯数は484世帯(63・7%)で、そのうち「帰還意向あり」は332世帯(43・7%)だった。ほかは帰還意向なし、保留、未回答。
同町は、2024年1月に特定帰還居住区域復興再生計画の認定を受けた後、昨年3月に同計画を改定している。これは2回目の意向調査で「帰還意向あり」と回答した人を踏まえて、特定帰還居住区域を拡大したから。
「環境整備等は国でやってもらうとして、町としては『保留』や『未回答』から『帰還意向あり』に気持ちが変わった人が(特定帰還居住区域から)漏れることがないようにしていかなければなりません。それが(特定帰還居住区域の制度の中での)町としての役割になります」(前出の町担当者)
特定帰還居住区域は、復興拠点外で帰還意向がある人(世帯)について、ピンポイントで除染などの環境整備を行い、戻って生活ができるようにする仕組み。完全な〝個別対応〟だ。そのため、「帰還意向があるのに何らかの事情でそれを表明できなかった」、「避難生活の過程で震災前の世帯主と世帯が分かれ、意思表示ができなかった」という人の漏れがないようにするのが町の役割ということだ。
対象住民の声
同町の特定帰還居住区域復興再生計画を見ると、大堀地区や津島、下津島、南津島、赤宇木などを含む津島地区に特定帰還居住区域が多い。それら地区を見て回ると、除染や家屋解体などが行われている様子がうかがえた。
対象地区の住民はこう話す。
「2029年までという目安が示されたのは良かった。これまではいつまで続くか分からない状況だったから。『ゴールの見えないマラソン』は本当にしんどいよ。ただ、避難指示解除に当たっては、ゆとりを持って知らせてほしいね。自宅の修繕などをするにしてもそれなりの時間がかかるし、中には家屋を解体したところもあるから、それを再建するとなるともっと時間がかかるだろうから。本当に2029年までに解除になるなら、いつごろから準備を始めた方がいいというのは分かるけど、確実にそうなる保証はないからね」
これは多くの対象者が思っていることだろう。
一方で、帰還困難区域(復興拠点、特定帰還居住区域)の除染などは全額国費で行い、東電に負担を求めないことになっているが、そこへの疑問は拭えない。これは本誌で以前から指摘していることだが、今回の原発事故は原因者がはっきりしている。言うまでもなく東京電力だ。であるならば、環境回復も東電の責任(負担)で実施すべきではないか。
国にも責任の一端があるということかもしれないが、各地で提起された賠償訴訟(集団訴訟)で、国は賠償責任がないとの主張を展開しており、裁判所の判断もその主張を認めるもの。一方(賠償裁判)では「責任がない」としながら、もう一方(帰還困難区域の環境整備)では「国として責任を果たす」というのは道理に合わない。


























