本誌前号に、「福島市施設管理計画『第2期』の課題」という記事を掲載した。福島市が進める「公共施設等総合管理計画」を検証したもの。同計画は、市保有の公共施設のあり方の全体像を示したものだが、これに基づき、分野ごとのより具体的な計画を定めた「個別計画」というものがある。今回はその中から現在進行形で動きがある「中央地区学校再編」についてリポートする。
統合校の場所をめぐり第一小と第四小が綱引き!?
福島市公共施設等総合管理計画は、計画の最上位に当たるもので、市保有公共施設の今後のあり方の全体像を示したもの。その下位計画として各分野の個別計画がある。学校施設であれば、「福島市学校施設等個別計画」がそれに当たる。これに基づき、具体的な事業が進められ、現在進行形で動いているのが「中央地区学校再編」事業だ。
地域住民にとって、より関心が高いのはこの部分だろう。すなわち、身近な公共施設(今回の場合は小学校)が今後どうなるのか、といった議論である。当然、その場合は住民の意見を聞く場が設けられ、中央地区学校再編はまさにその最中にある。
そもそも、なぜいま中央地区で小学校再編が進められているのか。その根拠となっているのが、市が2017年度に策定した「福島市立小学校・中学校の適正規模・適正配置に係る基本方針ならびに第一次実施計画」(2018〜2027年度)である。同計画では、①早急な教育環境の改善・充実が必要とされる学校再編の推進、②学校規模適正化との連動による新しい学校づくりの推進、③施設更新と併せた総合的な視点からの学校規模適正化の推進――を掲げている。
中央地区の3つの小学校、福島第一小学校、福島第四小学校、清明小学校はこの方針の③に該当し、施設の老朽化と急速な小規模化(児童数の減少)という二重の課題に直面している。
公共施設のコンクリート構造物の標準耐用年数の目安は「築年数60年」とされる。これに対し、福島第一小は築64年、福島第四小は築63年、清明小は築68年が経過している。いずれも耐震補強などの改修を重ねて維持してきたものの、構造体としての限界を迎えており、早急な更新・改築が避けられない状況だ。
さらに、清明小学校については、市の洪水ハザードマップで「3㍍以上5㍍未満」の想定浸水区域(洪水・内水氾濫エリア)に位置しており、防災拠点としての観点からも、現状のまま維持することは極めて困難との判断が下されている。
もう一つの深刻な課題が、児童数の激減に伴う教育環境への懸念だ。国が定める小学校の適正規模は「各学年2学級以上、全校12〜18学級(クラス替えが可能な規模)」とされているが、市としては現状を踏まえ「当面は各学年1学級を維持できる規模を下限」としてきた。
しかし、中心街の単身化やファミリー層の郊外流出により、中央地区の3校はいずれもこの下限すら脅かされる状況にある。
別表は市公表資料をもとに、3校の児童数の推移をまとめたもの。福島第一小学校と清明小学校はこの三十数年で半数以下になっており、福島第四小学校に至っては、10分の1程度まで減っている。






こうした背景を踏まえ、市は2024年2月、各学校のPTA役員、小・中学校長会、自治振興協議会、主任児童委員、子ども会育成会連合会などの代表者15人で構成される「福島市中央地区教育構想検討会」を設置した。同検討会は約1年5カ月間にわたり、計9回の議論を重ねた末、昨年7月に「福島市中央地区小学校再編に向けた基本方針」をまとめ、市教委に答申した。
これを受け、今年5月20日に地元住民を対象とした地区説明会が開催された。
この3つの小学校の学区内には、28の町会があるが、その後はそれら町会の役員、PTA役員などを交えた対話集会が行われた。7月7日と8月25日の2回にわたって開催され、後者の集会では、1回目の対話集会やアンケート調査を基に、より具体的な方針が市から示された。

その概要はこうだ。
まず、中央地区小学校の再編は単なる校舎の統廃合にとどまらず、2つの異なる役割を持つ学校を地区内に設置する構想となっている。
1つ目は、福島第一小、福島第四小、清明小の3校を1つに再編する「先導的な学びを推進する学校」である。市では「3つを1つに再編」といった言葉を使っているが、実質的には統合である。そのうえで、最大の課題かつ、関係者の関心事である設置場所については「通学距離等を考慮して選定する」とされた。
2つ目は、新たに市内全域を学区として設置を検討する「多様な学びを実現する学校」だ。文部科学省が認定する不登校特例校(学びの多様化学校)を念頭に置いており、既存校舎を改修して、児童・生徒のペースに合わせた柔軟な教育環境を整備する方針という。
要するに、「3つの小学校を1つに再編」した統合小学校と、不登校気味の児童・生徒でも通いやすいような学校の2つを設置するという方針だ。
通学環境については、公共交通機関が充実している地域事情を踏まえ、路線バス、市内循環バスなどの有効利用や通学路の安全確保に努めるとした。学童保育(放課後児童クラブ)は再編された学校敷地内に集約し、希望者全員が利用できるよう検討する。スケジュール案は、施設準備検討委員会(仮称)を設置し、基本・実施設計に3年程度、建設工事期間として2年程度を想定しおり、およそ5〜6年後の開校を目指す考え。
対話集会での意見
こうした方針に対し、同日行われたワークショップ形式の対話集会では、参加した地域住民やPTA関係者から現実的な要望が上がった。
最も切実な声が上がったのは「通学の足」に関する問題だ。広域化に伴い「低学年の子どもが歩けるのか」「公共バスの利用は、低学年には非現実的」との意見が出た。公共交通を利用させる場合の乗車費用負担は保護者なのか市なのかという疑問や、「路線バスではなく児童専用のスクールバスを出すべき」との要望もあった。
また、市が示した「先導的な学校(新設)」と「多様な学びの学校(改修)」という2つの学校を置く方針に対しても、「さまざまな子どもが共に育つインクルーシブ教育こそ重要ではないか」という教育面からの疑問に加え、改修とされる施設に対して「築60年を超えた建物で、改修だけで安全面は本当に大丈夫なのか」というハコモノへの安全性の疑問も出た。
学童保育の1カ所集約についても「100人以上の利用が見込まれる中、キャパシティや支援員の確保は可能なのか」と、運用の実現性を疑問視する意見があった。
さらには、「3校を合わせても今年度の新入生はわずか48人。統合しても数年後にまた再編が必要になるのではないか。だったら、第二小や第三小、あるいは中学校も含めた広域的な再編を考えるべき」との意見も出た。
市は、こうした意見を踏まえ、年内に再編計画案を策定する方針。対話集会後に取材に応じた佐藤秀美教育長は「場所を含めて、再編計画案で示すことになる。その後は、対話集会という形になるかは分からないが、関係者の意見を聞く場を設ける」と話した。つまり、前段の対話集会としては同日で一区切り。今後は再編計画案をまとめ、あらためて、関係者と協議するということだ。

最大の関心事は設置場所
そんな中でも、最大のポイントになるのは、「統合校を第一小学校と第四小学校のどちらの敷地に置くか」という場所の問題だ。ちなみに、清明小学校は借地であること、さらには前述したように浸水リスクがあることから、候補外と見られている。
そのため、清明小学校の学区内の住民は「(統合小学校の設置場所が)ここ(清明小学校)になることはないと思っている。だから、静観というか、諦めの境地」と話した。
一方で、ある町会役員は「現実的に、小学校を配置できるだけの新たな候補地(敷地)が中央地区にあるかと言われると見当たらない。だから、第一小学校か第四小学校のどちらかに統合小学校が置かれることになると思う。そういった中で、両者で綱引きが行われているのが現状です」という。
こうして聞くと、第一小学校か第四小学校の敷地に、3つの小学校を1つに再編してつくる「先導的な学びを推進する学校」が置かれ、残った方に不登校気味の児童・生徒でも通いやすいような「多様な学びを実現する学校」が配置されるということになるのではないか。
ある地元関係者はこう話す。
「統合校を第一小学校と第四小学校のどちらに置いたとしても、反対側(統合校の設置場所にならなかったところ)から反発が出るのは避けられない。万民が納得する形なんて、絶対にあり得ないですから。だから、市は慎重になっており、意見を聞く場を設けているわけですが、結局のところは『ガス抜き』でしかないんですよね。いまはまさにその段階で、今回(8月25日に開かれた対話集会)で一区切りになるのかな。そのあとで、皆さんの意見を踏まえて、さまざまな事情を考慮したうえで、こうなりましたという方針が示されるんだと思う」
さらにこの関係者はこう続ける。
「市は地域をないがしろにしたと思われたくないため、町会役員らの意見を聞くことに注力している。しかし、真に優先されるべきは、いま現に子どもを通わせている保護者、あるいはこれから小学校に通う子どもを持つ親世代の意見ではないか。もちろん、対話集会にはPTAなども参加しているが、もっとそっちの比率を上げるべきだと思うね」
一方、前出のある町会役員はこんな疑問を口にする。
「市は開校までおよそ5〜6年と見込んでいるようだが、本当にそれでまとまるのか。場所の選定、仮校舎の調整、学区や学童の再編、さらには通学バスの運行判断など、詰めなければならない課題はいっぱいあるからね。まあ、場所さえ決まればその辺の対策の議論は進むだろうけど、その間に隣接地区でも少子化や施設老朽化が進むだろうから、最初からもっと広範囲で議論を始めるべきだったんじゃないかな」
こうして聞いても、さまざまな課題があり、多くの人の思いが交錯していることがうかがえるが、ひとまずは年内をメドに策定される再編計画案の公表を待つしかない。それを受け、さらに議論を深めていくことになるだろうが、地元関係者のコメントにあったように、万人が納得する答えがない中、行政がいかに当事者へ誠実に向き合うか。その手腕が問われている。





















に向けて掲げられたプラカード。過激な言葉が並んだ=2025年10月19日、仙台市青葉区河北新報提供-002_eyecatch-520x305.jpg)



