飯舘村民の「初期被曝訴訟」が和解

 原発事故直後、県内で最も高い初期被曝を受けることになったとして、飯舘村の村民13世帯31人が国と東京電力に損害賠償を求めていた訴訟で、原告団は11月23日に同村で記者会見を開き、東電と和解したことを明らかにした。同日、記者会見に先立ち、常務執行役員で東電福島復興本社の秋本展秀代表らが同村を訪れ、原告団に非公開で謝罪。その後、小早川智明社長の名前で記された謝罪文を手渡した。

不誠実対応の東電が一転して謝罪

 謝罪では《皆さまの生活に取り返しのつかない被害と混乱を及ぼしてしまい心から謝罪する》、《ふるさとからの避難を強いられたり、健康への不安感に苛まれたり、生業やコミュニティーが損なわれた苦しみを思うと言葉も見つからない》と述べたうえで《深く反省し、二度とこうした事故を起こさぬよう安全対策を確実に実施していく。自治体と協議しつつ、帰還や復興、地域再生に向けた取り組みを進める》と約束したという。和解成立は5月28日付。和解金額などは明らかにされなかった。

 東電の謝罪を受けて原告団長の菅野哲さんは次のように語った。

 「裁判長がある程度われわれの主張を認めつつも和解を提示したのを受けて、苦渋の決断で受け入れた。原発事故で失ったものは戻らない。村再生には、戦後入植者による開拓と同じぐらいの苦労があるだろうが、新しい村を作り上げる努力をしなければならないと思っています。地域住民とともに地域再生に取り組むことを約束した東電に期待し、今後その取り組みを見ていきたいです」

 同村では東電の原発賠償をめぐり、村民約3000人が初期被曝、生活破壊、避難生活による精神的苦痛に対する慰謝料や不動産の賠償額の増額を求めてADR申し立てを行った。2017年12月に初期被曝慰謝料について、対象・金額を少なく見積もった和解案がADRセンターから示されたが、東電はそれすらも受諾を拒否し、同センターの受諾勧告に応じなかった。そのため、住民・弁護士有志が2021年、慰謝料として1人715万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。

 東電側は法廷で責任を否定し、原発被災者に寄り添っているとは言い難い主張を繰り返した。準備書面では「事故前の飯舘村の経済的地位はすべての指標において県内最下位である。国の復興支援などですでに旧に復している」と表記し、原告団の感情を逆なでした。

 にもかかわらず、原告団が東電側の和解を受け入れたのはメンバーの年齢を考慮したためだ。

 「最高裁まで争うとさらに5~10年かかる。私はいま82歳だが、判決までに命が尽きてしまうかもしれません。そういう理由から和解を選択しました。正直時間があれば最後まで争いたい気持ちはありました」(原告団の伊藤延由さん)

原告団の記者会見の様子
原告団の記者会見の様子

 東電との和解と併せて、飯舘村民への避難指示を遅らせた国に対する訴えも取り下げた。和解交渉の場では、裁判長から国側に「遺憾の意」のようなものを表明するよう強く促していたそうだが実現しなかった。

 伊藤さんによると、2025年に村内で取れたキノコを測定したところ単純平均で1㌔当たり1万ベクレル、土壌は同5万3000ベクレル、周辺の空間線量率は1・29マイクロ シーベルト毎時。セシウム137の半減期は約30年。いまも汚染は残っており、キノコや山菜など自然の恵みが食卓に並ぶ豊かな生活は失われた。

 事故前の村の人口は約6500人だったが、現住人口は約1500人。帰還者の多くは高齢者だ。和解後も、原発事故による被害が消えることはない。態度を一転させた東電の約束はその場しのぎではなく信用に足るものなのか、その動きをウオッチしていく必要がある。

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