二本松市で不動産経営を行う男性が、漏水トラブルをめぐって、市から修繕費支払いを求める訴訟を起こされている。男性は「なぜ、こちらは水道設備に一切触れていないのに、修繕費用を負担しなければならないのか」と主張している。実はこのトラブル、空き家増加が進む中で誰にでも起こり得る問題なのだ。
他人事ではない水道老朽化問題
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二本松市から訴えられているのは複数の賃貸住宅を所有するオーナーのAさん。今年1月、修繕費約12万円の支払いを求めて福島簡易裁判所に訴訟を提起された。
訴状によると、2019年、Aさんが所有する同市内の賃貸住宅の住人から漏水が発生したと市に連絡が入り、市が調査したところ、給水装置に異常があることを確認した。
給水装置とは、各家庭に水を送る給水管や止水栓、水道メーター、蛇口のことを指す。公道地下に埋設された配水管から分岐して私有地に設置される設備で、土地や建物の所有者の財産として扱われる。この場合、給水装置はAさんの所有となるため、市はAさん(当時はAさんの父親=訴外=が所有者)に修繕するよう求めたが対応しなかった。
その後、Aさんの父親が亡くなり、Aさんが賃貸住宅を相続。市は2025年にあらためて修繕を求めて連絡したが、Aさんは「給水装置に触れる機会があるのは市やその委託業者ぐらい。そこで漏水が起きた可能性が高いのに、なぜこちらが負担しなければならないのか」と主張した。
市は「これ以上放置できない」と判断し、指定給水装置工事事業者に委託して修繕工事を実施。工事費用11万8800円を支払うようAさんに通知したが、支払われなかった。そのため一旦市が立て替えたうえでAさんにその支払いを求めて、今回訴訟を提起するに至った。
Aさん所有の別の物件に関しては、2018年にも止水栓付近から漏水が発生したことがあったという。今回とほぼ同じ条件だが、その際は市の負担で工事が行われた。というのも、メーター交換を依頼された業者が止水栓を回す際、力を加えすぎて、漏水を引き起こしたと考えられたためだ(市は「経年劣化で漏水していた箇所に力が加わり漏水が増大」と表現している)。対応が分かれている点も争点の一つとなっている。
市の主張は「2013年の開栓以後、業者も一切操作しておらず、純粋な経年劣化が原因だ」というもの。
それに対し、Aさん側は「この賃貸住宅には2013年から2024年まで入居者がいた。その間計量法に基づき水道メーターが交換されたはずなので、その際の開閉作業で漏水が発生した」と反論している。
また、Aさんが水道局指定給水装置工事事業者になっている5社に破損個所の写真を確認してもらったところ、全社とも「止水栓の操作時に力が加わったことで破損し漏水したと思う」と回答した。それらの工事の見積もりを出してもらったところ、各社5~6万円という金額を示し、市が示す修繕費と開きがあった。
本誌はAさんを支援している人物から一連の情報を得て取材するに至った。Aさんに接触してコメントを求めたところ、次のように語った。
「市は『2013年の開栓以後、止水栓の操作は行っていない。だから、漏水は市の責任ではない』と主張しているが、それが事実とすれば原則8年ごとに水道メーターを交換することを定めた計量法に違反していることになります。漏水が発覚してから5回ほど市にこちらの主張を伝えたが、6年にわたり漏水が放置されてきたことにも疑問を抱きます。正直修繕費はいつでも払える金額ですが、市の主張がどうにも納得できないので、代理人を立てずに裁判を続けています」
市町村で異なるルール
一方の二本松市側は今回の裁判をどう受け止めているのか。市上下水道課はこのように説明する。
「(Aさんには)以前から修繕を求め続けていましたが、2025年に漏水量がかなり増えて近所の方から問い合わせが寄せられ、周囲の陥没なども懸念されたため、ひとまず市の方で業者に依頼して修繕しました。工事費用に関しては、重機を入れて手早くできれば安くなることがあるが、狭い場所で手掘りでの作業となると、高くなる傾向があります。修繕費用を負担する範囲は市町村によって異なるが、本市では基本的に道路の下を通る配水管から、宅地側に設置されている給水装置の修繕に関しては、土地や建物の所有者が負担するものとしています」(市上下水道課担当者)
ただ、水道メーターの交換に関しては、「基本的には計量法のルール通り、8年ごとに交換することになっているが、空き家の場合は新しく入居するときに交換することもあるので、一概には言えない」といま一つ歯切れの悪い回答だった。
自治体で水道事業に携わった経験のある男性に確認したところ、私有地における給水装置に関しては、一般的には二本松市が主張する通り、土地・建物の所有者が管理責任を負い、修繕費用も負担しているという。「実際に私もかなり古くなった給水装置を検査時に破損してしまい、『申し訳ないが修繕をお願いしたい』と伝えたこともあります」。
ただ、一律に決められているわけではないようで、福島・郡山・いわきの対応も分かれていた。福島市は道路側に設けられた第一止水栓より内側の漏水発生のみ修繕費を負担しているのに対し、郡山市やいわき市は第一止水栓より建物寄りに設けられた水道メーターまでの区間の修繕に対応している。ただし、郡山市の場合は▽設置後40年以内の装置については自己負担、▽企業や公共施設、共同住宅、賃貸住宅などの事業所用の給水装置は修繕しない――などの条件が追加されている。
こうしてみると、二本松市の対応が異例というわけではなさそうだが、「他市では修繕費を負担してくれるケースなのに、なぜ二本松市では土地・建物所有者が支払わなければならないのか」、「過去には市が負担してくれたのに、なぜ今回は自己負担なのか」というAさんの不満も理解できる。
全国の水道管の2割を超える約17・6万㌔が40年の法定耐用年数を迎えており、水道インフラの老朽化が全国的な課題となっている。各自治体は対応を求められているが、私有地の給水装置に関しても、着実に老朽化が進んでいる。国税庁によると、給水装置の耐用年数は15年(税務上の目安)。実家の管理を引き継いだり、安く空き家を取得した際、Aさんと同じ状況に陥り、思わぬ出費が発生することもあり得る――そうしたリスクもあることを浮き彫りにした今回の裁判といえよう。
今後の審理で、責任の所在がどのように判断されるのか注目される。






















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