東証プライム市場上場でアパレル業の㈱ハニーズホールディングス(いわき市鹿島町、江尻英介社長、以下ハニーズHD)は8月25日、いわき市で定時株主総会を開いた。物価高による節約志向の高まりで客足が伸び悩み、2026年5月期は減収減益。28年5月期を最終年度とする中期経営計画は下方修正した。総会では政情不安にあるミャンマーに生産拠点を置くことに対してリスク管理を確認する質問もあった。株主総会とこれまでに同社が遭遇した労働者の抗議活動(同社は現地法令に違反した抗議活動との見解)の経過をリポートする。
あまり知られていない2017年の労働者抗議活動


ハニーズHDの業績推移は次頁の通り。2026年5月期は「円安による物価上昇で節約志向が強まる中、客数が伸び悩んだ」として、売上高2・6%減、営業利益21・8%減、当期純利益23・8%減と業績を落とした。気候変動や天候不順による需要予測の困難や仕入れ原価、人件費、物流コストの上昇が続き、服飾業界の環境は厳しい。ミャンマーの自社工場が生み出す価格競争力を原動力に、23年5月期には純利益が過去最高を記録したが、以降は減益が続いている。

好材料として、EC事業で自社サイトのユーザビリティ改善、サイト内回遊率を上昇させて売上を伸ばした。ECサイトでは豊富な商品やサイズ展開で店舗との差別化を図る。
店舗売上拡大のために既存店舗のリフレッシュなどを行い、居心地の良い接客で販売力を強化する。積極的な店舗展開と好立地へ移転し増床することで売り上げ拡大を目指す。
同社は7月7日に開いた26年5月期の決算説明会で28年5月期を最終年度とする中期経営計画を下方修正した(日経新聞7月8日付より)。業績底上げのために子ども用衣料事業「ハニーキッズ」を今年11月から始める計画という。
8月25日に行われた株主総会では、議題となった定款の一部変更について質問が上がった。同社は今後の事業内容の多様化に対応するために定款に新たな事業目的を追加した。日用雑貨品の他、化粧品、美容器具、飲食店の経営及び管理など15項目ほどの事業目的が加わった。
これについて、「何年までに行うか期限はあるのか、専門の人材は充てるのか心構えを聞きたい」との質問があった。江尻英介社長は、「明確な定めが今のところあるわけではない」とし、中期経営計画のプロジェクトチームの中で今後展開する可能性があると挙げたものを定款に盛り込んだと説明した。
ハニーズHDの強みは、ミャンマー子会社を中心とするASEANでの安定的な商品供給が可能な点だ。生産国別仕入状況(洋服のみ)では、年々シェアを伸ばしていたミャンマーが26年5月期に初めて過半数を超え54・1%になった。2位はバングラデシュで28・4%。他はカンボジア、ベトナム、中国など。
9年前の抗議活動で損害
同社は、2011年に軍政から民政移管したミャンマーに外資系企業として初めて進出した。翌12年に第1工場を操業し、現在第3工場まで展開する。同国は21年2月にクーデターで再び軍事政権となり、民主派勢力や少数民族が加わって国土は内乱状態にある。株主総会では、政情が不安定であることを念頭にリスク管理をただす質問があった。
「5割もシェアを超えて大丈夫なのか。今後も構成比を上げるのか。何か起きた場合にリカバリーできるプランを教えてほしい」
江尻社長は、「ミャンマーの54%のうち自社工場が製造しているのは30~35%で残り20%が協力工場になる」と説明した。いずれも生産は安定しており、万が一不測の事態が起きたとしても、バングラデシュやベトナムなどの他のASEAN諸国に迅速に生産体制を移行していくことが可能という。「今後極端にミャンマーの構成比が上がることは考えづらい」とも話した。
そんな同社が、9年前にミャンマーの100%出資子会社「Honeys Garment Industry Limited(HGIL社)」が現地で操業する第1、第2工場で労働者による抗議活動を受けていたのは日本国内ではあまり知られていない。
女性らが結成したミャンマー連帯労組の幹部、ミョーミョーエー氏と国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」によると、HGIL社が2017年に縫製工場の生産目標の引き上げに抗議した労働者448人を解雇した。さらに、同氏が違法な抗議活動を扇動したとして、HGIL社は同年11月に日本円で約1億3000万円相当の損害賠償を求めて提訴した。

ハニーズ側の訴えによると、ミョーミョーエー氏はSNSや日刊紙上で製造の不安定化を扇動し生産量を減少させたり工場の評判を低下させたりしたという。キャンセルされた注文などの損失は17年5月から10月に生じた。
抗議運動後の18年5月期の有価証券報告書を読むと、ミャンマー事業を含む「その他」のセグメントにおいて、1億円規模という以前にはなかった金額の営業損失が計上されている。特に第2四半期(17年9~11月)、第3四半期(17年12月~18年2月)で損失が1億円を超えており顕著だ。「従業員の退職などで生産が減少。損失が計画を上回る」との記述もある。
本誌は親会社のハニーズHDに報告書の営業損失は労働争議(抗議活動)によるものか聞いた。同社経営企画室が回答した。
《ご照会の「労働争議」は、現地の法律上に定められている正規の手続きによらない不当な抗議行動で あり、いわゆる「ストライキ」とは認められていないものであります。結果として、抗議行動に参加した従業員は、正当な理由がないまま職場復帰を拒否したものであり、 やむを得ず当該従業員を解雇したものであります。 なお、本件解雇処分については管轄の労働仲裁機関によって正当である旨の裁決を得ております。 結果として欠員が発生したことで生産性が低下したことにともない、同社への生産委託(発注)を他の委託先に振り替えたことで減収となったほか、同社が受注した一部を他の生産委託先に外注したことなどにより製造原価が上昇したため、営業損失を発生するにいたったものであります》
抗議活動が及ぼした影響
2017年以降に職場の改善に努めた例はあるのかも尋ねた。
《本件を契機に、同社における管理体制の不備を改めて精査し、労使関係をより改善するため以下の取り組みを実施しております。 ①就業環境の改善への取り組み ・WCC(労働調整委員会)の開催頻度を定期開催に変更。
・匿名での投書方式にて現地従業員の意見を集め、職場での課題の抽出を進めた。 ②第三者監査機関や親会社による定期的な監査の実施
・世界的な第三者監査機関であるSGS監査(※)を受検し外部の客観的な評価を取り入れた。指摘事項については期限を定めて改善に取り組み、次回の監査で客観的な再評価を受けることで進捗を確認。
※世界最大級の試験・検査・認証機関による監査
・本社担当者による工場調査(現地往査)を定期的に開催し取り組みを記録化。
③福利厚生設備の充実 ・2023年10月には第2工場敷地内に設備の整った第3工場が竣工。同時に、既存食堂施設の拡充工事に取り掛かり、2024年末に竣工》
HGIL社がミョーミョーエー氏に損害賠償を求めた訴訟は、国際人権団体が「労働者の権利の侵害」や「報復措置としての高額な損害賠償請求に当たり人権侵害」と国際社会に訴える中で25年1月にハニーズ側が取り下げた。審理終結が見込めず、「総合的な観点から」という。(ヒューマンライツ・ナウへの回答書より)
本誌は昨年2月、提訴取り下げ後に記者会見のために来日した同氏にインタビューした。
「日本に来たのは福島に本社を置き、ミャンマーで3つの衣料品工場を運営する日本企業、株式会社ハニーズホールディングスに関わる問題のためです。同社は第1工場および第2工場において、労働者の権利を侵害しました。様々な権利侵害に加え、賃金を支払わないまま労働者を解雇したのです。会社は労働組合の結成を認めませんでした。また、私がストライキを主導したとして、会社から訴えられました。国際人権団体『ヒューマンライツ・ナウ』による働きかけもあり、会社は私に対する訴えを取り下げました。ミャンマーの現在の状況(軍事政権下のこと)は、皆さんもご存知のことと思います。そのような中、私は7年以上にわたり、訴訟と向き合わなければなりませんでした」
軍事政権下で労働運動を続けていたミョーミョーエー氏は2021年に逮捕され、日本から帰国後の昨年7月にも逮捕された。国際人権団体が弾圧を非難し釈放を求め解放された。ハニーズHDが生産拠点を置くミャンマーでは労働運動が命がけであることが分かる。





















に向けて掲げられたプラカード。過激な言葉が並んだ=2025年10月19日、仙台市青葉区河北新報提供-002_eyecatch-520x305.jpg)



