8月15、16日に「ビッグパレットふくしま」で開催が予定されていた大規模イベント「東北六彩マルシェin福島」が開催2日前に突如中止となった。無責任な対応がSNSで問題視され、新聞でも報じられたが、一体何が起きていたのか。背景を探った。
主催企業代表が認めた「準備不足」
東北六彩マルシェは飲食やハンドメイド、ワークショップなど約250店舗が出店する予定だった。開催日は8月15、16日。会場はビッグパレットふくしまでも最大の多目的ホール(A、B、C)で、ステージ企画、音楽ライブも予定されていた。
8月17日付の朝日新聞によると、主催者は「㈲ERU JAPAN」(エルジャパン、山形県寒河江市、工藤拓哉代表)。春ごろに出店業者の募集を始め、出店に当たり、5500~1万1700円の出店料を取っていた。一般客の入場料は500円で、チケットを前売りしていたほか、出店者にチケットを渡して来場を呼び掛けさせていた。
ところが、同13日夕方、特設サイトで「様々な状況を踏まえ、総合的に判断した結果、今回の開催を見送ることとなりました」と発表した。
エルジャパン社は地元紙の取材に「会場の設営などに関して最後まで調整を続けたが、条件面で折り合いが付かず開催を断念した」(福島民報8月15日付)、「会場(ビッグパレットふくしま)の条件を満たすことができず、総合的に判断し、13日に中止を決めた。関係者に迷惑をかけ申し訳ない」(福島民友8月16日付)と説明している。出店料や前売りチケットは返金し、予約した宿泊先のキャンセル費用や移動費、仕込んでいた材料費などの損失には個別対応する方針を示した。
マルシェは今年、東北6県で開催する予定で、5月に山形市の山形ビッグウイング、6月に秋田県由利本荘市の由利本荘総合防災公園ナイスアリーナ、7月に青森県黒石市のスポカルイン黒石で開催されていた。だが、SNSでは、出店者から「店舗数も来場者数も当初聞いていたより少なかった」と落胆する声が出ていたほか、「当日はブースのテープ貼りすら終わっておらず、搬入時間が30分遅れた」など運営体制に疑問を投げかける意見もあった。
「入場料目当ての悪質な会社ではないか」と疑う向きもあるが、中止の原因は何だったのか。
エルジャパンの工藤代表に取材を申し込んだが、電話はつながらなかった。やむなく山形県寒河江市の本社を訪ねたところ、工藤氏の自宅のようで、対応した母親が「ご迷惑をおかけしたということですね。申し訳ございません」と謝罪した。
後日、工藤氏から折り返しの電話があり、「中止の理由は、現時点では『会場の条件を満たせなかった』としか言えないが、8月中にはプレスリリースで理由を明確に発表する予定です」と述べた。前売りチケットは返金処理済みで、出店者にも返金・補償する方針を連絡。宿泊・移動費、材料費などについては個別にヒアリングを進め、引き続き補償範囲を検討していくという。
工藤氏は寒河江市出身の28歳。商品・イベントプロモーション関連の仕事に携わり、昨年から個人事業主となって、今年1月、廃業した山形市の漬物店の法人を引き継ぎ、社名変更する形で新会社を設立。数人のスタッフでイベントを開催している。
東北六彩マルシェ自体は昨年から実施されており、ビッグパレットふくしまでも昨年秋、多目的ホールの一部を区切って開催された。工藤氏は詳細な運営体制や収益源については濁したが、かつては複数の団体・事業主と協力して実施しており、今年から工藤氏の会社が中心となって運営しているようだ。
工藤氏は、同マルシェは出店を希望する人を応援するために立ち上げられたものであり、チケット売り上げの一部は子ども食堂などに寄付される「チャリティーイベント」であることを強調した。「会社としての収益源はイベントなどを通した商品・企業プロモーション事業なので、東北六彩マルシェでは収益が出なくてもいいと考えています。これまでスポンサーなどに頼らず、イベントを実施しています」。
露呈した「甘い見通し」
ただ、会場の多目的展示ホールの使用料は1日約72万1600円。設営・撤去を含め4日間借り、入場料設定時は10%の割増料金が加わるので300万円を超える計算だ。
仮に出店料が1店舗1万円で、250店舗が出店したとしても収入は250万円だ。「MCや音楽ライブを開催するとなれば、普通は専門業者に委託して設営をお願いするが、それをやると確実に赤字になる。最小限の準備期間とステージ設営で経費を抑え、乗り切るつもりだったのかもしれないが、それではイベント的にみすぼらしくなる」(イベント事情に詳しい男性)。
別のイベント業界関係者からは「県営のビッグパレットふくしまで大規模イベントをやるとなれば、消防法の申請など、細かい手続きに追われる。そうした事務作業の見積もりが甘く、手が回らなくなり、中止せざるを得なかったのではないか」と推測する声も聞かれた。
これらの意見について、工藤氏に確認したところ、具体的な収支については明かさなかったが「書類提出などの準備に追われ、予想以上に工数がかかってしまった面があるのは事実です」と認めた。
SNSでウワサされているような悪質な集金目的のイベントだったと断定できる材料はなかった。一方、約250店舗を集める大規模イベントには、相応の資金と人員、法令対応が求められる。工藤氏自身が「書類提出などの準備に追われ、予想以上に工数がかかった」と認めていることを踏まえると、事前の見通しが甘かったことは否めない。
同社はすでにビッグパレットふくしまにキャンセル料(100%)の支払いを済ませたという。東北六彩マルシェはこの後、11月7、8日に岩手県で、11月22、23日に宮城県で開催を予定している。
工藤氏は「多くの方に迷惑をかけてしまったが、出店者への返金・補償を進めて信用回復に努めつつ、引き続き東北六彩マルシェを開催していきたいと考えている」と述べる。
ただ、県内のイベント業界関係者の見立ては冷ややかだ。
「チャリティーイベントで今回のような〝しくじり〟は致命的。会場、出店者ともに『今回も中止になるのではないか』と警戒するし、県や郡山市、市教委、テレビ局が後援していたが、顔に泥を塗られた格好になってしまった。SNSで悪評が拡散されている状況では集客も苦戦するだろう。かといって、テレビや新聞に広告を出す予算もないはず。社名やイベント名を変えて出直すのが現実的ではないか」と語る。
今後、出店者への返金や補償が進むのか、そして、他県で同様の混乱が繰り返されないか、引き続き注視したい。





















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