柗井綾乃さんが巡る世界一周撮影旅

本誌で旅写真コラムを連載中の柗井綾乃さんが世界一周の旅に出発する。実現に至った経緯を執筆してもらった。

いつも「1枚を見つめて」を読んでくださっている読者の皆様、こんにちは。この春、柗井は念願の世界一周の旅に出ることになりました。なぜ今、世界一周をするのか、ルートや出発前のトラブル(すでにバタバタです)、旅のテーマなどなど……せっかくの機会なのでここに綴らせていただきます。「世界旅行をしてみたい」という人の参考になったり、「自分も何かに挑戦しよう」なんて思ってもらえたり。私の言葉が少しでも誰かに届きますように。

夢は来世で……?

世界一周の旅は私の夢でした。大学生の頃から海外旅行をするようになり、訪れる国の数が増えれば増えるほど「もっと世界を見てみたい」と思うようになったのです。

世界一周には「太平洋と大西洋を一度ずつ越え、出発地に戻る」という定義があるそうです。一つの国を旅して帰国して、また働いて。それでも旅はできます。でも、短期間で多くの国や文化、価値観に触れる経験は、きっとまた違った見え方がするのではないかと、憧れを抱いていたのです。

今考えると、これまでにも世界一周の旅に出るチャンスはあったのだと思います。大学を休学していけばよかったのかもしれないし、転職のタイミングで数カ月の旅もできたかもしれない。そのときは「お金がない」とか「キャリアが止まる」とか、自分に言い訳をしていたのですね。

2022年に結婚。はっきり覚えているのは、この頃「世界一周の夢は、来世の楽しみにしよう」と思ったこと。結婚したら自分の好き勝手にはできないし、将来は子どもも欲しいからと、勝手に世界一周を「できないこと」に分類してしまったのです。

そんななか迎えた2024年。フリーアナウンサーとして独立した年の秋、最愛の祖父が他界しました。カメラマンだった祖父は、私の写真を見ると「綾乃はいい瞬間を切り取るね」と褒めてくれました。祖母がぽつりと言いました。「じいちゃんね、綾乃には世界中で写真を撮って欲しいって、よく話していたんだよ」と。

祖父の死をきっかけに、私は「残りの人生をちゃんと楽しもう」と思うようになりました。「夢は来世で」なんて、おかしな話。じいちゃんの言うとおり、私は世界中で写真を撮ろうじゃないか、と。

そのころから、心の中にしまっていた「世界一周をしてみたい」という言葉を、少しずつ夫に伝えてみるようになりました。するとびっくり。夫が乗り気だったのです(笑)。この時、世界一周は私の身勝手な夢ではなく、夫婦の夢に変わりました。

航空券をポチッちゃった

荷物はすべてリュックに。カメラは2台(FUJIFILM X-T4とLUMIX S9)。身軽な装備で世界を撮りに行ってきます。

とはいえ、世界一周の旅には多くのハードルがあります。最も高いハードルは「時間の確保」でした。フリーランスとはいえ、私もレギュラーのお仕事があるので急に何カ月も休むことはできない。会社員の夫は、頑張っても時間を作れて約2週間。

実はそのころ、我が家で進んでいたもう一つの計画が「夫の独立」でした。テレビ局員の夫の夢は「フリーディレクターになること」。いつか独立するなら、そのタイミングに2人で世界一周の旅をしてみよう。あとはいつ独立するか……。

その先はご想像の通りです。「思い立ったが吉日」の私たちは、出発日を決め、そこから逆算して準備を進めることに。一番周りに影響が少なそうな4月出発を選び、スマホで航空券をポチっと購入しました。

期間は3カ月。一般的な世界一周よりは短いと思います。司会の仕事が多い私は、夏から秋のイベントシーズンには福島に戻っていたい……という理由です。夫は会社に退社を告げ、私も複数のレギュラーの仕事のクライアントにその旨を伝えました。

ちなみに、レギュラー交代を覚悟していましたが、どのクライアントの担当者も「休んで帰ってきてください」と言ってくれました。これには本当に頭が上がりません。こうして、私たちの世界一周の旅は、静かに動き始めました。

ルート決定!と思いきや

出発が決まったら、次はルート決め。上機嫌で行きたいところをリストアップしました。

【当初のルート】

シンガポール→サウジアラビア→エジプト→ヨーロッパ数カ国→アメリカ(東側)→南米数カ国→アメリカ(西側)→帰国

ところが、出発約1カ月前に中東情勢が悪化。サウジアラビアは危険レベル3(渡航中止勧告)に引き上げられました。さすがにこの状況では行けません。私たちは航空券も宿もすべて個人手配のためキャンセル料もかかりましたが、サウジアラビアとエジプトをすべてキャンセル。その代わりにアフリカ南部へ飛ぶことに。この原稿を書いている3月半ばの現在は、絶賛アフリカリサーチ中。臨機応変に対応できるか、〝旅力〟が試されていると思うことにしています。それにしても、世界がこんなに変わってしまうとは。旅は世界の平和の上に成り立っているのだと、再認識させられています。

テーマは「世界の人々」

前述の通り、この文章は出発前に福島で書いています。記事が世間に出回る頃、ちょうど出国です。まだまだ最後の準備の真っ最中。無事に出国できていますように……(笑)。

そんな今回の旅では、旅先で出会うであろう「人々」の写真を多く撮りたいと思っています。もちろん絶景も撮影予定ですが、連続で違う国に行くからこそ気が付く、文化や空気の違い。そんなものも、人を通して表現できたらと考えています。この連載でも少しずつ紹介しますので、ご覧いただけると嬉しいです。

大冒険となりそうな今回の旅。どんな出会いがあるのか、今から胸を躍らせています。

まつい・あやの 1992年2月生まれ。福島県が拠点の「撮って旅するアナウンサー」。

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